著者
岸 磨貴子 今野 貴之 久保田 賢一
出版者
多文化関係学会
雑誌
多文化関係学 (ISSN:13495178)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.105-121, 2010

本研究の目的は、インターネット上での異文化間の協働を実践共同体の枠組みで捉え、実践共同体が組織されるプロセスを明らかにすることで、異文化間の協働を実現する学習環境デザインのための要件を提示することである。日本とシリアの児童・生徒が、協働して物語を創作する実践を研究事例とし、実践共同体を構成する3つの次元である「共同の事業」「相互の従事」「共有されたレパートリー」が組織されるプロセスを明らかにする。本事例における「共同の事業」とは、絵本の共同制作である。また、絵本を完成するために、児童・生徒が協働し、相互に助け合うことを「相互の従事」とし、その中で、絵本を創作するために必要な計画の立て方、物語の書き方、表現などを「共有されたレパートリー」と捉える。日本とシリアの児童・生徒の学習記録とフィールド調査で得たデータをグラウンデッド・セオリー・アプローチに基づき分析した。その結果、児童・生徒は、協働が不可欠な状況において、物語制作に相互に従事し、物語の作り方、コミュニケーションの方法、協働で創作する意味などのレパートリーを共有した。3つの次元の組織化のプロセスから、インターネット上での異文化間の協働を促すためには、協働が不可欠な課題の設定、学習者間の相互従事を促すための支援のデザイン、学習者間の協同的学習を促す自由度と枠組みの設置という3つが学習環境デザインのための要件として提示できた。
著者
久保 知義 安積 敬嗣
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.39, no.12, pp.495-500, 1965 (Released:2008-11-21)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

種々の鞣製革の熱変性を知る目的でコラーゲンおよび鞣剤結合コラーゲンをヘビーカーフより各種の鞣剤を用いて調製し,これらの種々のコラーゲンの熱変性を示差熱分析と熱天秤分析による熱重量変化の測定により検討した.乾熱示差熱分析により,原料コラーゲンも各種鞣剤結合コラーゲンも,ともに130°をピークの頂点とする80~200°の範囲にわたって大きな吸熱ピークを示した.しかし,この温度範囲において熱天秤による熱重量変化はほとんど認められず,また,鞣剤の量および種類によっても変らないことより,この吸熱ピークはコラーゲンの結晶部分の融解によるものと考えられる.また,湿熱示差熱分析によって,熱縮温度よりも10~17°低い温度に吸熱ピークが認められた.これはコラーゲンの非結晶部分の水の存在下での変性によるものと考えられ,湿熱変性開始温度を示差熱分析により知ることができた.
著者
齋藤 力也 寺内 文雄 久保 光徳 青木 弘行
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第54回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.A19, 2007 (Released:2007-06-09)

若い世代を中心に製品選択の意識や情報機器の使用状況は他の世代と比べて特殊に感じられる。接触や使用頻度が高く、仕事やコミュニケーションツールとして多面的に機能するパソコンや携帯電話であるが、買い替えは頻繁に行われる。そこで、製品に抱く愛着やパートナーシップを定量的に分析し、生活者の意識とモノに抱く愛着の関係性および生活観ごとに重要視されている要因を探り、モノの評価構造を解明することを目的とした。 結果として、情報機器への仲間意識や親しみなどの愛着感が見られたことから、「使い込むことによる充実感」が得られる可能性が示唆された。生活者の中には複数の携帯電話をシーンに合わせて使い分ける者や、これ以上新機能は不要で、壊れても生産中止でない場合は再び購入したいという「お気に入り」やファン心理の存在も確認された。
著者
田村 耕成 久保田 一雄 倉林 均
出版者
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.34-37, 2001-01-18 (Released:2009-10-28)
参考文献数
10

