著者
今井 健介 三浦 和美 飯田 博之 藤崎 憲治
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.147-154, 2011-08-25 (Released:2011-09-02)
参考文献数
24

クズは日本から北米へ導入されて害草化し,アメリカ合衆国では侵略的外来植物とされている.アメリカにおけるクズの生物的防除に資する目的で,原産国である日本におけるクズの天敵相を調査し,2004年~2005年に近畿地方を中心に行った野外調査と文献調査により48種のクズ食者を確認した.そのうち20種は先行研究で作成された日本産クズ天敵リストに掲載されていない種であった.これらの中で導入可能なクズの単食性天敵と推察されたのは,食性が知られていない3種,エゾコハナコメツキParacardiophorus subaeneus yasudai Ohira,ヨスジヒシウンカReptalus quadricinctus Matsumura,およびコガタヒメアオシャクJodis orientalis Wehrliであった.また,本調査で明らかになった近畿地方のクズ天敵相(41種)と鹿児島市における先行研究の結果(62種)を比較したところ,2地域間の共通種は21種で,天敵相に大きな違いが認められた.同様に,既存の日本産天敵リストと本研究の結果を併せた129種を,先行研究で報告された中国産天敵リストの116種と比較したところ,2国間の共通種は15種でさらに大きな差が認められた.このように調査地点により天敵相が大きく異なることから,気候等の環境条件の異なる多くの地点で探索することが有効な導入天敵の発見につながる可能性が示唆された.しかし,本調査の近畿地方における調査時間と累積発見種数との関係を解析したところ,今回の天敵探索方法による発見種数は飽和に近づいており,今後も天敵の探索を継続するなら,別の地域における調査や別の調査手法の導入が必要と考えられた.
著者
三浦 加代子 橘 ゆかり 青山 佐喜子 川原﨑 淑子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.24, 2012

【<b>目的</b>】平成21・22年度日本調理科学会特別研究として実施された「行事食」の調査結果のうち、平成22年度の本大会では、年末年始の現状を親子間の伝承の観点から、また、平成23年度は年中行事の認知・経験を世代間比較し、行事と行事食の現状と世代間の伝承について報告した。さらに本年度は通過儀礼とその食事の認知・経験を世代間比較し、世代間の伝承の現状を明らかにすることを目的とした。<br>【<b>方法</b>】平成21・22年度日本調理科学会特別研究の全国統一様式の調査用紙を用いた。対象は和歌山県に10年以上在住している大学生・短大生とその親、また和歌山県福祉保健部、教育委員会ならびに関係機関の協力を得、食生活改善推進協議会会員を中心に食育関係団体会員、地域の研修会等に参加した市民とした。若年層(20歳未満・20歳代)182名:Y群、中年層(40・50歳代)240名:M群、高齢者層(60歳以上)266名:O群に分けて分析し、SPSS(Ver.18)で&chi;<sup>2</sup>検定を行った。<br>【<b>結果と考察</b>】三世代とも認知度の高い通過儀礼(90%以上)は誕生日、七五三、成人式であり、特に若年層(Y群)の認知度が低い通過儀礼(50%以下)はお七夜、百日祝いであった。経験では、三世代とも高かったのは誕生日であった。認知・経験ともに誕生日と七五三以外の通過儀礼には世代間の有意な差が認められた。通過儀礼の食事として、三世代とも高い喫食経験があるのは誕生日のケーキで、行事の認知と経験だけでなく、世代を超えて定着していることがうかがえた。一方、赤飯・小豆飯、紅白餅、お頭付き魚、精進料理等の喫食経験は、世代間の伝承がなされていないことがうかがえた。特に成人式や長寿の祝いの紅白餅・紅白饅頭、法事の精進料理は三世代とも喫食経験が低かった。
著者
諸 和樹 皆川 昌広 高野 可赴 滝沢 一泰 三浦 宏平 永橋 昌幸 坂田 純 小林 隆 小杉 伸一 若井 俊文
出版者
新潟医学会
雑誌
新潟医学会雑誌 = 新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.129, no.7, pp.401-407, 2015-07

