著者
宮本 京子 清島 久美 亀井 美沙 小方 由美子 前田 裕亮 前田 高宏
出版者
日本サイトメトリー学会
雑誌
サイトメトリーリサーチ (ISSN:09166920)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.21-27, 2019-11-25 (Released:2019-11-25)
参考文献数
14

Progress has been made in the treatment of multiple myeloma (MM), and a series of novel therapeutic agents, including antibody-based drugs such as elotuzumab and daratumumab, are available in the clinic. While fl ow cytometry (FCM) is a major method for MM diagnosis and evaluation of therapeutic effects, detecting MM cells after antibodybased therapies is challenging, as antibodies used for FCM sometimes recognize the same epitopes that are targeted by the therapeutic ones. As a result, FCM could fail to detect true MM clones. In this study, we examined the effi cacy and accuracy of the FCM-based diagnostic methods using an antibody targeting multiple epitopes of CD38 (CD38ME) and intracellular p63 as well as those targeting CD138 and CD38high. When we defi ned MM cells using antibodies against CD38ME and intracellular p63, proportions of MM cells were highly correlated with those defined by the conventional FCM methods using anti-CD38high and / or CD138 antibodies (r2 = 0.9967-0.9991). Interestingly, expression levels of CD38high and CD138 were signifi cantly low in MM cells obtained from antibody-treated individuals. In contrast, MM clones were accurately detected using antibodies against CD38ME and intracellular p63. Our data suggest that extra caution should be taken when MM cells obtained from patients treated with antibody-based therapies were evaluated by FCM. We propose that antibodies targeting CD38ME and/or intracellular p63 should be included in the antibody mixture for FCM-based detection of MM cells.
著者
木村 妙子 木村 昭一 自見 直人 角井 敬知 冨岡 森理 大矢 佑基 松本 裕 田邊 優航 長谷川 尚弘 波々伯部 夏美 本間 理子 細田 悠史 藤本 心太 倉持 利明 藤田 敏彦 小川 晟人 小林 格 石田 吉明 田中 颯 大西 はるか 締次 美穂 吉川 晟弘 田中 正敦 櫛田 優花 前川 陽一 中村 亨 奥村 順哉 田中 香月 Kimura Taeko Kimura Shoichi Jimi Naoto Kakui Keiichi Tomioka Shinri Oya Yuki Matsumoto Yu Tanabe Yuki Hasegawa Naohiro Hookabe Natsumi Homma Riko Hosoda Yushi Fujimoto Shinta Kuramochi Toshiaki Fujita Toshihiko Ogawa Akito Kobayashi Itaru Ishida Yoshiaki Tanaka Hayate Onishi Haruka Shimetsugu Miho Yoshikawa Akihiro Tanaka Masaatsu Kushida Yuka Maekawa Yoichi Nakamura Toru Okumura Junya Tanaka Kazuki
出版者
三重大学大学院生物資源学研究科
雑誌
三重大学フィールド研究・技術年報 = Annals of Field Research and Technology Mie University (ISSN:13496824)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.1-32, 2018-10

In this study, we had investigated the benthic deep-sea fauna using the dredge and beam trawl in the region from the continental shelf to the continental slope of the Sea of Kumano, Mie Prefecture, during the No.1722 research voyage of the training ship Seisui-Maru of Mie University. The survey was carried out at 16 stations covering a depth range of 113-1059 m. The results of the survey, 14 phyla had been confirmed. Arthropod, echinoderm, annelid and molluscan macrobenthos were collected from all of the stations. The phylum number of each station was in the range from 4 to 11. The largest number of phyla had been confi rmed at St.10D of boulders bottom(768-800 m depth). Meiobenthos confi rmed in our sample were kinorhynchs, nematodes, tardigrades, loriciferans and small arthropods such as tanaidaceans, copepods and cumaceans. In addition to free-living species, parasitic copepods, isopods, platyhelminthes, acanthocephalans and nematodes had been found in fish, crustaceans and polychaetes.
著者
山本 真司 子安 大士 前川 仁
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. CVIM, [コンピュータビジョンとイメージメディア] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.172, pp.Y1-Y8, 2010-05-27
参考文献数
11

