著者
河野 勝宣 前田 寛之
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
日本地すべり学会誌 : 地すべり = Journal of the Japan Landslide Society : landslides (ISSN:13483986)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.121-129, 2013-05-25
被引用文献数
1

本論文は,北海道黄壁沢-シケレベンベツ川地すべり地域における全斜面の地形,地質,地質構造および熱水変質帯に加えて,岩石の強さを簡便かつ迅速に評価できる不定形点載荷強さ試験に基づく熱水変質岩の力学特性を考慮し,AHP法に基づくランドスライドハザードマップを作成し,ランドスライドハザードアセスメントを試みた。<br>  斜面におけるランドスライド危険度は,素因分析項目からAHP法による評点累計によって評価し,I~Vのハザードランクに分類した。ランクIは安定硬岩盤斜面,ランクIIは安定軟岩盤斜面,ランクIIIは不安定軟岩盤斜面,ランクIVは新規の地すべり発生が懸念される不安定な区域およびランクVは再活動型地すべりが懸念される最も不安定な古期地すべり地である。
著者
南 宏典 佐藤 健二 乾 重樹 前田 知子 田口 博康
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会
雑誌
皮膚 (ISSN:00181390)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.440-447, 1996

12歳以上のアトピー性皮膚炎患者でステロイド外用剤を中止したいと希望した28例と, すでにステロイド外用剤を中止してそれ以外の外用剤を用いているが皮疹が軽快しない4例を対象とし, ステロイド外用剤離脱後も紅斑が持続する場合は全外用剤を中止し, 内服, 入浴指導, ガーゼ保護など種々の治療を加えた。ステロイド外用剤を中止すると皮疹は増悪し, 平均7日後に最悪となるが, その後軽快した。さらに全外用剤を中止すると再び増悪して平均5日後に最悪となるが, 以後軽快に向かい平均6週間後に皮疹の面積は中止前の2割程度となった。またこのときの皮膚症状は古典的成人アトピー性皮膚炎に特徴的な乾燥性のものである。外用剤中止と外用以外の種々の治療を行った結果ほぼ全例が外用剤なしですごせるようになったことから, 現在問題とされているいわゆる成人型アトピー性皮膚炎の病変にはステロイドおよびその他の外用剤の影響が含まれていると推測された。
著者
前田 浩人 小林 加奈 三品 美夏 渡辺 俊文 曽川 一幸
出版者
日本電気泳動学会
雑誌
電気泳動 (ISSN:21892628)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.43-47, 2018 (Released:2018-12-21)
参考文献数
7

慢性腎臓病(CKD)は,多くのネコに発症が認められ,死因の一つとされている.獣医国際腎臓病学会(International Renal Interest Society,IRIS)の分類では,ステージI期およびステージII期におけるCKDを正常なコントロールと比較して,マーカーを用いて正確に診断することは難しい.正常およびステージI期CKDネコにおける尿中アルブミン濃度は6.0±4.5および11.2±8.4 mg/dlであり,尿中トランスフェリン濃度は0.09±0.42および0.52±0.79 mg/dlであった.ROC曲線分析に基づいて,尿中アルブミンおよび尿中トランスフェリンの感度および特異性は,現在使用されているバイオマーカーである血漿クレアチニンレベルの感度および特異度より高かった.いくつかの候補の中で,CKDの最も有望なバイオマーカーとして39.2 kDaタンパク質であるカルボキシルエステラーゼ5A断片に焦点を当てた.カルボキシエステラーゼ5Aフラグメント測定を診断に応用出来るように,我々は,尿中カルボキシルエステラーゼ5Aフラグメントを測定することを可能にする酵素イムノアッセイを開発した.ELISAの性能については,回収率(96.1–106.4%)および同時再現性(3.5–5.1%)および日差再現性(4.8–8.2%)と良好な結果であった.
著者
藤谷 幸弘 前田 博子
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.1-14, 2005

