著者
窪田 充見 磯村 保 中川 丈久 島村 健 島並 良 八田 卓也 青木 哲 池田 千鶴 嶋矢 貴之 興津 征雄 前田 健 田中 洋
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本科研では、社会においては、個人の利益に解消されないが、集団的な利益や集合的な利益があるのではないか、そして、そうした集団的利益・集合的利益を保護するためには、どのような法制度を設計することが考えられるのかといった問題に取り組み、消費者法、環境法、知的財産法などの分野における具体的な問題について成果を公表してきた。これらを踏まえると、私法と公法という枠組みを超えて、法の実現に関わる私人の役割を考える必要があることが明らかとなった。
著者
長野 正孝 山本 修司
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.81-96, 1992-06-05 (Released:2010-06-15)
参考文献数
7

中米地峡運河は、16世紀からその必要性が叫ばれていたが、20世紀初頭になって、水路と人造湖、閘門、ダムを擁する構造物として、パナマに完成した。それに至るまで、技術の進歩と計画規模の増大という相克の歴史があった。すなわち、中米地峡運河の計画は、それぞれの時代に新しく生まれた土木技術を取り入れながら、より優れたものになってきたが、一方では、この200年間に船舶が飛躍的に大型化したことによって、要求される運河の規模が大きくなり、膨大な土量を掘削し、巨大な閘門を建設することを余儀なくさせられてきた。本論では、その歴史について、技術面に焦点をあてて、以下の点について、分析、評価を行った。第一に、18世紀までのヨーロッパの技術では、この中米地峡に、運河を建設することは不可能であったことを幾つかの角度から傍証した。第二に、レセップスの時代には、技術的な制約はほぼ解決し、中米地峡運河は、パナマにおいて、その規模は別にして、可能となっていたことを傍証した。すなわち、この時代には、連続して閘門をつなぎ大きな水位差を克服する技術や大きな水圧に耐える鋼鉄製ゲート、近代測量技術、コンクリート技術などがほぼ確立し、水路掘削に不可欠な掘削機械、浚渫船、ダイナマイトなども登場した。第三に、何故、近代運河に鋼鉄製ゲートが必要となってきたかについて分析した。すなわち、伝統的なヨーロッパの閘門式運河では、その水位差が5mになると限界に達するという経験則があったが、本論では、その原因の一つがゲートの材質にあることを明らかにし、中米地峡運河実現のためには鋼鉄製ゲートが必要であったことを傍証した。第四に、閘門をコンクリート構造にすることによって、大型の閘門と給水用のダムが可能になったことも明らかにした。すなわち、19世紀末からフランスとアメリカによって行われた現パナマ運河のプロトタイプの計画から、重力式コンクリート構造が不可欠となった背景とその技術水準を分析した。第五に、パナマ運河の最近の計画と掘削土量の変遷について評価し、将来の運河のあり方を示唆した。
著者
熊本市 [編集]
出版者
熊本市
巻号頁・発行日
1990
著者
島倉 秀勝

