著者
岩﨑 理浩 福田 英輝 林田 秀明 北村 雅保 小山 善哉 介田 圭 川崎 浩二 前田 隆浩 齋藤 俊行
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.445-451, 2016 (Released:2016-12-08)
参考文献数
19

長崎県内には51の有人島があるが,離島は本土と比較して現在歯数が少ない.これは離島特有の歯科医院へのアクセスの悪さが関係していると考えられている.しかし,同じ離島であっても歯科医院の有無が現在歯数に与える影響や無歯科医離島住民の受療行動についての研究はなされていなかった.そこで,平成17年以降長崎大学が実施した五島市での口腔内診査と,平成22年に五島市が実施した無歯科医離島における歯科受療に関するアンケート調査を用いて,口腔内の現状と受療行動について分析した.その結果,無歯科医離島は,歯科医院のある離島と比較して平均現在歯数が有意(p<0.01)に少なく(無歯科医離島:10.8±10.5本,歯科医院のある離島:15.9±10.4本),無歯顎者の割合が有意(p<0.01)に高かった(無歯科医離島32.3%,歯科医院のある離島15.6%).また,住民の約半数の者が治療回数を減らすために抜歯を他の治療よりも優先した経験を有すること,約9割の者が島内での歯科受療を希望していることが明らかとなった.これより,無歯科医離島では,時間的,地理的制約から歯科医療機関への頻回のアクセスが困難であるため,治療回数を減らすために抜歯することが,当該地区の平均現在歯数が少なく,無歯顎者の割合が高い理由の一つと考えられた.本調査結果より,無歯科医離島における歯科医療サービスの提供体制の構築が急がれるとともに,予防対策の充実を図る必要性が示唆された.
著者
新光 穣 松石 邦隆 福武 将映 毛利 健太朗 井上 和音 小山 忠明 伊藤 聡子 北村 登
出版者
一般社団法人 日本総合病院精神医学会
雑誌
総合病院精神医学 (ISSN:09155872)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.49-54, 2013-01-15 (Released:2016-08-31)
参考文献数
35

せん妄は心臓血管外科での手術後にしばしばみられる。本研究では,術前のstatin内服が心臓手術および大血管手術後の患者におけるせん妄の発症と相関するか否かを検討した。2011年7月1日から2012年6月30日にかけて神戸市立医療センター中央市民病院心臓血管外科に入院し,心臓手術もしくは大血管手術を受けた324症例のカルテを後方視的に調査した。その結果,術前のstatin内服は術後せん妄のリスクを有意に低下させていた(OR=0.57,p=0.049)。その他の要因では,緊急手術,高齢,より長い手術時間において有意にせん妄のオッズが上昇した。本研究は,statinが中枢神経系への保護作用を通じて心臓手術,大血管手術後のせん妄を抑制することを示唆している。
著者
江川 新一 北村 洋 坂田 直昭 乙供 茂 阿部 永 赤田 昌紀 元井 冬彦 力山 敏樹 片寄 友 海野 倫明
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.466-472, 2009-05-01 (Released:2011-12-23)
参考文献数
6
被引用文献数
2 2

背景と目的:Frey手術は慢性膵炎に対して膵頭部芯抜きと膵管空腸側々吻合を行う侵襲が少なく疼痛改善効果の高い術式であるが,まれに再燃して再手術を要する.教室で行ったFrey手術後の長期経過中に慢性膵炎再燃に対して再手術を必要とした症例から適切な手術手技ならびに術後管理のあり方を考察する.対象と方法:1992年3月から2008年4月までの間に当科において慢性膵炎に対してFrey手術を施行した66例.術後早期合併症,再燃の形式と頻度,再手術までの時間,禁酒の有無,再手術手技を検討した.結果:術後早期の合併症発生率は10例(15.2%)で,1例は術後消化管出血のため再手術による止血を要した.術後在院日数中央値は19.5日であった.追跡対象62例(観察期間中央値45.5か月,追跡率83.9%)のうち慢性膵炎再燃による再手術は8例に施行され,1例に胆管十二指腸吻合,1例に膵頭十二指腸切除術が施行された.膵尾側の膵炎再燃・仮性嚢胞形成が最も多く,5例に膵尾部切除,1例に嚢胞空腸吻合が施行された.晩期の再手術例は特発性膵炎の1例を除き全例禁酒できない男性であり,再手術までの平均期間は約2年であった.膵尾部切除後に膵断端を空腸脚で被覆することが有効だった.考察:Frey手術後の再手術原因は膵尾部の炎症再燃が多く,飲酒と有意に相関する.炎症再燃を繰り返す場合は有効な再手術が必要である.
著者
北村 光孝
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
1978