症例は35歳男性. 検診腹部エコーで脾門部に2cm大の腫瘤を指摘された. 2年後検診で腫瘤の増大傾向を認め, 腹部造影CT検査で膵尾部に44mm大の多房性分葉状腫瘤を認めた. 血算・生化学・凝固系, 腫瘍マーカー, 各種ホルモン値は正常範囲内であった. SPIO造影MRIを施行したが, 腫瘍より尾側におけるT2強調画像信号低下を確認したのみで, 確定診断を下すことができなかった. 腹腔鏡下膵尾部切除を施行し, 術後病理診断で膵内副脾に生じた類上皮嚢胞と診断された. 診断に苦渋した1例を報告する.
著者
三浦 修
出版者
東北地理学会
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.102-105, 2012 (Released:2013-05-11)
参考文献数
16
被引用文献数
2
著者
上田 功 松井 理直 田中 真一 野田 尚史 坂本 洋子 三浦 優生 安田 麗
出版者
名古屋外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本年度の研究成果は大きく4つの領域に分けることができる。最初は音声産出の生理面である。松井は自閉症児に見られる外国語様アクセント症候群と呼ばれる障害に関して、ほぼ純粋にこの障害のみを引き起こしている言語障害者1名を対象に、その特徴と脳内機序に関するケーススタディを行った。行動レベルでは有アクセント語についてはほとんど誤りがなく、無アクセント語が有アクセント語に変異するというパターンが多くを占めること、またその時のアクセント核の位置が多くの場合に ディフォールトのアクセント位置 (後部から 2 モーラないし 3 モーラ目) に生じることが明らかとなった。続いて成人の外国語訛りとの平行性に関する研究領域で、野田は非母語日本語学習者の読解過程を調査し,どこをどのように読み誤るのか,わからない部分をどのように推測するのかを分析した。また,読解時に辞書を使用しても,適切な理解に至らないケースも分析した。このような読み誤りや辞書使用の問題点の中には,発達障害児に見られるものと共通するものもあると考えられる。田中は韓国語を母語とする日本語学習者の誤発音について、とくにリズム構造に焦点を当て分析した。韓国語話者が目標言語(日本語)における有標のリズム構造を極端に避けるのに対し、無標のリズム構造を過剰産出することを明らかにした。上記の分析結果をもとに、リズム構造の有標性と自閉症スペクトラム児のプロソディー産出との並行性について考察した。安田は日本人ドイツ語学習者の声帯振動制御に関して、音響的分析を前年度に引き続きおこなっている。次に三浦は語用論的側面に関して、小学生児童を対象にプロソディの特徴について、コーディングを行っている。最後に臨床応用面では、坂本がロボテクスの教育への導入が、学習不安の軽減に繋がる可能性を発見し、自閉症児の学習においてロボットを活用できる可能性を見いだしている。
著者
三浦 於菟
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.821-827, 2010 (Released:2010-12-24)
参考文献数
22

東洋医学の独特な理論である気の概念を,主に近世中国の医書より再検討した。気とは,万物を成立させ,生命現象をおこさせるものである。東洋医学の特色である全体観・統一観は,この気の概念によってその根拠が与えられた。生体の機能を気,肉体を形成するものを血と呼ぶ。血とは滋養分であり,気より形成されたものとされ,いわば異名同類のものである。気と血の概念により,体全体を考慮した疾病把握,各臓器相互の関連性の重視,機能と物質(肉体)は分離できないという認識を生み出させた。気は消化管と肺(後天の気),生まれ持った気(先天の気)から形成される。「こころ」は気によって出現し,気の概念によって「こころ」と身体の関連性,一体化が理論化された。気の病態は,(1)気の能力の低下(気虚と陽虚)と(2)気の循環失調(気滞・気逆)の二つに分類される。これらを合わせた病態に中気下陥がある。気とは,現実的かつ有用性がある東洋医学独自の生理病態観といえる。
著者
三浦 俊彦
出版者
日本科学哲学会
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.121-134, 2003-07-25 (Released:2009-05-29)
参考文献数
13
被引用文献数
2

The fact that our Universe is fine-tuned for life is widely believed to be evidence in favor of the world-ensemble hypotheses, only if the observational selection effect is taken into account. But in Ito's recent book this type of reasoning is criticized as illusory due to the inverse gambler's fallacy, and the observational selection effect is denied its supposed theoretical value. We show that Ito's analogical examples are irrelevant and his arguments are mathematically wrong. There are actually some philosophical insights the observational selection effect would bring, concerning not only the world-ensemble cosmology but also the nature of consciousness, self, identity, and especially the causal theory of reference.
著者
三浦 尚子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.86, no.1, pp.65-77, 2013-01-01 (Released:2017-12-02)
参考文献数
15
被引用文献数
2 1

