著者
加藤 康昭
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.50-60, 1986-12-29

わが国最初の精神薄弱児施設滝乃川学園の創設期については史料的制約のためこれまでに充分な解明がなされていなかった。本研究は学園が「白痴」教育施設として発足する時期を確定し、その初期の性格と歴史的役割を追究した。滝乃川学園は1891年石井亮一によって孤女教育施設として設立され、1897〜1901年の準備期を経て1902〜1905年に「白痴」教育施設へと転換した。初期には学校教育から疎外された「白痴児」を対象とする教育・治療施設がめざされ、保護収容的な性格は有していなかった。財政基盤を内外人の寄付金と父兄からの学費収入に置き、とくに後者を中心にしたために入園者は学費を支払いうる富裕階級の子弟が主体となった。経営的には比較的安定し完備した教育施設として草創期のわが国精神薄弱教育に先駆的な役割を果たした。
著者
加藤 寛之
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.6, pp.426-432, 2014

ワインのコルク臭や清酒のカビ臭の原因物質であるTCA (トリクロロアニソール) は、極低濃度で異臭として感じられることが知られている。コルク臭やカビ臭はワインや清酒の品質を大きく損ねてしまうが、TCAには「異臭」だけでなく、他の香りを感じなくさせてしまう強力なマスキング効果があるという興味深い結果が筆者らによって明らかにされた。運悪くコルク臭ワインやカビ臭清酒に当たってしまったら、他の香りがマスクされるか試してみてはいかがだろう。
著者
加藤 弓子 廣瀬 良文 釜井 孝浩
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.282, pp.13-18, 2007-10-18
参考文献数
12
被引用文献数
2

感情音声に特徴的な声質のうち,「激怒」や「明るく元気」といった力の入った発話スタイル中に局所的に見られる「荒れた力み声」(pressed harsh voice)に着目し,その出現位置について音韻,基本周波数,アクセント句内の位置等の言語情報との関係について検討した.その結果,当該モーラの子音および母音,アクセント句内のモーラ位置,アクセント位置,フレーズ内のモーラ位置が「荒れた力み声」の発生頻度に関与する可能性が示された.さらに,数量化II類を用いて音韻と言語情報より発話中の「荒れた力み声」の発生位置を予測し,音声合成時に特徴的声質を利用して感情表現を制御する可能性を検討した.
著者
菅披 和彦 藤井 綾子 加藤 俊作 水口 純
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.1238-1242, 1969-06-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
8
被引用文献数
1

この研究では黄色亜酸化銅と赤色亜酸化銅の相互転換の可否を確かめ, その結果に基づいて, 黄色亜酸化銅から赤色亜酸化銅の製造条件を明らかにすることを目的とした。赤色亜酸化銅を摩砕すると, 粒子が細かくなるにつれて, その色は黄色に変化した。黄色亜酸化銅を窒素ふん囲気中で900℃に,または蒸留水中で290℃に加熱すると,その色は赤色に変化した。この赤色亜酸化銅は成長した大きな粒子であることが電子顕微鏡観察によって確かめられた。X 線回折の結果, 両者に差異が認められず, 粒子の大きさにのみ差異が認められることから, つぎのように結論された。亜酸化銅の色の相違は粒子の大きさの差異によるものであり,微細粒子は黄色を,粗大粒子は赤色を呈し,相互に転換できることがわかった。各種の水溶液中での加熱の場合,黄色亜酸化銅は蒸留水を用いた場合にのみ赤色亜酸化銅へ転換した。塩化ナトリウムの中性またはアルカリ性水溶液を用いた場合には,亜酸化銅の溶解度が大きいにもかかわらず,赤色亜酸化銅への転換は困難であった。このことは亜酸化銅を溶解した水溶液の紫外吸収スペクトルの測定結果から推察される可溶性錯体の生成と関係があるように思われる。上述の結果に基づいて, 黄色亜酸化銅の水熱処理による赤色亜酸化銅の製造条件について検討し, 加熱温度が高いほど短時間に粒子成長が起こり,赤色亜酸化銅が得られることを明らかにした。
著者
笹嶋 宗彦 加藤 直樹 丸橋 弘明 羽室 行信
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回全国大会(2020)
巻号頁・発行日
pp.4K3GS304, 2020 (Released:2020-06-19)