本稿は, 1988年にロンドンのカムデン区で起きた公共図書館サービスの削減計画に対して, 当時の新聞記事等をもとに市民の反対運動の特徴をまとめたものである。職員のストライキ, 多数の人々の削減反対署名運動, 抗議の手紙, 有名俳優による図書館での朗読会, 抗議集会, 座り込み, 反対運動者の寄付による運営継続の提案など様々な方法よる反対運動が行われた。その結果, 図書館に対する市民の強い支持が認められ, 閉鎖対象となっていた2分館のうち1館は閉館を免れ, 3中央館のうち2館が分館に格下げされたが, 閉館は免れた。また開館時間を経年的にみると, 1984年には14館の1週間の総開館時間が790.5時間だったものが, 1993年には全13館となり, その総開館時間は一旦414時間に減少したが, 2003年には少々改善され, 514時間に上昇した。
著者
久保田 恵章 玉木 正義 前田 真一 勝股 克成 森脇 崇之 田代 和弘 出口 隆
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.9-11, 2005-01

著者らの施設における男性不妊症に対する精巣内精子採取法(TESE)の臨床成績について検討した.対象は,男性不妊症でTESEを施行した30例(平均年齢35.0歳)で,内訳は閉塞性無精子症7例(精管,射精管閉塞4例,精管切断術後3例),非閉塞性無精子症21例(染色体異常1例,原因不明20例),射精障害(脊髄損傷)2例であった.30例中20例で精子回収が可能であったが,1例は不動精子で凍結保存はできなかった.20例中15例にICSI(卵細胞質内精子注入法)を施行し,8例で妊娠が成立,7例で出産に成功した.非閉塞性無精子症21例中精子回収可能であった11例(52%)と不可能であった10例における精子回収の予測因子の検討では,FSH・LHは非回収群で有意に高値であり,Johnsen's scoreは非回収群で有意に低かった.この3因子は精子回収の予測因子となり得ると考えられたOwing to progress of assisted reproduction technology in recent years, it has become possible for couples with infertility problems to have children. Between March 1998 and May 2003 testicular sperm extraction (TESE) was performed on 30 men with male-factor infertility in our hospital. Consequently, we succeeded in recovering 20 spermatozoa. Intracytoplasmic sperm injection was subsequently performed in 15 couples and resulted in 8 pregnancies. There was a statistically significant difference in follicle-stimulating hormone, luteirizing hormone and Johnsen's score between the non-obstructive groups with successful TESE and those with unsuccessful TESE.
著者
小野 敦史 細矢 光亮 鈴木 奈緒子 木下 英俊 村井 弘通 前田 亮 菅野 修人 大原 信一郎 陶山 和秀 川崎 幸彦
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.159-163, 2017

<p>前立腺囊胞性疾患は,外表奇形の合併がない場合,幼少期に発見されることは稀な疾患である。今回我々は,尿路感染症を契機に画像検査で偶発的に発見された前立腺小室囊胞の1 例を経験した。症例は1 歳男児。発熱と排尿時の啼泣,異常な尿臭を主訴に当科を受診した。膿尿の他,腹部の造影CT 検査と造影MRI 検査で膀胱と直腸の間に長径約40 mm の囊胞性病変を認めた。抗菌薬による治療で尿路感染症は改善し,その後の膀胱尿道鏡検査で前立腺小室囊胞と診断された。抗菌薬の予防投与で経時的に囊胞は縮小し,画像検査で確認できなくなったため,外科的切除は行っていない。現在,予防内服中止から1 年以上経過したが,再発は認めていない。小児の尿路感染症では,しばしば尿路異常を合併する例があるため,発症時には腎尿路系の精査を行うことも多い。自験例のように,前立腺小室囊胞が尿路感染症の合併症の1 つとして関与することを念頭に置く必要がある。</p>
著者
増山 伸夫 高田 勗 一杉 正治 相澤 好治 高橋 英尚 前田 厚志 橋本 起一郎 中村 賢
出版者
北里大学
雑誌
北里医学 (ISSN:03855449)
巻号頁・発行日
vol.13, no.6, pp.406-416, 1983-12-31

