著者
中川 敏宏
出版者
専修大学法科大学院
雑誌
専修ロージャーナル (ISSN:18806708)
巻号頁・発行日
no.8, pp.153-166, 2013-01

2012年5月24日,韓国大法院は,日本による植民地統治下において三菱重工(旧三菱)・不二越により強制徴用を受けたとして,その被用者らが同会社を相手に損害賠償と未払賃金の支払いを請求した事件において,原審である釜山高等法院が同じ請求を棄却した日本における判決(最高裁で本件原告らが敗訴確定)を受け入れ原告らの請求を棄却したのに対して,その原判決を破棄し,釜山高等法院に事件を差し戻した。この日本企業に対する戦後補償の可能性を認めた大法院判決は,韓国のマスコミでも大きく取り上げられ,さらなる追加訴訟を提起する動きも伝えられている。その意味で,本判決は,韓国において,対日本企業のみならず対日本国の戦後賠償問題に関し象徴的な意味を有するものになるであろう。本判決については,今後わが国でも様々な観点からの検証・分析が求められるが,そのような多角的な検証・分析は訳者の能力の域を出ており,ここでは,本判決の重要性に鑑み,公表されている三菱重工に対する訴訟の大法院判決を取り上げ,判決文の翻訳を試みたい。翻訳に際して,できるかぎり原文のニュアンスを尊重したが,日本人読者への便宜から,日本における一般的呼称等に従っている箇所がある(例えば,韓国と日本を指す際,韓国語では「韓日」と表現されるところは「日韓」と訳出している)。
著者
田山 雅雄 角村 純一 中川 公彦 高橋 英治 河村 純 森友 猛
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.909-913, 1990

症例は30歳男性で, 右季肋部痛と肝機能障害にて入院.Endoscopic retrograde cholangio-pancreaticography (以下ERCP) にて膵上縁で総胆管に2cmの長さの平滑な圧迫狭窄を認め, この部分に腹部X線やcomputed tomography (以下CT) で石灰化した小腫瘤を認めた.頸部リンパ腺結核の既往があり, ツベルクリン反応が強陽性であることから胆道周囲のリンパ節結核による総胆管狭窄と診断した.開腹所見では径2cm大の腫大したリンパ節を膵上縁の総胆管周囲に2個認め, これを切除した後Hegar拡張器にて総胆管狭窄を解除し, T-tubeを留置した.術後一過性の肝機能障害を認めたが46日目に退院した.結核性リンパ節炎による総胆管狭窄はきわめてまれで, 本邦において8例, 国外でも散発的に数例の手術報告例があるにすぎない.本邦例8例では手術は自験例のようにリンパ節摘出以外に, 3例に総胆管空腸吻合術が施行されており, すべて良好な経過を得ているようである.
著者
脇坂 英弥 中川 宗孝
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.25-27, 2005

On 8 June, 2002, one fledgling Common Sandpiper was captured, banded and released on the Kizu River (34°52′N, 135°46′E) in Kyoto Prefecture, Japan. On the same date the following year, a breeding adult Common Sandpiper was captured, banded and released, using a slipknot loop trap. Common Sandpiper breed across the middle and higher latitudes of the Eurasian continent. In Japan, they breed around lakes and marshes, and on river gravels, from the Ryukyu Islands north through Hokkaido. Even though they are resident in the Kinki Region, breeding records to date had been limited to Hyogo and Wakayama Prefectures, and these reports are the first for Kyoto Prefecture. The flood plain of the Kizu River consists of gravel interspersed with small patches of reeds and willows. The breeding sites were all located between 80 to 100 meters from the river, on gravelly soil protected by dense grasses. In addition to Common Sandpiper, Long-billed Ringed Plover, Little Ringed Plover, Snowy Plover and Little Tern also nest along the Kizu River. Currently, these breeding grounds are though to be diminishing. Conservation measures, such as establishment of seasonal sanctuaries and strict regulation of off-road vehicles, are urgently required.
著者
海老原 章郎 新海 暁男 中川 紀子 増井 良治 三木 邦夫 横山 茂之 倉光 成紀
出版者
The Crystallographic Society of Japan
雑誌
日本結晶学会誌 (ISSN:03694585)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.403-410, 2006-12-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
29

The final goal of this research project is the understanding of all fundamental biological phenomena in terms of physical chemistry. As a model organism for the structural and functional studies, an extremely thermophilic bacterium, Thermus thermophilus HB8, is very promising because of the small genome size, the availability of genetic tools for functional analysis, and the thermostability of its proteins (http: //www.thermus.org/) . In this report, we summarize the recent progress of this research project toward the systems biology.
著者
中川 辰郎 下田 忠和 大野 直人 桜井 健司
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.2976-2980, 1992-12-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
17

胃癌の疑いで手術し組織学的に胃のサルコイドーシス合併と診断した症例と胃の所属リンパ節および胃壁内にサルコイド結節を伴ったpm胃癌の症例を経験したので報告する.症例1は68歳男性.主訴は食欲不振.透視で胃体中下部の大小彎に壁の硬化像を認め,胃内視鏡で同部にびらん,不正潰瘍を認めたが,生検では陰性であった.胃びまん性癌および胃悪性リンパ腫を否定できず胃全摘を施行した.組織学的には,胃全体の粘膜から固有筋層にラングハンス型巨細胞を伴う類上皮肉芽腫と所属リンパ節にもサルコイド結節を認め,胃サルコイドーシスと診断した.症例2, 52歳男性.心窩部痛の精査目的で入院.透視,胃内視鏡で胃体下部前壁にIIc病変を同定した.組織学的には印環細胞癌で深達度はpmであった.癌病巣とは別に幽門部の粘膜内に微小類上皮肉芽腫を認めた.サルコイドーシスは全身性疾患として注目されてきたが,消化管,とくに胃のサルコイドーシスについての報告は少なく,その臨床的意義について検討した.
著者
中川 聡史
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理学会大会 研究発表要旨 2008年 人文地理学会大会
巻号頁・発行日
pp.309, 2008 (Released:2008-12-25)

