著者
栗原 正明
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.146, no.6, pp.315-320, 2015 (Released:2015-12-10)
参考文献数
20

危険ドラッグや違法薬物を速やかに規制する場合,動物実験や生物学的試験には多くの時間を要するため,インシリコによる活性予測が必要となる.薬物が作用する標的タンパク質が不明であるか,判明しているが三次元構造が明らでない場合は,リガンド側の構造情報のみで活性予測を行うQSAR(Quantitative Structure-Activity Relationship:定量的構造活性相関)法が一般的である.QSAR法とは化合物の構造と生物学的(薬学的あるいは毒性学的)な活性とを定量的に数学的な関係であらわしたものである.すでに危険ドラッグ規制の根拠となる活性データとしてQSAR法による予測活性が用いられてきた.一方,ここ数年ある構造の危険ドラッグを規制すると,少し構造の違った危険ドラッグが流通するといういわゆる「いたちごっこ」の状態が続いている.その対策として平成25年にある範囲の化合物群(数百化合物)を一度に指定する包括規制を導入した.それにより,今後流通すると予測される活性を有する化合物群を事前に規制することができる.この包括規制においては,指定する化合物の中には,まだ合成されていない化合物も含まれ,その活性を求めることはインシリコで行うしかない.今後ますます,インシリコよる活性予測の重要性が高まるだろう.
著者
藤原 正光 番場 梨彩
出版者
文教大学
雑誌
教育学部紀要 = Annual Report of the Faculty of Education (ISSN:03882144)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.113-125, 2014-12-01

幼児期に嫌いであった食物の種類とその理由及びその克服時期と方法を,大学生の幼児期の回想法による調査を行った.同時に,家庭と保育所・幼稚園での食事指導の違いを調査した.結果の分析に際し,性差を考慮した.調査対象者は大学生166名(男性58名,女性108名)であった。主な結果は次の通りである.1)幼児期に嫌いな食べ物は,レバー,セロリ,ピーマン,なす,にんじん等であり,その理由は,味,食感,におい等であった.2)克服時期は、中学時代が最も多くその後減少していたが,女性は男性に比べ大学生になってから克服率が有意に増加していた.3)克服方法は,「食べてみたら美味しかった」「調理法の工夫」「食べる機会の増加」「家族の影響」などが上位を占めていた.幼児期に受けた食育を家庭と保育所・幼稚園を比較しながら検討した.因子分析の結果,いずれの質問項目にも「注意及び指導」と「食べさせる工夫」の因子が抽出された.4)家庭での食育指導の方が有意に高い平均値であり,男児に「注意及び指導」が有意に高く,「食べさせる工夫」については,家庭と保健所・幼稚園の間にも性差にも有意差は示されなかった.
著者
藤原 正弘
出版者
日本社会情報学会
雑誌
日本社会情報学会全国大会研究発表論文集 日本社会情報学会 第26回全国大会
巻号頁・発行日
pp.151-154, 2011 (Released:2012-03-20)

For twenty or thitry years video phone service has not diffused. Some reasons, such as the rate for calls, difficulties in its handling, an adverse reaction to face-to-face calling, were pointed out in earlier studies. We focus on the demand patterns inclueding users' attributes. In our research we found a intended party does not always to want to use video calling services. For example a 40's or 50's husband has a wish to make video calling to his wife but who does not hope so.
著者
内出 崇彦 森本 洋太 松原 正樹
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

