著者
保田 祥 小西 光 浅原 正幸 今田 水穂 前川 喜久雄
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.657-681, 2013-12-13 (Released:2014-03-13)
参考文献数
22

時間情報抽出は大きく分けて時間情報表現抽出,時間情報正規化,時間的順序関係解析の三つのタスクに分類される.一つ目の時間情報表現抽出は,固有表現・数値表現抽出の部分問題として解かれてきた.二つ目の時間情報正規化は書き換え系により解かれることが多い.三つ目のタスクである時間的順序関係解析は,事象の時間軸上への対応付けと言い換えることができる.日本語においては時間的順序関係解析のための言語資源が整備されているとは言い難く,アノテーション基準についても研究者で共有されているものはない.本論文では国際標準である ISO-TimeML を日本語に適応させた時間的順序関係アノテーション基準を示す.我々は『現代日本語書き言葉均衡コーパス』(BCCWJ) の新聞記事の部分集合に対して,動詞・形容詞事象表現に TimeML の 〈EVENT〉 相当タグを付与し,その事象の性質に基づき分類を行った.また,この事象表現と先行研究 (小西, 浅原, 前川 2013) により付与されている時間情報表現との間の関係として,TimeML の 〈TLINK〉 相当タグを付与した.事実に基づき統制可能な時間情報正規化と異なり,事象構造の時間的順序関係の認識は言語受容者間で異なる傾向がある.このようなレベルのアノテーションにおいては唯一無二の正解データを作ることは無意味である.むしろ,言語受容者がいかに多様な判断を行うかを評価する被験者実験的なアノテーションが求められている.そこで,本研究では三人の作業者によるアノテーションにおける時間的順序関係認識の齟齬の傾向を分析した.アノテーション結果から,時間軸上の相対的な順序関係については一致率が高い一方,時区間の境界については一致率が低いことがわかった.
著者
中原 孝信 前川 浩基 羽室 行信
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.442-448, 2013-08-01

本研究は,特定のテレビ番組を視聴しながら投稿されたツイートの内容を解析することで,急激に投稿数が増加したときの内容などを検出し,それらを要約する手法を提案する.提案手法では,まず単語の共起関係に基づいたクラスタリングから概念を生成する.そして,バースト時の投稿と番組の台詞に一致した投稿を興味対象のツイートとして考え,それらのツイートをできる限り多く被覆するような少数のクラスタをナップサック制約付き最大被覆問題を用いて抽出する.抽出されたクラスタは,興味対象のツイートから得られたトピックを表していると考え,膨大なツイートから特定の目的に関係する投稿内容を要約することが可能である.計算実験では,テレビアニメーション番組「宇宙兄弟」を対象にして提案手法の有効性を示す.
著者
市原 学 那須 民江 上島 通浩 前多 敬一郎 束村 博子
出版者
名古屋大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

18匹の雄F344ラットを6匹ずつの3群にわけ、それぞれに1-ブロモプロパン1000ppm、2-ブロモプロパン1000ppm、新鮮空気を8時間曝露した。16時間後に断頭し、精巣を取り出し、液体窒素で急速凍結した。液体窒素にて冷却しながら凍結精巣をハンマーにて粉砕し、凍結粉末からRNA抽出キットを用いてRNAを抽出した。電気泳動にてRNAの分解がないことを確認し、ラット精巣用DNAマイクロアレイ(DNAチップ研究所)を用いて遺伝子発現の変化を調べた。5082遺伝子中、263の遺伝子が1-ブロモプロパンと2-ブロモプロパンの曝露で共通して抑制されており、それには、S100,Creatinine kinase、glutathione S transferaseが含まれていた。37の遺伝子は1-ブロモプロパン曝露のみによって抑制され、119の遺伝子は2-ブロモプロパン曝露によってのみ抑制されていた。選択した遺伝子の遺伝子発現変化をリアルタイムPCRにより確認した。また、アロマターゼ遺伝子は1-ブロモプロパン,2-ブロモプロパンの曝露により発現が抑制されていた。1-ブロモプロパン曝露によって、ナトリウムチャンネル関連遺伝子の誘導、ATP結合、イオンチャンネル系の抑制、2-ブロモプロパン曝露により、DNA損傷関連遺伝子が誘導されており、1-ブロモプロパンが神経毒性が強く、2-ブロモプロパンが精租細胞アポトーシスを誘導するという過去の実験結果を説明するものであった。
著者
中村 清 宇津井 雄三 前田 忠男
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.16, no.6, pp.540-546, 1967