交替制勤務の身体影響に関する報告は,現在までに多数なされてきたが,長期にわたって経過を追ったものはほとんどない。そこで,本研究では,長期間の交替制勤務の影響を観察するために,6年間隔で,交替制と常日勤の同一作業者に実施された健康診断の結果を検討した。喫煙率は,6年の経過中,常日勤務作業者群,交替制勤務作業者群の両群とも低下傾向を示したが,初年度,6年目とも,交替制勤務作業者群の喫煙率が高かった。飲酒状況では,両群間に有意の差はなかったが,6年の経過中,両群とも飲酒率の増加傾向を示した。自覚症状に関しては,動悸,息切れなどの循環器症状,食欲不振,嘔気,胸やけ,胃のもたれなどの胃腸症状,頭痛,頭重感,めまい,耳鳴り,視力低下,肩こりなどの神経系症状,倦怠感,易疲労感などの全身症状を訴える者が,初年度は交替制勤務作業者群に多い傾向があったが,6年の経過中に,交替制勤務作業者群に有訴率の低下があり,両群間に明らかな差はなくなった。血圧,尿検査,末梢血液検査,肝機能検査の臨床検査では,両群間に明らかな差はなく,経年変化も明らかではなかった。
著者
屈 達才 前田 泰生 郷原 匡史 中塚 硬三 北村 憲二
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.121-141, 2002
参考文献数
42
被引用文献数
1

Three species of astigmatid mites which infest mason bees, i.e., Chaetodactylus hirashimai, C. nipponicus and Tortonia sp., are known to occur in Japan. Two of them, C. nipponicus and T. sp. are sympatrically distributed in central and northern Japan. They are cleptoparasites of Osmia cornifrons, which is utilized as a pollinator of apples. The invasion/infestation patterns of these mites were studied through a survey conducted at 24 apple orchards in various localities during winter between 1999 and 2001. A population of O. cornifrons was reared in Sendai City, northern Japan, in spring of 1999 so as to analyse the synchronization between invasion/infestation of mites and nesting activity of host bees. As overwintering stages of C. nipponicus, phoretic and cyst-like deutonymphs were found together in the same cells, while 5 stages (larvae, protonymphs, tritonymphs, adults and phoretic deutonymph) were confirmed to hibernate in Tortonia sp. The cyst-like deutonymphs were absent in the latter species. In C. nipponicus, the percentage of phoretic deutonymphs was extremely high (up to 99.6% per host cell), while in T. sp. was lower (6.6% in total). The life type of these 2 mite species is regarded as phoretic- and dweller-like, respectively. The difference of their life types between 2 mite species are enable the partitive use of the pollen-mass stored in the same nests. The following features, regarding to the invasion/infestation patterns, were recognized. 1) Mostly, the first nests made in tubes were infested by both species of mites. The number of cells infested by C. nipponicus extended up to 9 cells, but usually the inner ones were apt to be infested. On the other hand, infested cells were found throughout nest tubes in T. sp.; 2) Distribution and numbers of dead cell contents in a nest by infestation of mites differed between 2 mite species. Only 1-3 cell contents were killed in C. nipponicus, and none killed in T. sp.; 3) Prior to feed on the stored pollen-mass, both species of mites killed hosts. However, they were able to kill hosts of which stages were from egg to early third instar larva. To kill host eggs, it was needed more than 50 adult mites. Those hosts that escaped from slaughter survived and formed normal cocoons; 4) Coinhabiting with C. nipponicus and T. sp. in the same host cell was less frequently occurred (7.1% in total). In these cells, the individual ratio of C. nipponicus was always higher than that of T. sp. The 5 overwintering stages, except phoretic deutonymph, in Tortonia sp. were not all in diapause. These stages began to develop into the next stages sooner, when new food was given under warm temperature. The phoretic deutonymphs of both mite species activated their development by clinging to host bee bodies in both mite species. The cyst-like deutonymphs of C. nipponicus developed into the tritonymphs when subjected them to the scent of host bees.
著者
辻元 英孝 八木 繁幸 井川 茂 飛鳥 穂高 前田 壮志 中澄 博行 櫻井 芳昭
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協會誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.207-214, 2010-05-20
参考文献数
34
被引用文献数
5