イヌの食物アレルギーは重要なアレルギー疾患の一つである。食物アレルギーは環境要因と遺伝要因の両方が発症に関連していると考えられている。ヒトでは衛生環境の清浄化がアレルギー疾患の増加の一因だと考えられており、「衛生仮説」が提唱されている。近年、イヌもヒトと同じ環境で生活するようになっており、衛生環境の清浄化がイヌの食物アレルギーの発症にも影響を与えていると考えられる。また、食物アレルギーを発症しやすい犬種が報告されていることから、遺伝要因がイヌの食物アレルギーの発症に関わっていることも推測される。食物アレルギーの病態は大きくIgE依存性とIgE非依存性に分けられる。これらの病態が複雑に影響していることがアレルギーの機序の解明や診断方法・治療法の確立を困難にしている。現在、食物アレルギーの治療は原因食物の摂取を回避することが一般的に行われている。しかしながら、根本的な治療法は確立されていない。イヌの食物アレルギーを正確に診断し、有効な根治療法を適用できるようになれば、獣医療にとって大きなメリットがあると思われる。本研究の目的はイヌの食物アレルギーの免疫学的な解析を行い、それに対する治療法の研究開発を行うことである。 第1章では、高い頻度で食物アレルギーを発症する家系のイヌを調査した。本家系における食物アレルギーは常染色体優性遺伝が推定された。すべての食物アレルギーのイヌはIgE非依存性の食物アレルギーを示した。一部の食物アレルギーのイヌに対して食物負荷試験を実施し、食物負荷試験の前後で抗原特異的リンパ球の増殖能を検討したところ、3頭中2頭は原因食物アレルゲン特異的リンパ球の活性化が認められた。IgE非依存性食物アレルギーについての研究を行う上で、モデル動物として本研究の家系のイヌを用いることは意義があると考えられる。ヒトにおいてもIgE非依存性食物アレルギーの免疫学的機序は未だに不明な点が多く、今後、イヌの分野でも研究を進めて行く必要があると思われる。 第2章では、IgE依存性の食物アレルギーのイヌの血清学的解析を行った。一般的な食物アレルゲンである卵白の粗抗原に対するIgEを測定したところ、食物有害反応犬82頭中8頭(9.8%)が陽性を示した。ヒトにおいて調べられている4つの卵白精製抗原に対するIgE反応性を卵白粗抗原特異的IgE陽性を示した8頭のイヌで調べた結果、8頭中6頭(75.0%)はオボムコイドとオボアルブミンに陽性を示し、8頭中3頭(37.5%)はオボトランスフェリンに陽性を示した。本研究において、ヒトと同様にオボムコイドとオボアルブミンがイヌの主要な卵白精製抗原だということが示唆された。本研究におけるイヌの卵アレルギーはヒトのモデルとしても有用であることが判った。 第3章では、マウスを用いてアレルゲン発現組換え乳酸菌の経口免疫療法の基礎的検討を行った。食物アレルギーの根治療法の候補として研究されている経口免疫療法のさらなる治療効果向上を目的として、プロバイオティクスとして注目されている乳酸菌をアレルゲンの輸送担体として用いて実験を行った。卵白精製抗原であるオボアルブミンを発現したLactobacillus caseiをマウスに経口投与し、オボアルブミン発現L. caseiの抗アレルギー効果を検討した。オボアルブミン発現L. caseiを投与した群のアナフィラキシー反応や血清中IgEの結果は他の群と比較して違いがなく、抗アレルギー効果は認められなかった。今後、経口免疫寛容誘導に必要な抗原量の検討を行い、それらの情報を基にアレルゲン発現L. caseiの改良を行う必要があると考えられる。 本研究では、イヌのIgE依存性ならびに非依存性の食物アレルギーの免疫学的な解析を行った。さらにイヌの食物アレルギーの根治療法として、アレルゲン発現組換え乳酸菌を用いた経口免疫療法の基礎的な研究を行った。イヌの卵アレルギーにおいて卵の各精製アレルゲンに対するIgE抗体の反応性を検討して、ヒトの卵アレルギーにおけるIgE反応性とよく似ていることを明らかにした。本研究のイヌの卵アレルギーはヒトのモデルとしても有用であることが判った。また、本研究における遺伝的に非依存性食物アレルギーを発症するイヌも食物アレルギーを研究する上で有用なモデルとなると思われる。アレルゲン発現組換え乳酸菌を用いた経口免疫療法については今後さらなる研究を行い、有効な根治療法の開発をしていく予定である。
著者
安田政彦著
出版者
吉川弘文館
巻号頁・発行日
2007
著者
新居田 純野
出版者
長崎外国語大学
雑誌
長崎外大論叢 (ISSN:13464981)
巻号頁・発行日
no.17, pp.81-92, 2013-12-30

This paper is concerned with potential expressions in Fukue and Kishuku dialect in Goto island, Nagasaki, Japan. Potential expressions in Japanese are classified into potential and actual. Furthermore, it hassubclassifications- potentiality in emotion, ability, internal condition, external condition, attribute in an object.In two dialects they are expressed by using [-yuru], [-raru], [-kiru] and others.In this paper, after having compared these two dialects, I will present their overviews.
著者
副島 健治
出版者
富山大学留学生センター
雑誌
富山大学留学生センター紀要 = Journal of International Student Center, Toyama University (ISSN:13472739)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.51-52, 2013-09

1998年の日韓首脳会議における「21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップ」の構築の合意に基づき,具体的な行動計画として「日韓共同理工系学部留学生事業」が立ち上げられた。この事業は,韓国で選抜された高校卒業生を,留学生として日本の国立大学の理工系学部が受け入れるプログラムである。1999年に第一期生の募集が開始され10年間の第1次事業を経て,2009年の募集から新たな第2次事業が行われている。富山大学はこれまでにこのプログラムに基づく留学生(以下,「日韓生」とする)をのべ9人受け入れた。現在2人の日韓生が富山大学に在学中である。
著者
近藤 宏
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.149-149, 2009

現在、各国の先住民は問題を抱えながらも、憲法や法律を通じ権利主体として国家に位置づけられるようになっているが、パナマ共和国では1972年の改正憲法に基づく法律によって、先住民は特別行政区を管理する主体と位置付けられている。さらに80年代以降、数度にわたり「集合的主体」としての先住民の性質を規定する法律が発布されていった。こうした法的な動向とパナマ先住民の先住民の活動について報告する。
著者
鈴木 義和 高尾 誠 奥村 晃史 谷 和夫
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

