著者
内田 安紀
出版者
「宗教と社会」学会
雑誌
宗教と社会 (ISSN:13424726)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.15-29, 2017-06-03 (Released:2019-05-31)
参考文献数
29

本稿は、1990年代以降に顕著な現象として見られる葬送と自然の接近について、その背景と意味を考察するものである。1991年の「自然葬」の登場、そして1999年の樹木葬の登場と普及から推測できるように、現代の日本社会では葬送の領域において自然的要素が求められるようになっている。本稿ではなぜ現代社会において葬送と自然が接近しているのか、またそのような文脈における「自然」は新しい葬送の受容者にとってどのような意味を持つのかを問う。前者に関して言えるのは、現代社会においては葬送の領域に「個人化」現象が見られ、そこでは共有されうる死生観や価値観が失われており、その空白地帯に「自然」の要素がはまり込んだということである。後者に関して実際の樹木葬墓地での調査結果から見えてくるのは、そのような「自然」は受容者にとっては表層的なものであり、彼らの個人性と他者との共同性を媒介する一つの資源となっていたということである。
著者
川元 俊二 稲田 一雄 金丸 隆幸 永尾 修二 落合 亮二 内田 清久 中里 貴浩 海江田 令次
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.31-37, 2008 (Released:2008-12-19)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

(背景)輸血を受け入れないエホバの証人の患者に対する治療の対応や指針が検討され,現在に至っている.(目的)患者の意思決定を尊重する原則に立って治療を推進していく上で,インフォームドコンセント(IC)の方法とそれを実践する為に必要な他科との医療連携について検討する.(対象と方法)過去十年間にエホバの証人の患者113名(小児3名),128例におこなったICの方法と他科との医療連携の内容を示した.ICの方法は同種輸血拒否と受け入れ可能な代替療法の許容範囲の確認,無輸血治療に伴う合併症の内容の理解と同意であった.医療連携には麻酔科医,放射線科医,消化器内視鏡医との連携が含まれた.(結果と成績)ICの過程で医療者側が治療適応外と認めた症例は無かった.治療症例は110名,125症例で手術治療107例,放射線学的観血治療10例,内視鏡的治療4例,放射線照射化学療法17例をおこなった.緊急手術および治療は15例だった.患者全員が同種血輸血の受け入れを拒否する意思を示したが,4名を除く106名が代替療法として閉鎖回路で連結された希釈式自己血および回収式自己血輸血や血液分画の投与を受け入れた.自己血輸血を29例(23%)に施行し,術中術後の管理を通して,患者の意思により術前に代替治療の適用を定めた許容範囲を超えた症例は無く,無輸血治療が本来の治療の根治性を阻害することはなかった.また手術在院死亡や重篤な合併症の併発を認めなかった.(結論)ICの徹底と院内医療連携による無輸血治療の実践によって個々の患者に対する適切な医療環境と治療成績を提供できた.
著者
内田 彬浩 伴 正隆
出版者
日本ベンチャー学会
雑誌
日本ベンチャー学会誌 (ISSN:18834949)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.31-45, 2022-03-15 (Released:2023-04-26)

本研究では、購入型クラウドファンディングによる資金調達の複数の成功パターンと望ましい価格設定に関する定量的なエビデンスを提示する。購入型クラウドファンディングは市場規模の拡大や活用方法の多様さから、学術的・実務的な関心が高まっており、特に資金調達の成功要因に関する実証研究の蓄積が進んでいる。しかし、従来は資金調達が成功に至るパターンは単一であるという暗黙の仮定のもと実証分析が行われてきた。本研究では、日本の大手購入型クラウドファンディングプラットフォーム「CAMPFIRE」のデータと潜在クラスモデルを用いて、資金調達の成功パターンを類型化し、望ましい価格設定に関する示唆を導出した。また従来の研究と比較して、より良く資金調達の成功要因を説明するモデルを提案した。この結果は購入型クラウドファンディングの性質に対する理解を深めることに加え、資金調達における個別具体的な指針の立案に活用可能である。

2 0 0 0 朝鮮魚類誌

著者
内田 恵太郎
出版者
九州帝国大学
巻号頁・発行日
1947

博士論文
著者
長岡 千賀 内田 由紀子
出版者
一般社団法人 日本計画行政学会
雑誌
計画行政 (ISSN:03872513)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.33-44, 2015-05-15 (Released:2022-04-18)
参考文献数
15

