著者
松尾 篤 冷水 誠 前岡 浩 森岡 周
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.138-139, 2011
参考文献数
3

我々は,経頭蓋直流電気刺激(tDCS)が,健常者の上肢の運動機能を向上させるかどうかを検証した。健常若年者20名(平均年齢21.5 ± 1.2歳,男性16名,女性4名)を対象者とし,研究デザインはシングルブラインドクロスオーバーコントロール研究とした。tDCS刺激条件は,陽極tDCS条件と偽性tDCS条件とし,陽極を右運動関連領域(C4)に設置し,1 mAで20分間の刺激を実施した。測定アウトカムは,左上肢での円描画課題による軌跡長とはみ出し面積,左手握力とした。陽極tDCS後に円描画課題のはみ出し面積に有意な減少効果を認めた。他の測定項目,および偽性tDCS条件においては有意な変化を認めなかった。本結果より,陽極tDCSが健常者の非利き手での運動の巧緻性を変化させることが示唆され,tDCSによる運動関連領野の興奮性増大が関係したことが推察された。
著者
前田 健一
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

防波堤等の防災の構造物は海底や大きな石を積み上げたマウンドなどの地盤で支えられていることから,津波の押し波や引き波が構造物に作用する圧力だけでなく,地盤に波が浸透することにも着目した.その結果,地盤がゆるんで弱くなる液状化が被害を大きくするとともに,いったん構造物を超えた波が再び海面に落ち込む越流によっても,地盤の表面に液状化が発生し,大きく削る洗掘が発生することを明らかにした.さらに,津波襲来前の地震動による液状化の影響を調べ,巨大地震では以上のような液状化の負の連鎖が被害を大きくすることを示すとともに,被害を減らすための対策方法について,地盤工学の立場から提案している.
著者
大津 忠彦 古瀬 清秀 山内 和也 岡野 智彦 前杢 英明 千代延 恵正 千代延 惠正
出版者
(財)中近東文化センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

1999〜2000年度:イランにおける外国調査隊の考古学調査活動に関する対外情報の不明朗さから、当初計画したイラン西北部ギーラーン州との共同調査は、イラン文化遺産庁(Iranian Cultural Heritage Organization,以下ICHO)より不可とされた(1999年)。2000年度末にやっと、共同調査実施のためにはその前提として、ICHOと中近東文化センターとの間にイラン遺跡調査に関する「協定書(合意書)」の締結がなされなければならない旨が判明。この間、遺跡への調査目的での立ち入りは禁止となったので、周辺域概観踏査と博物館収蔵品調査に重点を置いた結果、デイラマーン地域に見られるイラン青銅器〜鉄器時代の指標的土器が東方はるかのゴルガーンやダームガーンにおいても認められること、ギーラーン州域ではその存在が疑問視されてきた遺丘がキャルーラズ渓谷内に一基(ジャラリイェ・テペ)あること、ターレシュ地域の石灰岩地帯には200余基の洞窟が存在し、石器、人骨資料採集伝聞があること等々を確認。2001年度:6月の「協定書(合意書)」締結をうけて発足した「日本・イラン合同調査団」は、セフィードルード川西岸域における踏査によって26遺跡をデータ化。それらの帰属年代はイラン鉄器時代からイスラーム時代とみられるが、採集資料はすべて表採品であるので時期の細分は比較資料皆無の現状では困難。この意味でも先年確認したジャラリイェ・テペの発掘が有用と判断できる。地勢学的観察によれば、遺跡は概して水の得易い、地滑りによって形成された山の緩斜面や侵食平坦面の縁に分布し、遺跡数の大半を占める古代およびイスラーム期の墓域は、基本的に同じ場所に営まれたらしい。これら墓域に近接の平坦面あるいは緩斜面が、当該地において未確認の古代における生活空間と想定できる。
著者
岸田 崇志 前田 香織 河野英太郎 近堂徹 相原玲ニ
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.517-225, 2004-02-15
被引用文献数
5

