著者
西原 正和
出版者
日本薬史学会
雑誌
薬史学雑誌 (ISSN:02852314)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.10-17, 2023 (Released:2023-08-10)

目的:ホソバオケラは,生薬蒼朮の基原植物で,日本には江戸時代に渡来し,佐渡においても栽培されており,サドオケラという名前が残っている.しかし現在,佐渡において,植物としての「サドオケラ」だけでなく,その言葉自体を聞いたことがないという者がほとんどで,庭先で先祖が植えたとされる株がそのままの状態で残っており,その植物がホソバオケラということを初めて知るような状況である.そのため,なぜこのような状況に至ったのか,さらに詳細な調査を行うこととした. 方法:過去のホソバオケラに関する書物,文献,報告を再調査するとともに,佐渡の地域史,歴史書物等を調査した.また,これらの調査の中で得られた,佐渡においてホソバオケラを知っていると思われる関係者や現地の漢方生薬取扱薬局への聞き取り調査を,2019 年から 2022 年に行った. 結果:昭和期以降,佐渡におけるホソバオケラは,太平洋戦争中に供出されたことや,その後,増産を行うがホソバオケラの表面に析出したヒネソールやβ-オイデスモールなどの成分の結晶をカビと誤認されて廃棄され失敗に終わったこと,原種圃場の取り組みがうまくいかなかったことなどにより,現在は大規模な栽培が行われていないことを確認した. 結論:佐渡のホソバオケラは,昭和期にも栽培,出荷されていたが,その後の取り組みがうまくいかなかったことから,佐渡内ではその存在を知る者がほとんどおらず,このままでは佐渡内に現存するホソバオケラは消滅する可能性があることが明らかとなった.
著者
吉岡 徹朗 向山 政志 内藤 雅喜 中西 道郎 原 祐介 森 潔 笠原 正登 横井 秀基 澤井 一智 越川 真男 齋藤 陽子 小川 喜久 〓原 孝成 川上 利香 深津 敦司 田中 芳徳 原田 昌樹 菅原 照 中尾 一和
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.40, no.7, pp.609-615, 2007-07-28 (Released:2008-11-07)
参考文献数
9
被引用文献数
1 2

症例は, 39歳男性. 36歳時に硝子体出血を機に初めて糖尿病を指摘され, 以後当科で加療されていたが, 糖尿病性腎症によるネフローゼ症候群加療のため入退院を繰り返し, 次第に腎機能が低下した. 2005年5月に腸炎症状を契機に乏尿, 労作時息切れ, 下腿浮腫, 体重増加をきたし, 血清クレアチニン5.8→13.0mg/dLと急激に上昇したため, 血液透析導入目的で当科入院となった. 透析開始後, 積極的な除水にもかかわらず, 心胸比は縮小せず, 透析導入後第6病日以降血圧が低値となり, 第10病日には収縮期血圧で70mmHg前後にまで低下した. 心エコー検査にて心タンポナーデを認め, 心膜穿刺にて多量の血性心嚢液を吸引除去した. 臨床経過, 穿刺液の検査所見, 血清学的検査所見, 画像検査所見から, 尿毒症性心外膜炎と診断し, 心嚢腔の持続ドレナージと連日の血液濾過透析を行い軽快した.尿毒症性心外膜炎は, 透析治療が発達した今日ではまれであるが, 急性腎不全, 慢性腎不全の透析導入期, あるいは透析不足の維持透析患者において, 心嚢液貯留を認める場合, 溢水のほか, 悪性疾患や感染症, 膠原病とともに考慮する必要がある.
著者
高原 正之
雑誌
大正大學研究紀要
巻号頁・発行日
no.106, pp.76-92, 2021-03-15
著者
富永 真琴 山谷 恵一 原 正雄 佐々木 英夫 大島 健次郎
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.174-179, 1977-03-31 (Released:2011-08-10)
参考文献数
12

糖尿病と感染症の関係を知るために, インフルエンザ流行期に糖尿病死亡が増加するかどうかを人口動態統計の資料を用いて検討した. 近年, インフルエンザ流行の時期と規模の客観的指標として, また, その慢性疾患への影響の指標として, 超過死亡という概念が欧米諸国, WHOで慣行化されており, 今回この方法を用い, インフル満ンザ流行期を推定し, その流行期における糖尿病の超過死亡について検討した. 超過死亡は実際の死亡と非流行期の死亡から予測される期待死亡との差で求められる. 月別期待死亡率は月別死亡率 (観察値) を人口動態統計より得て, Serflingの方法に準じ, y=a+bt+csin (πt/6-θ) の予測式の係数を最小二乗法で求めることにより得られる. 超過死亡率の有意さの程度は比較強度 (超過死亡率/標準偏差) で検討した. インフルエンザ流行期の推定には呼吸器感染症の超過死亡で検討し, 1961年~1974年の14年間に7回の流行を把握した. この流行期に糖尿病の超過死亡は3回に有意, 1回にほぼ有意であることを認めた. 一方, 臨床的には1975年~1976年冬のインフルエンザ流行期に感冒様症状を呈した糖尿病外来患者の約70%に空腹時血糖値の上昇を認めた. したがってインフルエンザに対し糖尿病患者はhigh riskgroup (高危険群) であり, インフルエンザへの対策は糖尿病の管理上重要であると考えられる
著者
北谷 秀樹 梶本 照穂 河野 美幸 小沼 邦男 野崎 外茂次 桑原 正樹
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.884-890, 1996-10-20 (Released:2017-01-01)
参考文献数
16

