著者
川原 正博 水野 大
出版者
武蔵野大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

カルノシン(βアラニル ヒスチジン)の神経保護作用メカニズムを検討した結果、カルノシンおよびその誘導体であるアンセリンは、小胞体ストレスを抑制することによって亜鉛の神経毒性を軽減することが判明した。さらに、thapsigarginやtunicamycinなどの小胞体ストレス誘導剤による細胞死に対しても保護作用を示すことも判明した。さらに、カルノシンの経口投与はlipopolyssccharide誘発性の肺疾患に関しても保護作用を示すことが判明した。カルノシン及び類縁化合物のHPLCを用いる簡便な定量系を開発しており、神経疾患の予防・治療薬としてのカルノシンの活用の可能性が明らかとなった。
著者
松下 明 田原 正夫 吉本 尚
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.349-354, 2015 (Released:2015-12-25)
参考文献数
12

目的 : 高齢男性は支援や介護を要する状態となっても社会資源利用を好まず, 家に閉じこもりがちとなるケースが散見される. こういった背景から高齢男性の心理状態を評価及び分析し, 社会的関わりを促す具体的な方策を提言することが本研究の目的である.方法 : 岡山県勝田郡奈義町在住の75歳以上男性を対象に質的研究を行い, データ収集を2段階にて実施した. 一つは奈義町内の3地区に行われたフォーカスグループで, もう一つは個別に行われた半構造化インタビューである. 文章化されたインタビュー内容は修正版グラウンデッド・セオリーアプローチ (M-GTA) で分析・比較検討され, 概念化された.結果 : 高齢男性の社会的参加に関する心理的背景要因として, 内的要因 (役割へのこだわり・老いの受容) , 関係性の要因 (女性参加者・スタッフとの関係) , 外的要因 (経済・交通手段) が3つのカテゴリーとして示された.結論 : 関係性の要因と外的要因を中心に介入を行うことで, 高齢男性の社会的関わりを改善することが可能と思われた. 行政への10の提言を行った.

9 0 0 0 OA Ramanujanの数学

著者
藤原 正彦
出版者
一般社団法人 日本数学会
雑誌
数学 (ISSN:0039470X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.407-422, 2005-10-26 (Released:2008-12-25)
参考文献数
22
著者
原 正一郎 太田 尚宏 小山 順子 黄 昱 恋田 知子 神作 研一 齋藤 真麻理 高科 真紀 有澤 知世
出版者
人間文化研究機構国文学研究資料館
雑誌
国文研ニューズ = NIJL News (ISSN:18831931)
巻号頁・発行日
no.51, pp.1-16, 2018-05-07

●メッセージ国文学研究資料館情報システムの今昔物語●研究ノート読書時間は森の中――尾張藩「殿山守」資料に見る山間村落のひとこま――現代における古典文学コミカライズの傾向について●トピックス平成29年度 連続講座「初めてのくずし字で読む『百人一首』」平成30年度 連続講座「多摩地域の歴史アーカイブズ(古文書)を読む」特別展示 「伊勢物語のかがやき――鉄心斎文庫の世界――」第15回日本古典籍講習会(平成29年度)国際研究ワークショップ「江戸の知と随想」2017冬パリフォーラム「東アジアにおける知の往還」第一回――書物と文化――日本古典籍セミナー国際研究交流集会「災害国におけるアーカイブズ保存のこれから――技術交流・危機管理から地方再生へ――」平成30年度 アーカイブズ・カレッジ(史料管理学研修会通算第64回)の開催閲覧室だより第4回日本語の歴史的典籍国際研究集会の開催「古典」オーロラハンター3LOD Challenge 2017の最優秀賞に当館の「日本古典籍データセット」が使用されました総合研究大学院大学日本文学研究専攻の近況●表紙絵資料紹介山東京伝書簡
著者
日高 庸晴 市川 誠一 木原 正博
出版者
The Japanese Society for AIDS Research
雑誌
日本エイズ学会誌 (ISSN:13449478)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.165-173, 2004-08-20 (Released:2010-07-21)
参考文献数
21
被引用文献数
2

