著者
工藤 せい子 五十嵐 靖彦
出版者
日本医学哲学・倫理学会
雑誌
医学哲学 医学倫理 (ISSN:02896427)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.75-84, 2006

The purpose of this study was to attempt to determine general ideas for addressing ethical issues in nursing practice. The author interviewed nurses who had experienced cases involving care and related ethical issues. The interview data were analyzed using qualitative research methods. The subjects of analysis were the following three cases: 1. A client who was transferred to the hospital for reoperation but died shortly before operation; 2. A client who was in and out of the hospital for more than 10years because of incurable illness; and 3. A client whose last wish was fulfilled in the form of a Christmas party. Analysis showed that ideas for addressing ethical issues converged into two categories. The first included ethical issues, including "role as the client's advocate," "coordination between the client's wishes and the doctor's policy," and "paternalism and maternalism". The other category included issues related to caring, including "learning from the client," "formation of a strong bond resulting from mutual relationship," "involvement as a team," and "departure from medical rules". There were, in addition, three keys to addressing ethical issues that did not fit into either category: "hope for peaceful settlement of affairs," "hope for successful communication," and "wish to be treated indulgently". These three keys are useful both in care for patients and addressing ethical issues.
著者
南 光太郎 堅田 元喜 北 和之 反町 篤行 保坂 健太郎 五十嵐 康人
出版者
日本エアロゾル学会
雑誌
エアロゾル研究 (ISSN:09122834)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.208-218, 2020

<p> Following the Fukushima Daiichi nuclear power plant accident, it has been recognized that bioaerosols with radioactive cesium may have released from radiologically contaminated forest into the atmosphere. In order to evaluate the above process, the emission rate of bioaerosol was inversely estimated using a numerical model named SOLVEG that includes the processes of emission, deposition, and turbulent transport of aerosols. For the inverse estimation, micrometeorological variables and bioaerosol number concentration and flux were observed at a Japanese temperate broad-leaved forest in summer. By tuning modelled emission rate of bioaerosols from forest floor, its best estimate was obtained at the agreement between calculated and observed concentrations below the canopy. General trends of calculated momentum, heat, and bioaerosol fluxes above the canopy were also reproduced in the simulation. In the numerical experiment without bioaerosol input at the top of atmosphere above the canopy, a certain amount (59%) of bioaerosol flux at the floor released above the canopy top, while the rest of the flux deposited onto both canopy and soil. This potential flux above the canopy top was 2.0±1.8×10<sup>-2</sup> μg m<sup>-2</sup> s<sup>-1</sup>, which may correspond to the re-emission rate proposed previously by the chemical transport model.</p>
著者
五十嵐 庸 中村 果歩 坂本 廣司 長岡 功
出版者
ファンクショナルフード学会
雑誌
Functional Food Research (ISSN:24323357)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.29-33, 2019 (Released:2020-01-01)
参考文献数
15

ヒト軟骨培養細胞株における,オートファジーマーカー分子の発現に対するグルコサミン(glucosamine,GlcN)の効果を検討した.その結果,LC3-IIやbeclin-1などの発現が,GlcNにより有意に増加することが明らかとなった.また,同時にサーチュイン(sirtuin,SIRT)1遺伝子の発現も,GlcNにより有意に増加した.さらに,GlcN添加によるLC3-IIの発現増加が,SIRT1阻害剤であるEX527で阻害された.さらに,mammalian target of rapamycin(mTOR)の関与を検討するために,mTORの標的分子であるS6 キナーゼ(S6 kinase,S6K)のリン酸化を調べたところ,S6Kのリン酸化に対してGlcNは影響しないことが明らかとなった.そこで,mTORを介さずにオートファジーを負に制御するp53のアセチル化状態を検討したところ,p53のアセチル化がGlcNによって有意に減少することが明らかとなった.なお,SIRT1は脱アセチル化酵素としてp53を脱アセチル化し不活性化することが知られている.以上の結果より,GlcNは軟骨細胞においてSIRTタンパク質の発現を亢進し,その標的分子であるp53を脱アセチル化し不活性化することによって,オートファジーを誘導するというメカニズムが考えられた.
著者
上村 博輝 高村 昌昭 五十嵐 正人 青栁 豊 菊田 玲 渡辺 和仁 中山 均 田村 務 寺井 崇二 薛 徹 荒生 祥尚 廣川 光 澤栗 裕美 渡邊 文子 小師 優子 坂牧 僚 土屋 淳紀
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.245-254, 2020
被引用文献数
1

