著者
藤原 治 小松原 純子 高田 圭太 宍倉 正展 鎌滝 孝信
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.115, no.5, pp.569-581, 2006-12-25 (Released:2009-11-12)
参考文献数
36
被引用文献数
9 9

The temporal development of a late Holocene strand plain system along the western Shizuoka Prefecture was reconstructed based on facies analyses and 14C dating for core samples excavated in a back marsh using a geo-slicer, 6.0-m-long, 0.35-m-wide, and 0.05- to 0.1-m-deep wedge-shaped stainless steel case. The strand plain system consists of beach, sand dune, and back marsh. Stratigraphic succession of the strand plain system, up to 4.4 m thick, is composed of upper shoreface sand, foreshore sand, backshore sand, and back marsh mud, in ascending order. The succession shows three development stages of the strand plain system.Stage 1 (before the 13th century) : The study area was under a wave-dominated beach environment. The beach system was developed by progradation of shoreface, foreshore, and backshore deposits in the later period of this stage.Stage 2 (from the 13th century to the 16th century) : Sand dune and back marsh developed, covering the beach deposit. Humic mud was thickly deposited in the back marsh with low sand supply from seaward across the dune.Stage 3 (after the 17th century) : The back marsh has been infilled mainly by washover sand and debris from the hinterland. The AD 1707 Hoei Earthquake Tsunami, which destroyed villages on the dune, possibly promoted reactivation of sand movement from ruined dune to the back marsh.
著者
前田 淳 林 直諒 小幡 裕 竹本 忠良 関根 暉彬 西岡 久寿弥 松野 堅 上地 六男 山内 大三 山下 克子 横山 泉 市岡 四象 本池 洋二 藤原 純江
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.17, no.12, pp.907-913, 1976

東京女子医大,成人医学センターの定期検診受診者1,391名および同消化器内科に肝疾患のため入院した発端者20名(急性肝炎8名,慢性肝炎6名,肝硬変3名,肝癌3名)の家族90名を対象としHBs抗原およびHBs抗体についてsubtypeを中心に検討を加えた.<BR>定期検診受診者の抗原陽性看は1.4%,抗体陽性者は27.4%であり,肝疾患患看家系では抗原陽性者は41.1%,抗体陽性者は34.4%で定期検診受診者より明らかに高率であり,特に抗原の陽性率が高い.<BR>subtypeでは定期検診受診者,肝疾患患者家系とも抗原はadr,抗体はRが優位であり,定期検診受診者で6ヵ月間隔で2度施行できたものでsubtypeの変動したものはなかった.肝疾患患者家系では肝硬変,肝癌群に兄弟,子供に抗原,抗体の集積がみられ,subtypeでは抗原がadwの家系は急性肝炎の1例のみで,他は抗原はadr,抗体はRであり,同一家族内でsubtypeの異なるものはなかった.
著者
正田 悠 安田 晶子 中原 純 田部井 賢一 伊坂 忠夫
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.90.18207, (Released:2019-07-10)
参考文献数
31
被引用文献数
1

University students in Japan tend to listen to music frequently, perhaps to regulate their current mood. In the present study, we aimed to develop the Japanese version of the “Brief Music in Mood Regulation” scale (B-MMR) and examined its reliability and validity. Based on 307 Japanese undergraduates’ responses, we constructed the Japanese version of the B-MMR, which is comparable with the original B-MMR. Moreover, we confirmed that several aspects of the Japanese version of the B-MMR are positively correlated with general emotional regulation and stress coping strategies. Our Japanese version of the B-MMR can be used in future studies to explore the effects of listening to music on people’s quality of life and well-being.
著者
吉田 拓弥 川原 純 井上 武 笠原 正治
雑誌
研究報告アルゴリズム(AL) (ISSN:21888566)
巻号頁・発行日
vol.2017-AL-165, no.16, pp.1-7, 2017-11-09

