著者
島田 信夫 河合 隆裕 斉藤 恭司 柏原 正樹 荒木 不二洋 中野 茂男
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

本研究の目的とする多様体、特に複素多様体の幾何学と関連諸問題の研究に関して、複素空間、代数的多様体等の特異点の研究、偏微分方程式の解空間の構造、またそれに対する代数解析的研究、一般コホモロジー論、特に複素コボルディズム論の研究、代数的K-理論の研究、数理物理学的研究等様々の立場からの研究分担者による探求が進められ、多くの新たな成果と進展をみた。以下にその概要を述べる。1.島田はAdamsスペクトル系列の【E_1】-項を与えるラムダ代数の概念を、複素コボルディズム論におけるNovikovスペクトル系列の場合に拡張し、やはりその【E_1】-項を与えるMU-ラムダ代数を構成した。その幾何学的応用は今後の研究課題である。島川は多重圈の概念を活用して代数的K-理論における積構造について圈論的な存在証明を与えた、またそれらの同変理論も研究中である。2.斉藤恭司は正規ウェイト系に対応する孤立特異点をもつ超曲面に対して特異点解消、コンパクト化等の操作により、多くの重要かつ興味ある代数曲面の族を構成し、それらの分類および代数幾何学的特性について詳細な研究を行った。これは斉藤の従前からの一般ウェイト系、特異点、一般Weyl群と不変式論等の研究の進展継続を示す目ざましい成果である。成木は斉藤の仕事に関連して、或種の型の特異点解消に伴う楕円曲面系を簡明に構成した。3.中野,大沢は複素多様体上の或種の増大条件を満す正則函数の拡大に関する結果を得た。また大沢はK'dhler多様体と多変数函数論の研究を進めた。4.柏原,河合はD-が群の研究を進め多くの成果を挙げ、また三輪,神保は代数解析の方法を数理物理学へ適用し成果を得た。5.荒木は2次元Ising模型に対する相関函数の解析性に関する結果を得たまた中西,小嶋は場の理論の研究で成果を得た。その他、研究分担者による微分方程式、無限次元測度の研究がある。
著者
郷原 正臣 木村 一雄
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.110, no.2, pp.211-217, 2021-02-10 (Released:2022-02-10)
参考文献数
3

急性冠症候群は,冠動脈プラークが破綻(破裂やびらん)することで冠動脈内に血栓が形成され,急速に心筋虚血を生じることが主たる病態である.破綻以外の原因としては,冠攣縮の他,頻度は少ないが,冠動脈内への塞栓,冠動脈解離等がある.症状が心筋虚血に起因する場合は,バイタルサインを確認すると共に12誘導心電図を記録し,ST上昇の有無を判断する.より有効な治療を行ううえで,より迅速且つ確実な初期診断が重要である.
著者
福原 正人
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.2_224-2_245, 2018 (Released:2021-12-26)
参考文献数
47

民主主義は, どういった決定単位を採用するべきなのか。こうした問いは, 意思決定の母体集団, つまりデモスを特定する課題として, 「民主主義の境界問題」 と呼ばれる。しかし, 同意という現実の手続きは, その個別性ゆえに, 正しいと評価しえない母体集団を特定する一方, 集団構成や行為主体性に注目する境界画定の正当性は, その一般性ゆえに, アジェンダごとの考慮事項に耐えられる母体集団を特定できない。そこで本稿では, D. エストランドが定式化する 「適格な受容可能性」 という正統性条件を参照しながら, アジェンダごとの考慮事項を織り込む仮説的な手続きが, アジェンダごとの母体集団内部における意思決定のみならず, 意思決定の母体集団それ自体を構成する作業に適用されることで, 境界画定の正当性を担保する 「理に適った境界画定」 を構成することを擁護したい。
著者
馬場 悠男 松井 章 篠田 謙一 坂上 和弘 米田 穣 金原 正明 茂原 信生 中山 光子
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