Secure management of nuclear power plants requires workers to be of sound mental health. Therefore, the aim of this study was to determine the occupational stressors faced by workers in nuclear power plants in order to propose practical measures to improve their mental health. The target population of this study consisted of nondestructive testing personnel and radiation control personnel (radiation control personnel supervise and coach workers, including nondestructive testing personnel, on radiation protection) in periodic inspections of nuclear power plants. Participants (n = 87) completed a self-administered questionnaire that measured variables such as interpersonal issues on the job, cooperation from coworkers, and the number of vacation days given. The results indicated that “interpersonal issues on the job” (e.g., “there is a possibility that they incur a great danger to a lot of people due to their own misjudgment or lack of instructions”) was a stronger stressor. Moreover, a low level of cooperation from coworkers and an inadequate number of vacation days were found to affect the mental health of radiation control personnel. We therefore provide suggestions for effective management of radiation control personnel in terms of opportunity for long-term training for skill acquisition, number of days off work, and culture in the nuclear power plant.
著者
杉浦 彩子 サブレ森田 さゆり 清水 笑子 伊藤 恵里奈 川村 皓生 吉原 杏奈 内田 育恵 鈴木 宏和 近藤 和泉 中島 務
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.69-77, 2021-02-28 (Released:2021-03-20)
参考文献数
23

要旨: 補聴器がフレイルに与える影響を明らかにすることを目的に, 補聴器導入前と補聴器導入約半年後に基本チェックリスト (Kihon Check List: KCL) を実施し, その変化について検討した。 補聴器装用歴のない60歳以上の補聴器外来初診患者64名において, 補聴器導入前後における KCL 総得点の平均は, 装用前が5.1点, 装用後が4.9点で, 有意な変化は認めなかった。KCL の下位項目である日常生活関連動作, 運動器機能, 低栄養状態, 口腔機能, 閉じこもり, 認知機能, 抑うつ気分も有意な変化は認めず, KCL の質問項目それぞれについての検討で, 質問1(公共交通機関での外出) のみ有意な変化を認めた。KCL 総得点がロバスト方向へ変化した群としなかった群の特性の違いについて検討したところ, 補聴器導入前の KCL 総得点が高得点であること, 良聴耳聴力がよいことが有意にロバスト方向への変化と関連していた。一方, KCL 総得点のフレイル方向への変化の有無における特性は明らかでなかった。
著者
内田 知宏 Tomohiro Uchida
雑誌
尚絅学院大学紀要 = Bulletin of Shokei Gakuin University (ISSN:2433507X)
巻号頁・発行日
no.80, pp.17-27, 2020-12-18

統合失調症患者において体験される妄想の発生・維持に認知の歪みが関わっていると考えられているが、こうした病理モデルを健常者の妄想様体験(パラノイア)に当てはめ検討していく取り組みは、統合失調症を含む精神病の早期発見、早期介入という観点から重要であると考えられている。本研究において、大学生200名を対象に質問紙調査を実施した結果、認知的洞察や自己・他者スキーマといった認知的側面や、抑うつ、不安といった感情は、それぞれ単独でもパラノイア傾向と相関していたが、これらの心理的要因を組み合わせて検討することで、とくに、自己確信性で示されるような認知の硬さ、他者へのスキーマ、および抑うつがパラノイア傾向に影響を与えることが示された。こうした知見は、パラノイア傾向の強い個人の心理的要因を包括的に理解する上で、また認知行動療法を中心とした介入の標的を特定する上で役立つ可能性があると考えられた。
著者
小山 晶子 小山 智史 伊東 美緒 紫村 明弘 福嶋 若菜 山﨑 恒夫 内田 陽子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.176-185, 2022 (Released:2022-10-15)
参考文献数
23

目的:地域在住高齢者の服薬支援の在り方を検討するために,服薬アドヒアランス良群・不良群別に対象者の属性を検討し,2群の服薬管理の工夫の特徴を示した.方法:地域在住高齢者55名を対象に,属性と服薬アドヒアランスに関する質問紙調査と,服薬管理の工夫に関する聞き取りおよび観察を行った.結果:服薬アドヒアランス良群は19名(34.5%),不良群は36名(65.5%)であり,全対象者が何らかの服薬管理の工夫を行っていた.【服薬指示理解と服薬の段取り】は〈服薬指示を記憶する〉など13の工夫,【薬の保管】は〈1週間分程の薬を手元に置く〉など10の工夫,【薬の飲み忘れ対策】は〈食事から服薬までを一連の流れで行う〉など9の工夫がされていた.結論:服薬管理の工夫は,個人の生活に合わせて調整されていた.したがって,看護師は対象者の生活と服薬管理の工夫を把握した上で,服薬支援を行うことが必要である.
著者
内田 一郎
出版者
早稲田大学法学会
雑誌
早稲田法学 (ISSN:03890546)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.333-357, 1965-03
著者
宗岡 克政 井川 真理子 栗原 典子 木田 次朗 三上 智子 石原 勇 内田 淳子 塩屋 桐子 内田 直 平澤 秀人
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.511-519, 2008 (Released:2008-12-05)
参考文献数
33
被引用文献数
2 6