地震波形記録は地震学における基本的なデータである。地震学者は通常、地震波形を画面や紙に描いて可視化して、そこから情報を読み取る。しかし、ほかの方法もある。地震波形を音に変換するという可聴化である。これは近年よく行われるようになってきたが、主に非専門家へのアウトリーチが目的である。われわれは、地震波の音を研究目的で利用することを試みている。一般に、時系列データを音に変換する方法には2つある。ひとつは時系列データをそのまま音響信号に見立てて再生するaudificationであり、もうひとつは瞬時周波数や振幅といったデータの特徴に応じて音を割り当てるというsonificationである。われわれは地震波形のaudificationとsonificationの手法を開発して、どのような情報が地震波可聴化音から聞き取れるかを検討した。初めに2011年東北地方太平洋沖地震を題材とした。防災科学技術研究所の強震観測網(K-NET)と強震基盤観測網(KiK-net)の地表観測点のうち116点を適当に選んで使用した。一般に、地震波記録は聴きとるには周波数が低すぎるため、audificationの場合は再生速度を上げて、周波数を可聴域に移さなければならない。116観測点の地震波形のaudificationを10倍速の再生速度で行い、それらを重ね合わせた。可聴化音は聴きとることができるが、まだ低い。可聴化音からは日本全国に地震波形が広がる様子が感じ取れる。地震波の特徴をより明らかにするために、零交差率と振幅に応じて音を割り当てるsonification手法を設計した。10倍速で再生するものとしたため、可聴化音の全長は40秒ほど聴き取りやすい長さとなった。さらに、アウトリーチ活動で利用することも考慮して、怖くない雰囲気になるように音を選んだ。全116観測点からのデータは時間同期を考量した上で、同時に再生する。Sonificationによって得られた音は、やはり全国的な地震波伝播を感じさせるものである。初めは大きく高い音であるのに対し、徐々に小さく低い音に移行していく。これは、地震波の幾何減衰や非弾性減衰の効果を反映している。可聴化音の23秒ごろ(発震時の230秒後に相当する)に、全国的な地震波伝播とは明らかに異なった高い音が聴こえた。地域ごとに可聴化を行ってこの原因を追究した結果、岐阜県飛騨地域からのものであることがわかった。この地域で動的に誘発された地震[例えば、Uchide, SSA, 2011; Miyazawa, GRL, 2011; 大見ほか, 地震, 2012]と時刻も一致する。Audificationとsonificationによって、周波数や振幅の違いや変化を多くの観測点について同時に観測することが容易になった。本研究は、巨大地震から長距離を走ってきた地震波より高い周波数の地震波を放射する動的誘発地震を検出する方法として優れていると考えられる。謝辞: 本研究では、防災科学技術研究所の強震観測網(K-NET)と強震基盤観測網(KiK-net)の地震波形記録を使用しました。
著者
笠原 正雄
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.28-41, 2011-07-01 (Released:2011-07-01)
参考文献数
48
被引用文献数
1

リード・ソロモン(RS:Reed-Solomon)符号誕生後,半世紀の歳月が経過している.本稿ではRS 符号が情報通信・記録技術発展の歴史の中で,マイナーな存在からやがて私たちの生活の中に最も深く溶け込んだ符号,すなわち総合的に考えて最上位にランクされる符号として高く評価され,位置付けられていく過程をディジタル情報通信・記録技術の発展の歴史の中で幅広く捉えて解説する.更にRS 符号には高信頼度の情報通信記録システムを構築する上での大きな貢献に加えて,情報セキュリティ分野への応用をはじめとする多様な分野への応用が期待されることを述べる.
著者
渡邉 雄介 中原 千尋 河田 純 大薗 慶吾 鈴木 宏往 宮竹 英志 井上 政昭 石光 寿幸 吉田 順一 篠原 正博
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.759-768, 2013-10-01 (Released:2013-10-11)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

症例は86歳の男性で,上腸間膜動脈(superior mesenteric artery;以下,SMAと略記)血栓症に対する血栓溶解療法・抗凝固療法を誘引として発症したコレステロール塞栓症(cholesterol crystal embolization;以下,CCEと略記)による腸閉塞に対し,単孔式腹腔鏡下手術(single incision laparoscopic surgery;以下,SILSと略記)を施行した.CCEによる腸閉塞はまれであり,これに対し単孔式を含めた腹腔鏡下手術を施行した報告はない.本症例に対しSILSを安全に施行するうえで,術前の閉塞部位の同定とイレウス管による腸管の減圧などが有効であった.今後,インターベンション治療や抗凝固療法の増加に伴いCCEの罹患数は増加するものと考えられ,一般消化器外科医もこの疾患の存在を認識することが重要である.また,本症例のようにCCEはSMA血栓症などの致死的な疾患を背景として発症する可能性のある疾患であり,外科的治療を考える際には低侵襲な単孔式を含めた腹腔鏡下手術も治療選択肢としてあげられると考えられた.
著者
東 藍 浅原 正幸 松本 裕治
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.53, pp.67-74, 2006-05-19
被引用文献数
5