小児の包茎への対応には,社会・文化的背景も考慮に入れる必要がある.そこで小児の包茎の治療指針の一助にする目的で男児をもつ父母の意識調査を行った.対象は当科関連の産院で男児を出産した1466家族で,封書によるアンケート方式で行った.また,当大学病院の看護婦330名にも同様のアンケートを行った.質問内容は,どのような状態を包茎と考えるか,どんな害があると考えているか,どのように対処したのか等に加え父親自身の体験も聞いた.その結果,父母からは420通の回答(有効回答率 : 31.5%)を,看護婦からは98%の回答を得た.回答者の3分の2は真性包茎の状態を包茎と考えていた.また包茎の害は不潔,亀頭包皮炎,早漏の原因,結婚生活の支障,等が多数を占めたが,その認識には父親,母親,看護婦の間で違いが見られた.父親の50%が中学生の頃に,25%が高校生の頃に亀頭が露出するものだと思っていた.父親の33%がかつて自分が包茎ではないかと悩んだことがあり,その平均年齢は15.2歳であった.この調査の結果から,亀頭の露出時期には個人差が大きく,多くは中学生頃から始まるものと推察される.従って,小児の包茎が病的か正常範囲内かの判定は思春期以降に行われるべきで,幼小児期の手術適応は一定の臨床症状のあるものに限るべきであるとおもわれる.今後,社会的な面を含めた検討が必要である.
著者
江本 正喜 菅原 正幸 日下部 裕一 大村 耕平
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.1208-1214, 2011-08-01 (Released:2011-11-01)
参考文献数
14
被引用文献数
1

In recent years, television systems with a wide field of view that offer an elevated sense of presence have been proposed. They have higher spatial resolutions than conventional systems. On the other hand, the effects of increasing the temporal resolution or frame rate of television systems have not yet been sufficiently investigated, with the exception of the effects of frame interpolation at the receiver. On the assumption that people will enjoy TV with wide field of view displays at home in the future, we conducted a quantitative analysis of the effects of increased frame rate by a subjective evaluation of moving picture quality. The results indicated that an increase in frame rate from 60 frames per second (fps) to 120 fps improved the evaluated quality by 0.46 rank and an increase from 120 to 240 fps improved quality by 0.23 rank, with statistical significance. The degree of improvement depended on the picture content.
著者
池ヶ谷 篤 油上 保 柴本 薫 楠原 正俊
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.380-388, 2017-09-25 (Released:2021-07-09)
参考文献数
55

静岡がんセンターは,患者の視点を重視することを基本理念として設立された,高度がん専門医療機関である.がん患者は,患部の壊死や代謝異常により特有の病臭が発生し,大きなストレスを感じている.我々は,日本人の生活に深く根ざした緑茶を蒸留し,その香りを活用して患者のストレスを低減させ,QOLを向上させる取り組みを実施した.この取り組みに適した蒸留液の原料としては.二番茶の茎茶が最適であった.開発した緑茶蒸留液は,心を安らげる香りを有しているだけでなく,トリメチルアミンやジメチルスルフィド等のがんの病臭を低減させる効果を有していた.
著者
花本 尊之 井上 行信 砂原 正男 高橋 雅俊
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.68, no.10, pp.2643-2646, 2007-10-25 (Released:2008-08-08)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

S状結腸腹膜垂が右大腿ヘルニアに嵌頓した1例を経験したので報告する. 症例は82歳, 男性. 5日前からの右鼠径部膨隆を主訴に, 当科外来を受診した. 右鼠径部に圧痛を伴う鶏卵大の腫瘤を認めたが腹部症状はなく, 腹部CTの所見と合わせて, 右大腿ヘルニア内大網嵌頓およびヘルニア嚢内出血の疑いとの診断となり, 受診翌日に入院, 手術を施行した. 術中所見から, S状結腸腹膜垂の右大腿ヘルニア内嵌頓の診断となった. ヘルニア嚢は暗赤色に腫大し, ヘルニア嚢内には血性腹水を認めたが, 腹膜垂の炎症は軽度であったため, 腹膜垂切除およびPROLENE® hernia systemによるヘルニア修復を行った.
著者
前原 正美
出版者
経済研究所
雑誌
経済研究所年報 (ISSN:02859718)
巻号頁・発行日
no.53, pp.155-182, 2021-10-05