水治療の対象者は血栓性疾患の危険因子を有する場合が多い.水浴と血栓性疾患との関連性を研究する目的で,入浴負荷可能な健常成人男性10例を対象として40℃20分浴と42℃10分浴の血小板および凝固線溶系に及ぼす影響を検討した.40℃20分浴では組織プラスミノーゲン活性化因子抗原(tPA)が増加し,プラスミノーゲン活性化因子インヒビターI抗原(PAI-I)が減少する傾向が,42℃10分浴ではHt,tPA,PAI-Iが増加する傾向が見られたが有意な差ではなかった.血小板に対する影響はなかった.以上の成績から40~42℃の水温による水治療は血小板および凝固線溶系には影響を与えないと考えられた.
著者
久保 晃 丸山 仁司
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
国際医療福祉大学紀要 (ISSN:13424661)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.15-18, 0003

本研究の目的は、理学療法学科学部生の就職先と就職先選定における関心事項を明らかにすることである。対象は、2000から2001年に国際医療福祉大学保健学部理学療法学科を卒業した187名、平均年齢24±3歳(男性94名、平均年齢24±4歳、女性93名、平均年齢23±2歳)である。就職内定先は、医療施設が全体の80%と大部分を占めた。他は、大学院進学7%や老人保健施設3.7%であった。内定先の希望順位は、60%が第一志望であった。希望勤続年数は、5年程度以下が過半数を占めていた。就職先選定要因についての関心度は、職場の人間関係を最も重視していた。
著者
大久保 康人
出版者
関西医科大学医学会
雑誌
関西医科大学雑誌 (ISSN:00228400)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.532-565, 1981-12-20 (Released:2013-02-19)
参考文献数
219
被引用文献数
1

Four hundred and ninety six families with rare blood phenotypes of the ABO, I, P, Rh, Kell, Duffy, Diego and Jr were detected in Japanese Red Cross Blood Centers, and all these blood samples were re-tested and confirmed in Osaka Red Cross Blood Center. Some of them were reconfirmed by Dr. Ruth Sanger, MRC Blood Group Unit in London.These rare bloods, except Fy (a-), Di (b-) and Jr (a-), were recognized mostly by ABO groupings and antibody screenings.Another ninety seven persons with rare bloods were found among the propositi's family members. Consanguinity rate of the Rh11, Rhmod and -D- was 69.2%, and that of the p phenotype 56.5%, the total consanguinity rate being 63.3%.While most of the -D- (including cD-) propositi experi enced abortion or stillbirth, some of the p female propositi did not suffer from such episodes.Most of the i propositi had a congenital cata ract, but recently an i adult free from the disorder was found in Hokkaido. We think the co-occurrence of the i phenotype and congenital cataract to be due to linkage rather than to pleiotropism.Most Jr (a-) female propositi had anti-Jr' in their sera, but none of them had experienced abortion, stillbirth or hemolytic disease of the newborn.
著者
久保 司郎
雑誌
摂南大学 融合科学研究所論文集 = Bulletin of the Transdisciplinary Science Research Institute, Setsunan University (ISSN:24325031)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.121-128, 2016-10-31

Inverse problems deal with identification, estimation, monitoring from observations or measurements. In this paper the role and importance of inverse problems are described. The definition and classification of inverse problems are presented. Inverse analyses are ill-posed in nature. To overcome the ill-posedness the importance of information to be used in the inverse analyses and regularization is described. Examples of inverse problems treated by the present author are presented.
著者
久保田 活
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.112, no.4, pp.367-370, 2014-12