目的: ゲイ・バイセクシュアル男性におけるライフイベントの実態, HIV/STD関連一般知識およびHIV感染リスク行動と精神的健康の関連を明らかにすること。対象および方法: 184人のゲイ・バイセクシュアル男性を対象にスノーボールサンプリング法による無記名自記式質問紙調査を実施し, 男性と性交経験のあるゲイ・バイセクシュアル男性149名 (有効回答率81.0%) を分析対象とした。結果: 「男性に性的魅力を感じる」「性的指向などを自覚する」などのゲイ・バイセクシュアル男性特有のライフイベントは中学生ー高校生の間に集中して生じていることが示唆された。また, HIV/STD関連一般知識は比較的浸透していた。コンドーム常用率はオーラルセックスでは0%, アナルインターコース挿入のみ群で34.6%, 被挿入のみ群で33.3%, 両方経験群で17.1%とかなり低率であった。HIV感染リスク行動と心理的要因の関連は, 被挿入のみ群と両方経験群においてコンドーム非常用群は常用群に比べ精神的健康度が低い傾向であった。また, ロジスティック回帰分析ではコンドーム常用と自尊心尺度得点との間に有意な関連が認められた。結論: 本研究の対象集団にはコンドームの使用促進が必要であり, そのためには知識の普及とともに心理的問題をも改善するような予防介入策の実施が求められる。リスク行動関連要因をさらに明らかにするためには, 研究参加者を増やした研究の実施が必要である。
著者
浅原 正幸 金山 博 宮尾 祐介 田中 貴秋 大村 舞 村脇 有吾 松本 裕治
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.3-36, 2019-03-15 (Released:2019-06-15)
参考文献数
40
被引用文献数
2 3

Universal Dependencies (UD) は,共通のアノテーション方式で多言語の構文構造コーパスを言語横断的に開発するプロジェクトである. 2018 年 6 月現在,約 60 の言語で 100 以上のコーパスが開発・公開されており,多言語構文解析器の開発,言語横断的な構文モデルの学習,言語間の類型論的比較などさまざまな研究で利用されている. 本稿では UD の日本語適応について述べる.日本語コーパスを開発する際の問題点として品詞情報・格のラベル・句と節の区別について議論する.また,依存構造木では表現が難しい,並列構造の問題についても議論する.最後に現在までに開発した UD 準拠の日本語コーパスの現状を報告する.
著者
木村 利昭 藤原 正弘 小川 敬子 藤野 良子 相良 康重 神武 正信 井筒 雅 中島 一郎
出版者
社団法人日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.70, no.12, pp.1343-1350, 1996-12-01
参考文献数
25
被引用文献数
7 3

A scanning electron microscope (SEM) was used to study the morphology of starch granules and the strength of market Udon (Japanese noodles), that is, fresh Udon, frozen Udon and cooled Udon after cooking. Udon samples were cooked for a given time and observed with SEM and also we measured the breaking strength. The following results were obtained. 1.The degree of swelling of starch granules in cooked Udon samples differed with the position from the surface. The starch granules near the surface swelled extremely and did not retain their original granular form. 2.A black ring was observed in the cross-section of all cooked Udon in SEM images. The black ring may be caused by the difference in the water content between near the surface and the core of cooked Udon. 3.The starch granules in the core of cooked Udon had a distinct form, but they were not a round shape. The shallow surface layer of each starch granule swelled and gave high contrast. The core of the each starch granule showed low contrast because of its compact structure, which looked black in the SEM images. The area of the black zone was different among Udon samples. 4.There was a correlation between the total area of low contrast zone in the starch granules and the breaking strength of Udon. The area of low contrast zone can be used for an evaluation scale of cooked Udon.
著者
原 正彦
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.106-110, 2022-01-15 (Released:2022-03-03)
参考文献数
12

近年,高齢化に伴う医療需要の増加に,医療を支える若い世代の人口減少も相まって医療従事者の負担が激増しており,デジタル技術による医療の効率化が喫緊の課題となっている.われわれは治療効率向上の観点から大阪大学における産学連携活動を通して仮想現実(virtual reality:VR)技術を応用したリハビリテーション用医療機器「mediVRカグラ」を開発した.本機器は運動失調や,歩行・上肢・認知機能障害,および疼痛の治療に応用が進んでおり,業務の効率化に加えて,その高い治療効果に期待が集まっている.本稿ではゲーム分野におけるさまざまな知見が,医療機器にどう応用され臨床効果につながっているのかについて概説したい.
著者
松田 啓輔 柳原 正実 小根山 裕之
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.A_78-A_86, 2020-02-01 (Released:2020-02-06)
参考文献数
9

交差点の安全性や効率性について、交差点構造や現示パターンに着目した研究はあるが、信号灯器の位置に着目した研究は少なく、灯器位置の違いによる運転挙動の違い等の知見も十分に得られていない。 そこで本研究では、信号灯器の位置に着目し、日本で主流の交差点の右手前・左奥(far)と、ドイツなどで主流の交差点の左手前(near)による、交差点性能の違いについて、ドライビングシミュレータを用いた実験により得られた運転挙動データを用いて評価した。交差点性能を評価するための指標として、安全性については、「通過判断率と追突可能性」及び「交錯点通過時間差」、円滑性については「交差点の交通容量」を用いた。その結果、far より near の方が、円滑性および安全性の両方で性能が高い可能性があることを示した。
著者
川田 賢介 河原 正和 秋森 俊行 山口 朋子 岡本 喜之 石川 好美
出版者
社団法人 日本口腔外科学会
雑誌
日本口腔外科学会雑誌 (ISSN:00215163)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.423-426, 2008-07-20
参考文献数
23
被引用文献数
2 2

