著者
佐藤 康行
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
no.51, pp.p121-144, 1987

従来の親分子分関係の研究は、主として山梨県をフィールドにしておこなわれてきたため'その多様性が十分に明らかにされてきたとはいえない。本稿では、新潟県妙高高原町杉野沢地区の親分子分関係を考察した。杉野沢の親分子分関係は、主として農作業の共同集団であるマキの内部で結ばれてきている。マキは、本分家のほかに、婿や養子をやったりもらったりしている本家格の家とその分家を含んでいる。親分子分関係は、マキの内部で、主に本家格の家どうしが互いに親分子分をしあう形態と本家格の家が分家格の家を子分にする形態の二つがある。しかも、それらはいずれも世襲的、主従的ではなく、親和的融和的である。その点で、杉野沢の親分子分関係は、「大垣外型」と「上湯島型」の校合ないし中間と考えられる。槻分子分関係のこのような性質は、家の行邪を司る「亭主役」の性質と同じである。杉野沢においては、かつては「亭主役」は婿や養子をやったりもらったりしてきた家で、なおかつ妻の実家であったり、姉妹が嫁いでいる家どうしの問で相互におこなっていた。また、本家が分家の「亭主役」をおこなっていたばかりでなく、妻の実家や婿にいった家が「亭主役」をおこなっていた。「亭主役」が有するこのような家の関係は、家の系譜関係に基づく権威並びに主従関係を壊す側面をもっている。親分子分関係が必ずしも本分家関係と重複せず、親類関係の問で結ばれていることのなかに、「亭主役」が有する家の性格が窺えるのである。
著者
佐藤 惺
出版者
京都大学木材研究所
雑誌
木材研究・資料 (ISSN:02857049)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.14-21, 1987-11-30
著者
佐藤 純一
出版者
日本疼痛学会
雑誌
PAIN RESEARCH (ISSN:09158588)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.312-315, 2019-12-20 (Released:2020-03-14)
参考文献数
16

Chronic pain is known to get worse under the influence of weather change (tempera­ture, humidity, pressure). This is generally called “weather–related pain”. The author believes that the pressure sensor in the inner ear and the autonomic nervous system imbalance are involved in the mechanism of worsening pain and associated symptoms due to a decrease in atmospheric pressure. In addition, the activation mechanism of the cold receptor on skin occurs in chronic pain, which is considered to be the main role of the mechanism of aggravation of chronic pain under low tem­perature environments.
著者
鈴木 修斗 黄 璐 張 紅 佐藤 大輔 山下 亜紀郎 呉羽 正昭 堤 純
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.113-128, 2020 (Released:2021-02-28)
参考文献数
6

本稿は,コロナ禍の中において実施された筑波大学大学院におけるフィールドワーク実習(上田巡検)の事例報告である。新型コロナウイルス(COVID-19)の流行下においては,聞き取り調査などの対面接触を伴う実習形式の講義(巡検)の遂行が困難である。そこで筆者らは,感染対策を伴う新たな巡検スタイルの構築を模索・実践した。コロナ禍の中で巡検を実施するにあたり,事前ミーティングや事務連絡はオンライン上で完結させることが可能である。調査時には徹底した感染対策を行うとともに,食事の分散化やゼミのオンライン化によって宿泊場所での感染拡大を防ぐことができる。また,現地調査を円滑に進めるためには,今まで以上に綿密な事前準備が重要である。以上のような対応をとることで,コロナ禍の中においても高い教育効果をもった巡検を遂行することが可能であった。こうした実践の成果は,ウィズコロナの時代におけるフィールドワーク実習の実施に際して,有益な示唆を与える。
著者
斎藤 真澄 三浦 美環 早川 和江 富田 恵 野宮 冨子 小玉 有子 佐藤 厚子
出版者
弘前医療福祉大学内紀要編集委員会
雑誌
弘前医療福祉大学紀要 (ISSN:21850550)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.9-18, 2018-03-30