上野寛永寺御裏方墓所から発掘された徳川将軍親族遺体のうち保存の良い15体の人骨について、修復・保存処理を施し、形態観察・写真撮影・CT撮影・計測を行って、デジタルデータとして記録保存した(馬場・坂上・河野)。さらに、遺骨の形態比較分析(馬場・坂上・茂原・中山)、ミトコンドリアDNAハプロタイプ分析(篠田)、安定同位体による食性分析および重金属分析(米田他)、寄生虫卵および花粉分析(松井・金原他)を行い、親族遺体の身体的特徴と特殊な生活形態を明らかにした。
著者
浅原 正和 ASAHARA Masakazu
出版者
三重大学教養教育機構
雑誌
三重大学教養教育機構研究紀要 = BULLETIN OF THE COLLEGE OF LIBERAL ARTS AND SCIENCES MIE UNIVERSITY
巻号頁・発行日
no.2, pp.1-18, 2017-03-31

国家間における動物の贈与は、歴史的に外交の一手段として用いられてきた。先行研究において、オーストラリアが歴史的に“ カモノハシ外交” とも呼べるカモノハシの国外移送をイギリス、アメリカに対して行ってきたことが論じられている。それに加え1990 年代、カモノハシを移送する試みが日本に対しても進んでいた。これら3 か国への移送計画は、それぞれ異なる組織が異なる目的のため進めたものだった。1943 年のイギリスへの移送は英首相ウィンストン・チャーチルのリクエストであったが、一方で戦時下におけるオーストラリア政府の外交政策の一環でもあった。これまでこの移送は戦時中、機密事項であったとされていたが、顛末を報道する新聞記事も戦時中に発行されていた。なお、生体の移送に先立って送られた剥製は、ボーア戦争でチャーチルを助けた隊に所属していたエディー氏の飼育個体であった。1916~58 年にかけて試みられたアメリカへの移送は、動物商や動物園といった民間が主導して進めた。1947 年の移送も動物園間の交渉で始まるが、オーストラリア政府が輸出許可を出さなかった関係で政治家が動いた。最終的に、カモノハシを戦時中の返礼とみなすということで許可が下りる。日本の東京で1996 年に開催が予定されていた博覧会でカモノハシが出展される計画は、ニュー・サウス・ウェールズ州フェイ首相と、東京都鈴木知事との間で自治体外交として進められた。しかし、1995 年に両者の首長が交代することで、計画は中止に追い込まれる。これら時代ごとに計画があったカモノハシの移送先は、オーストラリアの経験してきた国際情勢の変遷と関連している。まず、第二次世界大戦前後で、国防の依存先がイギリスからアメリカへ替わったことは、戦中・戦後のカモノハシの送り先に象徴されている。そして、20 世紀終盤に最大の貿易相手国となった日本との間で自治体外交が活発化し、そのことが日本へのカモノハシ移送計画を生み出した。
著者
上原 正三
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.40, no.8, pp.627-634, 1985-08-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
33

重力を含む相互作用の統一理論について, 最近の超重力理論及び超弦理論を中心に解説する. カルツァ・クライン理論の解説からはじめて, その考え方が現在精力的に研究されている超重力及び超弦理論に用いられていることを見る. 重力理論では常に問題となる紫外発散についても, これらの新しい理論では解決されるのではないかという期待が高まっている.
著者
祖父江 沙矢加 ソブエ サヤカ Sobue Sayaka 市原 正智 イチハラ マサトシ Ichihara Masatoshi
出版者
中部大学生命健康科学研究所
雑誌
生命健康科学研究所紀要 (ISSN:18803040)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.38-41, 2016-03

分子状水素(以下、水素)は、酸化ストレスのうちヒドロキシルラジカルを選択的に消去することが報告されており、酸化ストレスや炎症に起因するさまざまな疾患の予防や治療への有効性が期待されている。2007年から現在に至るまでに、水素は全身の多岐にわたる組織で発症する疾患において、その効果が示されており、水素の生体作用に関する論文数はこれまでに300報以上にものぼる。このように水素の効果については多数の論文で示されているが、どのような分子メカニズムでその効果を発揮しているかは未だ十分に明らかにされていない。水素の投与法としては、空気に水素を加えたもの(以下、水素ガス)を吸入させるか、水素水を飲ませるかのどちらかを採用しているものが多いが、他にもさまざまな投与法が検討されている。しかし複数の投与法間での生体作用を比較検討している報告は極めて少なく、最適な水素の投与法についても依然不明なままである。私たちは水素投与を、水素ガスの吸入、水素水の飲用の2種類から、単独、または併用投与をマウスに行い、組織内の遺伝子発現に及ぼす影響を検討した。こうした検討により水素の生体作用の分子機構の一端を明らかにすることが出来た。
著者
菅原 正義
出版者
長岡工業高等専門学校
雑誌
長岡工業高等専門学校研究紀要 (ISSN:00277568)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.55-62, 2008-03