Oral mucosal lesions associated with foreign body injuries can have various origins, but traumatic lesions of the oral mucosa caused by other organisms are rare. Such cases thus require special knowledge for diagnosis. We report a case of oral stings from spermatophores of <I>Todarodes pacificus</I>, the Pacific squid. The patient was a 31-year-old woman who cooked the internal organs of a raw <I>T. pacificus</I> for lunch. She experienced a sharp pain on the tongue and buccal mucosa when eating the organs. On checking the oral cavity, she identified multiple white objects with a worm-like appearance sticking into the tongue and oral mucosa. Attempts to remove these objects herself were unsuccessful. She then visited the emergency department of our hospital. We examined the oral cavity and found multiple white objects appearing to be parasitic worms sticking into the tongue and oral mucosa. Attempts to remove the objects with forceps were unsuccessful because of tight attachment to the mucosa. Removal was thus achieved by making slight incisions under local anesthesia. The specimens showed a white spinate shape and were about 4mm long. Endoscopic examination of the upper digestive tract after treatment of the oral cavity revealed no additional foreign bodies. The final pathological diagnosis was spermatophores of <I>T. pacificus</I>.
著者
浅原 正幸
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 = [O]perations research as a management science [r]esearch (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.689-694, 2007-11-01
参考文献数
14

自然言語処理の分野は系列に対するラベル付与(系列ラベリング)問題として解かれるタスクが多くある.例えば,品詞ラベル付け問題は,入力を単語列とし,各単語に品詞を付与する系列ラベリング問題の1つである.このような背景から,教師あり学隙による系列ラベリング技術が多く提案されてきた.本稿では,自然言語処理の分野でどのように系列ラベリング技術が利用されているかを概観するとともに,近年考案された系列全体において最適化を行う構造マッピング法に基づく系列ラベリング手法を紹介する.
著者
小林 隆人 谷本 丈夫 北原 正彦
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 = Japanese journal of conservation ecology (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.1-12, 2004-06-30
被引用文献数
1

オオムラサキ(鱗翅目,タテハチョウ科)の保護を目的とした森林管理手法の確立に必要な資料を得るため,面積の広い森林が連続的に分布する栃木県真岡市下篭谷地区と都市化が進んで面積が狭い森林がパッチ状に分布する伊勢崎地区において,森林群落のタイプとその面積,寄主植物であるエノキの本数,エノキの根元で越冬する本種の幼虫の個体数,夏季における成虫の目撃個体数を調査した.両地区とも,アカマツ-クリ・コナラ林およびクヌギ,コナラ,針葉樹,タケの人工林などがパッチ状に分布し,アカマツ-クリ・コナラ林の面積率が最も高かった.本種の寄主植物であるエノキの母樹(樹高2m以上)は,森林地帯,農家の屋敷地,荒地に小集団で存在した.母樹の本数は両地区ともアカマツ-クリ・コナラ林で最も多く,他の森林群落および土地利用では少なかった.地区別の本数は下篭谷地区と比べて,伊勢崎では顕著に多かった.当年,1年生など発芽して間もないエノキの椎樹は,森林の部分的な伐採から1年ほど経た比較的新しい林縁部に見られた.下篭谷では,胸高直径が15cm以上25cm未満のエノキにおける本種の越冬幼虫の個体数が,他のサイズのエノキよりも有意に多くなったが,伊勢崎では幼虫個体数はエノキのサイズの間で有意に異ならなかった.一方,木の周囲の森林および落葉広葉樹二次林の面積と越冬幼虫の個体数との間には,両地区とも有意な正の相関が認められた.成虫の確認個体数は下篭谷地区で多く,成虫の多くはクヌギ林およびその付近で確認された.以上の結果から,落葉広葉樹二次林に対して土地利用の変換を伴う部分的な伐採を行うことは,エノキの密度を増加させる反面,本種の越冬幼虫や成虫の密度を減少させることが示唆された.このような両者の相反する生息条件を満たすには,クヌギ林とエノキが備わったある広さの落葉広葉樹二次林を伐期が異なる小班に区分することが必要である.
著者
鹿野 豊 藤原 正澄
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.78, no.10, pp.593-598, 2023-10-05 (Released:2023-10-05)
参考文献数
47