本稿では,日本語形態素解析において問題となる未知語処理に対して条件付確率場(ConditionalRandomFields CRF)を適用する手法を提案する.提案手法では,形態素解析と同時に入力文中の部分文字列に対して未知語候補を追加することにより,形態素解析と未知語処理を同時に行う.また,従来最大エントロピーマルコフモデル(MaximumEntropyMarkovModelMEMM)などを適用した手法で指摘されてい0たlabelbiasあるいはlengthbiasの影響は,単に既知語の解析において問題になるだけではなく,未知語処理においても重要な問題となることを示し,CRFを適用することによりこれらの問題が解決されることを示す.そして大規模な正解タグ付コーパスを用いて実験し,本稿の提案手法の有効性を検証したThis paper proposes a new method forJapanese morphological analysis with unknown word (i,e out-of vocabularyword)processing The Japanese morphological analysis is based on conditional random fields(CRF)on a word trells.In the word trellis,the analyzer expands not only knownwords(i・ein-vocabularyword)but also substrings in a sentence as word candidates Kudo(Kudo 2004)discussed an issue that maximum entropy Markov model(MEMM)has label as well as length bias problems in known word processing and CRFs have potential to cope with them.We discuss the same issue in unknown word processing.Evaluation experiments on large-scale corpora show the effectiveness and impact on the proposed method.
著者
小根山 裕之 新倉 聡 柳原 正実 大口 敬
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.269-274, 2020-05-01 (Released:2020-06-13)
参考文献数
8
被引用文献数
2

信号灯器位置の違いによる運転挙動の違いを実車実験により実証することを目的に,東京大学柏キャンパスの生産技術研究所(当時,千葉実験所)の試験走路を用いて,far とnear の信号灯器位置の違いによる運転者の挙動の違いを実証分析する.青信号表示終了時の切替り時の通過・停止の判断は,far に比べてnear では停止線から離れていても通過を判断し,最終通過時刻が遅くなること,青信号表示開始時の発進挙動に交差側信号表示の視認性による違いが見られること,および,青信号表示終了時に対応直進車両の停止を確認後の右折挙動では,near の右折開始がfar より1 秒ほど遅いことが確認された.
著者
福村 直毅 山本 ひとみ 北原 正和 鎌倉 嘉一郎 植木 昭彦 牛山 雅夫
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.303-314, 2017-04-18 (Released:2017-06-16)
参考文献数
34
被引用文献数
5 3

【目的】機能的自立度評価表(FIM)による分類が重症(FIM総得点≦40点)患者の日常生活動作(ADL)や栄養・免疫状態低下に対する補中益気湯の有効性および安全性について検討した.【方法】片麻痺を伴う脳血管障害後遺症でリハビリテーション施行患者31例を対象に補中益気湯(TJ-41)投与群と非投与群に無作為に割付し,24週間観察した.評価はADL,炎症性合併症発症率などである.【結果】FIM総得点は両群ともに治療前後で有意に改善したが,FIM利得に群間差はなかった.炎症性合併症発症率はTJ-41投与群で有意に低かった(p=0.049).FIM運動得点が20点以下の症例において,治療前後の総リンパ球数変化比はTJ-41投与群で増加傾向が認められた.本研究において副作用はなかった.【結論】補中益気湯は脳血管疾患などのリハビリテーションにおいて炎症性合併症対策に有用である可能性が示唆された.
著者
細矢 雄司 篠原 正 押川 渡 元田 慎一
出版者
Japan Society of Corrosion Engineering
雑誌
Zairyo-to-Kankyo (ISSN:09170480)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.391-395, 2005-08-15 (Released:2011-12-15)
参考文献数
13
被引用文献数
6 17

炭素鋼の大気腐食における環境の腐食性について, 付着海塩が吸水することによって表面に形成される水膜の厚さの影響を中心に検討した.付着海塩への吸着水量を種々の条件下で実測し, 形成された液膜の濃度を計算値と比較して熱力学計算が実験結果をよく再現する条件を得た. また種々の条件下で炭素鋼の腐食試験を行い, 熱力学計算で導出される水膜の厚さdと腐食速度CRとの関係について調べた. d=50μm近傍においてCRは最大値約0.07mgm-2s-1を取ることを見い出した.
著者
春日井 淳夫 小笠原 正志 伊藤 朗
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.530-539, 1992-10-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
34
被引用文献数
1