目的:女子大学生の不定愁訴と生活習慣、栄養バランスとの関連を検討する。方法:A大学女子学生90名を対象にしたアンケート調査。不定愁訴を肩こり、腰痛、便秘、疲れやすい、イライラ等の7 項目とし生活習慣、栄養バランスとの関連を調査した。結果:自覚している不定愁訴数の平均は4.3±1.9項目であった。不定愁訴が1 項目もない者は5 名であり、7 割以上の者が4 項目以上の不定愁訴を自覚していた。不定愁訴と生活習慣との関連では、朝食摂取の有無が肩こり、腰痛、イライラと関連していた(それぞれp<0.05)。睡眠時間が7 時間未満の者はイライラがある者が多かった(p<0.01)。夜食を摂取している者、就寝時間が不規則な者は、疲れやすいと答えた者が多かった(p<0.01~0.05)。栄養バランスを考慮した食事を摂っていない者は便秘がある者が多かった(p<0.01)。不定愁訴と栄養バランスとの関連では、便秘がある者は豆類・緑黄色野菜・淡色野菜の摂取頻度が有意に低かった(p<0.01~0.05)。考察:女子大学生の不定愁訴は、朝食摂取の有無、就寝時間の規則性や睡眠時間などの生活習慣が影響している可能性が示唆された。また、豆類、緑黄色野菜、淡色野菜の摂取頻度が便秘の発現に関連している可能性が示唆された。
著者
澤田 祐季 齋藤 知恵子 松川 泰 佐藤 剛 杉浦 真弓
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.807-811, 2018-08-10

●精液アレルギーは,精漿中の蛋白を抗原とし,局所の瘙痒から致命的なアナフィラキシーショックまで幅広い臨床所見を示す即時型アレルギー反応である. ●症状が重篤な場合は通常の性交では自然妊娠は困難であるため,挙児希望があれば脱感作療法,人工授精,体外受精が考慮される. ●それぞれの治療法にはメリット,デメリットがあるため,治療の選択肢を提示し,十分な説明をしたうえでの治療方針の決定が重要である.
著者
佐藤 康弘 福土 審
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.26-30, 2020 (Released:2020-01-01)
参考文献数
13

神経性やせ症, 神経性過食症に代表される摂食障害は, 多様な合併症状を呈し, 治療をさらに困難にしている. 神経性やせ症患者では, 極度の栄養不足と脱水から, 肝機能障害, 腎不全, 便秘, 脱毛など, 全身に多様な症状が出現する. 中でも低血糖, 電解質異常に起因する不整脈, 治療介入初期の再栄養症候群は死につながる危険性がある. 成長期における身長増加の停滞, 骨粗鬆症は体重回復後も影響が残る可能性がある. 過食排出型患者では自己誘発嘔吐によるう歯や, 嘔吐, 下剤, 利尿剤乱用による電解質異常が深刻な問題となる. 一方精神面では神経性やせ症でも神経性過食症でも不安, 抑うつなどの精神症状や, パーソナリティ障害の合併を認めることは多く, 治療上の障害となっている. ED患者の治療には, 心身にわたる合併症状への適切な対処が求められる.
著者
西宗 直之 小野寺 真一 成岡 朋弘 佐藤 高晴
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.123, 2003