ネットワーク信頼性評価とは,ネットワークの各リンクに静的な故障確率が設定されている場合に,2 頂点間が通信可能である確率を求める問題である.確率を厳密に計算する手法として,二分決定グラフ (BDD) を用いた計算方法が知られている.BDDは 論理関数を圧縮して効率よく表現できるデータ構造である.本稿では,ネットワークの 2 つ以上のリンクの故障に依存関係がある場合の信頼性評価を行う.本手法では,リンク間に存在する依存関係を BDD で表現し,依存関係を考慮しない場合に構築した BDD との二項演算を行うことで,依存関係を考慮した信頼性 BDD を生成し,確率を計算する.本手法を 3 つの計算方法で実装し,各方法を処理時間と生成される BDD のノード数の観点から比較を行う.
著者
河原 純一郎
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.159-163, 2011-03-31 (Released:2017-04-15)
参考文献数
20
被引用文献数
1

Cognitive psychologists have likened attention to a limited resource or capacity to account for recognition performances under dual task circumstances. Some theorists use this analogy of limited resource to account for the attentional blink phenomenon, in which perception of the second of two targets embedded in a rapid stream of nontargets is impaired; they argue that the attentional blink reflects scarcity of available resource for the first target due to the resource depletion by the first target processing. Some other theorists propose an alternative explanation in which the attentional blink results from on-line selection mechanisms that act in response to distracting input, rather than being the result of first-target-induced cognitive resource depletion. The present article reviews recent arguments between these theories and introduces some new findings suggesting that selection mechanisms involved in filtering for targets provide a strong and coherent explanation of the attentional blink.
著者
林原 純生
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.45-55, 2007-10-10 (Released:2017-08-01)

西南戦争とその直後の言論界は、後の近代文学を考察する上で重要な対象である。この期に、政府の言論統制の方向が決定したからである。本論のその期における、特に「かなよみ」と「有喜世新聞」という二つの小新聞のめぐる対立と、当時の政府の戦後処理策を考察しながら、西南戦争を契機とした幕末から明治への言論界の問題を考察する。
著者
大西 香代子 中原 純 北岡 和代 中野 正孝 大串 靖子 田中 広美 藤井 博英
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.4_101-4_107, 2012-09-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
29

倫理的悩みは,倫理的に正しい意思決定をしたが現実的な制約により実行できないときに生じる。本研究は,倫理的悩み尺度精神科版を用いて,人員配置や社会資源が異なる日本とイングランドの精神科看護者の倫理的悩みの程度と頻度を比較し,属性との関連を検討することを目的とする。 有効回答は日本289人,イングランド36人であった。両国の倫理的悩みの程度は,「同僚の非倫理的行為」「少ない職員配置」「権利侵害の黙認」のいずれの下位尺度においても有意差はなかった。一方,倫理的悩みの頻度では,いずれの下位尺度においても両国間で有意な差があり,日本の看護師のほうがより頻繁に倫理的悩みを体験していた。さらに,日本では年齢や経験年数は倫理的悩みに影響していなかったが,イングランドでは年齢や経験年数が高くなると倫理的悩みの程度も頻度も低くなっていた。
著者
深澤 友里 倉田 勇 小暮 正晴 立石 秀勝 鈴木 裕 仲村 明恒 下山田 博明 望月 眞 柴原 純二 森 秀明 古瀬 純司 土岐 真朗 久松 理一 杉山 政則 後藤 知之 吉田 翼 太田 博崇 落合 一成 権藤 興一 渡邉 俊介 岡野 尚弘
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.129-136, 2017

<p> 症例は,2016年1月に特発性脾被膜下出血後の膿瘍形成及び急性膵炎にて緊急入院となった50歳代男性。退院後,1ヶ月で膵炎の再燃がみられ,入院となった。膵炎に対しては禁食,補液, 抗菌薬, 蛋白分解酵素阻害薬の投与を行い軽快したが,造影CT,造影MRI検査で,膵体尾部に膵実質より造影・増強効果の乏しい腫瘤が認められ,超音波内視鏡下穿刺吸引(EUS-FNA)を施行した。病理所見は,腺癌であり,膵体尾部癌cT3N0M0 stage IIAの診断で,膵体尾部脾合併切除術を施行した。術後補助化学療法として,S-1を4 コース施行後,現在に至るまで約1年間再発なく経過している。本症例のように,短期間で膵炎を繰り返す症例では膵癌の合併を念頭に,様々なmodalityを用いて迅速な精査を行う必要があると考えられた。</p>
著者
四方 裕夫 上田 善道 野口 康久 松原 純一
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 = The journal of the Japanese Association for Chest Surgery (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.17, no.7, pp.735-739, 2003-11-15
参考文献数
14