博士論文
著者
北村 一男
出版者
The Society of Agricultural Meteorology of Japan
雑誌
農業気象 (ISSN:00218588)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.151-156, 1969

(1) プラスチックハウスを, 通風管を通る温風で暖房する場合のハウス内気温を時間・ハウス内の位置の関数として熱収支法で解板した。<br>(2) 解析から, ハウス内気温の場所による温度差は時間の経過に影響を受けないことがわかる。<br>(3) 埼玉園試のハウスについて理論式から計算した値と, 実際に観測した値を比較した場合, 両方の値はかなり接近していた。<br>(4) 送風機の風量が小さいと暖房機に近い所が高温になり, 逆に送風機の風量が大きいと通風管の放出端の近くが高温になる。埼玉園試の面積408平方米のファイロンハウスでは風量が中間の場合にハウス内温度差が小さくなると計算された。風量が大きい程ハウス内の温度差が小さくならなかつた。<br>(5) カーテンの熱伝達率が小さい場合について計算してみると, 暖房機の発熱量・送風量が共に小さくとも, ハウス内気温は高温になりしかも温度差も小さくなつた。
著者
宮崎 総一郎 小林 隆一 北村 拓朗
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.10-18, 2011 (Released:2012-02-15)
参考文献数
26

睡眠は高度の生理機能に支えられた積極的な適応行動であり, 健康を支えるための重要な役割を担っている。睡眠障害初診患者のうち, 睡眠時無呼吸症候群を中心とした睡眠呼吸障害が半数以上を占める。睡眠時無呼吸症候群では, 睡眠中の呼吸努力により呼吸中枢を介して呼吸性覚醒が生じ, 結果として睡眠の分断化, 睡眠障害へとつながる。質の良い睡眠がとれないことで, 睡眠時無呼吸症候群は, 循環器疾患や脳卒中, 糖尿病の発症に関連し, 集中力・記憶力・学習能力や感情のコントロール, 作業能率などを障害し, 産業事故, 交通事故等の原因となる。多彩な症状で臨床各科を横断的に受診する可能性が高い睡眠時無呼吸症候群を診療する際に, 陥りやすいピットフォールについて, 著者が今までに経験した症例, 文献からの症例報告に睡眠学の知見をまじえて概説した。
著者
村上 啓介 北村 翔一郎 真木 大介 竹鼻 直人 岩田 恭平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.I_670-I_675, 2013 (Released:2013-09-13)
参考文献数
8

効果的な防波機能と十分な耐波安定性が得られる構造形式の一つとして,防波堤や護岸天端のパラペット部を後退させた構造形式(後部パラペット)が提案されている.本研究では,後部パラペットにフレア断面を採用する新たな構造を提案し,その越波低減機能を水理模型実験により評価した.また,数値シミュレーションを実施し,フレア断面を有するパラペット部に作用する波圧と波力について検討した.後部パラペットにフレア断面を採用することで,従来の直立断面パラペットと比較して少ない後退量で越波を低減できることを確認した.また,フレア断面のパラペット部に作用する水平波力は,パラペットを後退させることで低減され,下向きの鉛直波力は増大することを示した.
著者
北村 泰佑 後藤 聖司 髙木 勇人 喜友名 扶弥 吉村 壮平 藤井 健一郎
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
2016
被引用文献数
4

患者は86歳女性である.入院1年前より認知機能低下を指摘され,入院2週間前より食思不振,幻視が出現し,意識障害をきたしたため入院した.四肢に舞踏病様の不随意運動を生じ,頭部MRI拡散強調画像で両側基底核は左右対称性に高信号を呈していた.血液検査ではビタミンB12値は測定下限(50 pg/ml)以下,総ホモシステイン値は著明に上昇,抗内因子抗体と抗胃壁細胞抗体はともに陽性であった.上部消化管内視鏡検査で萎縮性胃炎を認めたため,吸収障害によるビタミンB12欠乏性脳症と診断した.ビタミンB12欠乏症の成人例で,両側基底核病変をきたし,不随意運動を呈することはまれであり,貴重な症例と考え報告する.
著者
岡林 巧 齋藤 利一郎 内谷 保 大竹 孝明 南金山 裕弘 兵動 正幸 村田 秀一 山本 哲朗 中田 幸男 北村 良介 藤井 照久 日下部 伸
出版者
鹿児島工業高等専門学校
雑誌
鹿児島工業高等専門学校研究報告 (ISSN:03899314)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.35-43, 1998-09
被引用文献数
1