The authors had given, in their previous paper, the optimum conditions for the decomposition of <I>N</I>-methyl compounds into methyl iodide in hydroiodic acid in the microdetermination of <I>N</I>-methyl group with volumetric finish.<BR>In this paper, more sophisticated methods with gravimetric finishes using solid absorbents were investigated in place of the volumetric finish.<BR>Measurement of the weight increase of the heated silver granules caused by the absorbed iodine, which had been given after the combustion of methyl iodide, was prefered to give satisfactory results in a routine analysis, while that of the molecular sieve 13-X resulted by the absorbed methyl iodide required a further investigation concerning significantly high(+) error with certain compounds.
著者
泉 淳 前嶋 和弘 西山 隆行 馬 暁華 堀 芳枝 渡辺 将人 飯島 真里子 平塚 博子
出版者
東京国際大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

米国のイスラム系は、その内部構成の多様さにもかかわらず、その政治的関与と発言力を拡大させている。これは、米国内の他の少数派集団にも共通する傾向である。しかし、中東・イスラム地域における政治的不安定を反映して、米国内で「イスラム恐怖症」とも呼ばれる現象が顕著となったため、米国のイスラム系はこれへの防御的反応として政治的発言を活発化せざるを得ないという特殊性を持つ。このため、イスラム系は米国の政治外交に積極的な影響を与えるには至っていないが、人権擁護を中心とする社会的諸活動においては大きな進展を見せている。長期的には、イスラム系の政治的関与と発言力は、より積極化するものと考えられる。
著者
末吉 昌宏 前藤 薫 槙原 寛
出版者
森林総合研究所
雑誌
森林総合研究所研究報告 (ISSN:09164405)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.171-191, 2003-09
被引用文献数
7 2

茨城県北部の温帯落葉樹林の二次林、混交林、自然林に調査地を設定し、皆伐後の二次林回復時における有弁類を除く双翅目短角類の種数・個体数を通年で調査した。その結果、41科441種余りを見い出し、それら短角類群集の種構成は森林の成熟に伴って変化する傾向にあることが明らかになった。植食性、菌食性、腐食性、捕食性および捕食寄生性といった短角類の多様な食性を代表する分類群としてミバエ科、トゲハネバエ科キイロトゲハネバエ属、ハナアブ科、クチキバエ科、キアブ科、キアブモドキ科、アタマアブ科が挙げられ、それぞれが森林の遷移に対して異なった応答を示すことが明らかになった。また、本研究では森林に生息する主要な短角類として、オドリバエ科、ハナアブ科、シマバエ科が挙げられ、そのうちハナアブ類群集の種構成は遷移の進んだ林齢の似通った二次林および自然林間では殆ど変化は無く、皆伐地、混交林、壮齢林のように異なる森林タイプで大きく異なっていた。そのため、ハナアブ科は様々な森林タイプを含む景観の多様性を評価するのに有用であると考えられる。
著者
大前 慶和
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

体験型環境教育の重要性が主張されている。しかし、体験型環境教育がすぐさま環境配慮行動に結びつくわけではない。むしろ、体験型環境教育は環境価値に対する自己判断のプロセスを経ることによってはじめて環境配慮行動に結実すると見るべきである。そこで、大学生を対象とした環境教育プログラムを構築した。アクティブ・ラーニングを促すプログラムであり、生ごみのアップサイクルによってスイーツをプロデュースするプログラムである。課題解決型学習プログラムと言える。エコスイーツ活動と呼ばれる活動内容となっており、大学生は様々な活動を通じて実行可能性を自ら評価する能力を習得できるようになっている。
著者
安田 次郎 末柄 豊 前川 祐一郎 上島 享
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