タイからドイツへの結婚を目的とした国際人口移動に関して,ドイツでの移動者への調査,送り出し地域であるタイ東北部における送り出し世帯への調査をもとに国際結婚移動の意義と課題を検討する。
著者
鈴木 盛明 福島 二朗 為国 孝敏 中川 三朗
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.311-317, 1999-05-01 (Released:2010-06-15)
参考文献数
21

江戸時代に確立されていった舟運制度や河川整備手法は、明治時代に入り、政府が変革した後も踏襲されて、政策面に取り入れられている。明治政府は1872 (明治5) 年にオランダ人工師を招き、江戸川拡大の工事の方針が提出され、1875 (明治8) 年には利根川全川の測量が始まる。主要交通機関としての利根川の舟運を工事主体に置き低水工事をはじめる。そこで本研究では、江戸時代から明治初期において、舟運主体の低水工事から治水主体の河川事業の移行を調査し、その事業を推進していった政策面、為政者の思想から計画思想の変遷を明らかにした。
著者
中川 祐紀子 鈴木 拓也 志村 裕介 菅 幸生 嶋田 努 崔 吉道
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.26-33, 2017-01-10 (Released:2018-01-10)
参考文献数
10
被引用文献数
2 3

The ward pharmacist received a report from ward nursing staff that an aggregation formed when lansoprazole OD tablets and ground levofloxacin tablets were suspended simultaneously in water. In this study, we elucidated the factors of aggregation focusing on additives, the main drug, and pH in suspension, and also considered ways of preventing the aggregation. To elucidate the contribution of additives in levofloxacin tablets, drugs containing similar additives to those of levofloxacin tablets were suspended with lansoprazole OD tablets in water, but no aggregation was observed. Levofloxacin hydrate intravenous drip infusion (pH 4.8) did not form an aggregation with lansoprazole OD tablets, meanwhile levofloxacin hydrate intravenous drip infusion adjusted to pH 7.3 and levofloxacin hydrate solution adjusted to pH 7.3 formed an aggregation with lansoprazole OD tablets. When lansoprazole OD tablets and ground levofloxacin tablets were suspended in a buffer solution of pH 5.0, pH 6.0, and pH 7.0, no aggregation was observed in a buffer solution of pH 5.0. When generic lansoprazole OD tablets and generic lansoprazole capsules were suspended with levofloxacin tablets in water, aggregation was also observed. On the other hand, the aggregation of lansoprazole OD tablets was not observed when lansoprazole OD tablets and levofloxacin tablets were suspended in apple juice. According to the above results, factors related to the formation of the aggregation were involved in the preparation of lansoprazole, levofloxacin hydrate, and around pH 6.0, and the suspending of lansoprazole OD tablets and levofloxacin tablets simultaneously in acidic drinks such as apple juice is means of avoiding the aggregation.
著者
中川 育磨 村上 正晃
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.160-168, 2017 (Released:2017-07-26)
参考文献数
19
被引用文献数
1 2

脳や脊髄など中枢神経系の血管は,血液脳関門という特殊な構造を形成することで,血管系から中枢神経系への病原体や化学物質,免疫細胞の侵入を防ぎ中枢神経系の恒常性を極めて高度に維持している.しかしながら,中枢神経系においても病原体や免疫細胞の侵入に伴う疾患が実際に存在し,それはすなわち血液脳関門の破綻に伴う侵入口(ゲート)が形成されていることを意味する.近年までこのゲート形成の分子機構はほとんど明らかになっていなかった.著者らは,中枢神経系の難病疾患である多発性硬化症のマウスモデルを用いて,血液脳関門におけるゲートの形成部位と形成機構,及びその分子基盤として局所においてNF-κB経路とSTAT経路の同時活性化により炎症を誘導・維持する機構である「炎症回路」を明らかにした.
著者
荒井 智大 藤尾 淳 島岡 理 望月 泉 宮田 剛 臼田 昌広 井上 宰 村上 和重 手島 仁 中村 崇宣 中川 智彦 中西 渉
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.12-18, 2018
被引用文献数
1

急性虫垂炎の発症については季節性変化を報告した論文がみられ,特に高気圧時の化膿性疾患の増加を指摘した報告もある.2012年1月1日から2014年12月31日までの3年間に,当院で手術を施行した急性虫垂炎450例について,診療録をもとに後方視的に発症時期を調べその季節性変動を検討した.対象の平均年齢は38.3歳で,男女比は1.5:1であった.手術症例は7-9月が11-12月に比べ有意に多かった(p<0.05).気候要因としては,気温が高いほど発症が多い傾向があるが,気圧には先行研究で示されたような化膿性疾患の増加との関連性は認められなかった.急性虫垂炎の病因は複合的であり更なる検証が必要だが,この季節性変動の情報が急性虫垂炎の発症機序解明に僅かながらも寄与する可能性があると考えられた.