著者
松山 優治 岩田 静夫 前田 明夫 鈴木 亨
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究ノート (ISSN:09143882)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.4-15, 1992-08-29
被引用文献数
3

相模湾では時々,急潮が発生し,沿岸に設置された定置網に破損・流失という甚大な被害を与える.本研究では急潮を三例紹介し,その特徴について報告する.二例は沿岸域で急激な水温上昇と水位上昇を伴い,岸を右に見ながら湾を反時計回りに移動することが示された.観測点間の上昇の時間的なズレから,水温変化の移動速度は0.6〜1.0m/sで,水位変化の移動速度は2.0〜3.0m/sと推算された.二例のうち一例(1975年4月23日の急潮)は,黒潮の相模湾への接近が原因と考えられた.他の一例(1988年9月18日の急潮)は台風通過に伴うエクマン輸送で沖合水が沿岸に蓄えられ,それが移動したと推論された.発生原因は異なるが伝播特性は非常によく似ており,水温変化は非線形の内部ケルビン波あるいは回転系での沿岸密度流として,また水位変化は陸棚波の移動として考えると説明ができる.もう一例は反時計回りの循環流に半日周期の内部潮汐が重なって強い流れとなって,網の流失を引き起こした.最大流速は0.8m/sを越え,60m深での水温変化の全振幅は8℃にも達した.
著者
前田 しほ
出版者
日本ロシア文学会
雑誌
ロシア語ロシア文学研究 (ISSN:03873277)
巻号頁・発行日
no.34, pp.75-82, 2002

現代ロシアの代表的な女性作家であるワレーリヤ・ナールビコワは,1958年にモスクワに生まれ,ゴーリキー名称文学大学を卒業し,1988年にЮность誌にデビュー作『昼の星と夜の星,光の均衡Равновесие света дневных и ночных звезд』を発表した。80年代後半から90年代にかけてロシア文学界は,ソ連時代の抑圧から解放された作品群が堰を切ったように登場し,華々しい時代を迎えていた。それらの中でもナールビコワの作品は言語に対する豊かな感性と官能的な言葉の響きで読者を圧倒し,その「過激さ」はソビエトの読書界に大きな衝撃をもたらした。作家アンドレイ・ビートフは上記の作品の序文で,彼女の作品世界は「驚くほど魅惑的で,透明で繊細で」,その文体は「息遣いのように彼女固有のもの」だと賞賛した。その一方で,ナールビコワの作品が保守的な読者や批評家からは大きな怒りと反発を買ったことも指摘せねばなるまい。ウルノフによれば,ナールビコワの小説は「技巧的な言葉使い」によって複雑にされた陳腐なものにすぎない。性や生理を正面から取り上げたため,当時は「スカートをはいたマルキ・ド・サド」「ポルノグラフィ」「官能小説」といった風評が流れたという。しかし実際は,ナールビコワの描写はエロティックではあっても,ポルノグラフィの性質はまったく欠いている。性行為そのものの描写は避けられ,隠楡やほのめかしを駆使した言葉遊びが展開される。エロティックなのは文体のかもしだす雰囲気なのだ。ナールビコワにコンセプチュアリズムとの関連性が指摘されるのも,言葉遊びを駆使した文体ゲームによるところが大きい。代表的な例だけでも,しゃれ,文字・言葉の入換え,くりかえし,否定のнеを多用した言葉遊びなどがあげられる。まるでゲームでもしているかのようだ。また,ロシア古典文学をはじめとして,聖書や史実,おとぎ話,スローガン,子ども向けテレビ番組などからさまざまなテキストが借用される。作品の題名や人物名にもその遊び心はよくあらわれている。これら文体的特徴については別の場で論じているので,本稿では深く立ち入らないが,ナールビコワの官能性は文体と密接に結びついたものである。しかしエロティシズムがいかにして生生れ高められているかという構造を解明するには,文体との関係だけでなく,プロットの面からの考察も必要だろう。従来の議論では,文体の濃密さに対してプロットの稀薄さが目立つと指摘されてきた。確かにプロットは動きが少なく,劇的な変化も展開も期待されない。しかしそれは男女の恋愛に描写を集中するために,それ以外の事物が極力省略されているからだろう。ナールビコワの描く恋愛は常に「不可能」であることを前提とした,いってみれば禁じられた恋だが,まさにこの禁止こそがエロスを生みだす要因である。なお今回の分析にあたっては『一人目のプランと二人目のプランПлан первого лица. И второго』(以下『プラン』と略す)と『オコロ・エコロОкодо зкодо』の二作品を題材とした。
著者
前田 英俊 田崎 信幸 竹内 公博 小川 義雄 松場 貢
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.59, pp.9-12, 1992-12-21
被引用文献数
5