本稿は東京都U区を事例地域に,障害者自立支援法施行後,精神障害者を対象とする作業所の新サービスへの移行状況とその利用実態に関する質的調査を行った.その上で,国家レベルの福祉施策の転換が地域レベルの障害者福祉サービス供給に及ぼした影響を,作業所という「ケア空間」の場が果たす役割に関連付けて考察した.その結果,移行先が就労継続支援B型のサービスに集中し,その一因に実際には就労支援に消極的な旧共同作業所が含まれており,「なんちゃってB」を自称していることがあると明らかになった.これらの事業者は,就労が困難な利用者のニーズに対応する一方で,経営基盤が安定する就労継続支援B型を選択して作業所の存続を図っている.自称「なんちゃってB」の出現は,障害者の自己責任を志向し,就労自立に傾倒した新制度に抵抗するための事業者の戦略であり,その結果旧共同作業所は,従前と変わらず精神障害者の居場所として機能している.
著者
村上 雅裕 三浦 友里 桂木 聡子 大野 雅子 天野 学 森山 雅弘
出版者
Japanese Society of Drug Informatics
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.140-144, 2015 (Released:2015-12-18)
参考文献数
5

Objective: For pharmacists to select a suitable auxiliary device for eye drop administration for patients who have difficulty in applying eye drops, the pharmacists need to know the characteristics and level of difficulty of using each device.Methods: Thus, we compared the characteristics of New Rakuraku Tengan, Rakuraku Tengan III, and an eye-drop self-help device and also conducted a survey involving 40 healthy volunteers on each device’s accessibility and suitability for people with motor disabilities.Results: New Rakuraku Tengan received the highest score for “usage was able to easily understand” (70.0% of the respondents answered positively) and “suitability for poor-sighted people” (65.0%).  Rakuraku Tengan III received the highest score for the “effectiveness of photos and illustrations in the manual” (77.5%), but was evaluated to be difficult to use.  The eye-drop self-help device received the highest score for “suitability for people with difficulty raising their shoulders and arms” (75.0%).Results: Thus, we observed the need for pharmacists to have thorough knowledge of the products in order to recommend suitable auxiliary devices for eye drop administration for each patient.
著者
三浦 靖弘 加藤 信介 山口 一
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.70, no.591, pp.37-43, 2005-05-30 (Released:2017-02-11)
参考文献数
20

The aim of this research is to figure out the measuring characteristics about the Large Chamber used for measuring emission rate of the volatile organic compounds (VOCs) from building materials and so on. In this paper, the influence of supply opening size, ventilation air volume and mixing fan on measuring VOCs emission rate from the chest of drawers and the TV in large chamber is analyzed using CFD. We analyze flow field, age of air and diffusion field. Also, we computed a material transfer rate. Finally, we found more suitable measurement condition for measuring VOCs emission rate in large chamber.
著者
新谷 明一 三浦 賞子 小泉 寛恭 疋田 一洋 峯 篤史
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.1-15, 2017 (Released:2017-02-21)
参考文献数
60
被引用文献数
5 6

