著者
原田 勝二
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.88, no.12, pp.938-942, 1993-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
2

お酒には生まれつき強い人と弱い人があり, 強い人はいくら飲んでも顔色ひとつ変えないが, 弱い人はお酒を飲むとすぐに顔が赤くなり, 心臓がどきどきし, 頭が痛くなる。こうした体質は遣伝するものと古くから漠然と考えられていたが, 最近になって, その原因として体内のアセトアルデヒド脱水素酵素に活性型と不活性型の2種類があり, この組み合わせによって遺伝していることが詳しい分子遺伝学的研究によって明らかになった。
著者
菊地 秀喜 川原田 忠信
出版者
宮城県園芸試験場
巻号頁・発行日
no.8, pp.1-15, 1991 (Released:2011-03-05)
著者
原田 悦子 鈴木 航輔 須藤 智
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

視覚的探索は日常的にもしばしば発生する活動であるが,同一のダミー項目が複数ある中からターゲットを見出す実験室課題とは異なり,日常では,個々別々のダミー項目の中から一つのターゲットを探し出す課題である.そこで本研究では,「本棚から特定タイトルの本を選び出す」課題を作成し,その視覚探索過程において,経験的手がかり(ターゲット発生確率の偏り)もしくは意味的手がかり(カテゴリーによる位置情報の付加)を加えた場合の効果を,手がかりに合致する優先条件/合致しない非優先条件の比較から検討することを目的として,時間圧の付加ならびに加齢効果を分析した.その結果,若年成人では両手がかりとも通常条件,時間圧下条件のいずれでも有効な促進効果を示したが,高齢者の時間圧下では,意味的手がかりにおいて「非優先領域への探索」を抑制することが示された.問題解決場面における手がかり利用と目標維持の関係性について考察する.
著者
原田 謙 小林 江里香 深谷 太郎 村山 陽 高橋 知也 藤原 佳典
出版者
日本老年社会科学会
雑誌
老年社会科学 (ISSN:03882446)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.28-37, 2019-04-20 (Released:2020-04-20)
参考文献数
31

高齢者に対するエイジズム研究は,国内外において蓄積されてきた.しかし「もうひとつのエイジズム」とよぶべき,若年者に対する否定的態度に関する研究は乏しい.本研究は,地域と職場における世代間関係に着目して,高齢者の若年者に対する否定的態度に関連する要因を検討することを目的とした.データは,無作為抽出された首都圏の60〜69歳の男女813人から得た.分析の結果,以下の知見が得られた. ①若年者との接触頻度が低い者ほど,若年者を嫌悪・回避する傾向がみられた. ②高齢者の生活満足度は若年者に対する否定的態度と関連していなかった.ただし職場満足度が低い者ほど若年者を嫌悪・回避する傾向がみられた. ③世代性の得点が低い者ほど若年者を嫌悪・回避する傾向がみられた.一方,世代性の得点が高い者ほど若年者を誹謗するという,アンビバレントな態度が示された. ④職場でエイジズムを経験している者ほど,若年者を誹謗していた.
著者
藤方 史朗 満生 浩司 原田 篤実
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.269-273, 2006