予測モデリングとは,過去の事実やデータを用いて,将来起きる結果や確率を予測するアプローチである。予測モデリングを行うためには,意味のある関係性を特定するため,大量のデータの収集・分析が必要となる。また,予測モデリングを用いることにより,大量の複雑なデータを素早く分析することが可能となり,意思決定が迅速になる利点がある。さらに,人間の認知によるバイアスを減らすという利点もある。すでに海外の保険会社において,予測モデリングを用いて,人々の寿命の予測が行われている。現在,日本の生命保険会社における医学的な査定では,申込者の疾病の有無・既往歴や,血圧・Body Mass Index (BMI)等の身体所見,血液・尿検査等,多くのデータを用いて,危険選択が行われることが多い。したがって,予測モデリングの特性を考慮すると,日本の生命保険の査定においても,予測モデリングの応用は可能であると考える。ただし,予測モデリングを用いて,より良い引受査定を行うためには,質が高く,かつ関連性のある大量のデータが不可欠となる。
著者
清水 如代 門根 秀樹 久保田 茂希 安部 哲哉 羽田 康司 山崎 正志
出版者
南江堂
雑誌
別冊整形外科 (ISSN:02871645)
巻号頁・発行日
vol.1, no.75, pp.249-252, 2019-04-25

は じ め に 脊髄損傷に伴う完全下肢麻痺患者における歩行再建のために,歩行支援ロボットが臨床応用されている.トレッドミル据えつけ型ロボットのLokomat(Hocoma社)や,外骨格型装着ロボットであるReWalk(ReWalk Robotics社)などが知られている.これらはあらかじめ決められたプログラムに基づく歩行で筋活動電位の取得できない完全麻痺患者でも使用できる反面,受動的な歩行となり麻痺患者の運動意図を反映しにくいものとなる. ロボットスーツHybrid Assistive Limb(HAL,Cyberdyne社)1)は,装着者の神経筋活動を感知することのできる生体電位センサをもつ外骨格型装着ロボットである.重度麻痺症例で筋活動が微弱であっても,生体電位センサにより感知できる点が,他のロボットにない最大の特徴である.われわれは,随意的筋活動が得られない症例であっても「四肢を動かしたい」という運動意図により随意的に麻痺肢を動かすために,本来の主動筋ではない残存筋にセンサを貼り,トリガーとして選択する方法を開発した.この方法をheterotopic Triggered(異所性のトリガーを用いた)HAL(T-HAL法)2~4)と名づけ,完全麻痺者を対象に麻痺肢の随意運動訓練を行っている.本稿では,T-HAL法について概説をする.
著者
末廣 輝男 大久保 晃男 佐藤 憲夫 三浦 浩二 古賀 秀昭 太田 照明 大久 正敏 高橋 弘之
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.121-123, 1977

