著者
三浦 元喜 最所 賢至 清弘 祥太
出版者
社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.1172-1180, 2016-04-15

タブレット端末やスマートフォンにおけるソフトウェアキーボードによる文字入力は,物理的なキーボードによる文字入力に比べて負荷が高い.そのため,画面に表示されている文字列を選択し,コピー&ペーストして再利用することが頻繁に行われる.しかし従来のタブレット/スマートフォン用OSにおける文字列範囲選択手法は選択対象文の文法や文脈を考慮して設計されていない.本研究では,日本語文字列をタブレット端末やスマートフォンで効率良く選択するための,日本語形態素を考慮した文字列範囲選択手法を提案し,その有効性を確認する.文字単位,単語単位,およびひらがな1文字の助詞を直前の単語と連結する方式(単語+助詞単位)3条件での被験者実験を行い,一元配置の分散分析を行った結果,上記3手法の作業時間の平均値に有意差が認められた.また選択可能な境界の位置について単語単位と文字単位とを動的に切り替える手法の被験者実験を行い,分散分析を行った結果,選択範囲の終端が単語の境界と一致するタスクにおいては作業時間が減少する傾向がみられた.Conventional copy-and-paste technique for touch screen devices utilizes region handles to specify text snippet. The region handles appear so as to select the initially tapped word, and the user controls the region handles. Most of the text-selection task is performed at the boundary of words, however, the minimum movement unit of the region handle is still a character. We propose a context-sensitive text-selection method for the tablet OSs using Japanese morphological analysis. For the initial consideration, we investigated a word grouping method that meant a word as a minimum movement unit. From our experiment, we confirmed that the word grouping method can significantly reduce the text-selection time, and the word grouping size significantly affects the time. Also we tested a flexible word grouping method that changes the minimum movement unit by considering the movement speed of the region handles. The result showed a tendency of reducing the text-selection time, if target regions ended with the boundary of words.
著者
金内 さよ 三浦 麻子 唐沢 穣
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.92, no.1, pp.40-45, 2021 (Released:2021-04-25)
参考文献数
16

The present study compared two forms of reciprocity, namely, a selfish versus altruistic one. In two experiments, participants played two rounds of the dictator game. In the first round, they were all assigned the “recipient” role, and were either over- or under-benefited by the game partner in the “allocator” role. In the second round, the participants were instead assigned the allocator role, with the recipient being either the same partner from the first round or a new partner. The results consistently showed that those who had under-benefited in the first round in turn over-benefited in the second round, regardless of whether the partner remained the same or was replaced. In contrast, those who had over-benefited previously returned the favor, but this was the case only toward the same partner rather than the new one. Hence, selfish behavior was generalized to strangers, whereas a (an altruistic) favor was not generalized, being returned only to the original benefactor. Implications of the asymmetry in chain reactions, as well as methodological issues, are discussed.
著者
中森 由美子 瀧井 忠人 三浦 覚
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.94, no.3, pp.120-126, 2012-06-01 (Released:2012-07-05)
参考文献数
33
被引用文献数
5 5

急傾斜地の若齢ヒノキ人工林において, 処理の違い (皆伐, 強度間伐, 通常間伐) による表土移動量 (細土, 土砂, リター) の変化を明らかにするため, 土砂受け箱法によって, 処理前後4年間にわたる表土移動量を測定し, 処理ごとの細土, 土砂, リター移動レート (g m−1 mm−1) を比較した。細土, 土砂, リター移動レートは, 皆伐処理後に著しく増加した。一方, 強度間伐区, 通常間伐区では, 処理前後で細土, 土砂移動レートの変化は認められなかった。林内の相対照度および林床植生は, 通常間伐, 強度間伐, 皆伐の順に伐採強度が高いほど増大した。強度間伐や通常間伐が表土移動量に与える影響は, 皆伐区に比べて小さいことが明らかとなった。皆伐区や強度間伐区では, 植生回復の増加による土砂移動抑制効果が, 伐倒木処理などの人為的な地表撹乱によって相殺された可能性が考えられた。以上から, 急傾斜ヒノキ人工林で森林管理を行う場合, 作業時の地表撹乱を最小限にすることと, 速やかな植生回復を促すことを調和させることが林地の土壌を保全する上で重要であると考えられた。
著者
三浦 國雄
出版者
大阪市立大学
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.183-226, 1995