In order to evaluate iron balance in the human body, we studied the effects of exercise on iron excretion in urine, sweat and feces. The subjects were five healthy male, college athletes. The daily intake of nutrients by the subjects was regulated by a prescribed diet (Calorie Mate, Ohtsuka), and the control measurements and the exercise measurements were performed within seven days. Excretion of iron in the urine during the exercise period was significantly higher than in the control period. The excretion of iron in the sweat was 1.076±0.118 mg, i. e, , about 70% of total iron physiologically excreted from the human body. The excretion of iron in the feces during the exercise period was significantly lower than during control period. Feces volume was positively correlated with energy expenditure and negatively correlated with the excretion of iron in the feces. Iron absorption during the exercise period was significantly higher than during the control period. These findings suggest that exercise stimulates not only iron excretion via urine and sweat, but iron absorption, and that iron balance remains positive in healthy male subjects who have normal iron status.
著者
浅原 正幸 小野 創 宮本 エジソン 正
出版者
日本言語学会
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.156, pp.67-96, 2019 (Released:2020-04-14)
参考文献数
65

Kennedy et al.(2003)は,英語・フランス語の新聞社説を呈示サンプルとした母語話者の読み時間データをDundee Eye-Tracking Corpusとして構築し,公開している。一方,日本語で同様なデータは整備されていない。日本語においてはわかち書きの問題があり,心理言語実験においてどのように文を呈示するかがあまり共有されておらず,呈示方法間の実証的な比較が求められている。我々は『現代日本語書き言葉均衡コーパス』(Maekawa et al. 2014)の一部に対して視線走査法と自己ペース読文法を用いた読み時間付与を行った。24人の日本語母語話者を実験協力者とし,2手法に対して,文節単位の半角空白ありと半角空白なしの2種類のデータを収集した。その結果,半角空白ありの方が読み時間が短くなる現象を確認した。また,係り受けアノテーションとの重ね合わせの結果,係り受けの数が多い文節ほど読み時間が短くなる現象を確認した。
著者
石川 朋穂 高田 貴奈 渋谷 泰子 浅里 仁 井上 美津子 柳原 正恵 足立 マリ子 佐々 龍二
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.434-438, 2006-06-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
11

平成15年4月から平成16年3月までの期間に,東京都K区の保健所および保健センターの歯科健診に来所した2歳6か月児459名について咬合状態の診査を行い,同時に保護者を対象におしゃぶりの使用状況についてアンケートによる調査を行い,以下の結論を得た。1.おしゃぶりの現在使用群では,使用経験なし群に比較して開咬の者の割合が明らかに高かった。2.おしゃぶりを過去に使用していた群では,開咬の割合は少なかった。3.おしゃぶりの使用開始時期にかかわらず,使用期間が長期間に及ぶほど開咬になる割合も高くなった。4.おしゃぶりの現在使用群では,使用経験なし群に比較して習癖を持っている者の割合が少なかった。5.おしゃぶりとしゃぶり癖の両方を行っている者はほとんどいなかった。6.おしゃぶりのみを現在使用している群は,しゃぶり癖のみを行っている群に比べ,開咬になる割合が高く,その範囲は広範囲に及び,程度も大きくなっていた。
著者
浅原 正幸
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.351-365, 2011 (Released:2011-12-28)
参考文献数
20

本稿では係り受け構造情報のタグ付けの一貫性について考える.係り受け構造には,統語的制約により一意に決まる構造と選択選好性によるタグ付け作業者に委ねる構造がある.多くの場合,統語的制約を優先してタグ付けられるが,選択選好性に影響され誤ってタグ付ける例が多々ある.このような事例について誤り傾向の差分を評価するために,ゲームを用いた新しい心理言語実験手法を提案する.埋め込み構造によるガーデンパス文を用いて 13 人の被験者で実験を行ったほか,6 種類の係り受け解析器を用いて解析誤り傾向の比較を行った.さらに最も誤った種類の文に対し,選択選好性がどのように影響したかについて報告する.
著者
親川 拓也 村岡 直穂 飯田 圭 楠原 正俊
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.175-182, 2017 (Released:2017-04-28)
参考文献数
26
被引用文献数
3