広帯域ネットワークやQoS保証のあるネットワークなど多様なネットワークが利用できるようになり,狭帯域ネットワークでは難しかったリアルタイム性の高い,また信頼性の高い音声伝送の実現が可能になってきた.そして,より品質の高い音声伝送への要求も高まっている.こうした変化にあわせ,音声伝送の利用場面も多岐にわたり,各場面で音声伝送システムに要求される条件も様々に異なる.本論文では,広帯域ネットワークで利用される様々な音声伝送場面をリアルタイム性,ロバスト性などの観点から分類した.これに基づき,各場面で要求度の高いパラメータを調整することにより,あらゆる利用場面に対応できる多目的な音声伝送システム``MRAT(Multipurpose RAT)''の設計と開発を行った.MRATは音声会議システムの1つであるRAT(Robust Audio Tool)を広帯域ネットワーク上で使用することを想定して拡張し,低遅延音声伝送機能やReed-Solomon符号を用いたFECによるエラー回復機構などを実装している.MRATの評価としてはエンド--エンド間の低遅延化とロバスト性向上の検証を行い,その有用性を示す.また,MRATの実証実験として1年間にわたって行った多地点での遠隔合唱や遠隔講義などについて記述し,多様な場面での実用性を示す.It is becoming easy to use various networks such as broadband networks and QoS guaranteed networks.Also, it is possible to realize high robustness and high real-time audio transmission.Moreover, high quality audio transmission is required.The most required condition for audio transmission differs depending on various scenes.In our study, we classify conditions of audio communications required in various situations from the viewpoints like real-time and robustness and design a multipurpose audio transmission system called as ``MRAT (Multipurpose RAT)''.We enhance RAT (Robust Audio Tool) that is one of audio communication tools, and add two new options. One is to keep shorter delays between end-nodes.Another is an error recovery using a Forward Error Correction with Reed-Solomon code to recover packet losses.By using these options, MRAT has three modes; a Chorus mode, a Conversation mode, and a Broadcast mode.Therefore, MRAT can correspond to various scenes.We show some evaluations of MRAT like measurements of end-to-end delays and effects of an error recovery.We also show practicality of MRAT by practical experiments such as distance chorus at multi-locations and distance lectures.
著者
前田 康成 後藤 文太朗 升井 洋志 桝井 文人 鈴木 正清 松嶋 敏泰
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.96, no.8, pp.572-581, 2013-08-01

近年,遊び手である人間の負荷を軽減することを目的に,遊び手が操作するキャラクタであるプレイヤキャラクタ(PC)以外にコンピュータが操作するキャラクタであるノンプレイヤキャラクタ(NPC)が導入されたロールプレイングゲーム(RPG)が増えてきた.従来からマルコフ決定過程(MDP)を用いたRPGのモデル化が行われているが,NPCを伴うRPGのMDPを用いたモデル化はまだ行われていない.そこで,本研究では,MDPを用いてNPCを伴うRPGのモデル化を行う.更に,MDPの真のパラメータ未知の場合に相当するNPCを伴うRPGについて,報酬の期待値をベイズ基準のもとで最大にする攻略法を算出するアルゴリズムを提案する.
著者
細川 徹 坪野 吉孝 辻 一郎 前沢 政次 中村 隆一
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.399-408, 1994-06-18
被引用文献数
28

65歳以上の地域高齢者2,591名を対象に,在宅生活における機能的状態を評価する指標として拡大ADL尺度を構成した.この尺度はバーセル・インデックス10項目を自立・介助の2値変数に変換したものと,老研式活動能力指標の手段的自立因子5項目を分離したものとを合成した2次的指標で,GuttmanおよびMenzelの基準を満たす1次元階層性尺度である.Mokkenの項目別尺度化係数により尿便禁制などを除外した12項目版は高い内的整合性を示した(KR-20信頼性係数0.9).この尺度の得点は加齢に伴い有意に減少し,性差はなく,バーセル・インデックスや老研式活動能力指標に比べて高齢者の健康状態(主観的健康状態と通院治療の有無)の差異を敏感に反映するものであった.
著者
菅山 謙正 渡辺 勉 高木 宏幸 五十嵐 海理 住吉 誠 前川 貴史
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、英国を代表する言語学者Richard A.Hudsonが新たに開発し、改良を重ねているWG理論(New Word Grammar,NWG)の枠組みを把握し、その認知文法的、あるいは構文文法的影響を探ることであった。3年間に亘って予定していた研究計画に従い、これをほぼ遂行し、NWGの修正点、改良点を明らかにし、言語理論として有望であると結論付けた。研究成果は、論文としても公刊したが、2011年中にはKyoto Working Papers in English and General Linguistics Vol.1、『ハドスンの英文法』として開拓社よりそれぞれ、論文集、書籍として刊行する。
著者
前田 稔
出版者
生涯教育学講座紀要編集委員会事務局
雑誌
京都大学生涯教育学・図書館情報学研究 (ISSN:13471562)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.213-216, 2005-03-31

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。
著者
前田 淑
出版者
福岡女子大学
雑誌
香椎潟 (ISSN:02874113)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.44-52, 1957-12-25
著者
中村 律子 宮前 淳子
出版者
香川大学
雑誌
香川大学教育実践総合研究 (ISSN:1345708X)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.157-168, 2008

本研究では,高齢者が自身の心身の健康をいかに認知しているかについて検討することを目的とした。Eriksonの心理社会的発達理論を参考に「健康生活認知尺度」を作成し,その尺度を用い,高齢者に半構造化面接法による調査を行った。その結果,高齢や身体的障害がそのまま主観的健康観に影響するのではないことが明らかとなった。また,高齢者の心理社会的発達を促すために,人生の振り返りを支援することの重要性が示唆された。
著者
前嶋 信次
出版者
慶應義塾大学
雑誌
史学 (ISSN:03869334)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.421-451, 1963-12