目的:紫色蓄尿バッグ症候群(PUBS)は膀胱留置カテーテル使用中に蓄尿バッグが紫色に着色する病態である.便秘と関連したトリプトファン代謝異常と尿路内細菌増殖によるアルカリ環境下でのインジゴ生成が,発現機序として提唱されている(トリプトファン―インジゴ仮説)が,PUBSの発生状況や発生機序に関して,さらなる検討が必要であると思われた.方法:認知症病棟において発生した6例(男性3例,女性3例)のPUBSに対して生化学的,細菌学的検査を行い発現機序について検討した.結果:経過中3例で抗生剤使用後に,1例で自然経過中にPUBSの消失がみられた.全例で慢性の便秘がみられた.1例は経口食物摂取不能例での発生であった.PUBS発生中の6例のうち,アルカリ尿が4例で,尿中インジカン陽性が4例(うち擬陽性1例)でみられた.PUBS消失後,4例の尿pHはすべて中性化し,尿インジカンは陰性化した.一方,尿細菌培養結果では,PUBS発生中にEnterococcus faecalisがMorganella morganni(3例),Pseudomonas aeruginosa(1例)とともに検出されたほか,Klebsiella pneumoniaeとCitrobacter属の単独感染がみられた.PUBS消失後では検出菌種は変化したが,無菌化した例はなかった.アミノ酸値では,トリプトファン値に一定の傾向がみられなかった一方,血中および尿中α-アミノ-n-酪酸値がPUBS消失後の4例全例で減少していた.PUBS自然消失例では,血中タンパクの増加がみられた.また,尿中インジカン定性結果,尿pHおよびアミノ酸値は,新鮮尿とバッグ内尿で差異がみられた.結論:今回みられた所見は「トリプトファン―インジゴ仮説」を支持するものであったが,矛盾する結果も少なからずみられ,当該仮説では説明のつかない病態のあることが示唆された.また,あらたに注目すべき点として,一定の菌の常在化,α-アミノ-n-酪酸の代謝およびタンパク合成能低下がPUBS発生要因として示唆された.
著者
菊池 真 舘 延忠 小塚 直樹 二宮 孝文 小林 正裕 堀本 佳誉 内田 英二 佐々木 公男 辰巳 治之
出版者
札幌医科大学医学部
雑誌
札幌医学雑誌 = The Sapporo medical journal = The Sapporo medical journal (ISSN:0036472X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.39-44, 2005-08-01

Formalin is a main fixative in the field of pathology. Molecular biological analysis of formalin-fixed samples was difficult because formalin fixation decreased the quality of isolated DNA. Therefore, we compared the quality of DNA obtained by using DNA extraction kit (Sepa GeneR) to that using proteinase K. Using proteinase K, it was possible to extract high quality DNA, and obtain DNA from samples of 3 months fixative. Moreover, by proteinase K method, it was also possible to analyze aprataxin gene exon 5 in DNA extraction from formalin-fixed human brain tissues from a suspected case of early-onset ataxia with ocular motor apraxia and hypoalbuminemia (EAOH). The aprataxin gene exon 5 DNA sequences were obtained following in vitro gene amplification using nested-PCR. Mutation on aprataxin gene exon5 was not observed in the suspected case of EAOH; however, it was possible to perform sequence analysis of aprataxin gene exon5. This method was more useful for DNA extraction and direct sequencing of formalin-fixation samples than the kit method.
著者
伊東 輝夫 柑本 敦子 内田 和幸 伊藤 宗磨 チェンバーズ ジェームズ 椎 宏樹
出版者
Japanese Society of Veterinary Anesthesia and Surgery
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.12-16, 2022 (Released:2022-09-22)
参考文献数
26

雑種猫、15歳、避妊雌が外耳道腹側の皮下腫瘤を訴えて来院した。唾液腺腫瘍が疑われ、その後も増大した。49日目に、耳下腺の腹側端から突出する腫瘤を外科的に切除した。病理組織検査、組織化学染色、チトクロームCの免疫染色の結果から、腫瘤はオンコサイトーマと診断された。術後17ヶ月経過した現在も再発や転移は認められていない。本症例は術後に長期生存した猫の耳下腺オンコサイトーマの初めての報告である。