1.平成3年9月14日に台風17号,次いで27目に19号が長崎県に襲来し,水稲に大被害を及ぼした。とくに諌早地域を中心とする県失地帯に大被害を及ぼしたので,31地点の坪刈調査により,被害要因の生態的解析を行った。2.品種による差異 早生の日本晴は被害が最も少なく,早生の晩のヒノヒカリから強く影響を受けており,出穂期の遅い品種ほど被害が大きかった。出穂期から登熟期のごく初期に台風にあったものがとくに登熟歩合への影響が強く,登熟が進んでいたものは影響が少なかった。また,出穂期の遅い品種ほど粒厚の薄い方に分布が多くなった。3地形による差異 海岸近接地および平坦地で直接海からの暴風にあった地点での被害は著しいが,回りを山に囲まれ風をあまり受けなかった地点は影響が少なかった。4.海岸からの距離による差異 海岸から離れるほど収量,品質ともに向上した。とくに海岸から2.5?以内に作付されたものは品質低下が著しく,塩分濃度の高い潮風がこの範囲までは強く吹いたことを示した。
著者
中村 高宏 前田 卓志 松下 雅仁
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.674, pp.167-172, 2006-03-10
参考文献数
6

指紋認証装置はコストの性能のバランスのよいバイオメトリクス認証技術として最も普及している.本報告では,指紋特徴点の照合処理において,照合相手指紋の特徴点と一致しない特徴点(不一致特徴点)を従来のように一律に切り捨てるのではなく,不一致特徴点に対しても「真の相手側特徴点と一致しない真の特徴点かどうか」を示す「真の不一致特徴点らしさの信頼度(不一致信頼度)」を評価して照合スコアに反映することにより,他人指紋の判別精度を向上するという照合方式を提案する.実験により,不一致特徴点を真偽評価なしに一律に扱う従来の照合手法とは異なり,本人指紋の拒否エラー率がほとんど変化することなく,他人指紋の受容エラー率のみが改善されることを示す.
著者
前野 博 淺間 正通 西岡 久充
出版者
至学館大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

Web上での遠隔的協調学習環境を用いたプレオーガナイズド学習環境開発を行うと共に、対面授業をも組み込んだブレンディッドラーニングを通して、語彙学習における効果を検証した。プレオーガナイズド段階の活動履歴から、事前に適切な動機付けを行うことで活動状況が活発化した点が検証されたので、個々の自律学習が促進される可能性もが示唆された。研究代表者である前野の体調不良によりコア研究に関しては長期中断を強いられはしたが、研究スキーム自体は研究分担者による分担研究によって維持されたので、eラーニングでの進捗率と学習効果の連関性、及び対面補完を援用してのブレンディッドラーニングの効果などを明らかにするに至った。
著者
毛受 矩子 前川 厚子 佐藤 拓代 中嶋 有加里 渋谷 洋子 鑓溝 和子
出版者
四天王寺大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

女性の晩婚と晩産化は増加の一途にある。高齢妊婦に対する支援の方向性を明らかにした。①妊娠期から切れ目ない子育て支援の構築についてフィンランド・ネウボラの現地調査、②ネウボラ調査の成果を大阪と東京で保健師を対象に国際シンポジウム等の開催、③妊婦教室参加者950名を対象にした調査を実施。高齢・不妊治療での妊娠が39.3%あり。地域保健での「高リスク妊娠の不安に応える相談機能」「医療保健福祉の連携した情報提供」の必要性が明らかにされた。④Skypeを用いた高齢妊婦を対象にした遠隔支援を試行し、高齢妊婦の出生した障がい児への支援を早期開始し心理面の安定効果が得られた。
著者
飯田 修一 春原 嘉弘 前田 英郎
出版者
農業技術研究機構近畿中国四国農業研究センター
雑誌
近畿中国四国農業研究センター研究報告 (ISSN:13471244)
巻号頁・発行日
no.3, pp.57-74, 2004-03
被引用文献数
5