大動脈弁狭窄兼閉鎖不全症に対する大動脈弁置換術後1年6ヵ月の64歳, 男性.退院後の通院中に胸部異常陰影を指摘され, 経過観察中に陰影の増大を認めた.症状はなく, 血液検査に異常なく, 胸部CTで縦隔に7cmの腫瘤と<SUP>67</SUP>Gaシンチで同部に強い集積を認めた.抗凝固剤をワーファリンよりヘパリンに代えてVATSを行った.術中病理で悪性腫瘍を疑い, 胸骨正中切開に変更した.左無名静脈を一時的に切離, 腫瘤を完全切除した後再建した.組織病理・組織免疫学的検討で転移腫瘍は否定され, 原発性胚細胞腫 (精上皮腫) と判明し, 浸潤・転移はなかった.術後経過は順調で退院し, 約1ヵ月後にBEP療法 (Cisplatinum, Etoposide, Bleomycin) を施行した.白血球数400/μ<I>l</I> (好中球20%) の骨髄抑制が生じたが, G-CSF投与により正常化して退院した.現在元気に通院中である.
著者
中西 真一 藤原 純一 加賀谷 結華 高橋 久美子 澤邉 淳 三浦 勉 粕谷 孝光 福岡 岳美 小野 剛
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.233-237, 2014 (Released:2014-09-26)
参考文献数
13
被引用文献数
1

目的 : 大腿静脈カテーテル留置時に上行腰静脈へ迷入すると, 後腹膜血腫等の合併症を引き起こす可能性がある. しかし, カテーテルの迷入についてはあまり認識されていない.方法 : 2011年4月から2013年3月の間に当院で大腿静脈カテーテルを留置した患者107名を対象とし後ろ向きに検討した.結果 : 上行腰静脈への迷入は11/110回 (10.0%) で認め, 左側で5/34回 (14.7%) , 右側で6/76回 (7.9%) だった. 位置確認の腹部レントゲン検査で, カテーテルが側方へ変位している場合, 頭側に急峻に立ち上がる場合に迷入の可能性があった.結論 : カテーテル迷入は稀では無く, 迷入が疑われれば積極的に腹部CT, 側面レントゲン等の追加の検査が必要である.
著者
土`谷 敏治 高原 純 平林 航
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2014, 2014