データサイエンス教育においては,プログラミング技術や統計学知識などのデータ分析力だけでなく,社会の現場から問題を見つけ出す課題発見力や,分析の結果を現場に浸透させて改善する社会実装力の重要性を学ばせることが必要である.兵庫県立大学社会情報科学部では,これらデータサイエンティストが備えるべきスキルを実践的に学ばせるために,企業と連携して,実際のデータを用いた課題解決型演習を,学部1年生から必修科目として取り入れている.2019年度入学の一期生101名を対象としてPBL演習を実施し,事後アンケートを取ることで,学生からの主観評価を得た.その結果,自分自身がデータサイエンティストとして社会活動していく上での課題や,本人の持つスキルのバランスなど,様々な気づきを学生に与えることができた.他方,PBL演習の運営については,初めての試みでもあり,様々な知見が得られた.
著者
加藤 一郎
出版者
The Robotics Society of Japan
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.76-79, 1992-02-15 (Released:2010-08-10)
被引用文献数
3
著者
中村 誠 加藤 啓介
出版者
石川県公立大学法人 石川県立大学
雑誌
石川県農業短期大学研究報告 (ISSN:03899977)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.45-49, 1981 (Released:2018-04-02)

食肉凍結の技術は近年進歩が著しく,また家庭用冷凍庫の普及に伴なって今後は凍結肉の家庭での利用がますます多くなるものと期待される。ところが,凍結肉の解凍方法に関しては研究が比較的少ない。凍結肉はそのまま調理される場合もあるが,ふつうは解凍して利用される。解凍方法として一般的なものは,低温または高温空気解凍と流水解凍であるが,低温空気中で緩慢に解凍するのが良いと一般に言われている。家庭でこれを行なうには冷蔵庫を利用することになるが,温度変化が著しいことや汚染の機会か多くなることに加えて長時間を要することを考えると,もっと高い温度で短時間のうちに解凍する方法も捨てされない。そこで,冷蔵庫を利用した長時間解凍と室温,流水を利用した短時間解凍を比較し,それらが食肉の諸性質に及ぼす影響を調べた。
著者
加藤 十吉
出版者
一般社団法人 日本数学会
雑誌
数学 (ISSN:0039470X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.38-51, 1973-01-30 (Released:2008-12-25)
参考文献数
23
著者
富田 駿 山﨑 裕司 加藤 宗規
出版者
学校法人高知学園 高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.17-20, 2015-03-31 (Released:2019-06-18)
参考文献数
9

逆方向連鎖化の技法を用いた寝返り動作練習では,動作の獲得に至らなかった重度片麻痺患者を経験した.この患者に対して,両下腿を台上に挙上することで寝返りの難易度を下げた練習を導入し,その効果について検討した. 介入前には寝返り動作を3段階に分け,肩甲帯及び骨盤帯にクッションを挿入し半側臥位にした状態より寝返り練習を実施した.そして,クッション数を減らしていくことで難易度調整を行った.しかし,失敗を繰り返す結果となった. 今回の介入では,クッションの挿入に加え,両下腿を台上に載せた.これによって下肢重心位置を上げ,寝返りに有利な状態を作り出した.連続して成功するようになれば下肢挙上用の台の高さを下げ,台無しでできた場合にクッション数を減少させた.これによって6日間計23回の寝返り練習によって寝返り動作は自立した.この間の身体機能,他の基本動作能力,日常生活動作の介助量に変化はみられなかった. 以上のことから,通常の逆方向連鎖化の技法では失敗が繰り返される重症片麻痺症例に対しては本介入が有用なものと考えられた.
著者
蒲生 郷昭 石川 陸郎 加藤 寛 樋口 昭 中里 寿克 高桑 いづみ 久保 智康 阪田 宗彦 浅井 和春 上参郷 祐康
出版者
東京国立文化財研究所
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1993

1.実地調査初年度に調査できなかった石上神宮(天理市)蔵の鼓胴5点と鞨鼓、厳島神社(広島県宮島町)蔵の鶏婁鼓と振鼓、朝護孫子寺(奈良県平群町)蔵の二ノ鼓と三ノ鼓と鶏婁鼓、丹生都比売神社蔵和歌山県立博物館(和歌山市)寄託の鼓胴3点、東京国立博物館蔵の壱鼓と二ノ鼓、神谷神社(坂出市)蔵の鼓胴、福岡市美術館蔵の鼓胴、紀州徳川家旧蔵国立歴史民俗博物館現蔵の壱鼓と鞨鼓、国立音楽大学楽器学資料館蔵の三ノ鼓、鞨鼓の調査を行った。調査内容は初年度と同じで、熟覧、計測、写真撮影、X線写真撮影などである。2.研究初年度の調査と併せて、合計21機関が所蔵する57点の雅楽打楽器を調査することができた。その結果と文献資料にもとづき、音楽学の側面からは、楽器ごとに歴史、名称、用法などを考察した。そして、とくに壱鼓、二ノ鼓、三ノ鼓をめぐっては、その名称と規格の関係についての定説に問題があることが分かった。美術史学の側面からは、品質、形状・製作技法、保存状態、などを明らかにし、製作時期を推定した。3.研究成果報告書の編集と刊行報告書刊行のために、計測結果を法量表としてまとめ、楽器1点ごとのセクション図または見取り図を作成した。さらに美術的所見と、楽器の種類ごとの音楽的考察をまとめた。その結果は、B5判164ページの報告書となった。
著者
阪山 由衣子 加藤 孝憲 牧野 泰三 近藤 修 Yannick DESPLANQUES Philippe DUFRENOY
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
pp.16-00324, (Released:2017-04-05)
参考文献数
11
被引用文献数
2 1