本研究では,ドラムの演奏動作を撮影した動画像からの動作抽出手法を提案する.ドラムの学習支援の研究として電子ドラムやモーションキャプチャを用いて演奏動作を解析する研究があるが,普段の練習や演奏とは異なる状況で演奏しなければならない制約がある.そこで,我々は演奏動作を動画像からマーカーレスで腕とスティックの動作を抽出し,動作点の動きから奏法を解析する手法を提案している.しかし,見掛けの変化が生じる正面からの撮影では追跡ができないことや,動作点を見失うとその後のフレームの追跡ができないといった動作抽出での問題がある.そこで本研究では,複数のオプティカルフローの情報を確率的に統合することで領域の移動を推定し,その位置関係から奏法の解析に必要な動作点の検出を行う.動作を点ではなく領域により追跡することで追跡のロバスト性が向上し,同時に見え方の変化への対応が可能となる.高速度カメラで撮影された動画像に対して提案手法を適用し,手法の有効性を確かめた.Motion capturing during actual drumming is important both to support of learning and to analyze the performance. Methods based on specialized equipments such as electronic drums or dedicated capturing system with markers may affect the motion to be performed. Therefore we present a marker-less method of motion extraction of drumming stick from video image. In the method, we first track regions of each body part and stick. To track regions robustly, we use a combination of M-estimation and Bayesian approach. Then feature points such as stick-tip and the grip of basic drumming scene are extracted by the boundary of the regions.
著者
鈴村 恵理 出口 晃 島崎 博也 前田 一範 浜口 均 川村 直人 川村 憲市 川村 陽一
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.87-94, 2012-02-29 (Released:2013-10-18)
参考文献数
7

背景:鼻閉はわずらわしい症状である。今回、鼻腔通気度計を利用して温泉入浴(41°Cから42°C)の鼻閉に対する効果を調べた。方法:10人の健常成人ボランティア(男性 10名、平均年齢 27.8±4.4才)に 10分間の温泉入浴をさせた。鼻腔通気度計(HI-801)を利用し、入浴前と後に鼻腔抵抗値を測定した。鼻腔通気度検査方法はアクティブ・アンテリオール法で行った。両側鼻腔抵抗は、左右片側抵抗値よりオームの法則の計算式(1/T=1/R+1/L、T:両側抵抗、R:右側抵抗、L;左側抵抗)に従って算出する。評価には ΔP100Pa 点の抵抗値を適用した。結果:左右別に測定した鼻腔抵抗値は、入浴前鼻腔抵抗値が0.75 Pa/cm3/s以上の群にて有意に入浴後低下した(吸気 P=0.0117、呼気 P=0.0277;Wilcoxon T-test)。入浴前鼻腔抵抗値が 0.75 未満の群では有意な変化は認められなかった。 入浴後両側鼻腔抵抗値は、入浴前鼻腔抵抗値が 0.5Pa/cm3/s以上の群で有意に低下を認めた(P=0.0115;Wilcoxon T-test)。結果:鼻閉は温泉入浴後改善することが示された。温泉入浴により鼻閉症状は改善すると考えられる。
著者
山下 昌宏 澤泉 雅之 前田 拓摩 棚倉 健太 宮下 宏紀 松本 綾希子 岩瀬 拓士 大野 真司
出版者
一般社団法人 日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会
雑誌
Oncoplastic Breast Surgery (ISSN:24324647)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.25-31, 2016-12-25 (Released:2016-12-26)
参考文献数
10