「LGCソフト」は農業生物資源研究所放射線育種場で1992年に低アミロース良食味の低グルテリン米品種の育成を目的に,「ニホンマサリ」の低アミロース突然変異系統の「NM391」を母とし,低グルテリン米系統「LGC1」を父として人工交配を行いF1を養成し,F2から,近畿中国四国農業研究センター(旧中国農業試験場)において育成された品種である。2000年から「中国173号」の系統名で奨励品種決定調査等の試験を行ってきた結果,2002年9月3日に「水稲農林381号」に登録され,「LGCソフト」と命名された。「LGCソフト」は低グルテリン,低アミロース,良食味という新しい特性を持った新品種であり,タンパク質摂取制限が必要な腎臓病患者等の病態食等の利用が期待される。「LGCソフト」の特性の概要は以下の通りである。1 出穂期及び成熟期は「エルジーシー1」,「ニホンマサリ」とほぼ同じで「コシヒカリ」より4日程度遅く,育成地では早生の晩に属する粳種である。2 稈長は「エルジーシー1」,「ニホンマサリ」より8cm程度短い短稈で,穂長は「ニホンマサリ」並かやや短く,穂数は「エルジーシー1」,「ニホンマサリ」と同程度である。草型は偏穂数型である。3 収量性は「エルジーシー1」,「ニホンマサリ」よりやや劣る。4 耐倒伏性は,「エルジーシー1」,「ニホンマサリ」と同じやや強である。5 品質は,低アミロースのため糯種に近い白濁があるが,この点を除けば「エルジーシー1」,「ニホンマサリ」並の中である。6 食味は水加減を15%程度減じた場合,「エルジーシー1」,「日本晴」より明らかに良好である。また,「エルジーシー1」に「LGCソフト」を33~40%程度混米をした条件でも「日本晴」より食味が良好となる。7 白米中の易消化性タンパク質のグルテリン含量が低く,難消化性タンパク質のプロラミンが多い。8 米の用途としては慢性腎不全患者の病態食としての利用が考えられる。9 いもち病抵抗性遺伝子はPiaを持つと推定され,葉いもち圃場抵抗性,穂いもち圃場抵抗性はともに中である。10 白葉枯病抵抗性は中,縞葉枯病抵抗性に対しては罹病性で,穂発芽性はやや難である。「LGCソフト」は,中国,四国,近畿,東海から関東に至る地域の平坦地帯から中山間地帯に適すると考えられる。低タンパク質にするため多肥栽培はしない。登熟気温が低いとアミロース含量が増加する。栽培にあたっては,直播栽培,多肥栽培を避け,異品種の混入を注意する。また,腎臓病等への病態食として用いる場合には専門医,栄養士の指導を受ける。
著者
柿崎 淑郎 前田 陽二 辻 秀一
雑誌
研究報告情報システムと社会環境(IS)
巻号頁・発行日
vol.2013-IS-124, no.1, pp.1-7, 2013-05-31

本稿では,属性を集約して管理する属性プロバイダ [1] において,ユーザの代理人として属性交換を制御する e-執事を提案する.e-執事は属性プロバイダの一機能として,サービスプロバイダからの属性要求に対して,属性交換の可否を判断したり,属性開示の粒度を設定したりする.また,e-執事は属性交換の履歴を記録することで,ユーザが把握しきれない属性交換の全容を管理し,ユーザを支援する.
著者
千葉 昌幸 漆嶌 賢二 前田 陽二
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.676-685, 2006-03-15
参考文献数
12
被引用文献数
5