当院で外来血液透析を施行中の非感染患者72名を対象とし, 同意書をとって透析前後で血清1-3-β-D-glucan値を測定した. 透析膜は, 再生セルロース膜 (CL-EE12Nテルモ社製) 33例, セルローストリアセテート膜 (FB-70ニプロ社製) 14例, 合成高分子膜では, ポリスルホン膜 (BS-1.3東レメディカル社製) 20例, EVAL膜 (KF-15Cクラレ社製) 5例であった.<br>透析前の1-3-β-D-glucan値は, 再生セルロース膜群が649±435pg/mLで, セルローストリアセテート膜群の13±9pg/mL, 合成高分子膜群の26±18pg/mLとくらべて著明に高値であった (p<0.0001). 透析前後の1-3-β-D-glucan値の比較では, 再生セルロース膜群で649±435pg/mLから1,091±833pg/mLと透析前よりさらに上昇した (p<0.001) が, 合成高分子膜群やセルローストリアセテート膜群では, 透析前後で変化しなかった. 再生セルロース膜群では透析前1-3-β-D-glucan値と透析期間との間に有意な正の相関がみられた. 再生セルロース膜使用症例では, 非感染時でも1-3-β-D-glucan値は著明高値を示し, 真菌感染症の診断に適さないと考えられた. また, 合成高分子膜群でも軽度高値を示し診断に留意が必要である.
著者
渡辺 原田 康徳 三谷 和史 宮本 衛市 Shin-ya Watanabe Yasunori Harada Kazufumi Mitani Eiichi Miyamoto 北海道大学工学部情報工学科 北海道大学工学部情報工学科 北海道大学工学部情報工学科 北海道大学工学部情報工学科
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.41-55, 1989
被引用文献数
7

並列性が内在する問題を計算機上で表現する時,1対1の通信を基礎とするモデルでは不自然な表現を強いられる場合が存在する.そこで,オブジェクト同士が制限付きブレードキャストによって相互作用を行う並列計算モデルを提案し,そのモデルによる同期や相互排除の表現について論じる.また,分散協調型問題解決システムを構築する道具として本モデルを適用した場合の有効性に関しても述べている.
著者
左高 真理雄 原田 元 岡崎 幸紀 竹本 忠良 飯田 洋三 榊 信広 小田原 満 永富 裕二 斉藤 満 後藤 一紀 竹内 一憲 多田 正弘
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.739-744_1, 1982

胃Xanthomaの発生機序をうかがうため,その背景粘膜との関係に注目し,内視鏡的コンゴーレッド法,メチレンブルー染色法および直視下生検を行ない,内視鏡学的,組織学的に胃Xanthomaの発生胃粘膜について検討した. その結果,Xanthomaは萎縮性胃炎の高度な胃に多く存在するが,萎縮性胃炎の比較的軽度と思われる胃粘膜にも少数ながら存在した.さらに,コンゴーレッド変色帯内にも75個中4個(5.4%)存在した.この4個の胃底腺領域のXanthomaを検討すると,Xanthoma上皮および周囲粘膜に組織学的にも軽度ないし中等度の萎縮性変化が認められ,胃底腺領域内といえども萎縮性胃炎を発生母地としていることも示唆された.また,Xantho-ma上皮および近接粘膜は腸上皮化生がみられないか,軽度である例が多く,Xanthomaの発生には腸上皮化生は関係しないと考えた.
著者
原田 利宣 石田 智子 吉本 富士市
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.61-68, 2002
参考文献数
8
被引用文献数
2

自動車インテリア評価に関する既存研究例には,写真や2次元CG,実車を用いて評価したものが多い。写真や2次元CGは室内空間という臨場感に欠け,実車は精度が高くリアルだが,意図した形態要素を含んでいるとは限らない。そこで,本研究では立体感,スケール感を再現できるVRシステムを用いてより精度の高いデザイン評価を行うことにより,インスツルメントパネルを構成する形態要素と印象との関係を明確化することを目的とした。まず,既存車39車種のインパネを計測し,プロポーション,面構造,曲線(面)の3つの視点から分析を行った。それによりインパネ形状に影響を与える形態要素を抽出し,それらを用いて実験計画法によるVRモデルの作成を行った。次に,作成したVRモデルを10語の評価用語を用いて評価実験し,主効果を求め,分散分析,t検定を用いてどの形態要素がどのような印象に影響するのか調査した。その結果,各評価用語に対し影響すると考えられる形態要素が抽出された。
著者
原田 伴彦
出版者
大阪市立大学
巻号頁・発行日
1962

博士論文
著者
足立 茂章 高見 淳史 原田 昇 是澤 正人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.73-84, 2017
被引用文献数
2