小臼歯の全部被覆冠として保険収載されたCAD/CAM冠の使用率は,年々増加し続けている.一方で,CAD/CAM冠の脱落などに代表されるトラブル報告も多くなってきている.CAD/CAM冠は,従来の歯冠補綴装置とは異なった製作方法や材料を使用しており,支台歯形態や接着方法に独自の配慮が必要である.また,多くの脱落が初期に生じているということは,従来の全部被覆冠からは考えられない原因の存在も推測される.本稿では,CAD/CAM冠に発生したトラブルのリスク因子を明らかにし,それに対応できるよう,支台歯形態,CAD/CAM冠用レジンブロックの特徴,適切な接着手順および術後管理について考察を行う.
著者
江⽊ 盛時 ⼩倉 裕司 ⽮⽥部 智昭 安宅 ⼀晃 井上 茂亮 射場 敏明 垣花 泰之 川崎 達也 久志本 成樹 ⿊⽥ 泰弘 ⼩⾕ 穣治 志⾺ 伸朗 ⾕⼝ 巧 鶴⽥ 良介 ⼟井 研⼈ ⼟井 松幸 中⽥ 孝明 中根 正樹 藤島 清太郎 細川 直登 升⽥ 好樹 松嶋 ⿇⼦ 松⽥ 直之 ⼭川 ⼀⾺ 原 嘉孝 ⼤下 慎⼀郎 ⻘⽊ 善孝 稲⽥ ⿇⾐ 梅村 穣 河合 佑亮 近藤 豊 斎藤 浩輝 櫻⾕ 正明 對東 俊介 武⽥ 親宗 寺⼭ 毅郎 東平 ⽇出夫 橋本 英樹 林⽥ 敬 ⼀⼆三 亨 廣瀬 智也 福⽥ ⿓将 藤井 智⼦ 三浦 慎也 安⽥ 英⼈ 阿部 智⼀ 安藤 幸吉 飯⽥ 有輝 ⽯原 唯史 井⼿ 健太郎 伊藤 健太 伊藤 雄介 稲⽥ 雄 宇都宮 明美 卯野⽊ 健 遠藤 功⼆ ⼤内 玲 尾崎 将之 ⼩野 聡 桂 守弘 川⼝ 敦 川村 雄介 ⼯藤 ⼤介 久保 健児 倉橋 清泰 櫻本 秀明 下⼭ 哲 鈴⽊ 武志 関根 秀介 関野 元裕 ⾼橋 希 ⾼橋 世 ⾼橋 弘 ⽥上 隆 ⽥島 吾郎 巽 博⾂ ⾕ 昌憲 ⼟⾕ ⾶⿃ 堤 悠介 内藤 貴基 ⻑江 正晴 ⻑澤 俊郎 中村 謙介 ⻄村 哲郎 布宮 伸 則末 泰博 橋本 悟 ⻑⾕川 ⼤祐 畠⼭ 淳司 原 直⼰ 東別府 直紀 古島 夏奈 古薗 弘隆 松⽯ 雄⼆朗 松⼭ 匡 峰松 佑輔 宮下 亮⼀ 宮武 祐⼠ 森安 恵実 ⼭⽥ 亨 ⼭⽥ 博之 ⼭元 良 吉⽥ 健史 吉⽥ 悠平 吉村 旬平 四本 ⻯⼀ ⽶倉 寛 和⽥ 剛志 渡邉 栄三 ⻘⽊ 誠 浅井 英樹 安部 隆国 五⼗嵐 豊 井⼝ 直也 ⽯川 雅⺒ ⽯丸 剛 磯川 修太郎 板倉 隆太 今⻑⾕ 尚史 井村 春樹 ⼊野⽥ 崇 上原 健司 ⽣塩 典敬 梅垣 岳志 江川 裕⼦ 榎本 有希 太⽥ 浩平 ⼤地 嘉史 ⼤野 孝則 ⼤邉 寛幸 岡 和幸 岡⽥ 信⻑ 岡⽥ 遥平 岡野 弘 岡本 潤 奥⽥ 拓史 ⼩倉 崇以 ⼩野寺 悠 ⼩⼭ 雄太 ⾙沼 関志 加古 英介 柏浦 正広 加藤 弘美 ⾦⾕ 明浩 ⾦⼦ 唯 ⾦畑 圭太 狩野 謙⼀ 河野 浩幸 菊⾕ 知也 菊地 ⻫ 城⼾ 崇裕 ⽊村 翔 ⼩網 博之 ⼩橋 ⼤輔 ⿑⽊ 巌 堺 正仁 坂本 彩⾹ 佐藤 哲哉 志賀 康浩 下⼾ 学 下⼭ 伸哉 庄古 知久 菅原 陽 杉⽥ 篤紀 鈴⽊ 聡 鈴⽊ 祐⼆ 壽原 朋宏 其⽥ 健司 ⾼⽒ 修平 ⾼島 光平 ⾼橋 ⽣ ⾼橋 洋⼦ ⽵下 淳 ⽥中 裕記 丹保 亜希仁 ⾓⼭ 泰⼀朗 鉄原 健⼀ 徳永 健太郎 富岡 義裕 冨⽥ 健太朗 富永 直樹 豊﨑 光信 豊⽥ 幸樹年 内藤 宏道 永⽥ 功 ⻑⾨ 直 中村 嘉 中森 裕毅 名原 功 奈良場 啓 成⽥ 知⼤ ⻄岡 典宏 ⻄村 朋也 ⻄⼭ 慶 野村 智久 芳賀 ⼤樹 萩原 祥弘 橋本 克彦 旗智 武志 浜崎 俊明 林 拓也 林 実 速⽔ 宏樹 原⼝ 剛 平野 洋平 藤井 遼 藤⽥ 基 藤村 直幸 舩越 拓 堀⼝ 真仁 牧 盾 增永 直久 松村 洋輔 真⼸ 卓也 南 啓介 宮崎 裕也 宮本 和幸 村⽥ 哲平 柳井 真知 ⽮野 隆郎 ⼭⽥ 浩平 ⼭⽥ 直樹 ⼭本 朋納 吉廣 尚⼤ ⽥中 裕 ⻄⽥ 修
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
pp.27S0001, (Released:2020-09-28)
被引用文献数
2