インターネットおよびE コマースの進展により,氏名,住所,資格情報などの"個人属性" 情報がインターネットを通じて様々な場所で交換されているが,同時に個人情報漏洩のリスクもまた急速に大きくなってきている.インターネットサービスにおいても個人情報保護法を遵守し,適切に個人属性を管理できる仕組みが求められている.本稿では,オープンな標準技術に基づき相互運用性の高い環境の下,個人属性を安全に交換,管理する情報化基盤「属性情報プロバイダ」を提案する.属性情報プロバイダは,運用システムの安全性について第三者機関の認定が得られた複数のサービス事業者により構成されるものである.利用者は,属性情報プロバイダに個人属性を登録および委託することで,以後は直接取引相手に渡すのではなく,利用者の同意を得たサービス提供者にのみ属性情報プロバイダを介して個人属性を安全に渡す.ネットワークプロバイダ,PKI などとともに今後,情報ネットワークの重要な基盤になると期待される.According to explosive growth of the Internet and e-commerce "personal attribute" information such like a name, a postal address and some qualifications have been exchanged on it. However privacy risk has been rapidly raised at the same time. Thus proper personal attribute management has been required conforming to the Personal Data Protection Law enacted in April 2005. In this paper we will propose the "Personal Attribute Provider" which is an infrastructure for secure exchange and management of personal attribute based on open standards that will provide higher interoperability. Some part of personal information will be registered and entrusted to the provider which should be founded by trusted authorized organization then user, attribute provider and service provider which can be online shopping site can exchange the personal attribute on the agreement with the user. Distributed management of personal attribute which relies on the federation of multiple attribute providers can reduce irreparable damage of privacy and digital signature technology used in the attribute provider can offer authenticated personal attribute to service provider. This paper describes the investigation result for it as it should be important commonly used infrastructure on the information network as well as network providers and PKI are in the future.
著者
前村 孝志 後藤 智彦 秋山 勝彦 二村 幸基 渡邉 篤太郎
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR AERONAUTICAL AND SPACE SCIENCES
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.27-32, 2002

平成13年8月29日初号機打上げに成功したH-IIAロケットは,幅広い打上げ能力と柔軟な運用性を持ちながら,コストはH-IIロケットの約半分の1機85億円以下であり,世界の商業化ロケットと遜色のない経済性を備えている.このため,信頼性向上とコストダウンを目的にエンジン,機体部品点数の大幅削減によるシステムの簡素化,軽量化に関し様々な新技術を投入した.また,地上設備についても改良を行い,ロケット組立て及び打上げ作業期間を大幅に短縮した.本報では当社が担当した数多くの新技術のうち主要項目について初号機打上げ結果とあわせて紹介する.
著者
前納 弘武 炭谷 晃男 飯田 良明
出版者
大妻女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

1996年4月1目、東京都小笠原村は新たな歴史の1ページを開くこととなった。これまでテレビ放送と言えば、NHK衛星放送2局しか視聴できなかった小笠原に、民間放送8局の地上波が導入され、東京23区と同じように合計10局のテレビ放送を享受することができるようになったのである。そこで、本研究はテレビ地上波導入をはさんで、「事前調査」と「事後調査」を行い、この2つの結果を比較分析することによって、テレビというマス・メディアが小笠原祉会に与える影響を実証的に明らかにしようとする点にあった。その研究成果については、『メディアの多様化と小笠原社会の変容』と題する調査報告書にとりまとめたが、そのうちの一部のみあげれば、先ず、テレビ視聴時間については、明らかに地上波導入以後の方が長くなるという結果であった。すなわち、事前調査では、2時間以内の視聴が6割程度に達していたが、事後調査では、3時間視聴が23.0%、4時間以上の視聴が29.1%という結果であり、長時間視聴者の増加はまことに顕著であった。しかし小笠原では、新聞の購読が習慣化されていないために、テレビ情報だけでは、これまでの「情報格差」からの脱却は不可能であることを指摘した。また、テレビ視聴時間の増大は、「家族や近隣での会話を少なくする」方向に作用していることが明らかになった。小笠原において、テレビ地上波の導入は人々の会話のチャンスを奪い取るという結果になっていることが判明した。ほかに、テレビの社会的な影響として、小笠原住民が懸念している事柄は、生活様式や思考様式の画一化作用、青少年の非行化作用、風俗や習慣の流動化作用などであった。これらの詳細な分析については、上記「調査報告書」のほか、別途、研究成果として刊行物を予定しているところである。
著者
狭間 研至 明石 章則 前畠 慶人 松田 良信 山下 博美
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.323-327, 2001-08-20