序言一 中国伝来の事情二 古代日本人とテリアカ三 中東地方での受け入れ四 アラブ医家の伝えたその製法In the Annals of T'ang dynasty, we see the mention about the envoy of Fu-lin Kuo, ordinarily identified with the Byzantine Empire, who came to Chang-an and presented "Ti-Yeh-Ch'ieh" to the then Emperor of China. The late Prof. F. Hirth thought-that the Ti-Yeh-Ch'ieh should be the theriaka (theriac, treacle) which is a very famous antidotal drug invented by a certain Greek physician in the 2nd century. We can find in various Chinese documents prior to the date of the above mentioned envoy of Fu-lin country the name of this medicament. For example, in "Shin-hsiu-pentsao" (New Materia Medica), compiled in 659 A. D., we read that this thing was a drug of the far western countries and foreign people brought it to China from time to time. In Japan, the oldest existent book which contains the record concerning the theriaka is "I-hsin-fang" written in 980 A. D. by Tamba-no-Yasuyori. On the other hand, it is not difficult to find out many articles relating to "tiryaq", theriaka, from among the Islamic literary works. Through these materials, we should be able to make clear in detail the prescription of this antidote and to know how it was and is still popular in the Middle East society. In Japan, the theriaka was introduced again since the 16th century by the Europeans. The writer thinks that the historical study of the diffusion of this kind of medicine is not only interesting from the standpoint of folklore, but it will be able to contribute to clarify the currents of cultures between the East and the west.
著者
高橋 聡子 岩井 輝男 田中 良夫 前田 敦司 中西 正和
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.1050-1057, 1997-05-15
参考文献数
14

リスト処理プロセスとGCプロセスを同時に複数動作させることによって,リスト処理を並列化することによる処理時間の短縮が可能になった.しかし,セルの消費のペースはアプリケーションによって異なり,CPUの数も計算機によって異なるので,リスト処理プロセスの最適な数はアプリケーション,計算機によって異なると考えられる.本稿では,セルの消費速度やフリーセルの残量によってリスト処理プロセスとGCプロセスのCPU割当てを動的に決定する機能により,Lispの代表的なアプリケーションに対し,処理速度と実時間性とのバランスのとれた処理を行うことを可能とする並列Lispシステムの報告を行う.本システムの実装にあたっては,できるだけリスト処理の中断が生じることがなく,リスト処理に最大数のCPUが割り当てられるようCPU割当てのパラメータを設定し,CPU割当てを動的に決定した.その結果,リスト処理の中断がなくなり実行時間が短縮された.Parallel lisp system with parallel garbage collection(GC)can produce improvements in throughput by executing list processing in parallel.But,the optimal number of list processes and GC processes depends on machines and applications because the number of processors on a machine and cells which are consumed by various applications is different.In this paper,we report parallel lisp system which makes it possible to balance throughput and real time performance by dynamic allocation of CPU depending on speed of consuming cells and the number of remaining free cells.We dynamically changed CPU allocation according to the parameter which was set to avoid a disruption of list processing and allocateas many CPU as possible to list processing.Consequently,our system yielded improvements in throughput without any disruption of list processing.
著者
前川 泰之 初田 健
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. A・P, アンテナ・伝播 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.117, pp.147-152, 2009-07-01
参考文献数
7

1995〜1998年と2003〜2008年の間に、大阪電気通信大学(寝屋川市)において連続的に測定されたKu帯およびKa帯各種衛星電波の受信レベルデータを用いて、降雨減衰量のサテライトダイバーシティ効果に対して時間遅延ダイバーシティを併用した場合の時間率改善について検討を行った。方位角が互いに30°から60°程度異なる6種類の衛星伝搬路間において、累積時間率が0.1〜0.01%程度の減衰量に対する時間率改善効果は、サテライトダイバーシティ単独では数十%に止まるが、両衛星間で時間遅延ダイバーシティをさらに行うと60分程度の遅延時間で一桁を超える改善が得られることがKu帯とKa帯で同様に示された。この改善効果は伝搬路が西側の衛星の信号を遅らせる方がより効果が上がり、台風や夕立よりも寒冷前線や停滞前線による降雨でより顕著であることが分かった。Ku帯ではこの60分の遅延時間により減衰量約4dB以上で一桁を超える時間率改善が望めるが、Ka帯では減衰量約8dB以上で有効となり、それ以下の減衰量ではさらに長い遅延時間が必要であることが示された。
著者
山口 和子 西村 清和 長野 順子 川田 都樹子 前川 修
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

写真の非芸術的側面と従来みなされてきた細部の再現からなる触覚的質が、視覚をモデルとするモダンの美的ヒエラルキーと知を揺るがし、日常的なものや無意味なもの、アブジェクトなものや非焦点性を芸術の世界に組み入れ、芸術のポストモダン的状況を作り出すと共に、アパレイタスとしてのその特性は自我やリアリティーの消失に対応している。他方、芸術と写真とのこの近接は写真の非芸術的な起源への問を再び呼び起こしている。