著者
前田 貴博 西 正博 新 浩一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J95-B, no.10, pp.1353-1363, 2012-10-01

筆者らはヒトの屋内への侵入検知を目的とし,UHF帯テレビ放送波を用いたヒト検知システムを提案している.本システムは,テレビ放送波の受信レベルがヒトの動きに応じて変動することを利用してヒトの有無を判定している.これまでは,テレビ放送波を受信するアンテナを屋内に設置し,受信レベルが変動した場合に「屋内にヒトが居ると判定(検知)」していた.一方,受信レベルは屋内のヒトだけではなく,屋外のヒトや車などの外乱の影響でも変動するため,「屋内にヒトが居なくても外乱により屋内にヒトが居ると判定(誤検知)」することがある.そこで本論文では,より高精度な検知性能を実現するために,屋内と屋外にアンテナを設置し,それぞれの受信レベル変動から外乱を判定し誤検知を低減する協調検知手法を新たに提案する.検知対象として屋内のヒト,また誤検知対象の外乱として屋外のヒト,車を想定し,検知確率及び誤検知確率を従来手法と比較し,協調検知手法の性能を評価した.実測結果から,従来手法では外乱により誤検知が生じる一方,協調検知手法ではどの外乱に対しても誤検知が低減されたことを確認した.またシミュレーション結果により,継続時間が3秒の外乱が10秒に1回生じるような状況においても,提案手法は,誤検知を従来手法と比べて約1/100に低減でき,また約50%の時間率で確実にヒトを検知できることを明らかにした.
著者
前田 富士男
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

西洋絵画は近世以降、物語性に即して線描・明暗・色彩を統合して自然主義的な再現を実践してきた。しかし、1800年頃に始まる近代では、19世紀後半の印象主義の登場や20世紀初頭の抽象絵画の成立が告げるように、色彩表現が圧倒的に重要な役割を演じるようになる。しかし、こうした問題を絵画作品の構造問題として追究する試みは、従来なされていない。われわれが本研究で「色彩メディア」概念をあえて使用するのは、作品構造の変革に対応する色彩表現の変容を追究するためにほかならない。その意味で、本研究では、「オーバーラップ」をキー概念として提示する。印象主義時代に始まる点描やクロワゾニスムは、本質的には、色彩を重層化、オーバーラップする方法以外の何ものでもない。点描やクロワゾニスムについて、画面平面内のある色相と他の色相とのコントラストや視覚混合がこれまで重視されてきた。しかし、そうではない。ある画面層内における色彩の関係づけにとどまらず、その画面層と別種の関係づけをもつ他の画面層とを重ねることが重要なのだ。つまり、色彩の関係化の関係化が問題なのである。それをオーバーラップと呼ぶ。この方法は言い換えれば、画面層そのもののオーバーラップ、つまり、画面のポリフォーカス化を含意する。セザンヌからピカソに連続する表現革新は一般に、色彩とは無関係に論じられるが、そうではない。また、開かれた作品として特徴づけられる近代美術の特性も、色彩とは別次元で理解されてきたが、そうした理解も不十分なのである。本研究は、19世紀後半からの色彩研究の一次資料をドイツ・スイスにて実証的に調査し、その資料の分析にもとづき、色彩メディアのもつ絵画における特性を「オーバーラッブ」と統括し、色彩のオーバーラップこそ、近代絵画の作品構造の変革をも照らしだすとの、新しい視座を提起する。
著者
前岡 淳 田辺 良則 石川 冬樹
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.3_109-3_122, 2013-07-25 (Released:2013-08-31)

Java PathFinder (JPF)に代表されるソフトウェアモデル検査技術は,テスト工程における不具合検出に有効であるが,状態爆発への対応が課題となる.この課題を解決する手法として優先度に基づくヒューリスティック探索手法が提案されている.プログラムによって適する探索手法や優先度の付け方が異なるため,有効なヒューリスティック探索手法が多数存在することがのぞましい.本論文では,「範囲限定探索」に基づくヒューリスティック探索手法を提案する.従来手法は,ヒューリスティック関数によって各状態から不具合に早く到達できるかを見積もり,これに基づいて探索順序を決定する.これに対して提案手法では,「探索打ち切りポリシー関数」によって各状態から不具合に早く到達できるかを判断し,見込みが低い場合にはその状態からの探索を打ち切る.提案手法の有効性を検証するためにJPFに実装し,検証ツール評価用に作成されたテストプログラムを用いて既存手法との比較実験を行った.Javaによるテストプログラムを用いた実験の結果,提案手法が状態数比で2倍以上優位となるケースを確認し,ヒューリスティック探索の適用の幅が広がることを示した.
著者
園生 智弘 徳重 真一 田中 真生 前川 理沙 椎尾 康
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.1, pp.161-163, 2012 (Released:2013-04-11)
参考文献数
9

