著者
佐藤 政男 鈴木 真也
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.127, no.4, pp.703-708, 2007-04-01 (Released:2007-04-01)
参考文献数
16
被引用文献数
6 6

Much attention has been paid to lifestyle-related diseases including type 2 diabetes mellitus, cardiovascular disease, hypertension, and hyperlipidemia because the incidence rates of these diseases are increasing in developed countries. Elucidation of factors contributing to the development of obesity and insulin resistance is needed. Metallothionein (MT), a ubiquitous metal-binding protein, is induced not only by heavy metals but also by various kinds of stresses. Endoplasmic reticulum (ER) stress is caused by accumulation of misfolded proteins in ER. Recently, increased ER stress by obesity and impairment of insulin action by ER stress have been reported. Exposure to ER stress increased induction of MT synthesis, and an enhanced response to ER stress evaluated as expression of Bip/GRP78mRNA was observed in the liver of MT-null mice, suggesting that MT attenuates expression of ER stress. MT may prevent ER stress and thereby modulate the development of obesity and insulin resistance. A possible role of metallothionein in response reaction for ER stress is discussed.
著者
吉田 詩織 佐藤 冨美子 田上 恵太 霜山 真 高橋 信
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.99-108, 2021 (Released:2021-03-24)
参考文献数
26
被引用文献数
1

研究目的は,遠隔看護によるがん疼痛モニタリングシステムのパイロットユーザビリティ評価である.方法は,外来進行がん患者と医療者各10名にシステム使用後にWeb Usability Scale(WUS)と自由記述を用い評価した.WUSの7項目中「構成のわかりやすさ」および「内容の信頼性」がよい評価を得られ,「操作のわかりやすさ」,「見やすさ」,「反応性」,「役立ち感」,「好感度」はよい評価を得られなかった.自由記述では,システムはがん疼痛セルフマネジメントを高める評価,運用拡大への要望と社会面への課題が示された.患者のユーザビリティ改善が課題であり,効果検証では十分なオリエンテーションが必要である.
著者
髙橋 悠太 廣瀬 茂輝 佐藤 優太郎 中村 克朗
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.16-21, 2020-01-05 (Released:2020-07-13)
参考文献数
7

約138億年前,宇宙はビッグバンにより始まった.その後,宇宙膨張に伴ってエネルギー密度すなわち温度は下がっていき,現在の宇宙は2.7 K(~10-4 eV)まで冷えている.この極低温宇宙に住む私たちが,まだ灼熱だった頃の宇宙について理解するには,粒子加速器を使って宇宙初期の状況を再現し,万物の「素」となる素粒子の性質や相互作用について調べることが重要となる.得られた知見は素粒子標準理論としてまとめられ,宇宙開闢からおよそ10-10秒後,温度にして1,000兆度(~100 GeV)までさかのぼって宇宙の歴史を理解するに至った.ところが,ニュートリノ振動や暗黒物質の存在など,標準理論では説明できない事象も多く,標準理論は低いエネルギー領域での近似理論であって,より高いエネルギー領域には未知の物理法則が存在するという見方が確実視されている.この新物理の尻尾をつかむことが,我々素粒子物理学者に課された使命である.新物理の探索手法には様々あるが,有力なものとしてB中間子を使う手法がある.B中間子は加速器で大量に生成可能であり,多様な崩壊過程を精密測定することで多角的な新物理検証が可能となる.たとえばm=1 TeVの質量をもった未知の粒子が存在したとしよう.するとB中間子の崩壊において,Δt~ħ /m=10-27秒の間だけ仮想的に存在することができる.もしB中間子が,この仮想状態を経由して特定の崩壊をすると,B中間子の崩壊パターンが僅かに標準理論からずれるはずで,これを検出しようというわけである.興味深いことに,近年,B中間子のいくつかの崩壊パターンで標準理論からの系統的な差異が報告され,“Bアノマリー”と呼ばれている.中でも特に注目したいのが,レプトンフレーバー普遍性の破れに関するものである.日本のBelle実験をはじめとするB中間子の精密測定において,B中間子が異なるフレーバーに崩壊するパターンを詳しく調べてみると,3σ以上の統計的有意度で標準理論の予想値とは異なる結果が得られた.これは,レプトンフレーバー普遍性を破る新物理の存在を強く示唆している.Bアノマリーが新物理によって引き起こされているとすれば,その大きさや性質からO(1)TeVのレプトクォークが新粒子として有力視される.これを受けて,世界最高の衝突エネルギー13 TeVを誇る陽子陽子衝突型加速器LHCを利用したATLASおよびCMS実験にて,新粒子を直接生成し,探索する試みが進められている.両実験におけるレプトクォーク探索は,現状でおよそ1 TeVの質量領域に到達している.まだ直接観測には至ってはいないものの,Bアノマリーから予言される新物理のエネルギー領域に手が届きつつある.以上のように,Bアノマリーに関する実験的研究は,B中間子崩壊の精密測定による“間接探索”と世界最高エネルギーの加速器を用いた“直接探索”の両輪によって,近年急速に進展してきた.今後,Belle実験から測定精度を大きく向上させたBelle II実験や,LHC加速器を用いて行われているLHCb実験とでBアノマリーの検証を継続していく.またATLASやCMS実験でも加速器性能の向上により感度が良くなっていく.今後10年内に,Bアノマリーの是非に対して,決着がつくだろう.
著者
結城 和博 佐藤 久実 中場 勝 櫻田 博 佐野 智義 本間 猛俊 渡部 幸一郎 水戸部 昌樹 宮野 斉 中場 理恵子 横尾 信彦 森谷 真紀子 後藤 元 齋藤 信弥 齋藤 久美
出版者
山形県農業総合研究センター
巻号頁・発行日
no.2, pp.19-40, 2010 (Released:2011-05-27)