Ⅰ.はじめに<br> 本来鉄道は,通勤・通学,買い物,通院,観光,用務などの諸目的を実現するため,その目的地に到達する移動手段の1つであり,鉄道に乗車すること自体が目的ではない.しかし,諸目的のうち観光については,鉄道が単なる移動手段だけではない場合が考えられ,鉄道そのもの,あるいは鉄道に乗車することが観光の目的となりうる.新納(2013)によると,鉄道をはじめとする乗り物は,①観光地への移動手段,②観光資源をみるための移動手段,③それ自体が観光資源となるものの3つの位置づけが可能であるとしている.すなわち,①は他の目的達成のための派生需要に過ぎないが,②と③は鉄道自体が目的の本源的需要であるとする.<br> 静岡県の大井川鐵道は,旧国鉄の蒸気機関車が全廃された後,SL列車の運行を最初に復活させ,さらに定期的に運行していることで知られる.収支面や技術面などさまざまな側面からの検討がなされた結果,1976年にSL列車の大井川本線での運行が開始され(白井,2013),明らかにSL列車自体を観光資源と位置づけた経営をしている.しかし,これまで利用者に対して,その属性や観光利用の特色について調査したことがないという.これを踏まえて,本研究では大井川鐵道のSL列車利用者について,その諸属性,旅行目的とその特色を調査・分析し,利用者の側面から大井川鐵道の観光利用の特色と今後の課題について検討することを目的とする. <br><br> Ⅱ.調査方法<br> 今回の調査は,大井川鐵道のSL列車利用者,すなわち,観光目的での大井川鐵道利用者を対象としている.このため,調査は2013年10月19日(土)と20日(日)の2日間にわたって実施した.両日は,いわゆる秋の観光シーズンの週末,土曜日と日曜日に相当する.また,大井川鐵道でもこの日から11月末までを観光シーズンの重点期間と位置づけており,19日に観光シーズンに向けての列車ダイヤ改正を実施した.<br> アンケート調査は,2日間3往復6列車の車内で,利用者に調査票を配布し,利用者自身が記入する方式で回答を求めた.主な質問項目は,年齢・性別・居住地等の利用者の属性,個人・家族・団体等の同行者構成,旅行日数,大井川鐵道乗車回数,観光の目的などである.また,SL列車の利用パターンを明らかにするため,SL列車の停車駅間で,乗車中の旅客数を数え,輸送断面を作成した.<br><br> Ⅲ.調査結果の概要<br> 2日間の調査によって,SL列車の旅客輸送断面とその特色が明らかになるとともに,アンケート調査の結果,503人から有効回答がえられた.<br> 1.SL列車の利用は,往路の下り千頭行きが中心で,上り新金谷行きは往路の半分程度以下の利用である.また,ツアー客を中心に,新金谷・家山間の区間利用がみられ,上り列車利用促進,全区間乗車促進策が求められる.<br> 2.SL列車の利用者は,いわゆる中高年の女性中心という観光客の一般的特色に比べ,広い年齢層にわたっていることが明らかになった.また,鉄道が対象ということもあり,比較的男性の利用者が多い.その居住地は,愛知県,三重県,岐阜県など中部地方が多く,距離的に大きな差がない東京都,神奈川県など南関東からの誘客が課題である.<br> 3.SL列車利用者の旅行目的は,SL列車に乗車することに集中しており,SL列車以外の観光目的への誘導が必要である.<br> 4.SL列車利用者は,一人旅をはじめ,夫婦旅行・家族旅行・友人同士などの個人旅行と,旅行会社のツアーやグループ旅行などの団体旅行に2分される.前者は,大井川鐵道までの交通手段として,家族旅行を中心に自家用車の利用が多い.ただし,夫婦旅行や一人旅のように同行者人数が少ないとJR線利用が増加する.後者は,ツアーバス利用が基本である.また,団体旅行に比べ個人旅行では,SL列車乗車以外の旅行目的の割合が高まる.<br> 5.SL列車利用者は約1/4が再訪者で,比較的リピーター率が高い.さらに,再訪者ほどSL列車乗車以外の旅行目的をもつ場合が多い.<br> 以上の結果から考えられる今後の課題としては,区間利用の対策として,蒸気機関車はもちろん,旧型客車,駅や検修設備を含めた大井川鐵道全体の特色・魅力をこれまで以上に利用者に伝え,車内・駅での見学の機会を増やすことが求められる.SL列車乗車に偏重した旅行目的,片道乗車への対策として,沿線・沿線以外の静岡県内の観光地・観光施設の活用・連携と広報,ツアーを企画する旅行会社への働きかけ,JR各社との協調,各種マスメディアの活用も重要である. 参考文献<br>白井昭 2013.保存鉄道とは技術と文化の継承である。(インタビュー).みんてつ44:20-23.<br>丁野朗 2013.観光資源としての地域鉄道.運輸と経済73(1):10-17.<br>新納克広 2013.鉄道経営と観光 ―派生需要と本源需要―.運輸と経済73(1):4-9.&nbsp;
著者
林原 純生
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.40, no.7, pp.18-30, 1991