気柱の開口端で音叉を鳴らしながら気柱の長さを変化させ,音の強弱を耳で聴取して共鳴点を探る実験は従来から高校あるいは大学教養課程の物理学実験のテーマとして取上げられてきた.この実験は直接的である点で秀れているが,反面,音叉の振動が早く減衰すること,音圧最大の点を耳で判断するためにあいまいさが残ること,誤差を見積るのが難かしい等の問題がある.このため充分に定量的な実験とは言いかねる欠点があった.そこで音叉のかわりに低周波発振器と低周波増幅器に接続されたスピーカーを音源に用い,更に共鳴点ではスピーカーコーンの振幅が大きくなることを利用してスピーカーボイスコイルからコーンの振幅に比例した電圧を取出し,これをメータで読むことにより共鳴点を見出すことにした.これにより実験の精度および再現性が向上し,気柱の直径を変えた時の音速の変化等も検知することができた.
著者
遠藤 佳章 木村 和樹 三浦 寛貴 久保 晃
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0264, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】腰部多裂筋は5つの筋束から構成され,それぞれの筋束が別々の神経支配を受けることから,腰椎の微細なコントロールを可能にし,姿勢保持に関わるという報告がある。しかしながら,腰部多裂筋を研究した報告は第4~5腰椎棘突起周囲の多裂筋の筋活動を見たものが多く,その他の腰椎レベルの腰部多裂筋の筋活動を比較・検討したものは少ない。また,体幹深層筋である腰部多裂筋は脊柱起立筋と共に胸腰筋膜で1つのコンパートメントを形成している。これは腰部多裂筋と脊柱起立筋が共同して働いていることを示唆している。このことから,腰部多裂筋と脊柱起立筋の関係性をはかる必要があるといえる。よって,本研究では異なる姿勢における,第2・第5腰椎レベルの腰部多裂筋(以下,LM(L2),LM(L5)),脊柱起立筋(以下,ES)の筋厚について超音波画像診断装置を用いて検証することを目的とした。【方法】対象は,若年健常男性25名とした。年齢:22.1±1.6歳,身長:170.4±5.8cm,体重:60.4±8.8kg,BMI:20.8±2.6kg/m2(平均±標準偏差)であった。各筋厚の測定は超音波診断装置(sonosite180plus:sonosite社製)を用いた。測定部位は,右側のLM(L2),LM(L5),ESとした。測定肢位は,腹臥位・座位・立位で腰椎前後弯中間位にて測定した。測定は安静呼気時を2回測定した。得られた画像を画像解析ソフトImage Jを用いて各筋厚を算出した。2回測定した各筋厚の平均を代表値とした。各筋厚の1回目と2回目で算出された値で級内相関係数(以下,ICC)を求め,再現性について検討した。各筋厚の各肢位での変化をみるために,反復測定一元配置分散分析を行い,その後Bonfferoniの多重比較検定を行った。統計解析にはSPSS statistic 19.0を使用し,有意水準は5%とした。【結果】ICCは,すべての項目において,0.95以上の数値を示した。LM(L2)の筋厚は腹臥位で27.3±4.6mm,座位で30.4±4.0mm,立位で33.3±4.6mmとなった。同様の順でLM(L5)では30.8±4.0mm,30.1±4.5mm,34.2±4.3mm,ESでは35.8±6.1mm,40.4±6.9mm,42.1±6.6mmとなった。LM(L2),LM(L5),ESの各筋厚は,各姿勢間で主効果が認められた。LM(L2)は腹臥位,座位,立位の順で有意に筋厚が増大した。LM(L5)は,腹臥位より立位で,座位より立位で有意に筋厚が増大した。腹臥位と座位の間では有意差が認められなかった。ESは,腹臥位より座位で,腹臥位より立位で有意に筋厚が増大した。座位と立位の間では有意差が認められなかった。【結論】LM(L2)とLM(L5)とESは姿勢保持の際に作用が異なることが示唆された。LM(L2)は腹臥位,座位,立位の順で筋厚が増大することが示唆された。LM(L5)は腹臥位と座位に比べ,立位で筋厚が増大するが,腹臥位と座位の間では筋厚の変化がないことが示唆された。ESは腹臥位と比べ,座位と立位で筋厚を増大するが,座位と立位では変化がないことが示唆された。
著者
久保田 信
出版者
紀伊民報社
雑誌
紀伊民報
巻号頁・発行日
2011-11-23

この記事は紀伊民報社の許諾を得て転載しています
著者
久保 隆 深澤(赤田) 朝子 藤村 泰樹 山道 和子 神田 由起
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.379-384, 2014 (Released:2014-12-26)
参考文献数
15
被引用文献数
1

大果で高品質なオウトウ品種を育成するため,種子親を‘紅秀峰’,‘サミット’を花粉親として交雑を行い,新品種‘ジュノハート’を育成した.本品種は1998年に交配後,2004年に35個体の実生のなかから選抜された.成熟期は育成地で満開57日以後の7月上旬で‘佐藤錦’の約5日後である.果実は大きく,果重は約11 gである.果形は短心臓形で,果皮色は濃赤である.果肉は硬く,糖度は19.1°で甘味が多く,酸含量は0.53%で酸味は少ない.核は大きいが,離れやすく食べやすい.S遺伝子型はS1S6で,‘佐藤錦’,‘紅秀峰’,‘南陽’および‘サミット’と交雑和合性で,紅さやか’および‘北光’と交雑不和合性である.‘佐藤錦’の受粉樹としての利用が可能である.‘ジュノハート’は見栄えが良く食味も優れることから,贈答用あるいは観光果樹園での普及が期待される.
著者
宗像 昭子 鈴木 利昭 新井 浩之 横井 真由美 深澤 篤 逢坂 公一 松崎 竜児 三浦 明 渡辺 香 森薗 靖子 権 京子 金澤 久美子 宮内 郁枝 鈴木 恵子 久保 和雄 尾澤 勝良 前田 弘美 小篠 榮
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 = Journal of Japanese Society for Dialysis Therapy (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.34, no.13, pp.1525-1533, 2001-12-01
参考文献数
14
被引用文献数
1