ティッシュエキスパンダー (以下TE) の留置は, さまざまな要因により延長される場合がある。今回われわれは留置が2年以上経過した症例を長期例とし, 期間, 要因および合併症を検討した。2006年1月から2012年12月の期間に TE を挿入した一次乳房再建例は740例であり, このうち長期例は30例 (4.1%) であった。長期留置30例の関連合併症は破損が4例 (13%) で, いずれも生理食塩水の漏出が緩徐な slow puncture であった。ほかに入れ替えを要する感染等は認められなかった。 長期留置の要因としては, 化学療法の影響やその合併症等が多数を占めたが, 他疾患の合併や患者事情により延期せざるを得ないことがある。その結果, TE の破損率は上昇すると予想されるが, 合併症によって緊急な処置を迫られるものではなく, 患者への IC を含め状況に応じた対応が必要である。
著者
芦田 耕一 前田 洋史 新城 崇 星野 真樹 平谷 康治 安岡 正之
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.743-748, 2015 (Released:2018-01-25)
参考文献数
6

高EGR 燃焼の安定改善手段として燃焼速度の高い水素を混合気へ添加する方法が有効である.そこで水素を排気ガスを用いた改質反応によって生成し,直接導入する方法について研究を行っている.今回,排気ガスとガソリンを用いた燃料改質実験における水素生成性能とその水素によるEGR 限界向上効果の確認結果について報告する.
著者
前田 歩 吉村 寿紘 為則 雄祐 鈴木 淳 藤田 和彦 川幡 穂高
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2019

<p>サンゴ礁海域に生息する大型底生有孔虫はサンゴ礁海域の堆積物の主要な構成要素であるため、当該海域の連続的な古環境記録媒体として利用できる可能性がある。水温と大型底生有孔虫殻の微量元素濃度との関係を評価するため、サンゴ礁に生息する二種類の大型底生有孔虫、<i>Calcarina gaudichaudii</i>と<i>Amphisorus kudakajimensis</i>について、21-30ºCの温度制御下で飼育した無性生殖個体を複数用いたMg/Ca、Sr/Caおよび個体ごとのMg, Sr, Na濃度を測定した結果を報告する。Mg/CaおよびSr濃度は両種ともに温度と有意な相関を示した。一方で、Sr/Ca、Na濃度は両種ともに温度によらずほぼ一定の値を示した。</p>
著者
村山 憲弘 前川 育央 後 裕之 芝田 隼次 宇田川 悦郎
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.176-182, 2012-05-20 (Released:2012-05-20)
参考文献数
22
被引用文献数
5 5

製鉄所から排出される製鋼スラグを原料に用いて,陰イオン交換体の一つである層状複水酸化物(Layered Double Hydroxide, LDH)の合成を行った.LDHの金属イオン源となる成分をスラグから溶解するために,スラグの塩酸浸出を行った.スラグ浸出液からさまざまなpHで共沈法により合成した生成物に対して,結晶構造,熱重量変化などの物性や化学組成を調べた.水溶液中に存在するAs(III),B,Cr(VI)およびSe(IV)に対する生成物の除去能を検討した.2.0 mol/dm3 HClを用いて2.5 g/100 cm3の固液比にてスラグを浸出するのが適当であった.スラグの塩酸浸出液から得られる生成物はMg–Al系LDHとCa–Al系LDHを含み,pH 11以下ではMg–Al系LDHが,pH 12以上ではMg–Al系LDHとCa–Al系LDHの混合物がそれぞれ生成した.合成pHの調整によって反応液中のMgとCaの沈殿率を制御することが,浸出液から合成されるLDHの種類を決めるための重要な因子である.LDHによる有害陰イオン種の除去率は,Cr(VI)>Se(IV)>As(III)>Bの順に大きく,Feを多く含むスラグ由来の生成物はAs(III)に対する除去能が向上した.合成pHの違いによってスラグ由来生成物の陰イオン除去能は顕著に変化し,pH 10.5で合成した生成物の陰イオン除去能が最も高かった.スラグから陰イオン除去能をもつ層状複水酸化物が得られることがわかった.
著者
原 哲也 稲冨 千亜紀 小出 史子 前川 拓治 趙 成三 澄川 耕二
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.316-320, 2009-05-15 (Released:2009-06-18)
参考文献数
11
被引用文献数
1