「つや姫」(系統名:山形97号)は、1998年に山形県立農業試験場庄内支場(現:山形県農業総合研究センター水田農業試験場)において、次期主力品種の育成を育種目標に、「山形70号」を母に、「東北164号」を父にして人工交配を行い、選抜・育成した良食味の品種である。本品種は本県で育成された粳種では初の“晩生”に属し、短稈で草型は“中間型”、耐倒伏性は“やや強”である。いもち病真性抵抗性遺伝子型は“Pii、Pik”をもつと推定され、圃場抵抗性は葉いもち“強”、穂いもちは発病が少なく不明である。障害型耐冷性は“中”、穂発芽性も“中”である。「コシヒカリ」に比較し、収量性が高く、玄米千粒重は並で、玄米外観品質は白未熟粒の発生が少なく、光沢があり高品質である。「コシヒカリ」に比べ精米粗タンパク質含有率は並、精米アミロース含有率はやや低く、味度及び炊飯米の白色度はやや高い。食味は、炊飯米の外観と光沢が優れ、味と粘りも優り、「はえぬき」及び「コシヒカリ」を上回る。山形県における適応地帯は平坦部で、本県のさらなる良食味米の安定生産と「米どころ山形」として本県産米全体の評価向上を目指し、2009年に山形県の水稲奨励品種に採用された。さらに、同年9月には宮城県の奨励品種に採用された。
著者
佐藤 雄大 江藤 毅 篠原 明男
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.29-37, 2021

<p>エチゴモグラ<i>Mogera etigo</i>は,新潟県の越後平野にのみ生息する日本固有種である.本種は,生息域が局所的であり,人為的な生息地改変や,競合種であるアズマモグラ<i>M. imaizumii</i>との種間競争の影響により,分布域の縮小が懸念されている.過去の研究において,エチゴモグラの主要分布域の一部であり,その分布変化の最前線と考えられてきた新潟市江南区および五泉市の2地域で,エチゴモグラの分布後退が懸念されているが,最近の分布状況は明らかではない.本研究では,モグラのトンネルサイズを計測することで,これら2地域におけるエチゴモグラとアズマモグラの分布状況の調査を行った.その結果,新潟市江南区では,アズマモグラのトンネルが新たに確認され,エチゴモグラと同所的に生息していることも明らかとなった.過去の分布状況と比較すると,同地区におけるエチゴモグラの分布域は縮小している可能性が示唆された.一方で五泉市ではアズマモグラが優占し,局地的に単独でエチゴモグラのトンネルがみられる区域と,2種が同所的に生息する区域が確認された.五泉市における2種の分布状況は,過去のものと比較して大きな変化はみられなかったが,今後の土地利用の変化によっては,局在化したエチゴモグラの生息地は消失することも懸念される.</p>
著者
佐藤 恵
出版者
福祉社会学会
雑誌
福祉社会学研究 (ISSN:13493337)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.56-72, 2013