今回我々は, 当院で維持血液透析を施行している安定した慢性腎不全患者59名を対象患者として, ベッドサイドにて簡便に使用できるアイスタット・コーポレーション社製ポータブル血液分析器i-STATを用いて, 透析前後で全血イオン化Ca (i-Ca) 濃度を測定し, 血清T-Ca濃度との関係について検討し, 以下の結果を得た.<br>1) 透析前後における血清T-Ca濃度, 全血i-Ca濃度は, それぞれ9.43±0.90→10.54±0.70mg/d<i>l</i> (p<0.05), 1.26±0.10→1.30±0.07mmol/<i>l</i> (p<0.0001) と, いづれも有意な増加を示した. 2) Caイオン化率は, 53.43±0.03→49.55±0.04% (p<0.001) へと透析後有意に低下した. この原因として, 血液pHの変化の影響が考えられ, 血液pHとCaイオン化率との間には明らかな負の関係が認められた. 3) 透析前後における, 血清T-Ca濃度と全血i-Ca濃度の関係について検討したところ, 透析前ではy=7.507x+0.015 (r=0.839; p<0.001) と強い正の相関が認められたが, 透析後においては, 全く相関が認められなかった. この点について, pHならびにAlbを含めた重回帰分析法を用いて検討したところ, T-Ca=3.369×i-Ca+5.117×pH-32.070 (r=0.436, p=0.0052) と良好な結果が得られた. 4) 透析前後の全血i-Ca濃度の測定結果から, 容易に血清T-Ca濃度を換算できるノモグラムならびに換算表を作成した.<br>以上の結果より, ポータブル血液分析器i-STATを用いた, ベッドサイド ("point-of-care") での全血i-Ca濃度の測定とノモグラムの利用は, 透析室においてみられるCa代謝異常に対して, 非常に有用であると考えられる.
著者
久保下 亮 赤坂 美奈
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101358, 2013