日本集中治療医学会と日本救急医学会は,合同の特別委員会を組織し,2016年に発表した日本版敗血症診療ガイドライン(J-SSCG2016)の改訂を行った。本ガイドライン(J-SSCG2020)の目的は,J-SSCG2016と同様に,敗血症・敗血症性ショックの診療において,医療従事者が患者の予後改善のために適切な判断を下す支援を行うことである。改訂に際し,一般臨床家だけでなく多職種医療者にも理解しやすく,かつ質の高いガイドラインとすることによって,広い普及を目指した。J-SSCG2016ではSSCG2016にない新しい領域(ICU-acquiredweakness(ICU-AW)とPost-Intensive Care Syndrome(PICS),体温管理など)を取り上げたが,J-SSCG2020では新たに注目すべき4領域(Patient-and Family-Centered Care,Sepsis Treatment System,神経集中治療,ストレス潰瘍)を追加し,計22 領域とした。重要な117の臨床課題(クリニカルクエスチョン:CQ)をエビデンスの有無にかかわらず抽出した。これらのCQには,日本国内で特に注目されているCQも含まれる。多領域にわたる大規模ガイドラインであることから,委員24名を中心に,多職種(看護師,理学療法士,臨床工学技士,薬剤師)および患者経験者も含めたワーキンググループメンバー,両学会の公募によるシステマティックレビューメンバーによる総勢226名の参加・協力を得た。また,中立的な立場で横断的に活躍するアカデミックガイドライン推進班を2016年版に引き続き組織した。将来への橋渡しとなることを企図して,多くの若手医師をシステマティックレビューチーム・ワーキンググループに登用し,学会や施設の垣根を越えたネットワーク構築も進めた。作成工程においては,質の担保と作業過程の透明化を図るために様々な工夫を行い,パブリックコメント募集は計2回行った。推奨作成にはGRADE方式を取り入れ,修正Delphi法を用いて全委員の投票により推奨を決定した。結果,117CQに対する回答として,79個のGRADEによる推奨,5個のGPS(Good Practice Statement),18個のエキスパートコンセンサス,27個のBQ(Background Question)の解説,および敗血症の定義と診断を示した。新たな試みとして,CQごとに診療フローなど時間軸に沿った視覚的情報を取り入れた。J-SSCG2020は,多職種が関わる国内外の敗血症診療の現場において,ベッドサイドで役立つガイドラインとして広く活用されることが期待される。なお,本ガイドラインは,日本集中治療医学会と日本救急医学会の両機関誌のガイドライン増刊号として同時掲載するものである。
著者
三浦 麻子
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.123-131, 2020-09-30 (Released:2020-11-18)
参考文献数
19

This article explains the basic features of survey, which is one of the major research methods in psychology, its pros and cons, and the points to be considered when conducting it. In particular, it focuses on Web surveys, which are becoming more common nowadays. It explains how the data obtained by Web surveys from broader generals are likely to be different from those obtained by conventional and convenient method, which inviting people close to the researcher, such as university students, to participate. The author hopes that this paper will provide the readers with a basic knowledge of web research and help them to select appropriate situations for survey data collection from among the various phases of psychological research.
著者
三浦 誠司 西岡 道人 野澤 慶次郎 藤田 正信 青木 久恭 和田 浩明 捨田利 外茂夫 三重野 寛治 小平 進
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.18-23, 1998 (Released:2009-06-05)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

22歳,男性.主訴は入工膣からのガス・便の排出.1年10か月前に海外で膣造設術を含む性転換手術を受けている.造影および内視鏡検査では瘻孔は高位にあり,直腸膣中隔の膣側上皮は広汎に欠損していた.手術は経仙骨的アプローチで施行し,直視下に瘻孔を切除して層々に縫合閉鎖した.術後3年以上経過した現在,再発はない,本症例は腹部や大腿部に創痕が残るような術式を拒んだため,瘻孔を閉鎖できたが,膣を安全に使用できるような術式ではなかった.男性性転換手術者に発生する直腸膣瘻の治療は困難で,その理由として発生原因が人工膣の萎縮防止用ステントを長期間使用したための圧迫壊死であること,および造膣手術時に広範囲に剥離が行われていて周囲組織を瘻孔閉鎖手術時の修復に利用できないことなどがあげられている.欧米の報告では本症の発生率は低いが,観察期間が短いものが多いことから過小評価されている可能性が考えられる.