症例は71歳男性.肺線維症の経過観察中, 腺癌が発見された.術前検査にて坑Scl-70抗体が陽性であり, 全身性強皮症が疑われた.術前呼吸機能検査で, VC1,430ml(44.0%), FEV_<1.0>1,420ml(100.0%)と拘束性換気障害を呈していた.臨床病期はT_1N_0M_0 stage IAで, 低肺機能症例であったため, 胸腔鏡下左肺下葉切除術を施行し, 術後経過は良好であった.病理組織検査では, S^8の原発巣と, S^6のブラ壁から発生した扁平上皮癌が認められた.病理学的検索および遺伝子診断より, 本症例を重複癌と診断した.突発性肺線維症は肺癌の危険因子であるが, 膠原病に合併した二次性の線維化肺にも肺癌は発生しやすいとされている.このような症例の手術に際しては, 低肺機能のため術式の選択に苦慮する事が多い.根治性および低侵襲性の両立のため, 胸腔鏡下肺葉切除術の適応を積極的に検討すべきであると考えられた.
著者
前田 明彦
出版者
高知大学(医学部)
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

Q熱(Coxiella burnetii以下Cb感染症)の臨床像を明らかにすることを目的に、発熱性疾患、原因不明の脳髄膜炎、および、不定愁訴を伴う不登校の小児を対象に、Cb感染症の病因的関与について、血清学的および分子細菌学的検討を行った。Cbゲノムの検出にはPCR法を、血清診断としては、蛍光抗体法による、I相菌抗体、II相菌抗体の各々IgG、IgM抗体を測定した。小児6例をQ熱と診断した。全例で、ペット飼育歴があり、遷延性の発熱(19日間〜7カ月間)が主訴であった。随伴症状に特異的なものはなく、不明熱2例、呼吸器感染症から髄膜炎に進展した例、SLE様症状、4カ月間持続する易疲労性のため不登校を呈した例など非特異的かつ多彩な症状を呈した。診断根拠は、全例血液中Cb-PCR陽性で、髄膜炎の1例を除いてCb抗体の上昇が確認され、他の感染症、自己免疫疾患は否定し得た。明らかな免疫不全症を有さないにもかかわらず、異なった複数の常在菌による敗血症を合併した例が2例認められた。4例においてはミノサイクリン、ドキシサイクリンの2〜3週間投与が奏効した。慢性Q熱と診断した3歳男児例では、テトラサイクリン系薬剤は無効、Cbの標的食細胞のアポトーシスを誘導するIFN γ投与が有効であったが、投与中止後に再発死亡した。肝脾腫、慢性疲労症候群を呈した2例では、Cbゲノムが間歇的に陽性となり、年余にわたる長期の治療、フォローアップが必要であった。不明熱ではQ熱を積極的に疑うことが、診断に重要であることが確認された。不登校を主訴とする12歳例はアジスロマイシンの間歇的投与により、Cbゲノムの陰性化に伴い、易疲労性および不登校は改善した。不登校児ではQ熱を鑑別することが必要である。
著者
永田 晴紀 渡辺 三樹生 伊藤 光範 前田 剛典 戸谷 剛 工藤 勲
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
スペース・エンジニアリング・コンファレンス講演論文集 : Space Engineering Conference (ISSN:09189238)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.13, pp.1-4, 2005-01-20

Small-scale reusable sounding rocket system is under development to provide means of stratosphere observation and three-minutes microgravity experiment. The propulsion system is a hybrid type that uses solid fuel (plastics) and liquid oxygen as propellants and free from explosives, resulting in the dramatically reduced launch cost. To enhance the burning rate of the solid fuel and to augment the thrust, the rocket has employed a new fuel grain design. This new design, named CAMUI as an abbreviation of "Cascaded Multistage Impinging-jet", allows mixing and combustion to occur around stagnation points on fuel surfaces. Successful launch experiments using a 50-kgf CAMUI engine have proved the feasibility of the basic idea of the system. Finally, possible configurations of the stratosphere observation vehicle and the microgravity test vehicle are presented.