Crowned dens syndrome(CDS)は軸椎歯突起周囲の靭帯にピロリン酸カルシウム結晶が沈着し,発熱,頸部痛,炎症所見を示す急性関節炎で,高齢女性に好発する偽痛風の一型である.2症例は72歳女性と31歳女性,いずれも頸部痛,炎症反応の上昇を伴った.頸椎単純CTとその再構成画像で歯突起周囲靭帯の石灰化を認めCDSと診断.非ステロイド性抗炎症薬投与により,自覚症状と炎症所見の消失をみた.炎症所見を伴う頸部痛では本疾患を念頭におき,CTで石灰化の有無を検討する必要がある.
著者
出口 竜作 佐々木 博成 岩田 薫 越前 恵
出版者
宮城教育大学
雑誌
宮城教育大学紀要 (ISSN:13461621)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.53-61, 2009

カイヤドリヒラムシ(Stylochoplana pusilla)は、主にイシダタミガイ(Monodonta labio)の外套腔に生息している。本研究では、フィールドでの調査と研究室内での飼育・実験により、本種の生殖とライフサイクルについての基礎的知見を得ることを目指した。イシダタミガイを定期的に採集し、内部から得られたカイヤドリヒラムシの個体数、個体サイズ、および性成熟の有無について調べたところ、夏期にのみ性成熟した個体が見られること、秋期の初めに小型で未成熟な個体が急激に増加することが分かった。性成熟したカイヤドリヒラムシの受精嚢内には、すでに受精した卵が保持されていた。このような受精卵は減数分裂第一分裂中期で細胞周期を停止していたが、海水中に産卵されると減数分裂を再開し、卵割を経て幼個体に至った。また、人工的に海水中に切り出されることによっても発生を開始し、一部は幼個体にまで発生した。未成熟なカイヤドリヒラムシをアルテミア(ブラインシュリンプ)の幼生を餌に23℃で飼育したところ、性成熟が誘起され、受精嚢内には正常な受精卵が見られるようになった。また、同じ飼育法で幼個体を性成熟させ、再び産卵させることにも成功した。以上のような飼育法の確立により、カイヤドリヒラムシのライフサイクルを制御し、1年間を通して生殖に関する観察・実験を行うことが可能になった。
著者
前多 松喜
出版者
浜松医科大学
巻号頁・発行日
1989-10-06
被引用文献数
11

浜松医科大学学位論文 医博論第75号(平成元年10月06日)
著者
前川 泰之 白石 新
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. A・P, アンテナ・伝播 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.38, pp.17-22, 2000-05-05
参考文献数
7

大阪電気通信大学(寝屋川市)構内の衛星通信実験局で過去14年間連続測定を行ったCS-2, CS-3およびN-STARビーコン波(19.45GHz、右旋偏波、仰角49.5°)を用いて、各種前線通過時の降雨減衰の累積時間と継続時間特性を調べた結果、4dB以下のしきい値では温暖・寒冷・閉塞前線、5dB以上のしきい値では停滞前線や夕立・台風による降雨時に発生する減衰がより大きな累積時間率を占めることが分かった。また、継続時間率分布は3〜10dB程度のしきい値に対し、寒冷前線、停滞前線、夕立・台風の順に大きくなり、しきい値が低い場合には温暖前線が占める時間率が大きくなり、高くなると停滞前線南側の影響が大きくなることが示された。
著者
前川 泰之 初田 健
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SAT, 衛星通信 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.254, pp.169-174, 2009-10-22
参考文献数
4

2003〜2008年の間に、大阪電気通信大学(寝屋川市)において連続的に測定されたKu帯各種衛星電波の受信レベルデータを用いて、降雨減衰量のサテライトダイバーシティ効果に対して時間遅延ダイバーシティを併用した場合の時間率改善について検討を行った。方位角が互いに30°から60°程度異なる3種類の衛星伝搬路間において、累積時間率が0.1〜0.01%程度の減衰量に対する時間率改善効果は、サテライトダイバーシティ単独では数十%に止まるが、両衛星間で時間遅延ダイバーシティをさらに行うと60分程度の遅延時間で一桁を超える改善が得られることがれた。この改善効果は伝搬路が西側の衛星の信号を遅らせる方がより効果が上がり、台風や夕立よりも寒冷前線や停滞前線による降雨でより顕著であることが分かった。さらにKu帯ではこの60分の遅延時間により減衰量約4dB以上で一桁を超える時間率改善が望めることが示された。
著者
星野 敏 松本 康夫 三宅 康成 九鬼 康彰 西前 出 中塚 雅也 山下 良平 橋本 禅 川口 友子 落合 基嗣
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