近年,首都圏の鉄道路線においてホームドアの導入が進んでおり,設置路線においては軌道内転落事故や列車接触事故が減少している.一方,ホームドア導入時の列車運行計画では,従来の停車時間にホームドアの稼働時間を付加するため,各駅の停車時間は増加し所要時間も増加することになる.朝ラッシュ時間帯に着目すると,ホームドア導入により,車側付近の旅客接近や混雑が解消され,停車時間の安定化が確認された.また,車側の安全確認が人的作業から支障物センサーに代わり,ワンマン運転化すると,停車中の安全確認時間に変化が確認された.<br> 本稿では,ホームドア導入による運転形態及び駅の特徴を分類することで,その特徴にあった停車時間変化と安定性効果を分析すると共に,ホームドア導入時の列車運行のあり方を考察する.
著者
熊澤 輝一 木村 道徳 鎌谷 かおる 岩見 麻子 坂下 靖子 原田 将
出版者
総合地球環境学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-10-21

本研究では、地域の将来設計において、環境共生社会とそこに至るストーリーを共同構築する手法を導入し、オントロジー工学の技術を援用しながら共同構築する新たな手法を開発することを目的とした。その結果、第一に、現地調査と伝統食材、古写真、未来年表のWSを通して、それぞれの環境共生に向けた地域のパタンを得た。第二に、環境・サステイナビリティ領域のオントロジーの拡充とともに、地域ストーリーの因果論理を記述するためのツールを開発した。第三に、地域のパタン同士をオントロジーを介して連携させて個別ストーリーを統合する手法を検証し、地域のパタンを作成して物語ることによる共同構築手法として提示した。
著者
原田 智
出版者
立正大学文学部
雑誌
立正大学文学部研究紀要 (ISSN:09114378)
巻号頁・発行日
no.15, pp.14_a-1_a, 1999-03-25

国際男女バレーボール試合, ワールド・グランド・チャンピオンズカップ大会が, 「25分併用制」のテストマッチとして1997年11月に日本で開催された。男子のチームは多くのセットにおいて25分以内で終了せず, その後のラリーポイント制となりセットを終了していた。それに対して女子のチームは多くのセットにおいて25分以内で終了していた。もし併用制を採用するなら, 女子チームはこの方式で良いとしても, 男子チームは, 「30分併用制」とし, 男子チームと女子チームでは, セットに時間の差があった方が良いと思われた。一方国際審判員の立場からすると, この併用制では, セットを終了するのに複数の要素が含まれており, 単純化した方が良く, サービスポイント制か, ラリーポイント制, のいずれかの方が良いように思えた。今後はラリーポイント制となる可能性が高いと思われた。 At the 1997 international men's & women's volleyball World Grand Champions Cup held last November in Japan, a new scoring system combining the "service point system" and the "set with time limit system (25-timed system)" was tested for the first time. In most of the matches between men's teams, the sets went beyond 25minutes and were continued using the rally point system. In contrast, in the matches between women's teams, the sets usually were finished within 25 minutes. If the combined scoring system is to be introduced, it may be better to set different time limits for the men's and women's teams. The set time limit of 25 minutes would be adequate for women's teams, but an extension of the limit to 30 minutes would probably be more appropriate for the men's teams. However, from the standpoint of the international judges, the combined scoring system could be complicated since several different elements would have to be taken into account to end a set. A more appropriate solution would be to simplify the system by selecting only the service point system or rally point system instead of the combined one. The rally point system seems to be the most suitable for adaptation in the future.
著者
原田陽雄 米山博人 下谷啓 藤居徹 西野洋平 飯田靖 西原義雄
雑誌
第74回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, no.1, pp.13-14, 2012-03-06