阪神大震災時,障害者には,震災以前からの生活上の困難が顕在化し,被害が集中的に現れて「震災弱者」化が進行した.①安否確認からの漏れ,情報へのアクセス遮断,②避難所・仮設住宅などの物的環境面のバリア,③介助の不足,④「震災弱者」への特別の配慮を行わない「一律『平等』主義」と,独力での生活が困難な障害者に対する「施設・病院収容主義」,⑤避難所等での排除的対応,⑥経済的な復興格差.これらの困難を抱えた障害者を支援する「被災地障害者センター」(現:拓人こうべ)の活動では,「顔の見える関係」を重視しつつ,障害者の自己決定を核とした自立を支える中で,種々の支援技法が編み出されていった.以上の①~⑤については「ゆめ風基金」からの開き取りにおいて,東日本大震災でも発生していることが確認され,⑥の復興格差に関しても経済格差に加えて地域格差も生じる蓋然性が高い.こうした阪神大震災の教訓が活きていない状況で行われている,ゆめ風基金の被災障害者支援においては,第一に,個人レベルの支援に重点が置かれ,第二に,自立生活を送る障害者が少ない東北において,支援の担い手としての障害者を育てることが意識されている.震災の風化が進行しつつある現在,ヴァルネラブルな被災障害者に向けた「支え合い」の実践は喫緊の課題であり,また,現場での実践に定位した社会学的記録・分析の作業が必要である.
著者
今村 祐太 上川 先之 工藤 直樹 佐藤 将也 山内 利宏
雑誌
第79回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, no.1, pp.551-552, 2017-03-16

Androidを標的とする悪性なWebコンテンツを利用した攻撃が存在する.攻撃を防止するためには,Webアクセスを観測し,攻撃の特性を調査する必要がある.ここで,AndroidにおけるWebアクセスには,Webブラウザによるもの以外に,WebViewを利用するAndroidアプリケーションによるものが存在する.WebブラウザによるWebアクセスはプラグインを用いて観測可能である.一方,WebViewを利用したWebアクセスを観測する機構は存在しない.そこで,本稿では,AndroidにおけるWebViewのWebアクセス観測機構を提案する.提案手法は,WebViewの改変により,WebViewを利用する全てのAndroidアプリケーションのWebアクセスを観測可能にする.
著者
白田 剛 高柳 友子 水上 言 佐藤 江利子 石垣 千秋
出版者
日本身体障害者補助犬学会
雑誌
日本補助犬科学研究 (ISSN:18818978)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.38-45, 2007-07-01 (Released:2007-10-12)
参考文献数
3
被引用文献数
1 3

目的 : 良質な介助犬を安定的に育成するためには、使用者の障害・疾患ごとにどのような費用がどの程度発生するのかの予測は重要である。本研究は、介助犬にかかる費用の使用者の障害・疾患別の推計を目的とする。方法 : 胸腰髄損傷、頚髄損傷、リウマチの3つの障害・疾患について、それぞれモデルケースを設定し、介助犬訓練事業者を対象としたアンケート調査および聞き取り調査をもとに、介助犬の一生にかかる費用項目を積算し、推計した。結果 : 各モデルケースごとの介助犬の一生にかかる費用は、胸腰髄損傷 : 約388万円~458万円、頚髄損傷 : 約411万円~481万円、リウマチ : 約470万円~539万円と推計された (非適性犬にかかった費用を含まない)。考察 : 障害・疾患によって費用が変化する要因としては、訓練期間の長期化、自助具の作成費用、継続指導の頻度の相違などがあげられる。今後、使用者のニーズごとの訓練メニューを整備していくことが重要になると考えられる。
著者
佐藤 馨一 五十嵐 日出夫 堂柿 栄輔 中岡 良司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
日本土木史研究発表会論文集 (ISSN:09134107)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.191-197, 1984