1997年3月26日17時31分、鹿児島県北西部の薩摩地方を震源とする鹿児島県北西部地震(M6.5)が発生し、鹿児島県北西部は、主として斜面、道路、構造物に大きな被害を受けた。また、同年5月13日14時38分、鹿児島県薩摩地方を震源とする鹿児島県第2北西部地震(M6.3)が再度発生し、前地震による被害を拡大する形で鹿児島県北西部は、この2つの地震により本調査だけでも計466件にのぼる各種の被害を確認するなど甚大な地震災害となった。本研究は、内陸山間部で地震による液状化地盤災害を起こした薩摩郡入来町の造成住宅地の地盤特性を知ることを目的として、液状化地盤のスウエーデン式サウンデイング試験、非排水単調せん断試験および非排水繰返しせん断試験の3種類の試験を行い考究したものである。Northwest Kagoshima Prefecture Earthquake (M6.5), which occurred at 5:31 p.m. on March 26 in 1997, and a secondary one (M6.3), which occurred at 2:38 p.m. on May 13,caused a great ground disaster in some places close to the seismic center. This research is to investigate the ground characteristics in-situ by conducting Sweden sounding experiment at the residential quarter in Iriki -cho of Satsuma -gun, which found liquefaction ground disaster in mountains. As a result, the undrained cyclic and monotonic shear behaviour of Shirasu is found to be greatly dependent on the confining pressure and its density. The undrained cyclic shear stress :ratio to cause failure increases in loose specimen while it decreases in dense specimen with increasig confining pressure.
著者
北村 健三 光石 暁彦 鈴木 孝司
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.83, no.850, pp.16-00542-16-00542, 2017 (Released:2017-06-25)
参考文献数
16

The natural convective flow and heat transfer of air induced around an inclined row of heated horizontal cylinders have been investigated experimentally. The experiments were carried out with the ten-cylinders row placed in the plane of inclination angles θ=0°, 30°, 45°, 60°, 75° and 90° from horizontal. The cylinders in the row were heated with constant heat flux and their diameter d and gap G were varied as d=8.4, 14.4mm and G=3.6 to 20.6mm. The Nusselt numbers Nud from the cylinders in the row were measured. They showed maxima and minima for the horizontal and vertical rows, while intermediate Nusselt numbers were obtained for the inclined rows. Those Nusselt numbers were next converted to the gap-based Nusselt numbers NuG, and, then, rearranged with the non-dimensional parameter RaG*(G/d). The result showed that the Nusselt numbers NuG are predicted well with the parameter RaG*(G/d) for the whole rows of inclination angle from horizontal to vertical.
著者
北村 眞一 村越 正忠
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
日本土木史研究発表会論文集 (ISSN:09134107)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.47-53, 1988-06-20 (Released:2010-06-15)
参考文献数
15

甲府市街地の形成の変遷を街路空間と土地利用とに着目して概観し、都市形成の発想、社会や空間構造の変化などを考察した。武田時代から江戸時代へは、武田時代の町人街をとり込みながら、新しい城下町の形成をはかるニュータウン形成であった。江戸時代から明治時代へは市街地の大きな移動はなく武家地の官公庁用地と民間用地への転換が主で、中心部再開発であった。明治36年の中央線の開通は商業・業務の中心核を駅前へ転換し、街路網形成の中心が甲府駅となった。戦後の急成長による人口増加、基盤整備の不足、モータリゼーションは甲府盆地全域へのスプロール的開発による分散化と、幹線街路整備によって対応された。戦前戦後を通して市街地は拡大し、モータリゼーションと住宅地の郊外分散化は商業立地の分散化を促した。
著者
北村 正樹
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.51-54, 2012 (Released:2013-02-15)
参考文献数
4
著者
北村 光二
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 (ISSN:09124047)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.109-120, 2008-12-20 (Released:2009-08-11)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

This paper aims to consider why the sphere of social phenomena is significant in the study of primates, including humans, and what aspects of the phenomena we should focus on in order to understand its significance. Although the process of making relations with others may easily become undecided, it may not be retained. We humans cope with such undecidability by paying attention to the motivation of activity easily shared by participants, or adequate readiness for regulating each other's interaction. This does not mean that the social sphere is independent of other spheres, but these characters are common to the activities of making relations with the natural environment for surviving. The social sphere should be placed in the larger range of phenomena produced by the activities of making relations with the outer world in general. An individual animal tries to decide his act of making relation with an object depending on the meaning of the object, while he tries to identify the meaning depending on his act of making relation with the object. Here, the undecidable circle is formed. The same situation is found in the case of making relations with others. That is to say, one tries to decide his act to the other depending on the other's act while the latter decides his act depending on the former's act, so that the undecidable circle is also formed here. The undecidability in the process of making relations with objects is usually perfectly hidden. However, the other's selection in the process of making relation with the object is always apparent in the social sphere. The other not only makes the undecidability apparent by making a different selection from my own, but also teaches a new way of coping with it by sharing the motivation with him or regulating the process of interaction with him.