末広鉄腸の『雪中梅』は、同時代の文学の動向に対応した新しい政治小説とされるが、その本質は近代文学と重なりあうものなのか。本稿では、この政治小説のなかの政治を明らかにして、同時代の政治状況において持つ意味に言及する。
著者
市原 純
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.295-300, 2012

<tt>本研究は、地方自治体における国際環境協力の実施に影響を及ぼす要因を明確にすることを目的とする。とりわけ、政治的要因、行政余力などの行政的要因および地域間の波及要因が環境協力の実施や関連予算額の決定に対して影響を与えるのか、計量分析により検討する。計量分析の結果、革新知事、職員数に占める環境関連職員の割合や地域間の波及要因が環境協力実施に影響を及ぼすこと、また、職員数に占める環境関連職員の割合が、環境協力予算額の決定に影響を及ぼすことが確認された</tt><tt>。 </tt>
著者
松原 純一
出版者
學燈社
雑誌
國文學 : 解釈と教材の研究 (ISSN:04523016)
巻号頁・発行日
vol.9, no.10, pp.41-45, 1964-08
著者
一政 祐輔 岡田 重文 東郷 正美 上野 陽里 松原 純子 石田 政弘
出版者
茨城大学
雑誌
核融合特別研究
巻号頁・発行日
1987

本研究は核融合実用炉が運転される際にヒトがトリチウムの放料線によって受ける被曝線量を最小限に低減させる方法を確立することを目的とした. 成果の概要を以下に述べる.1.トリチウムガス(HT),トリチウム水(HTD)からのトリチウム(T)の体内取り込み及びその阻止法の解明に関する研究では, (1)ラットがHTに暴露された時, 血中T濃度は暴露後2時間で最高値に達し, その後2.9日の生物学的半減期で減少するが, クリンダマイシンを投与することによってこの半減期は1.7日になることを明らかにした. (2)ラット, ヒトの糞便から分離した微生物の中からHT酸化活性を持つ菌について抗生物質に対する抗菌性を調べたところ, クリンダマイシンが強く, 他にリンコマイシン, エリスロマイシン等であることをみいだした. (3)HTOを投与したラットに断続的にリンゲル液, グルコース液を点滴してラットのT濃度の変化を調べた. リンゲル液やグルコース液の点滴は尿中のTの減少を促進し, 25日目では対照区の濃度の10%までに低下させることが出来た. 75日目の組織中T濃度及び組織結合型のT濃度も減少がみられた(一政・秋田).2.農水畜産物の食品のTの許容濃度を試算する為の研究では(1)マウスの実験データに基づきモデル計算式を作った. これによりTによる線量の推定が可能になった. このモデルの正当性を検証するにはさらに種々のR値をもつ食品を長期間投与する研究が必要であるとの結論に達した(石田・斉藤). また尿中T濃度をTのリスク評価に於ける指標とするのは適当であることを追証し(松原), 組織結合型T濃度の指標には体毛中T濃度で推定し得ることを示した(武田). 日本人のTのリスクを評価する際には日本人のバックグラウンド値が必要になるが組織結合型Tは肝で750pCi/l,筋では600pCi/lであること(上野), 東京の飲水T濃度はほぼ0.47〜80.3pCi/lの範囲であった(東郷). 以上のように本年度の研究計画は一応達成された.
著者
小川原 純子 横山 祐子 森下 勇 一條 智康 加藤 直子 山岡 昌之
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.1335-1342, 2015-12-01 (Released:2017-08-01)

思春期には体も心も大きく変化する.身体的発達のみならず,自我同一性(identity)の確立などこの時期の正常な心の発達を知ることは,思春期のうつ病や,摂食障害などの心身症を診察する際,その病態の基本的理解として欠かすことができない.また,思春期の患者がもつ生来の言語能力や社会適応力・認知力といった各人の能力を見極めることは,患者の感じている困難感の分析に有用である.さらに思春期に至るまでの生育環境や養育者との基本的信頼関係の構築の有無などの情報は,思春期の患者の心の発達過程での問題点を推測する重要な手掛かりとなる.