<p>平成21年に設立された新潟大学医歯学総合病院肝疾患相談センターは令和元年に10年目を迎え,236万人の新潟県民や医療従事者に対するウイルス性肝炎の情報の提供,啓発活動,助成制度のサポート等を新潟県健康対策課,厚生労働省健康局がん・疾病対策課肝炎対策室,国立国際医療センター肝炎情報センターとともに行ってきた.新潟県内の各種肝炎ウイルスの発生動向の報告,助成対象人数の把握や非受検者に対する啓発活動を各年度で行ってきた.C型肝炎については他県と同じく新規治療者数については減少段階にある.しかし,肝炎ウイルスは世界最大級の感染症であることにかわりなく,A型肝炎のエンデミック,B型肝炎ウイルスに対する耐性ウイルス発生や核酸アナログ製剤の長期利用による諸問題,E型肝炎の報告例の増加などについては今後も監視が必要である.また肝炎検査未受検者も多く,啓発活動を行う肝疾患相談センターの存在意義は今後も重要である.</p>
著者
伊藤 綾子 五十嵐 清治 倉重 多栄 佐藤 夕紀 藤本 正幸 西平 守昭 松下 標 青山 有子 平 博彦 丹下 貴司
出版者
The Japanese Society of Pediatric Dentistry
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.591-597, 2006

含歯性嚢胞は歯原性嚢胞では歯根嚢胞に次いで多く見られる。一般的には未萌出または埋伏永久歯の歯冠に由来して発生するが,原因埋伏歯は正常歯胚であることがほとんどで,過剰歯に由来する含歯性嚢胞は比較的少ない。今回,我々は全身的問題から抜去を行わず経過観察していた上顎正中部の逆性埋伏過剰歯が嚢胞化し,定期検診の中断期間に急速に増大し,顔貌の腫脹まで来した含歯性嚢胞の症例を経験したので報告する。<BR>症例は13歳の男児で,既往歴として生後間もなくWilson-Mikity症候群の診断にて入院加療を受け,その後にてんかん,脳性麻痺,および精神発達遅滞と診断された。患児の埋伏過剰歯は当科で10歳時に発見されたが,全身状態が不良のため抜去を行わず経過観察を行っていた。その後,定期検診受診が途絶え1年3か月後に,過去数か月間で徐々に上顎右側前歯唇側歯槽部が腫脹してきたことを主訴に再来初診となった。口腔内診査では上顎左側前歯部歯槽部に青紫色の腫脹を認め羊皮紙様感を触知した。エックス線診査では上顎前歯部に1本の逆性埋伏過剰歯を含む単房性の境界明瞭な透過像を認めた。局所麻酔下に嚢胞と埋伏過剰歯の摘出術を施行したが,術後17日目に術部感染を来したため抗菌薬投与と局部の洗浄を継続し消炎・治癒に至った。術後2か月の経過は良好である。<BR>本例のように何らかの理由により埋伏過剰歯抜去が困難な場合は,その変化を早期に発見するために定期的,かつ確実な画像診断を含む精査が必須であると考えられた。
著者
三浦 孝次 池田 政男 大橋 冨次 岡田 いく子 五十嵐 良子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
藥學雜誌 (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.341-345, 1964
被引用文献数
5