本論文全体の主張論点としては,石田三成の旗印「大一大万大吉」には《「愛」の政治理念》が示されていること,を明らかにする。本論文の独自の視点としては,第1 に,石田三成が依拠した道教=神道では,地上(天下)の世界は天上の世界の映し絵である,という論点を提示する。宇宙(天上)では「大」=「太」=「天」=「神」は,北極星=宇宙上の中心に位置する「神」であり,その周りを「八」つの「神」が支えている。地上(天下)では,「大」=「太」=「天」=「神」は伊勢神宮に祀られる天照大神であり,道教=神道は,北斗八星信仰=アマテラス信仰=伊勢(神宮)信仰を創りだした。第2 に,三成の九曜文の中央の大丸は北斗=北極星,八つの丸は北斗=北極星の周りの八星を示しており,いいかえれば中央の大丸は天照大神,八の丸は「八百万の神」を示している。こうした北斗八星信仰は,道教=神道を基礎とした平和国家を構築するための政策となった。第3 に,三成は,「一」は常に「万」人=「他」者=「多」者とつながっている,と考えた。そのかぎり人間各人は「愛」に生きるしか幸福になる道はない。かくて三成は,《隣人「愛」=人間「愛」》に基礎づけられた天下国家を実現できれば,「道徳的世界」と「政治的世界」と「経済的世界」とが調和した「最大数の最大幸福」を実現できる,と考えた。
著者
原 正彦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.864-867, 2021-05-10

Point◎仮想現実(VR)技術の医療応用は30年以上の歴史があるものの,その効果はきわめて限定的であった.◎われわれは大学での産学連携活動を通して,まったく新しいアプローチのVRリハビリテーション用医療機器の開発に成功した.◎このVR機器「mediVRカグラ®」は歩行(姿勢)・上肢・認知・内耳機能障害および疼痛の改善手段として応用が進んでいる.◎近年では病院などでのリハビリテーションにおける新型コロナウイルス感染症対策としても注目されており,また遠隔リハビリテーション機器としての応用も進められている. *本論文中、関連する動画を見ることができます(音声なし,2023年4月30日まで公開)。
著者
田中 拓 内藤 純行 長島 梧郎 加藤 晶人 上村 美穂 藤原 正三 馬野 由紀 田北 無門 平 泰彦
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.585-590, 2015-08-31 (Released:2015-08-31)
参考文献数
10

アルコール摂取に伴う意識障害,ならびに迷惑行為は救急医療機関にとって避けられない問題である。今回,2012年1月から2013年9月までの21カ月間に,当院へ救急受診した急性アルコール中毒166例を対象に振り返り,これらについて性別,年齢,エタノール血中濃度,意識レベル,外傷の有無,暴言・暴力の有無について検討した。平均年齢は45.1±19.3歳,男性120人,女性46人であった。エタノール濃度が計測されている症例は129例あり,平均エタノール濃度は207.9±99.6mg/dLであった。約10%の16例で,医療従事者に対する暴言・暴力行為があり,うち4例が警察介入を要した。暴言・暴力などの迷惑行為のあった16例のうち14例は男性であり,平均年齢は36.2±17.4歳と若く,血中エタノール濃度は253.9±85.3mg/dLと高い傾向にあった。急性アルコール中毒は時として重大な転帰をたどることもあり,また,医療従事者にも被害を及ぼすことのある病態である。日常的に多く遭遇する症例であり,適切な対処を院内共通の認識とする必要がある。
著者
渡辺 正澄 藤原 正雄
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.171-176, 1988
被引用文献数
2

酒をおいしく味わうには, 飲酒に最適な温度と酒に合った料理を選ぶことがポイントであるが, 特にワインの場合には両者の関係がよリ厳しく要求される。本稿では, ワインの酸組成と飲酒適温との関係並びに料理との相性についてこれまでの知見を要約して紹介いただいた。<BR>ワインがなぜ温度と料理にこだわるのかを科学的に解き明かしてくれた興味ある解説である。
著者
藤原 正義
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.31, no.9, pp.29-42, 1982

The living style of the Rengashi Sogi, who drifted through Japan, is considered to be deeply related to his birth which is generally believed to be lowly. But there is no definite information to prove his birth as lowly. I will try to present a new approach to his birth, which I think was a warrior family, by studying the connected articles in Kodaiji Diary-Shiokawa Kashin Diary volume II(property of Naikaku Bunko).
著者
渡辺 正澄 藤原 正雄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.171-176, 1988-03-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

酒をおいしく味わうには, 飲酒に最適な温度と酒に合った料理を選ぶことがポイントであるが, 特にワインの場合には両者の関係がよリ厳しく要求される。本稿では, ワインの酸組成と飲酒適温との関係並びに料理との相性についてこれまでの知見を要約して紹介いただいた。ワインがなぜ温度と料理にこだわるのかを科学的に解き明かしてくれた興味ある解説である。