年表の作成は歴史の研究において最も基本的な、しかも重要なプロセスである。土木史研究においても明治以降については、「近代欝本土木年表」としてすでに発表されている。しかし明治以前については体系的に作られた土木史年表はなく、その編成が大きな研究課題として残されている。本文はこの点に着目し、小川博三著「日本土木史概説」から明治以前の主要土木史事項を抜きだし、明治以前日本土木史年表を試作したものである。この年表では明治以前を五つに区分し、各時代ごとに30~33の項目を取り上げた。<BR>本研究の最終目的は日本土木史年表の作成にあるが、本文ではとくに年表編集のプロセスにおいて、リレーショナル・データベースを用いて簡便に土木史史料を整理し、修正し削除する方法を開発した。すなわち本研究では大型電子計算機によらず、安価でかっ日本語入出力が可能なパーソナルコンピュータを用い、さらに入力した文章データを各種ファイルに再編集した。この結果、膨大な文書史料から必要事項を任意に検索、修正、削除することが可能となり、土木史史料の作成・整理・保管・再編集作業のシステム化、迅速化が図られることになった。
著者
野村 卓生 吉本 好延 明崎 禎輝 冨田 豊 濱窪 隆 藤原 亮 東 大和生 佐藤 厚
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.D0503, 2006

【緒言】適度な身体活動の継続は,他の要因から独立して慢性疾患リスクを減少させるが,運動療法に関する教育を体系的に受けた糖尿病患者においても運動の継続は極めて困難である.数ある運動の中でも「階段を昇る」ことは,多くの個体集団に適用可能で,日常生活における運動習慣定着へのモデルになると考えられる.本研究では,階段使用促進を目的としたメッセージを付記したバナー(バナー)を用い,不特定多数を対象に「階段を昇る」行動が促進されるかどうかの検討を行った.<BR>【方法】測定場所は,階段(37段)とエスカレーター(昇り)が隣接したH県内某私鉄の駅構内とした.測定者は2名とし,測定者1が階段を昇る通行者,測定者2がエスカレーターを使用する通行者を記録した.測定は平日,午前7時からの2時間30分とし,週2回,計16回の測定を実施した.通行者は,性別,年代層別(高齢層,青中年層,学生層,新生児及び小児は除外)に分類し,カウンターで記録した.2週間隔で通行者数を合算し,SPSSを用いて統計解析を行った.<BR>【介入手順】まず,ベースライン測定を2週間行った.ついで,バナーを階段前額面,柱側面,壁面に計45枚貼付し,同様の測定を4週間行い,4週目の測定最終日にバナーの撤去を行った.フォローアップ測定としてバナー撤去から3週後に2週間,同様の測定を行った.なお,本研究は臨床研究に関する倫理性に十分に配慮した.<BR>【結果】全測定期間において通行者は計43,241名測定された.階段使用者の割合は,全通行者でベースライン3.58%,バナー貼付後1-2週4.93%,バナー貼付後3-4週5.80%,フォローアップ3.68%であり,ベースラインに比較してバナー貼付後1-2週,3-4週においては有意な増加を示した(p<0.001).性別及び年代層別では,ベースラインと比較してバナー貼付後1-2週においては男性高齢層,青中年層,学生層でそれぞれ3.76%,0.10%,6.33%,女性高齢層,青中年層,学生層でそれぞれ1.44%,0.42%,16.6%の増加を示した.バナー貼付後3-4週において,男性高齢層,女性高齢層,女性学生層ではバナー貼付後1-2週より階段使用者率は低下したが,ベースラインと比較して高い階段使用者率が維持されていた.フォローアップでは,男性青中年層のみ有意な階段使用率が維持されていた.<BR>【考察】階段の昇り1回に要する消費カロリーは小さいが,生活範囲の多くの場所において身体活動促進のための啓発・教育が実施されるならば,個人の運動消費カロリーを現状よりも増加させ,慢性疾患の予防・進展抑制効果が期待できる可能性は高い.人の運動行動を誘発し,行動を維持させることは非常に困難である.本研究では,不特定多数の人の行動を簡便な方法で,全体で約2%であるが変容させることに成功できたことは非常に意義深い.
著者
佐藤 理 岩井 裕 吉田 英生
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
pp.18-00365, (Released:2019-02-21)
参考文献数
18