【背景/目的】日本人進行がん患者の静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism: VTE)の治療での直接経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant: DOAC)の報告はこれまでない.【方法】エドキサバン(E群),アピキサバン(A群)で治療を開始した患者をそれぞれワルファリン(W群)で治療した患者と後向きに比較,検討した.【結果】E群とW群の比較では,非大出血はE群で17%,W群で27%(p=0.39),全ての出血はE群で30%,W群で57%(p=0.03),再発はE群が8%,W群で16%であった(p=0.43).A群とW群の比較では,非大出血はA群で10%,W群で27%(p=0.18),全ての出血はA群で26%,W群で57%(p=0.02),再発はA群が3%,W群は16%であった(p=0.17).【結語】DOACはW群と比較し,非大出血および再発が少ない傾向であった.全ての出血はDOACで有意に少なかった.日本人進行がん患者のVTEの治療にもDOACは有用である可能性がある.
著者
石原 正志
出版者
岐阜大学・医学部附属病院・薬剤部
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2016

【研究の目的】我々は、多施設共同研究でオピオイドによる便秘対策に緩下剤の予防投与が重要であることを明らかにした。この研究の中で多くの施設で酸化マグネシウム(以下、MgO)が緩下剤として使用されていた。一方、MgOが緩下作用を発揮するには、1,000mg/day以上の投与量が必要であるが、MgOが1,000mg以上投与されていても便秘を発現している患者が見受けられた。一般的にMgOによる緩下作用は胃酸(HCl)が必要であるが、制酸剤の併用による胃酸分泌の低下がMgOの緩下作用に及ぼす影響は明らかではない。また、オピオイドを服用している患者の多くは、NSAIDsを服用しており、その胃腸障害予防の為にH2ブロッカー(以下、H2R-B)やプロトンオポンプ阻害薬(以下、PPI)などの制酸剤を併用している。そこで本研究では、オピオイドの便秘に対して、MgOが投与されている患者において、制酸剤の併用がMgOの緩下作用に影響を及ぼすか否かを検討する。さらに、制酸剤による影響が明確になった場合、緩下剤の種類、用量について解析し、オピオイド投与時の適切な薬剤の種類および投与量を明らかにすることにより、オピオイド内服薬投与時の投薬投与計画を確立する。【方法】2007年1月から2014年10月の期間に、当院においてオピオイドが新規に投与された患者441症例を対象とし、MgOが予防投与された患者において、制酸剤(H2R-BあるいはPP工)が併用されている場合と併用されていない場合の便秘の発現状況を比較検討した。また、MgOが投与されている患者において、便秘発現率に影響を及ぼす要因について解析した。【結果】全症例441例中、MgOが単剤で投与された患者は248例であった。また、このうち制酸剤が併用されていた患者は約60%を占め、これらの患者ではMgOの便秘予防効果は有意に阻害されていた(p=0.017)。ただし、MgOの投与量が2,000mg/day以上投与されている場合は、制酸剤併用の影響はほとんど受けていなかった。一方、センノサイドなどMgO以外の緩下剤が予防投与されていた場合は、制酸剤併用の影響はほとんどなかった。また、MgOが投与されている患者の中で便秘発現のオッズを有意に上昇させたのは、制酸剤が併用されている場合[オッズ比(OR)=2.335, 95%信頼区間(CI)=1.093-4.986, p=0.028]とMgOの投与量が1,000mg/day以下の場合[OR=4.587, 95%CI=2.287-9.198, p<0.001]であった。【結論】オピオイドによる便秘対策としてMgOを予防投与する場合、MgOの投与量として1日2,000mg未満では制酸剤の影響を強く受けることが明らかとなった。
著者
平野 修 河西 学 平川 南 大隅 清陽 武廣 亮平 原 正人 柴田 博子 高橋 千晶 杉本 良 君島 武史 田尾 誠敏 田中 広明 渡邊 理伊知 郷堀 英司 栗田 則久 佐々木 義則 早川 麗司 津野 仁 菅原 祥夫 保坂 康夫 原 明芳
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-10-21

奈良・平安時代において律令国家から、俘囚・夷俘と呼ばれたエミシたちの移配(強制移住)の研究は、これまで文献史学からのみ行われてきた。しかし近年の発掘調査成果により考古学から彼らの足跡をたどることが可能となり、本研究は考古学から古代の移配政策の実態を探るものである。今回検討を行った関東諸国では、馬匹生産や窯業生産などといった各国の手工業生産を担うエリアに強くその痕跡が認められたり、また国分僧尼寺などの官寺や官社の周辺といったある特定のエリアに送り込まれている状況が確認でき、エミシとの戦争により疲弊した各国の地域経済の建て直しや、地域開発の新たな労働力を確保するといった側面が強いことが判明した。