<B>1. はじめに</B><BR> 瀬戸内沿岸地域は温暖少雨の気候のため、日本で最も山火事の発生頻度が高い地域となっている。山火事は森林植生や生息動物などの森林生態系を改変するのはもちろん、侵食作用の増大による地形変動や土壌環境、場合によっては水理・水質などの環境に影響を及ぼすことが想定される。また、土壌侵食の活発化による土砂流出量の増加は、下流域の堆積過程に変化をもたらす可能性があり、土砂災害の防止という観点からも重要な研究課題のひとつである。したがって、山火事の発生による侵食速度の変化や流域から生産される土砂量の予測を行っていくために、現存する山火事跡地の侵食速度を算出し、火災発生後の土砂流出特性を把握することが必要となる。よって、本研究では山火事発生後の経過年数の異なる流域における山火事発生前後の流域侵食速度の変化を確認し、山火事発生後の年数の経過に伴う土砂流出パターンの変動を明らかにすることを目的とした。</BR></BR><B>2. 研究地域及び方法</B><BR><U>2.1. 山火事跡地の砂防ダムにおける堆砂量の測定</U><BR> 流域の全面積が山火事に遭った砂防ダムのうち、最上流部に位置するものを選定し、堆積深度を検土杖で測定した後に堆砂量を算出した。堆積速度は、上記の方法により得た堆砂量を砂防ダム建造年から経過した年数で除して求めた。山火事の発生以前に建造されたダムについては、検土杖により炭化物が認められる堆積層を山火事発生時とみなし、堆積速度を区別することにより火災前後の侵食速度をそれぞれ求めた。一連の調査は2003年3月に実施した。<U>2.2. 山火事跡地試験流域における観測</U><BR> 2.1の砂防ダム流域とは別に、3か所の山火事跡地流域において調査・観測(2000年4月から2003年5月に実施)を行った。毎回の降雨イベント後に土砂トラップに堆積した土砂量を測定した。<BR>1)IK:2000年8月に山火事発生(撹乱流域)<BR>2)TB:1994年8月に山火事発生(荒廃流域)<BR>3)TY:1978年8月に山火事発生(回復流域)<BR> これらは、植生の状況以外はほぼ同一の特徴を持つ。<BR><BR><B>3. 結果と考察</B><BR><U>3.1. 山火事跡地流域における侵食速度の推定</U> 表1に各砂防ダム流域における流域特性及び侵食速度を示す。各流域とも、山火事発生前の流域侵食速度が0.02から0.07mm/yrという低い値を示したのに対して、山火事発生後では0.33から0.42mm/yrと高い値を示した。特に、山火事の発生からあまり年数が経過していないIK1では、侵食速度は2.2mm/yrという非常に高い値を示した。これらは、発電用ダムで計測された中部地方の急峻な山地渓流における侵食速度(0.3から0.5mm/yr)(藤原ほか、1999)と比較して同等かそれ以上の値であった。特に火災発生直後の流域では土砂堆積量の急激な増加が確認されたことから、これらの侵食速度の増加は山火事に伴う活発な土壌侵食の影響を強く反映している結果であるといえよう。<BR><U>3.2. 火災時期の異なる流域における土砂流出特性の差異</U><BR> 図1に各流域におけるイベント降水量と土砂流出量の関係を示す。いずれもイベント降水量の増加に伴った土砂流出量の増加が認められるが、小規模降雨イベントでは傾きが小さく、ある一定のイベント降水量で傾きが急になる傾向がみられた。IK流域ではイベント降水量に対する掃流土砂流出量の傾きが大きく、イベント降水量20mm付近に傾斜変換点がみられた。TB流域では傾斜変換点がイベント降水量40mm付近にみられ、傾きは緩やかであった。TY流域ではイベント降水量80mm付近に傾斜変換点がみられ、大規模出水時の傾きが大きかった。傾斜変換点は火災発生後の年数経過に伴ってイベント降水量の多い地点に現れた。この存在は、前後のイベント降水量の違いによって土砂流出プロセスが変化しているものと推察される。
著者
清水 謙祐 鳥原 康治 中山 明峰 福留 真二 佐藤 伸矢 東野 哲也
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.96-102, 2012 (Released:2012-06-01)
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

We report herein on psychiatric comorbidity in patients with dizziness in a psychiatric hospital with an otolaryngologist. Psychiatric comorbidity was revealed in 270 (68.9%) of 392 patients with dizziness. Of 270 patients with dizziness and psychiatric comorbidity, anxiety disorders were revealed in 149 (55.2%), mood disorders in 36 (13.3%), somatoform disorders in 5 (1.9%) and adjustment disorders or post-traumatic stress disorder in 15 (5.5%) but in addition organic mental disorders were also seen in 21 (7.8%) and schizophrenia in 15 (5.6%). Phobic postural vertigo was diagnosed in 30 (7.7%). These patients were not only treated by otolaryngologists, but also received psychiatric therapy or were prescribed psychotropic drugs. We believe that cooperation between psychiatrists and otolaryngologists in hospitals or regions can improve the mental condition and quality of life in patients suffering from dizziness with psychiatric comorbidity.
著者
柳田 薫 片寄 治男 鈴木 和夫 近内 勝之 菅沼 亮太 佐藤 章
出版者
JAPANESE SOCIETY OF OVA RESEARCH
雑誌
Journal of Mammalian Ova Research (ISSN:13417738)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.93-98, 2001 (Released:2002-05-31)
参考文献数
16
被引用文献数
6

卵細胞質内精子注入法(ICSI)の際の卵細胞膜穿破様式と卵の生存率,受精,分割率,ICSI前の卵の形態学的評価との関連性を検討した.ニードル先端の鋭利性による影響を除外するために,先端が平坦なニードルを使用できるピエゾマイクロマニピュレーターを用いてICSIを行った.ニードルによって卵細胞膜が穿破される様式を細胞膜の伸展性から4タイプに分類した.ICSIを行う成熟卵の約8%は卵細胞膜の伸展性が不良(type A)で,それらの50%はcytolysisを起こした.しかし,生存卵に対しての受精率,受精卵に対しての分割胚率に有意差がなかった.卵内に空胞が認められる不良卵と穿破様式との間にも関連性が認められなかった.