The purpose of this study is to develop an analytical model of cross-flow heat exchangers with offset strip fins which are usually equipped in the aircraft air conditioning system (so called the environmental control system, ECS). The ECS mainly consists of four cross-flow heat exchanges, i.e., a primary heat exchanger, a secondary heat exchanger, a reheater and a condenser. Because of the special requirements of the design for the aircraft, the primary and secondary heat exchangers are set adjoiningly; the reheater and the condenser are also set adjoingly. Therefore, in both the pairs, the effect of the temperature profile of the upstream component (the secondary heat exchanger or the reheater) on those of the downstream component (the primary heat exchanger or the condenser) should be taken into account for precise prediction of the system. To this end, a core element model was newly proposed in this study. In addition to the effect of temperature profile, phase changes (condensation and evaporation) of water included in the humid air simultaneously occur except for the primary heat exchanger. Regarding these phenomena, the method of sensible heat fraction (SHF) to convert the latent heat into the equivalent sensible heat was introduced, and the global and local SHF models were examined by comparison with the experiments. The prediction by these models were found to agree well with the actual performance of the ECS operations.
著者
佐藤 洋一
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1920-1926, 2012-12-25

要旨 結腸は系統発生的にみて,哺乳動物になってから食物残渣を固形化するために発達・分化した区域で,種による差が大きい.ヒトの右側に位置する近位結腸と左側に位置する遠位結腸では,発生(中腸vs.後腸),血管支配(上腸間膜動脈vs.下腸間膜動脈),神経分布(交感神経:胸髄vs.腰髄,副交感神経:延髄vs.仙髄),生理機能(ゆっくりした動き,食物残渣の固形化vs.短時間に糞塊を送る),上皮細胞(杯細胞の粘液性状,Paneth細胞の存否など)に関して差異が認められる.その境界は横行結腸にあると言われているが,明瞭なものの線引きはできないし,またそれぞれの要素で想定されている境界が一致するかどうかも検証されていない.横行結腸は右あるいは左の結腸のいずれかに帰属させることはできないと思われる.
著者
佐藤 翔輔 今村 文彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.I_1309-I_1314, 2020

<p> 極近地津波であった2019年6月18日山形県沖の地震にともなう津波からの避難行動について,山形県鶴岡市温海地区と新潟県村上市山北地区を対象にした質問紙調査とその分析を行い,当日の津波避難行動の傾向や課題を明らかにした.温海地区では約9割とほとんどの住民が津波避難行動を実施した.一方で,想定される津波到達時間よりも前に避難を完了できたのは,避難を実施した人のうち,温海地区で約3割,山北地区で約2割にとどまった.両地区で多くの住民が避難していたのは,津波情報(津波注意報)よりも,ゆれそのものから津波発生を想起したことと,50年以上前に地域で発生した津波よりも,近年発生した東日本大震災を契機にした意識の向上や備えの実施が関係していたことが明らかになった.</p>
著者
佐藤 珠美 エレーラ C. ルルデス R. 中河 亜希 榊原 愛 大橋 一友
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.63-70, 2017-06-30 (Released:2017-06-30)
参考文献数
21
被引用文献数
2 3

目 的産後女性の手や手首の痛みの有症率,痛みの出現時期,痛みの部位と手や手首の痛みの関連要因を明らかにする。対象と方法産後1年未満の女性876名に無記名自記式質問紙調査を行った。分析対象は産後1か月から8か月の有効回答514部(58.7%)である。調査内容は手や手首の自発痛の有無とその部位,痛みが発症した時期とその後の経過,痛みに影響を与える要因,属性とした。結 果35.2%の女性が産後に手や手首の痛みを保有していた。痛みの出現時期は妊娠期から産後7か月までと長期にわたっているが,産後1か月から2か月に出現した人が多かった。痛みの訴えは両側性が多く,左右の割合の差は少なかった。疼痛部位は橈骨茎状突起,橈骨手根関節,尺骨茎状突起,母指中手指節関節,母指手根中手関節の順に多くみられた。年齢,初産婦,手と手首の痛みの既往が痛みに関連しており,有意差を認めた。一方,母乳育児,産後の月経の再開,モバイル機器の使用時間との関連はなかった。結 論産後女性の3人に1人は手や手首の痛みを経験し,痛みの多くは産後1か月から2か月に出現していた。年齢が高く,初産婦で,手や手首の痛みの既往がある産後の女性では,手や手首の痛みに注意する必要がある。