エホバの証人に対する帝王切開術の麻酔を, 動脈圧心拍出量 (APCO) から算出した酸素供給量を指標として管理した. 患者は40歳代の女性. 身長150cm, 体重56kg. 子宮筋腫合併高齢出産であったが, 宗教的信条から輸血を拒否したため, 帝王切開術が予定された. 麻酔は0.5%高比重ブピバカインによる脊髄くも膜下麻酔で行い第4胸髄レベル以下の知覚低下を得た. 術後鎮痛は0.2%ロピバカインによる持続硬膜外麻酔で行った. 同種血および自己血輸血は行わず, 貧血による酸素供給量の減少に対して, 輸液および昇圧薬で心拍出量を増加させ代償した. APCOの測定は低侵襲であり, 酸素供給量を指標とした麻酔管理に有用であった.
著者
高前田 伸也
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

FPGAがもつオンチップメモリや再構成可能ロジックなどのリソースを最大限活用し最大性能を達成する,マルチパラダイム型高位設計フレームワークの実現に向けて研究を行った.研究代表者が以前より開発を進めている,プログラミング言語Python上のドメイン固有言語として実装したハードウェア設計ライブラリVeriloggenをベースとして,逐次処理,ストリーム処理,レジスタ転送レベルの3つの異なるパラダイムを持つ高位合成コンパイラを実現した.また,本フレームワークをバックエンドとして用いて,ディープニューラルネットワークを主な対象とした,データフロー型ハードウェア・コンパイラの開発に取り組んだ.
著者
坂本 圭 福元 哲也 平井 奉博 橋本 伸朗 前田 智 中馬 東彦 松下 任彦 酒本 高志
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.161-164, 2018-03-25 (Released:2018-05-21)
参考文献数
10

壊死性筋膜炎は進行すると死亡に至る重篤な感染症であり,死亡率は32.2%と高く,早期の治療が必要である4).壊死性筋膜炎の診断で緊急に切断術を施行した3症例を経験したので報告する.
著者
竹丸 巌 加塩 信広 前野 幸二
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.255-264, 2009-06-20 (Released:2012-09-26)
参考文献数
16

1999年に鹿児島湾内で上湾症が高率に発生した養殖場のブリおよびカンパチについて,形態異常の特徴とその原因について調べた。両魚種ともに上湾症発生の原因と考えられる細菌や寄生虫の感染は認められず,ブリについては形態異常を起こす可能性のある農薬であるカーバメート系殺虫剤の残留検査を行ったが,検出されなかった。体型および脊椎骨の形態的特長として,ブリでは魚体の中央部または中央からやや後方部における腹側の方向への形態異常(後湾)と,尾部における背側の方向への形態異常(前湾)が複合的に発生しているものが多く認められた。カンパチではブリと同様の形態異常も見られたが,ブリよりも形態異常の程度が小さく,形態異常部位はやや前方に位置していた。また,カンパチではこのような形態異常以外に,ブリにはなかった魚体中央よりやや前方における著しい背側の方向への形態異常(前湾)が認められた。ブリとカンパチとの間に見られる形態異常の特徴の違いは,脊椎骨の構造の違いあるいは種苗の由来(天然・人工)によるものと推察された。

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著者
前川啓治 棚橋訓編
出版者
明石書店
巻号頁・発行日
2005
著者
小磯 花絵 前川 喜久雄
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.54(2001-NL-143), pp.41-48, 2001-05-31