発話のコンテクストから人と人のコミュニケーションの状況を可視化するシステム「VoiStrap」を提案する。本システムは、各ユーザーが装着するIDカードネックストラップ型のクライアント端末、一定範囲のクライアント端末と無線通信を行うエリアコーディネータ、および各エリアコーディネータとLANで結ばれた解析サーバーを基本構成とする。クライアント端末のネックストラップ内に複数の超小型マイクを埋め込み、自分や他人の発話をセンシングする。発話の内容ではなく発声のタイミングや韻律だけを取得し、信号解析/データマイニングによって、ユーザー間でどのようなコミュニケーションが行われているかを推定する。
著者
吉岡 みどり 原田 亜紀子 芦澤 英一 木下 寿美 相田 康一 大森 俊 木下 裕貴 大橋 靖雄 佐藤 眞一 水嶋 春朔
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.11, pp.728-742, 2021-11-15 (Released:2021-12-04)
参考文献数
41

目的 人生の最終段階を可能な限り長く自立して過ごしていくためには,Activities of Daily Living(ADL)のような身体的な自立に加え,高次生活機能(「手段的自立」,「活動」,「参加」)があわせて必要となってくる。そこで,地域住民を対象とした長期追跡研究において,手段的自立,知的能動性,社会的役割と健康状態(総死亡,要介護発生)の関連性を検討した。方法 鴨川コホート研究の参加者データを用いて,2003年から2013年までに千葉県鴨川市民を対象に,医療サービス利用状況,健康状態,疾病有病率,介護保険サービスの利用状況を調査した。鴨川市民の生活習慣と高次生活機能の違いを死亡状況別,要介護発生状況別に比較した。高次生活機能は,老研式活動能力指標を用いて評価し,各質問への回答,各領域の得点,合計得点を調べた。結果 40-69歳の成人6,503人がコホート研究に参加し,2013年末までに810人の死亡を把握した。総死亡と高次生活機能との関連をみると,手段的自立得点4または5に対する3点未満のハザード比2.03(95%CI: 1.59-2.60),知的能動性得点4に対する3点未満のハザード比1.39(95%CI: 1.09-1.77),社会的役割得点4に対する3点未満のハザード比1.28(95%CI: 1.03-1.59))であった。性別の層別解析では,手段的自立得点の低さは,男女ともに総死亡発生に対して関連がみられたが,知的能動性,社会的役割については,女性においてのみ総死亡発生との関連がみられた。同じ期間に917人の要介護発生を把握した。同様に高次生活機能との関連をみると,手段的自立,社会的役割についてはハザード比が有意であった(手段的自立1.93(95%CI: 1.55-2.40),社会的役割1.30(95%CI: 1.07-1.58))。男女別では,手段的自立得点の低さは,男女ともに要介護発生に対して関連がみられたが,社会的役割については,女性でのみ関連がみられた。結論 総死亡,要介護発生に対して,高次生活機能の手段的自立,知的能動性,社会的役割のいずれのドメインにおいても,得点が最も低いカテゴリーは,総死亡,要介護発生に対して有意に関連していた。
著者
原田 茜 吉田 俊也 Resco de Dios V. 野口 麻穂子 河原 輝彦
出版者
日本森林学会
巻号頁・発行日
vol.90, no.6, pp.397-403, 2008 (Released:2011-04-05)

北海道北部の森林では、ササ地を森林化させるために掻き起こし施業が広く行われてきた。施業から6〜8年が経過した樹冠下の掻き起こし地を対象に、9種の高木性樹種を対象として樹高成長量と生存率を調べ、それらに影響する要因(植生間の競争・促進効果)を明らかにした。成長量と生存率が高かったのはキハダとナナカマド、ともに低かったのはアカエゾマツであった。多くの樹種の成長は、周囲の広葉樹または稚樹以外の下層植生の量から促進効果を受けていた。ただし、シラカンバについては、施業後3〜5年目の時点では促進効果が認められていたものの、今回の結果では競争効果に転じていた。一方、生存率については、多くの樹種について周囲の針葉樹による負の影響のみが認められた。密度または生存率の低かった多くの樹種に対して、周囲のシラカンバやササの回復が負の要因として働いていないことから、多様な樹種の定着を図るうえで、除伐や下刈りの実行は、少なくともこの段階では有効ではないと考えられた。
著者
原田 茜 吉田 俊也 Resco de Dios Victor 野口 麻穂子 河原 輝彦
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 = Journal of the Japanese Forest Society (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.90, no.6, pp.397-403, 2008-12-01
参考文献数
14
被引用文献数
4