室町時代から戦国時代の奈良興福寺の大乗院門跡を中心にして、さまざまな「人のつながり」について基礎的なデータを蓄積し、寺院社会の構造や機能をあらためて考えるための手掛かりを得た。京都や奈良の門跡や院家は、貴族、武士、それに在地の諸勢力などの出身者が僧として、あるいは寺社の職員として出会って相互に結びつく場であったこと、僧たちはイエから切り離された存在ではなくイエや家族の利害を代表して行動したこと、寺院社会は異集団の出身者が出会い、結びつき、補完し合う場として機能したことなどの見通しを得た。
著者
前田健次郎 編
出版者
柳谷藤吉
巻号頁・発行日
vol.第1-4号, 1876
著者
宮前 武雄
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.369-377, 2005-04-25

抗癌剤投与による易感染宿主で向肺ウイルス感染が示す臓器への侵襲態度を動物モデルで解析した.コーチゾン(CO), シクロフォスファミド(CY)の皮下接種マウスが経鼻感染したセンダイウイルスの臓器への侵襲をウイルス血症, ウイルス抗原の検出で追跡した.CO, CYの各1回接種と名古屋株の感染時, ウイルス血症が18時間目と3日目に夫々出現し, 同時に気管リンパ節に侵襲した.更に両群の肝細胞(10日目)と脾リンパ細胞(5-10日目)に侵襲した.感染後, COとCYを夫々3回接種時, 大脳組織(神経細胞, 脈絡叢)への侵襲と肺の重篤感染を夫々に認め, 各腹腔内実質臓器への侵襲は軽度に増し, 双方間に有意差がなかった.感染時にCO1回, 更にCY2回接種の場合, 脳血管の抗原陽性率が高く, 星膠細胞層, 軟膜, 脈絡叢, 脳室上皮も抗原陽性となり神経細胞への侵襲は稀であった.全臓器への侵襲は顕著に上昇し, 呼吸器, 脳, 腹腔内実質臓器の順に低減した.血清HI価は陰性を保った.MN株感染の場合, さらに星膠細胞の侵襲から神経細胞侵食, 神経膠症を招く脳関門の破壊を見, 該血管の抗原は60日間は存続した.CO, CY併用2群は感染後, 死マウスは抗原陽性大脳血管に結節形成を示し, 遅延型過敏症を示唆した.
著者
三角 修子 前川 嘉洋 三宅 大我 横山 眞爲子
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 = The Nishinihon journal of dermatology (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.471-474, 2005-10-01
被引用文献数
2

症例は58歳,女性。1992年から慢性腎不全で人工透析を導入された。2003年1月頃から左上腕,右大腿,下腿に疼痛を伴う黒色壊死が突如出現した。2003年5月14日当科初診時,黒色壊死部周囲に暗赤色の皮膚病変を認めた。皮膚生検にて,表皮の変性,壊死と皮下組織の小中血管壁への石灰沈着の所見を認め,calciphylaxisと診断した。低カルシウム血症はなく,副甲状腺ホルモン値も正常値であったが高リン血症を認めていた。抗生剤の点滴と軟膏処置による保存的加療を施行した。当初,感染コントロールは困難で皮膚病変は拡大する一方であったが,塩酸セベラマーの内服を開始したところ,皮膚病変の進行は見られなくなり,潰瘍も縮小,経過は良好であるように思われた。しかし10月21日,嘔吐後に突然心肺停止状態となり,同日永眠された。
著者
津田 祐輝 孔 全 前川 卓也
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.378-388, 2014-01-15

本論文では,Wi-Fi位置計測における大きい誤差を持つ計測エラーの検出,修正を行う手法を提案する.Wi-Fi位置計測において,参照するアクセスポイントの移動や位置データベースの劣化により,数十mを超える計測誤差が発生することがある.提案手法では,過去のWi-Fi計測位置の履歴から現在位置を推定し,Wi-Fi計測位置と比較することでWi-Fi計測エラーを検出,修正する.このとき,ユーザのコンテキストによって,位置推定の性能が大きく変化するため,様々な特性を持つ位置推定手法を複数用いることで,コンテキストアウェアなエラー検出フレームワークを構築する.評価実験では,実際に様々なコンテキストを想定して,収集したWi-Fi位置計測データを使用し,提案手法の有効性を検証した.