計算・通信・暗号といった現代の情報社会の礎として情報理論がある.一方,情報社会を担うハードウェアは物理法則に従うデバイスによって構成されているため,物理法則によって制限された情報理論が必要である.中でも,量子力学の法則によって制限された情報理論は量子情報科学と呼ばれ,量子エレクトロニクス技術と融合しながら40~50年かけて発展してきた.デジタル社会の情報処理の最小単位を「ビット」と呼ぶが,同様に量子情報処理の最小単位を「量子ビット」と呼ぶ.一般に,量子ビットは外界環境に対して脆弱であり容易にその状態を変化させてしまう.この性質は量子ビットの品質向上にとっては負の側面であるが,見方を変えれば,環境因子を精密に測定できる能力を保持していることを意味している.そのため,このような物理系の応用は量子センサーと呼ばれている.量子センサーは単一原子レベルでの量子状態操作が可能であることから,従来のセンサーより高感度でかつ高い空間分解能であると期待されている.これらの情報技術や計測技術をまとめて,量子情報技術または量子技術と呼ぶようになった.そして近年,量子計算機の実装を中心に量子情報技術の研究開発が盛んに続けられている.量子情報技術の中でも,室温動作が可能な物理系として注目されているダイヤモンド中の窒素・格子欠陥(NV中心)にある電子スピンは,光検出磁気共鳴法を用いることで,量子状態を可視光で読みだすことができる.また,その量子状態はマイクロ波を印加することで容易に制御できる.ダイヤモンドNV中心の基底状態は電子3重項状態であり,超微細構造を持つ.この超微細構造が磁場,圧力,温度に対して変化するため,ダイヤモンドNV中心は室温で動作する量子センサーとして開発が進められ,理想的な環境において従来技術のセンサーより感度が向上しているということが示されてきた.一方で,生体試料などの実際に調べたい環境において,ダイヤモンド量子生体センサーがどのような性能を示し,これまでに得ることができなかった知見をもたらすことができるかは分かっていなかった.そこで,人工的に作製された蛍光ナノダイヤモンドを量子センサーとして生体試料に微小ガラス管を用いて投入し,生体試料内部の温度を局所的に計測した.具体的には,「生物学研究の未来」として称されることもある線虫(C. elegans)というモデル生物を生体試料として,薬剤投下時の発熱現象を計測した.まだ,薬剤投下時の発熱は分子科学的なメカニズムが解明されていない生理現象ではあるが,局所的な量子生体センサーを用いることで発熱現象自体が線虫内で起こることの証拠を得た.量子生体センサーの研究開発は,純粋なる物理学の基礎研究として捉えるのが非常に難しくなる一方で,他分野への応用を推進していく上で,他分野の未知なる現象を解明するために使われなければならない段階にある.そして,誰かが近い将来『量子情報技術の常識』という教科書を執筆した時, 量子情報技術分野の存在価値の大半が,その分野が他分野に対して果たす役割の大きさに依存することを忘れてはならない. と書き記されているであろう.
著者
山崎 浩司 木原 雅子 木原 正博
出版者
The Japanese Society for AIDS Research
雑誌
日本エイズ学会誌 (ISSN:13449478)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.121-130, 2005-05-20 (Released:2010-07-21)
参考文献数
23

目的: 若者に対するエイズ予防介入プロジェクトの一環として, 地方A県の女子高校生が, なぜ性交渉時にコンドームを使わないようになってしまうのかを質的研究法を用いて分析する.対象と方法: A県の女子高校生41名に対し, フォーカス・グループ・インタビューを8グループ実施した. 対象者として, 交際相手を有すると思われる友人同士6名前後を, スノーボール・サンプリングによりリクルートした. 分析は修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを使った.結果: 対象者は「治る性病より直らない妊娠」をより心配しているにも係わらず, 実際のコンドーム「使用は相手次第」であり, 結果的に膣内・膣外射精を繰り返し, それでも簡単には妊娠しないことを経験的に学習して「独自の避妊意識」を形成し, コンドーム不使用を定着させていた. また, 交際相手が社会人の場合は「妊娠してもかまわない」と考えたり, コンドーム購入を恥ずかしさ等による「購入阻害」要因により回避したり, 不快経験から「コンドーム嫌悪」に陥ったりして, 不使用に至っていた. さらに, 対象者が仮にSTDに関心を抱いても, 入手できる「予防学的情報の不足」から, コンドームを使わない「独自の予防認識」を形成し, やはり不使用に終っていた.結論: コンドーム不使用における相互作用プロセスを含む若者の多様な性文化の把握なしでは, 包括的なエイズ予防法を開発しがたい可能性が示唆された.