2 0 0 0 OA 3.禁煙外来

著者
三浦 伸一郎 朔 啓二郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.2, pp.351-356, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
17

喫煙は,万病のもとであり,禁煙は,心・血管疾患予防・治療の第一歩である.喫煙は,喫煙者だけでなく,周囲の非喫煙者にも様々な疾患を引き起こす.現在,日本では,約3,000万人の喫煙者がいるが,その多くは「喫煙は嗜好」と捕らえている.未成年者への禁煙教育はもちろん必要であるが,すでに喫煙しているものに対する禁煙指導も重要である.2006年より「喫煙は病気」という考えにより,禁煙外来が保険適応となり,多くの病院が取り入れ始めている.ここでは,喫煙の心・血管疾患に対する影響および医療機関における環境因子の強化としての禁煙外来のあり方や重要性について述べる.
著者
長澤 市郎 佐藤 道信 小野寺 久幸 三浦 定俊 真貝 哲夫 稲葉 政満 信太 司
出版者
東京芸術大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

明治期彩色彫刻の制作技法、彩色技法を解明することを目的とし、作品の保存方法、修復技法の開発などを研究目的とした。作業は構造調査と制作技法の解明から始めた。目視及び現状記録のため、数種のカメラによる撮影を行った。彩色層の浮き上がりを記録する側光撮影も行った。内部構造解明のため、技芸天像、神武天皇像のX線透視撮影を行った。撮影にはイメージングプレートを用い撮影の迅速化、画像処理の便を図った、X線フィルム撮影も行った。結果を16bit出力とし画像ソフトを用いて処理し、構造を解明しディジタル出力で画像にした。その結果、技芸天像は江戸の制作技術を用いず、室町時代以前の木寄せ法を用い、釘、鎹も同時代の形のものを大量に使用している事、これはシカゴ万国博覧会出品を意識して強固に制作したものであろう。像の内部構造には傷みも無く、金具類に錆も見られず健全である。問題は表面彩色層の傷みの原因である。傷みの原因調査と強化処置のテストを行った。クリーニング作業に水が使えないので、数種類の混合液でテストを行った。剥落止め作業でもアクリルエマルジョンに代えて、アクリル樹脂を用い、時間差を利用して洗浄と固定を行う方法を見つけた。彩色顔料の調査に携帯形蛍光X線器機を用い、非接触で短時間に結果を知る事が出来た。顔料に含まれる微量タンパク質(膠)の含有量を算出する研究を行った。彩色下地技法の調査を行い今回の傷みとの関連を調べた。高村光雲が使った木寄せ図面から模型を造り江戸期造仏技法を検討した。日本の仏像修理の歴史を検証し、美術院修理方法を近世文化財修理へ応用が可能かを調べた。修理の資料として立体を計測する実験を3Dレーザースキャニングを用いて行い好成績を収めた。
著者
星上 幸良 小林 昭男 宇多 高明 三浦 正寛 熊田 貴之 三波 俊郎
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
海洋開発論文集 (ISSN:09127348)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.481-486, 2003 (Released:2011-06-27)
参考文献数
9
被引用文献数
1

Preventive method of beach erosion and accretion triggered by the formation of wave shadow zone associated with extension of port breakwater is investigated through the field observation, taking the Shimohara fishing port in Tateyama City in Chiba Prefecture as the example. This phenomenon is well-known in coastal engineering, but in Japan this kind of beach erosion and accretion have been repeatedly reported. In order to solve this problem, not only the research in engineering method, but also improvement of the environmental assessment system are required so as to include the prediction of topographic changes in the items of environment assessment.
著者
三浦 信明
出版者
日本プロテオーム学会
雑誌
日本プロテオーム学会誌 (ISSN:24322776)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.17-27, 2021 (Released:2021-07-28)
参考文献数
74