北海道北部の森林では, ササ地を森林化させるために掻き起こし施業が広く行われてきた。施業から6&sim;8年が経過した樹冠下の掻き起こし地を対象に, 9種の高木性樹種を対象として樹高成長量と生存率を調べ, それらに影響する要因(植生間の競争・促進効果)を明らかにした。成長量と生存率が高かったのはキハダとナナカマド, ともに低かったのはアカエゾマツであった。多くの樹種の成長は, 周囲の広葉樹または稚樹以外の下層植生の量から促進効果を受けていた。ただし, シラカンバについては, 施業後3&sim;5年目の時点では促進効果が認められていたものの, 今回の結果では競争効果に転じていた。一方, 生存率については, 多くの樹種について周囲の針葉樹による負の影響のみが認められた。密度または生存率の低かった多くの樹種に対して, 周囲のシラカンバやササの回復が負の要因として働いていないことから, 多様な樹種の定着を図るうえで, 除伐や下刈りの実行は, 少なくともこの段階では有効ではないと考えられた。
著者
原田 信雄
出版者
日経BP
雑誌
日経トップリーダー = Nikkei top leader (ISSN:24354198)
巻号頁・発行日
no.443, pp.40-43, 2021-08

愛知県豊田市、刈谷市で創業48年、成長を続ける住宅建築会社。長期の顧客対応のため、車で20分で行ける範囲の仕事にこだわる。長年の地域活動やイベントが実を結び、親子2代のリピート客も増えている。
著者
齊藤 実祥 原田 魁成 寒河江 雅彦 栁原 清子 Saito Misaki Harada Kaisei sagae masahiko Yanagihara Kiyoko
出版者
金沢大学大学院人間社会環境研究科
雑誌
人間社会環境研究 = Human and socio-environmental studies (ISSN:18815545)
巻号頁・発行日
no.36, pp.1-11, 2018-09-28

高齢化が進むにつれて医療・介護の需要と費用が増加することで,地域社会へ与える影響を経済的観点から分析を試みる。具体的には,石川県K市の家族介設者全貝を対象としたアンケート調査を行い.その結果に基づいて,家族介護者の介護離職・転職等の経済損失と貨金換算の推計を行う。また、K市産業連関表を用いた経済波及効果の推計を行う。なお、両推計ではモンテカルロ・シミュレーション分析を用いる。アンケート調査から,要介護・要支援者の平均年齢は83.5歳,家族介護者の平均年齢は64.9歳である。家族介護者の就労状況については,家族介護者の30.8%が介護離職・転職等しており、そのうち介護離職の割合は29.3%で.家族介護者全体の9.0%が介護離職していることが明らかに なった。推計の結果.有業者に対する介護離職・転職等の経済損失額は16.6億円で.介護離職のみでの 経済損失額は4.9低円であった。他方.無業者の介護労働の経済損失は.介護離職・転職等の対 象外となるため.介護労働時間を賃金換算することで推計を行った。無職・専業主婦の介護労働 時間の石川県最低賃金換算額は16.3億円で.石川県介護福祉士平均時給換算額は24.8億円であっ た。また,医療費と介護費の経済波及効果は2014年の433.7億円から2025年の522.5億円に増加する。 それに伴って,K市生産年齢人口における雇用誘発数も2014年の15%から2025年の22%に上昇する。そのため,医療・介護の連携による地域経済波及効果から発生する新たな雇用誘発による約 2,500人の雇用枠を活用し,家族介護者を柔軟に雇用する政策が地域包括ケアの新しい方策案として検討可能である。