Antitumor activity of a large number of nitrofuran derivatives of quinoline was tested with mice bearing Ehrlich ascites tumor EY-33. Pure strain healthy <i>ddN</i> mice, weighing 18-22g., were intraperitoneally inoculated with this Ehrlich ascites tumor. After 24 hours, 0.2ml. of 5% glucose solution of the test compound was injected intraperitoneally, once a day for 7 days, to test antitumor activity. Normal mice inoculated with this ascites tumor generally died from accumulation of the ascites after about 10-19 days. Compounds were considered effective when the mice survived 50 days after the inoculation of the ascites. The compounds found to be effective by this test were sodium 2-[2-(5-nitro-2-furyl)vinyl]-4-quinolinecarboxylate (I), 2-[2-(5-nitro-2-furyl)-vinyl]-4-aminoquinoline lactate (II), and 4-[2-(5-nitro-2-furyl)vinyl]-2-aminoquinoline lactate (III). For the sake of comparison, panfuran hydrochloride and mitomycin-C were tested at the same time.<br>The data obtained with these compounds were as follows (given in the order of the name of compound, LD<sub>50</sub> in mg./kg., ED<sub>60</sub> in mg.&times;kg., and C. I.): I, 240, 20, 12; II, 23.8, 1, 23.8; III, 26.3, 5, 5.2; panfuran hydrochloride, 72.5, 0, 0; mitomycin-C, 5.2, 0.5, 12.4.<br>In order to clarify the action mechanism of these compounds, their action in suppressing the dehydronase of Ehrlich ascites tumor, and syntheses of nucleic acid and protein by <i>coli bacilli</i> was examined. It was presumed from its results that the antitumor action of I was due mainly to the suppression of dehydrogenase action, and that of II and III to the suppression of dehydrogenase action and DNA synthesis.
著者
五十嵐 伸吾
出版者
法政大学地域研究センター
雑誌
地域イノベーション = 地域イノベーション (ISSN:18833934)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.89-104, 2013-03

研究の概要(和文):我が国、特に地方における産業活性化あるいは雇用創出の担い手として、新規開業企業群(スタートアップ企業)への期待は大きい。しかし、これまで地域において起業促進政策が顕著な成功を見た例は少ない。岩手県は県内総生産、失業率などの指標で他県と比較すると決して恵まれているとは言えない。岩手県下のある企業しかも一つの工場から40余りのスタートアップ企業が誕生 し、しかもほぼすべてが生存している。このような事例は他に類を見ない。本稿では、このアルプス電気盛岡工場の事例を分析することによって、どのような経緯によって起業を促進する組織文化が形成されたのかを明らかとする。それが地域における起業促進政策に対する一助と なることを期待する。
著者
五十嵐 貴大 荒木田 美香子 佐藤 みつ子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.344-353, 2021 (Released:2021-10-29)
参考文献数
14

目的:看護大学生の臨地実習指導者に対する援助要請に関する尺度(以下,援助要請尺度)を開発し,その信頼性と妥当性を検証する.方法:11都道府県の看護系大学の3,4年次生2,120名を対象とし,質問紙調査を2020年2月に実施した.質問項目は援助要請尺度案(40質問項目),属性,援助要請スタイル尺度であった.また,2大学の375名に再テストを実施した.結果:808名(有効回答率38.1%)を分析対象とした.項目分析と因子分析により,2因子「非要請コストの自覚」と「被援助利益の自覚」8質問項目を抽出し,モデルの適合度を確認した.尺度全体と援助要請スタイル尺度との相関は回避型(r = –.257),自立型(r = .311)であった.クロンバックαはα = .836であった.また,再テストでは116名(有効回答率30.9%)を分析した.級内相関はr = .860であった.結論:2因子の内容に基づき,尺度名を「看護大学生の臨地実習指導者に対する援助要請の意思決定尺度」に修正した.
著者
田路 則子 鹿住 倫世 浅川 希洋志 林 永周 福嶋 路 牧野 恵美 山田 裕美 五十嵐 伸吾
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