溶液塗布法による高分子電界発光素子(PLED)の開発を目的として,りん光性ビスシクロメタル化イリジウム(III)錯体,ビス[2-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ピリジナト-<i>N</i>,<i>C</i><sup>2</sup>&rsquo;]イリジウム(III)(2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオナート-<i>O</i>,<i>O</i>)(<b>1</b>)およびビス[2-(ジベンゾ[<i>b</i>,<i>d</i>]フラン-4-イル)キノリナト-<i>N</i>,<i>C</i><sup>3</sup>&rsquo;]イリジウム(III)[1,3-ビス(3,4-ジブトキシフェニル)プロパン-1,3-ジオナート-<i>O</i>,<i>O</i>](<b>2</b>)を新規合成した。錯体<b>1</b>はトルエン溶液中において,発光極大波長475 nmおよび507 nm,発光量子収率0.91を有する青緑色発光を示した。また,錯体<b>2</b>は,発光極大波長610 nm,発光量子収率0.77を有する赤色発光を示した。これらのりん光材料を発光ドーパントとし,ポリビニルカルバゾール(PVCz)をホストポリマーとするPLEDを作製した(素子構造:ITO(150 nm)/PEDOT:PSS(40 nm)/PVCz:PBD:<b>1</b>(or <b>2</b>)(100 nm)/CsF(1.0 nm)/Al(250 nm))。錯体<b>1</b>および錯体<b>2</b>を発光ドーパントとするPLEDは,それぞれ溶液中と同様な青緑色および赤色の電界発光を示した。これらの結果から,共ドーパントして錯体<b>1</b>と錯体<b>2</b>を組み合わせることによって白色発光が得られる可能性が示された。実際,ポリビニルカルバゾール層中に錯体<b>1</b>と錯体<b>2</b>の両方を含むPLEDを作製し組成比を調整したところ,PVCz:PBD:<b>1</b>:<b>2</b>=10:3.0:1.2:0.012(wt/wt/wt/wt)の比においてCIE色度座標(0.364,0.378)(@13 V)の白色発光を得た。この白色PLEDは,最大発光輝度4200 cd m<sup>&minus;2</sup>(@13 V),最大電流効率4.9 cd A<sup>&minus;1</sup>(@7.0 V),最大電力効率2.4 lm W<sup>&minus;1</sup>(@6.0 V),最大外部量子効率2.4%(@7.0 V)の素子特性を示した。

1 0 0 0 OA 紅露

著者
前田曙山 (次郎) 著
出版者
春陽堂
巻号頁・発行日
vol.前編, 1908
著者
稲津 脩 渡辺 公吉 前田 巖 伊藤 恵子 長内 俊一
出版者
The Japanese Society of Applied Glycoscience
雑誌
澱粉科学 (ISSN:00215406)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.115-119, 1974-06-15 (Released:2011-02-23)
参考文献数
12
被引用文献数
12 15

北海道および本州産の粳米について1969~1971の3ヵ年にわたり,延18品種56試料について,米澱粉のヨウ素親和力およびアミロース含有率を測定した。測定方法はアミロースの基準ヨウ素親和力を19と仮定し,この値を用いて各試料の米澱粉のヨウ素親和力からアミロース含有率を計算した。 1)供試した56試料のアミロース含有率は,90%の信頼区間で18.6~24.8%の範囲にあり,平均21.7%であった。また,北海道産米は21.1~24.5%,平均22.8%であり,本州産米の17.6~21.6%,平均19.5%に比較して平均値で3.3%高かった。しかし,この差が本州と北海道の環境の差によるものか,あるいは品種の遺伝的特性によるものかは明らかでなかった。 2)本州で最高値を示した青森のフジミノリと,北海道で最低値を示した厚真産のほうりゅうは類似の含有率を示した。 3)北海楢内においては,品種,栽培地,年次間にいずれも有意差が認められた。とくに,品種間の分散は栽培地および年次間の分散よりはるかに大きく,アミロース含有率は品種によって最も大きく支配された。その品種間差異は,ゆうなみ> ユーカラ> しおかり>ほうりゅうの関係が有意であった。 4)農林20号はほうりゅうよりさらに低いアミロース含有率を示した。 5)栽培地では泥炭地が高く,また,高温年よりも低温年で高まった。 6)これらのことから,北海道産米の改善の一つの方向として,低アミロース品種の重要性が暗示された。