In October 2014, the Atomic Energy Society of Japan (AESJ) established an investigative expert committee to develop risk evaluation methods and measures for fault displacement on the basis of engineering approach. Following the launch of the committee, meetings were held seventeen times to discuss and examine the issue, and the committee ultimately published an investigative report in March 2017 to disseminate the research results. In this presentation, we will give an outline of the evaluation method in terms of fault displacement hazards.Fault displacement hazards for risk evaluation should be analyzed both deterministically and probabilistically.On a deterministic basis, a fault displacement, which is necessary for deterministic margin evaluation (hereinafter, ‘the fault displacement for evaluation’), is to be determined on the basis of three kinds of approach, namely: 1) geological investigation approach, 2) numerical simulation approach, and 3) database of earthquake surface faults approach. ‘The fault displacement for evaluation’ should be set not only upon comprehensive consideration of 1), 2) and 3) but also taking into account uncertainties related to 1), 2) and 3).On a probabilistic basis, hazard curves, which are necessary for Probabilistic Risk Assessment (PRA), should be determined in accordance with Probabilistic Fault Displacement Hazard Analysis (PFDHA), proposed by Youngs et al. (2003), Petersen et al. (2011), Takao et al. (2013) and so on. Furthermore, the hazard curves will be utilized as references when ‘the fault displacement for evaluation’ is examined.As stated above, the AESJ has established a methodology to determine the fault displacement hazards. In order to improve the reliability of the method, it is essential to accumulate technical knowledge and for the related academic fields to cooperate with one another.
著者
上原 聡介 伊藤 智則 吉井 英樹 鶴丸 和宏 小松 尚久
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.5, pp.1-6, 2011-05-12

本稿では,携帯端末の搭載機能として標準採用されつつある三軸地磁気センサ (電子コンパス機能を含む) から取得できる地磁気データの特徴を示し,徒歩,電車,バス,自動車といった人物移動手段の推定に利用可能かどうか検討を行う.ここで,三軸地磁気センサが搭載されている携帯端末にはアップル社製のスマートフォンである iPhone 3GS を用い,特徴量としては平均と分散を検討した.A geomagnetic sensor is becoming a standard feature for mobile phone. In this paper, we show characteristics of geomagnetic data by using a three-axis geomagnetic sensor (including an electronic compass function) in a mobile phone, and suggest effectiveness of geomagnetic data to estimate person mobility. Person mobility means which kind of way a person takes to move from one geographical point to another. In this paper, we check four types of person mobility, which are walking, train, bus, and car. We use Apple's smartphone-iPhone 3GS as a mobile phone equipped with a three-axis geomagnetic sensor. Also, as feature value, we investigate average and variance.
著者
SuYeon Roh Sukhoon Yoon Joo Nyeon Kim Hee Sung Lim
出版者
理学療法科学学会
雑誌
Journal of Physical Therapy Science (ISSN:09155287)
巻号頁・発行日
vol.28, no.12, pp.3463-3467, 2016 (Released:2016-12-27)
参考文献数
36
被引用文献数
5

[Purpose] This study aimed to examine the effects of an 8-week modified Pilates program on the variability of inter-joint coordination in the elderly during walking. [Subjects and Methods] Twenty elderly participants with no recent history of orthopedic abnormalities (age, 67.9 ± 2.7 years; height, 163.7 ± 8.9 cm; weight, 67.1 ± 11.6 kg) were recruited for this study and randomly allocated to a modified Pilates exercise group or a control group. Three-dimensional motion analysis was performed on both groups to evaluate the effects of the Pilates exercise. [Results] There was no significant difference in the joint variability of the ankle, knee, and hip joints between the groups, both before training and after training. However, there was a significant increase in the hip-knee deviation phase value in the exercise group after the program was completed, and this increase was also significant when compared with that in the control group. [Conclusion] This study has demonstrated that an 8-week modified Pilates exercise program can have a positive impact on the gait of elderly participants, potentially by enhancing neuromuscular adjustment, which may have positive implications for reducing their fall risk.
著者
松本 三和夫
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.30-43,123**-122, 1992-06-30

科学者、科学者の行動、科学者のネットワーク、科学者集団、科学制度、社会システムのすくなくとも六つの活動水準を分析の単位として、どのような型の首尾一貫した科学社会学の理論が構成できるかを吟味し、理論の帰結を科学者集団の制度化論に関連づけて特定する。<BR>一九八〇年代以降、科学社会学は問題ごと、研究センターごとに研究スタイルの細分化が進むいっぽう、分野全体を基礎づける概念や理論にかならずしもじゅうぶんな見通しが得られていない。こうした状況に鑑み、本稿ではまず科学社会学の基礎概念を決め、研究前線における多様な研究動向間の橋渡しが可能なよう、科学社会学の外延を確定する。ついで、科学社会学の課題の内包を内部構造論、制度化論、相互作用論に分節して特定し、科学者集団の状態記述に関するかぎり、各課題が相互に共約可能であることを証明する。<BR>最後に、制度化論を見本例として理論の含意を例示する。とりわけ、制度化がじっさいにどのような起こり方をするかのパターンに関する規約 (制度化の規約) を理論に導入すべきことを提唱する。それを用いて理論を展開し、事実分析にとって有意味な、しかし直観だけではみえにくい逆説的な帰結 (専門職業化が制度化を伴わぬ事例 [ナチズム科学] の存在) が導けることを示したい。

2 0 0 0 OA 国語教授指南

著者
豊田八十代 著
出版者
学海指針社
巻号頁・発行日
1905