日本人の起業意思の低さは国際調査に表れており、成人対象のGEM調査ではドイツに次ぐ低さ、大学生対象のGEUSSSでは最下位である。現状では、起業意思を高める教育に政策関心が向けられ始めたばかりであり、実際の起業にどうつながるかを想定する段階にはない。文科省のEDGE事業と4国立大学の認定VC事業とはリンクしていないが、東京大学のAI関連のスピンオフに見られるように実態は先行している。そこで、起業家教育とアカデミック・スピンオフをリンクするものとして研究対象にする。EDGE採択校における起業家教育を試行段階と捉え、スウェーデンの教育と輩出されるスピンオフの先進事例とを対比しながら研究を進めたい。
著者
松岡 朱理 立石 清一郎 五十嵐 侑 井手 宏 宮本 俊明 原 達彦 小橋 正樹 井上 愛 川島 恵美 岡田 岳大 森 晃爾
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.263-271, 2015-12-01 (Released:2015-12-13)
参考文献数
5
被引用文献数
1 2

自然災害や工場事故などの危機事象が発生した企業においては,労働者はさまざまな対応を余儀なくされ,直接的に傷病を負う労働者だけでなく,緊急対応や復旧作業に従事する労働者も多様な健康障害リスクに曝される.そのような健康障害リスクに対して,産業保健専門職の予防的介入に役立つ危機対応マニュアルの開発を行った.危機対応マニュアルの開発は,先行研究において8つの危機事象を分析して作成した危機事象における産業保健ニーズリストを用い,危機事象後の時間軸(フェーズ)ごとに発生しうるニーズについて,具体的な解説を施すことを基本とした上で,各ニーズの発生の可能性を表現するため,8事象での発生頻度で記述方法を変えるなどの工夫を施した.作成過程においては,危機対応マニュアルβ版を実際の危機事象で利用に供するとともに,危機管理分野の専門家の意見聴取を行って妥当性の検討を行い,危機対応マニュアルβ版に一部改善を施した上で完成版とした.完成した危機対応マニュアルには,全フェーズ合計で99のニーズに対して解説が加えられており,網羅性は高く,多くの危機事象において利用可能と考えられる.新たな危機事象において,異なるニーズが発生する可能性があるため,汎用性を高めるために今後も継続的に情報を収集して,改善を施していく必要があると考えられる.また,危機事象が発生した際に危機対応マニュアルを入手できるように,ウェブ上でダウンロード可能とするとともに,危機対応マニュアルの存在を広く周知していくことが今後の課題である.
著者
田中 潔 五十嵐 透 三橋 啓了
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1985, no.11, pp.2120-2125, 1985-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1

2,2,2-トリクロロ-5-トリフルオロメチル-2,2,2,3-テトラヒドロ-1,3,4,2-オキサジアザホスホールと種々の求核試薬との反応から,2-位に対応する置換基をもつ新規テトラヒドロオキサジアザホスホール誘導体を合成した。たとえば,TMS-p-クレゾールなどの酸素求核試薬との反応では2,2,2-三置換テトラヒドロオキサジアザホスホール誘導体が得られるのに対し,N-メチルアニリンとでは塩素原子を一つ残した2,2-二置換2-クロロテトラヒドロオキサジアザホスホールが,またp-アニシジンとではテトラヒドロオキサジアザホスホール環をもつホスファゼンが得られた。また,トリクロロテトラヒドロオキサジアザホスホールをNt-フェニルトリフルオロアセトヒドラジドと反応させ,二つのテトラヒドロオキサジアザホスホール環で構成された,リンをスピロ原子にもつ新規スピロ環化合物を合成した。以上得られたテトラヒドロオキサジアザホスホール誘導体の構造についてリンの化学シフト値を基に考察した。また他のスペクトルの結果についても考察した。

1 0 0 0 OA 1.分類と疫学

著者
五十嵐 久佳
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.90, no.4, pp.567-573, 2001-04-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
6

1988年に発表された国際頭痛学会による分類は各種頭痛の診断基準を明記しており,疫学調査,薬剤の臨床試験などに有用である.本邦における片頭痛の有病率は8.4%で,女性が男性の3.6倍であった.片頭痛は日常生活に支障をきたすことが多いにも関わらず受診率は低い.緊張型頭痛の有病率は22.3%で,女性が男性の1.5倍であった.いずれの頭痛も就業年齢に多く,患者の社会生活に影響を及ぼすと考えられる.