国立国語研究所,通信総合研究所,東京工業大学では,科学技術振興調整費開放的融合研究制度の下,自発性の高い話し言葉の情報処理技術の確立を目標に活動を進めている.現在国立国語研究所では,このプロジェクトの一環として,モノローグを対象とした大規模な日本語話し言葉コーパスを作成している.このコーパスには,約700時間の音声(約700万形態素に相当),書き起こしテキスト,および形態素などの情報が含まれる予定である.本稿では,本コーパスの設計の概要および書き起こし基準の詳細について紹介する.
著者
大村 裕治 木宮 隆 松田 隆 國吉 道子 前川 貴浩 川端 康之亮 安達 駿悟 網谷 雄也
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
pp.18-00010, (Released:2018-10-23)
参考文献数
35
被引用文献数
10

既報の6M塩酸中110℃で24時間加水分解後,アミノ酸自動分析計による3-メチルヒスチジン(3-Mehis)定量値をバレニン(Bal)量とする分析法を再検討した。3-Mehis定量値のばらつきが最小となる加水分解時間は3時間,3-Mehis/Bal比が安定し両者の間に高い直線的相関が得られるBal濃度は0.05-10 μmol/mLでBalからの3-Mehis生成率は89%だった。本法でアカマンボウ筋肉エキスを分析したところヒゲクジラ類を上回る高濃度のBalが含まれることが判明した。
著者
大沢 愛子 前島 伸一郎
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.192-205, 2008-06-30 (Released:2009-07-01)
参考文献数
62
被引用文献数
3 5

小脳は,長い間,純粋に運動の調節や制御を行うための神経基盤であると考えられてきた。しかし,1980 年代の半ばごろから,小脳と高次脳機能の関連性を示唆するような解剖学的,神経心理学的な種々の報告がなされるようになってきた。特に,近年の電気生理学や神経画像の発展に伴い,注意や記憶,視空間認知,計画,言語などに関するさまざまな課題の遂行に,小脳が関与していることが明らかになってきた。臨床的にも,脳卒中や自閉症,注意欠陥・多動性障害例などで小脳病変と認知機能障害に関する報告がみられる。   小脳と高次脳機能の関連についての仮説としては,小脳が内部モデルによる行為のモニターとフィードバックを行うとする説,情報処理の円滑な協調化を行うとする説,タイミングの制御を行うとする説などがある。しかし,これまでの研究には,運動出力との分離が困難である,前頭葉の賦活を伴うなどの種々の問題点もあり,小脳がどのように認知機能に関連しているのか,という問いに答えるためのエビデンスの構築が望まれる。
著者
吉野 豊 前田 雅量
出版者
兵庫県立農林水産技術総合センター
雑誌
兵庫県立農林水産技術総合センター研究報告 森林林業編 (ISSN:13477749)
巻号頁・発行日
no.53, pp.5-9, 2006-03

強度に間伐(間伐本数率:55.5%)後、落葉広葉樹苗木を樹下植栽したスギ人工林で9年間の下層植生の変化と、それが植栽苗木の成長に及ぼす影響、および間伐による上木の肥大成長促進効果を検討した。対照区(無間伐区)では、試験開始前に林床植生はほとんど認められなかった。一方、間伐区では試験開始前の林床植生の種数は23種と少なく、植栽後に苗木の成長を阻害したと思われるものは、局所的に分布したチマキザサでのみであった。しかし、間伐2年目には、多年草、落葉低木、落葉高木などを主に種数は56種と著しく増加した。このうち植生高からみて植栽直木の成長を姐害したと思われるものは、チマキザサ、タニウツギ、ヨモギなど少数であり、分布範囲も局所的であった。この結果から、林内の植生量は少なく下刈が軽減できることがわかった。上木の胸高直径の肥大成長をみると、間伐区は対照区に比較して上位の径級に移行した割合が多く、平均胸高直径も有意に大きく、強度間伐による顕著な肥大成長の促進効果が認められた。強度に間伐した相対照度40%程度のスギ壮齢林内に下木を植栽する方法は、林床植生の種・量は増えるが、下刈りが軽減でき省力的に更新樹を育成できるうえに、上木の肥大成長を促進することによって、将来長伐期の択伐林型に誘導するのに適した施業法といえる。