【はじめに】障害者スポーツにおいて,スポーツ医学的技術論に関する情報より選手の健康管理の側面からの議論が多くなされている。近年,障害者スポーツではパラリンピックを代表として競技スポーツとしての位置付けが大きくなってきている。すなわち競技力を高める指導や練習方法が必要となっている。今回は,数多くある障害者スポーツの中からスプリント系の車椅子走行速度に着目した。以前より,車椅子走行速度に大きく関わる筋として上腕三頭筋や三角筋が挙げられている。また,バスケ用車椅子でのスタートダッシュ時,リアキャスターが床に接触することでタイムロスを起こしているとの発表もある。この大きな原因の一つに,スタート時の体幹コントロールの不良が挙げられている。そこで体幹のコントロールだけでなく,体幹筋力も車椅子走行速度に影響を与えているのではないかと思い検討した。【方法】対象は,研究内容を説明し同意を得た健常男子大学生15名,平均年齢21.4±0.3歳,平均身長174.6±5.3cm,平均体重69.0±8.4kgである。まず,対象者にバスケ用車椅子(松永製作所 B-MAX TK)に慣れてもらうため室内にて30分程度の自由乗車時間を設定した。その後,休息を挟み10m,20mの直線直進の全力走行とスタート地点から10m離れたところに目印としてコーンを置き,この目印をターンしてスタート地点まで戻ってくる10mターン走行をしてもらった。次に,1週間の間を取り体幹の屈曲・伸展筋ピークトルクの測定とその他身体測定(身長,体重,上肢長,握力)を行った。体幹の屈曲・伸展筋ピークトルクの測定にはBIODEX SYSTEM3を用いて行った。角速度は30°/secで反復回数を5回とした。 統計学的分析は10m走,20m走,10mターン走,体幹の屈曲・伸展筋力ピークトルクのそれぞれの関連性についてSpearman順位相関係数を用いて比較検討した。有意水準は5%未満とした。【説明と同意】 被験者にはヘルシンキ宣言に則り,研究の目的や手順を口頭と紙面にて説明し署名による同意を得た。なお,本研究は国際医療福祉大学倫理審査委員会の承認を得て実施した。【結果】身体測定の平均は,伸長174.6±5.3cm,体重69.0±8.4kg,右上肢長58.1±2.4cm,左上肢長58.0±2.1cm,右握力47.5±7.1kg,左握力44.7±6.3kgであった。走行速度の平均は,10m走が4.7±0.4秒,20m走が7.8±0.8秒,10mターン走10.8±1.0秒であった。体幹の屈曲・伸展筋力ピークトルクは体幹屈曲309.0±71.1Nm/kg,体幹伸展419.5±103.0Nm/kgであった。体幹筋力と車椅子走行速度との相関関係は,体幹屈曲力に対しての10m走(ρ=0.65),20m走(ρ=0.45),10mターン走(ρ=0.33)は共に正の相関を認めた。体幹伸展力に対しての10m走(ρ=0.62),20m走(ρ=0.58),10mターン走(ρ=0.43)は共に正の相関を認めた。【考察】車椅子走行時のスタートダッシュには体幹筋力が必要不可欠と考えていた。理由として,車椅子駆動開始時には体幹を大きく屈曲させ,この時に生み出される前方への回転モーメントを車椅子の推進力の一つに利用している。よって,より大きな推進力を得るためには体幹の強い屈曲力が必要であると思われる。今回の研究結果からは,走行速度と体幹筋力との相関関係が認められた。このことは,車椅子走行時のスタートダッシュには体幹筋力が少なからず必要であることを意味している。先行研究では,走行速度を上げるためには実質駆動時間を長くすることと,駆動角速度を速くする必要があると示している。また,車椅子バスケや車椅子テニス,車椅子の短距離走のように初動の影響を大きく受けてしまうようなスプリント系の障害者スポーツでは,スタートダッシュ時に体幹筋力だけでなく体幹のコントロール性も要求される。更に10mターンにおいては,ターン時に急激なブレーキと旋回能力,そして瞬発的な加速力といった複合的なチェアワークが必要である。よって,今後,障害者スポーツでのパフォーマンス向上のためには,筋力や体幹のコントロール性,チェアワークといった複合的な要素についても調べて行く必要がある。【理学療法学研究としての意義】今後,車椅子を使用した障害者スポーツにおいて車椅子の操作性を高めるためのトレーニングに一考として活用できるものと考える。
著者
久保田 秀和 角 康之 西田 豊明
雑誌
情報処理学会研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.90(2004-HI-110), pp.1-8, 2004-09-10

本論文では,知球と呼ばれる持続的に発展可能な個人の外化記憶構築システムを提案する.初めに,外化記憶をコンテンツの一種として捉えることにより,その持続的な発展を時空間的なコンテンツの蓄積としてモデル化する.知球とはこの時空間記憶モデルに基づいた外化記憶を仮想的な球面上に構築するシステムである.実験として約1100件のコンテンツ断片から構成される外化記憶を知球上に構築した結果,知球の奥行きや左右,カードの大きさなど空間的手がかりを生かした外化記憶の配置を行うことによって,自分らしいポリシーに基づく外化記憶が構築可能であるという示唆を得た.