これまで、農村計画学の体系は形式知を対象にして発展してきたが、現場における計画づくりは少なからず暗黙知に依存していた。本研究の狙いは、ナレッジマネジメントの考え方を農村計画学に導入することによって、農村計画学の新たな方法論を確立することにある。KMの農村計画学への応用可能性は多岐にわたる。本研究において試みた研究課題をナレッジの種類によって分類すると、(1)地区計画づくりのナレッジ、(2)自治体の制度・政策のナレッジ、(3)地域づくりのナレッジ、(4)行政職員のナレッジ、(5)住民の地域ナレッジ、(6)ICTを用いたナレッジベースの構築の6つのグループに分類することができる。
著者
加納 圭 水町 衣里 岩崎 琢哉 磯部 洋明 川人 よし恵 前波 晴彦
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 高等教育研究部 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
no.13, pp.3-16, 2013-06

Science cafés have become popular as casual public dialogue format since 2005, when is considered the first year of science communication in Japan. We conducted a research focused on the participants in science cafés, using a method of marketing research," segmentation." We used the third generation of segmentation method, which was originally from Victorian Government in Australia and was considered as useful to access target audiences and segmented the participants in science cafes and other science and technology (S&T) events such as public lectures, science festivals as "the high engagement in S&T" and "the low engagement in S&T" segments. As a result, we found that major participants in science cafés belonged to "the high engagement in S&T" segment and this tendency was true of public lectures and science festivals. However, we also found that the following three formats had a potential to attract "the lowly engagement in S&T" segment. 1) The theme is relevant to their lives. 2) The events are held in a place where can serve alcohols such as a bar. 3) The theme looks collaborative with non-science area such as art or Japanese culture. We need more samples and further analysis to better understand the participants in S&T events.
著者
有賀 玲子 前田 篤彦 小林 稔
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.119-128, 2012

Consumers are very keen to communicate with a richer set of media and 3D shape is a very intuitive and powerful means of communication. Recently, users and developers have become more interested in capturing, in 3D, things that currently exist. New services will emerge if consumers can access 3D capture devices that are low cost and low effort. Existing 3D scanners take too long and are difficult to set up. We propose a box type capture device with which anyone can rapidly capture whole surfaces of target objects without any complicated operations. This paper proposes the three basic technologies of the capture device and demonstrates their feasibilities.
著者
前田 義信 伊藤 尚 谷 賢太朗 佐藤 輝空 加藤 浩介
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.58, pp.63-68, 2011-05-13
参考文献数
27
被引用文献数
1

社会問題のひとつである"いじめ"は強者から弱者に対して行われる従来型の一方的な攻撃から,対等な他者との間で加害者と被害者が流動的に入れ替わる双方向の攻撃へとその性質を変容させつつある.当事者はいつ自分が被害者になるか予想することもできない不安を常に持ち,それゆえ対等な他者からの承認を常に必要とする"フラット"な関係が築かれるようになった.また流動性ゆえに,教育者をはじめとする支援者も対策に頭を悩ませている.そこではどのような事態が生じているのか?本稿では,エージェント,価値,エージェントが起こす行動,相互作用で構成される形式的な人工学級モデルを提案し,マルチエージェントシミュレーションによってその現象を調べる.相互作用を繰り返すことによって自分が見出す価値数がゼロになった経験を有するエージェント(いじめ被害者)と,他のエージェントから反感性の行動を連続的に受け続けたエージェント(いじめ被害者の候補=潜在的いじめ被害者)を定義し,その状況を調べた.その結果,交友関係における対立回避i,相補性やべき乗分布に従ういじめの特性が観察され,支援者によるいじめ発見の困難さとの関連性を考察した.
著者
長谷部 伸治 牧 泰輔 金 尚弘 前 一廣 殿村 修 永木 愛一郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2013-05-31

本研究では、マイクロデバイスの設計論、集積化・安定操作手法を開発し、マイクロ化学プラントが精密大量生産プロセスとして運用可能であることを実証した。具体的には、Ritter反応プロセスに対して、反応条件の最適化、CFDシミュレーションによる解析に基づく設計を行い、49流路を並列化したデバイスを構築した。そして、30分間の安定操作を確認し、これを25系列内部ナンバリングアップすることにより204t/yの生産が可能であることを実証した。また、ヒドロキシメチルフルフラール製造プロセスを対象に、マイクロスラグ反応器の優位性を確認し、開発したマイクロデバイスとその設計・操作論の有用性を実証した。
著者
石國 裕一 近堂 徹 前田 香織
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MoMuC, モバイルマルチメディア通信 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.203, pp.7-12, 2011-09-01
参考文献数
9

インターネットを利用した映像配信サービスは,利用者の要求や視聴形態が多様化・高度化してきている.これらの変化や要望に対して,配信プラットフォームでは柔軟かつ迅速に対応していくことが求められる.本稿では,利用者の要望する映像の加工などの機能拡張が容易なビルディングブロック方式を採用したゲートウェイによる映像配信プラットフォームの設計と実装について述べる.本プラットフォームの特徴は,ゲートウェイの各機能ブロック(モジュール)の連携を管理・制御することによりユーザからの多様な要求に応じた映像加工処理を柔軟に行える点にある.