After rice cooking, retrogradation of starch in a cooked rice progresses quickly at under gelatinization temperature. Cold rice (aging rice) is tasteless, firm and digested slowly. My aim in this report is explained the relationship between cold rice tasteless and indexes of starch retrogradation. Starch gelatinization degree, starch whiteness index and resistant starch content that were indexes of starch retrogradation did not change remarkably of cold and aging rice that were very firm and bad eating quality by the sensory test. In spite of low resistant starch content of aging rice, the cecal content short chain fatty acids and starch content of rat fed aging rice powder were higher than that of rat fed fresh and warm rice powder.
著者
松原 正
出版者
早稲田商学同攻会
雑誌
早稲田商学=The Waseda commercial review (ISSN:03873404)
巻号頁・発行日
vol.278号, pp.79-82, 1979-07

神沢惣一郎著『情念の形而上学』
著者
佐野 誠 篠原 正典
出版者
帝京科学大学
雑誌
帝京科学大学紀要 (ISSN:18800580)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.101-111, 2012-03-31

Food habits of seven frog species during mating periods were examined from gastric contents and species comparison were conducted. From 1041 frogs, elementary information on their food habits such as species and sizes of prey insects were reported and species difference and sex difference were discussed. Males of Tago's brown frogs (Rana tagoi ) and Shlegel's green tree frogs (Rhacophorus schlegelii ) foraged nothing during mating periods as previous reports, but males of the other five species did. Males of Japanese tree frogs( Hyla japonica) and Japanese stream frogs( Buergeria buergeri) were getting to forage towards the end of their mating periods. Especially, male black spotted pond frogs( Rana nigromaculata ) seemed to prefer larger insect than expected from their environment food resources, foraged well and gained their body weight during mating periods. These species differences seem to be caused mainly from their length of mating periods and their extent of site fidelity in mating periods.
著者
田中 崇裕 長原 正人 高橋 春雄 橋本 成弘 山田 隆 宮脇 律郎 門馬 綱一 重岡 昌子 徳本 明子 松原 聰
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2015年年会
巻号頁・発行日
pp.40, 2015 (Released:2020-01-15)

鹿児島県薩摩川内市入来地区に露出するカオリンを主とする変質粘土帯に存在する熱水石英脈中に、我が国初産のスカンジウムリン酸塩鉱物であるコルベック石とプレツール石と考えられる鉱物が確認された。これらの鉱物について、化学組成、産状、成因などについて報告する。
著者
上宮 奈穂子 石原 正一郎 近藤 竜史 掛樋 善明 中館 雅志 徳重 一雄 都築 伸介
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会
雑誌
脳血管内治療 (ISSN:24239119)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.211-218, 2021 (Released:2021-12-20)
参考文献数
14

【目的】脳室内出血発症のもやもや病に合併した後脈絡叢動脈末梢部動脈瘤に対し N-butyl-2-cyanoacrylate(NBCA)による塞栓術を施行し,良好な経過を得た 2 例を報告する.【症例 1】 49 歳,女性.経過中に増大傾向を呈した内側後脈絡叢動脈遠位の動脈瘤に対し,NBCA にて塞栓し良好な経過を得た.【症例 2】46 歳,女性.出血源となった外側後脈絡叢動脈末梢動脈瘤に対し,NBCA による塞栓術を施行.神経内視鏡下に脳室内血腫除去術中,塞栓された脳室壁に位置する動脈瘤を確認した.【結論】もやもや病の側副血行路に合併する末梢動脈瘤に対しては,血管解剖を理解し適切なデバイス選択による塞栓術が有効であった.