質量分析(MS)を用いたメタプロテオミクスは,海洋水,土壌,糞便,唾液などのサンプルに含まれる非常に複雑な微生物の分類と全ての微生物が発現する全てのタンパク質をプロファイリングするための強力な手法である.メタゲノミクスでは,サンプル中の微生物の分類と遺伝子のプロファイルを行えるが,メタプロテオミクスで実際に発現するタンパク質をプロファイルすることで機能的な知見が得られ微生物群が「何をしているのか」がわかる.ヒトの腸内細菌は1,000種39兆個と言われ,個人ごとの種のバラエティも非常に大きい.当然その解析は大規模にならざるを得ない.本総説では,腸内細菌のメタプロテオミクスを中心にその概要と,解析ソフトウェア,腸内細菌データベース,大規模解析に関する課題などについて最近の動向を概説する.
著者
岩井 草介 菊池 智子 三浦 貴士
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.110, pp.23-29, 2013-10-18

出芽酵母は、増殖が速く、増殖期にある細胞では無性生殖の1つである出芽の観察も容易なため、学校で簡単に培養することができれば実験教材としての幅広い活用が期待できる。そこで本研究では、身近にある材料を使って簡便に酵母を培養する方法を検討した。その結果、糖および園芸用液体肥料を成分とする液体培地で、市販のドライイーストの酵母が増殖することを見出した。培養液中の酵母を顕微鏡で観察したところ、出芽中の細胞が多数見られた。また上の成分のいずれかを欠いた培地ではほとんど増殖しなかったことから、酵母の増殖には炭素源と、窒素・リン・ビタミン類・無機塩類などの炭素源以外の栄養素の両方が必要であることが確かめられた。この実験は、生物の増殖に必要な栄養素や生物を構成する元素についての理解につながると考えられる。さらに、糖・ブイヨン・粉寒天を成分とする寒天培地で酵母が増殖することも見出した。
著者
高橋 成実 小平 秀一 佐藤 壮 山下 幹也 海宝 由佳 三浦 誠一 野 徹雄 瀧澤 薫 野口 直人 下村 典夫 金田 義行
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.124, no.5, pp.813-827, 2015-10-25 (Released:2015-11-04)
参考文献数
52
被引用文献数
6 8

Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology carried out seismic surveys using ocean bottom seismographs (OBSs) and a multi-channel reflection survey system from 2004 to understand the structural characteristics and the continuity of the Izu–Ogasawara Arc crust. The Izu–Ogasawara Arc developed from the oceanic crust and produced andesitic middle crusts. The velocity is similar to that identified in the continental crust, and the initial continental crust might have been produced during development of the arc crust. To investigate the process of the Izu–Ogasawara Arc crust, many 2-D velocity structures are compared using unified specifications of data acquisition and analysis, and structural commonalities and differences are evaluated. The specification was confirmed previously through simulation studies using the structure obtained. These arc crustal structures have common characteristics, which are an upper crust with a Vp of 4.5–6.0 km/s, a middle crust with a Vp of 6.0–6.5 km/s, and a lower crust with a Vp of 6.5–7.5 km/s. The lower crust is composed of two layers; the upper part has a Vp of 6.5–6.8 km/s and the lower part has a Vp of 6.8–7.5 km/s. The uppermost mantle has a Vp of less than 8.0 km/s. Development of the arc crust results in crustal thickening accompanied by rifting. Back arc opening after rifting plays the role of crustal thinning. The Shikoku Basin, which is the older backarc basin, has a relatively thin crust with a thickness of approximately 10 km, and the eastern part has a high velocity lower crust with a Vp of over 7 km/s. In addition, the upper crust of the eastern part of the Shikoku Basin has some intrusive materials and strike slip faults with few vertical displacements. Such a high-velocity lower crust is not distributed in the Parece Vela basin. The Ogasawara Ridge has different characteristics from the above arc crust, which are a crustal thickness of approximately 20 km but a complicated structure including a narrow and thin crust in the N–S direction. Here, we introduce the structural characteristics of the entire Izu–Ogasawara Arc crusts based on unified seismic surveys and data analysis methods.
著者
今井 マユミ 三浦 永理 矢部 智紗 陳 志堂 鴨下 泉
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.74-78, 1993-12-31 (Released:2009-10-29)
参考文献数
6