Frictional heat is generated on the rubbing surface and various types of thermal localization occur during sliding contact in braking on disk and pad surfaces. Thermoelastic expansion affects the contact pressure distribution due to the frictional heat generation. The surface temperature is sometimes localized, and the thermal behavior causes surface damage. To evaluate this phenomenon, braking tests were conducted and the localized temperature on the disk surface was observed with an infrared camera. The localized temperature was found to correlate with frequency response for contact force variation. To investigate localized temperature on the disk surface, FEM analysis of the braking test was conducted. The FEM analysis method combined with contact analysis and heat transfer/thermal stress analysis was applied. Heat flux distributions were calculated by contact analysis in consideration of the frictional heating introducing the actual contact force and the friction coefficient variation. The disk surface temperature was then evaluated by the coupled heat transfer/thermal stress analysis using the heat flux distributions obtained from the results of contact analysis. The disk surface temperature obtained from FEM analysis almost coincided with that measured during the braking test. Moreover, the new method could greatly reduce the calculation time compared to the method using the contact analysis alone. Therefore, the proposed method is believed to be useful for evaluation of the rubbing surface temperature.
著者
中村 亮一 鶴岡 弘 加藤 愛太郎 酒井 慎一 平田 直
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1_1-1_12, 2020 (Released:2020-01-31)
参考文献数
15

関東地方には約300点の加速度計から構成される高密度なMeSO-netが展開されており,2008年から連続波形記録が蓄積されている.これら高密度観測記録を用いることで,より高分解能の三次元減衰構造を求めることができることが期待される.ただし,各地震計は地中約20mの深さに設置されており,観測波形記録には地表からの反射波の影響が含まれると考えられるため,これらの影響を考慮してゆく必要がある.そこで,まず波形記録のスペクトルに現れる特徴を調べた.その結果,地中設置のためスペクトルに谷が形成されていることが確認できた.次に,MeSO-netとK-NET及びKiK-net記録を用いた三次元Q値とサイト増幅特性の同時インバージョンを行い,地中設置による地盤増幅特性への影響について解析を実施した.ここで,地盤増幅は卓越周期からグループ化し,それぞれのグループで同じ増幅をもつと仮定する手法であり,K-NET及びKiK-netの地表観測地点は8グループに分け,MeSO-netの地中記録は,それとは別の2グループに分けた.その結果,減衰構造は先行研究と整合した結果が得られた.地中設置の場合でも,その増幅率を適切に考慮することにより減衰構造を求めることができることを確認した.また,平均的にみて地中記録の増幅特性は地表の岩盤サイトに類似しており,地表の地盤の差異による影響に比べて小さいことがわかった.
著者
杜 伯学 加藤 景三 金子 双男 小林 繁雄
出版者
The Japan Institute of Electronics Packaging
雑誌
エレクトロニクス実装学会誌 (ISSN:13439677)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.401-404, 2002-07-01 (Released:2010-03-18)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

Surface breakdown phenomenon of printed wiring board was investigated with increasing temperature from 23°C to 150°C. The experiment was carried out by do pulse voltage with the frequencies in the range of 50Hz to 150Hz. Printed wiring boards of epoxy resin laminate have been employed to investigate the effects of the surface temperature, electrode distance and the frequencies of applied voltage on the discharge quantity. The study revealed that the time to breakdown decreases with increasing the temperature, increasing the frequency of applied voltage and decreasing the electrode distance. The characteristics of discharge currents with increased temperature and the electrode distance were discussed by power spectral density of discharge current. The results show that the power spectral density of discharge currents increases with increasing the temperature, and decreasing the electrode distance.