近年糖尿病眼合併症が増加しており,糖尿病患者の視力測定時に,視力低下や,眼鏡が合わないと不安を抱く患者に接することが多い.屈折度変化を論じた報告では,高血糖により近視化となり血糖の改善とともに遠視化の方向をとるものが多いが,近視化したという報告も認められる.そこで今回著者らは,糖尿病教育入院をしたうちから98名を対象に,主に空腹時血糖値と屈折度を測定しその関連を検討した.結果は196眼中84眼(42.9%)に±0.5D以上の屈折度の変動を認め,変動を認めた84眼中56眼(66.7%)は退院時に遠視化を最高+2.125D呈していた.この遠視化の傾向は入院時に高血糖であり,しかも血糖低下幅の大きいものに高率に認められた.血糖調整時の視力矯正には屈折度の変動を念頭におき,眼鏡処方は慎重を期すとともに,患者にも屈折度の変動がおこることを説明し,安心させることが必要であると思われた.
著者
三浦 玲一 越智 博美
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

平成24年度は、三浦と越智の共同の成果公開の機会が多くあった。本プロジェクトの目標通り、リベラリズムのイデオロギーと現代のアメリカ文学研究の深い関係を分析しようとする試みは、三浦、越智が執筆し、三浦が編者をつとめた『文学研究のマニフェスト』(研究社)として刊行された。越智は、第二次世界大戦期の南部文学と新批評がリベラリズムをどのように制度化したのか、三浦は、J・D・サリンジャーの『キャッチャー・イン・ザ・ライ』とコーマク・マッカッシーの『ザ・ロード』がどのようにリベラリズムの文学として成立しているかを論じた。また、平成23年急逝されたお茶の水女子大学の竹村和子教授を偲ぶ、アメリカ文学会東京支部におけるシンポジウム(6月於慶応大学三田キャンパス)に、三浦、越智の双方が招かれ、発表を行った。この成果は、アメリカ文学会東京支部の紀要『アメリカ文学』の6月発行の次号において、公開される予定である。越智は、竹村さんの仕事を貫くリベラリズムへの複雑な想いを、三浦は、竹村さんの後期の仕事における生政治批判がどのようなリベラリズム批判であるかを論じた。さらに、一橋大学において隔年で慣行されている人文学とジェンダーの関係についての論集が2013年3月に慣行されたが、その編者を三浦がつとめ、そこに越智も執筆した。『ジェンダーと「自由」』(彩流社)と題されたこの論集も、本プロジェクトの延長上で、リベラリズムと人文学的な想像力との関係を、批判的に考察しようとするものである。越智は、冷戦期の男性性が当時のどのようなリベラリズムの言説によって正当化されたかを、三浦は、新自由主義期の男らしさ、女らしさがどのような新しい定義を与えられているかを論じた。
著者
鈴木 伸一 嶋田 洋徳 三浦 正江 片柳 弘司 右馬埜 力也 坂野 雄二
出版者
日本行動医学会
雑誌
行動医学研究 (ISSN:13416790)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.22-29, 1997 (Released:2014-07-03)
参考文献数
16
被引用文献数
7

本研究の目的は、日常的に経験する心理的ストレス反応を測定することが可能であり、かつ簡便に用いることができる尺度を作成し、その信頼性と妥当性を検討することであった。まず、新しい心理的ストレス反応尺度 (SRS-18) が作成された。調査対象は、3,841名 (高校生1,316名、大学生1,206名、一般成人1,329名) であった。因子分析の結果、3因子が抽出された。それぞれの因子は、「抑うつ・不安」、「不機嫌・怒り」、「無気力」と命名された。各因子の項目数は、それぞれ6項目であった。尺度の信頼性は、α係数、再検査法、折半法によって検討され、いずれも高い信頼性係数が得られた。次に、SRS-18の妥当性が検討された。内容的妥当性、および、高ストレス群と低ストレス群、健常群と臨床群における弁別的妥当性について検討され、いずれもSRS-18が高い妥当性を備えていることが示された。本研究の結果から、SRS-18は、高い信頼性と妥当性を備えた尺度であることが明らかにされた。最後に、ストレスマネジメントの観点から、臨床場面や日常場面におけるSRS-18の有用性が討議された。