著者
中島 敏明 杉本 恒明 川久保 清 戸田 為久 三輪 篤子 村川 祐二 野崎 彰 倉智 嘉久 天野 恵子 坂本 二哉 真島 三郎 伊原 正 田中 博 古川 俊之
出版者
The Japanese Society of Electrocardiology
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.237-246, 1986

肥大型心筋症 (HCM) の再分極異常の成因を知る目的で, QRST isointegral mapを作成し, 安静時および運動負荷後の分布を検討した.対象は, 正常群10例, HCM群35例 (閉塞型HOCM10例, 非閉塞型HNCM15例, 心尖部型APH10例) である.安静時QRST isointegral mapは, 正常群では左前胸部に極大を, 右胸部上方に極小をもつ分布を示したが, HCMでは , HOCM40%, HNCM60%, APH90%に, 左前胸部に極小をもつ異常分布がみられた.極小点は, APHではV<SUB>4, 5</SUB>周辺に, HNCMではV<SUB>5</SUB>に, HOCMではばらつく傾向があり, 各病型による多少の差異をみとめたが, 重複する例も多くみられた.安静時QRST isointegral mapの異常例に対し, 運動負荷後の分布の変化につき検討した.APHでは9例中8例において, 左前胸部の極小は, 右胸部上方に偏位し, ほぼ正常な分布を示した.HNCMでは9例中8例は, 負荷後も安静時と同様の異常分布を示した.HOCM4例では負荷後左前胸部下方に極小が偏位する傾向がみられた.以上より, HCMの再分極異常は主として1次性変化と考える.また, 運動時変化がHCMの病型で異なったことは, 心筋の肥厚形態の他に, 心筋自体の性質の差による可能性があり, HCMにおける再分極異常の成因は単一のものではないことが示唆される.
著者
古宮 誠一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.992-1004, 1998-05-25
被引用文献数
1

ソフトウェアの障害対策作業は, 解散により散らばった旧プロジェクトのメンバが互いに協力して作業を行わなければならない.しかし, 障害対策作業を分担すべき彼らは, 今はそれぞれ新しい作業に従事しており, 新しい作業場所から離れられない.このため, 障害対策作業は, 解散した旧プロジェクトのメンバが, それぞれの新しい作業場所を離れることなく, 互いに協力して障害対策作業を進められることが望ましい.このため, この論文では, そのようなことを可能にするソフトウェア分散開発環境をWWWの上に構築することを提案している.そこでは, ソフトウェアの修正によるディグレードを防ぐために, 対策案の検討過程において, さまざまな視点からのレビューと議論を徹底的に行う必要があるとして, グループワークの利点を生かしてそれらを徹底的に行う, ソフトウェア設計プロセスのモデルを提案し, このプロセスにのっとって対策案の検討作業を行うことを提案している.そして, 協調的に進められる障害対策作業を強力に支援するために, この設計プロセスの中でも特に, 発生した障害の真の原因を同定する過程と, 障害対策のための最適な対策案を複数の中から選出する過程に焦点を当て, これらの過程を支援する方法としてKT法(ケプナー・トリゴー法)の導入を提案し, 具体例を挙げてその適用プロセスを明らかにしている.また, 適用実験により得られたKT法の問題点を列挙すると共に, その対策案を具体的に明らかにしている.これにより, 改良されたKT法による思考手順とその支援環境が, 障害対策作業のための強力な設計方法論とその支援環境となり得ることを示している.
著者
清原 良三 栗原 まり子 古宮 章裕 高橋 清 橘高 大造
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.1492-1500, 2005-06-15
被引用文献数
10

近年のi-modeをはじめとする携帯電話のネットワーク接続サービスの開始により,携帯電話上に搭載するソフトウェアの規模は急激に拡大している.そのため障害のない状態で携帯電話を市場に出すことが困難な状態になりつつある.そこで,ソフトウェア更新を短時間で実施するための方式を提案する.携帯電話のソフトウェアの更新時間は,無線網を転送するデータ量に依存する転送時間とフラッシュメモリを更新する書き換え時間とからなる.データ転送量を小さくするために,新版と旧版の差分データの転送量を小さくする必要がある.またフラッシュメモリの該当部分だけを書き換えればよい仕組みにする一方で,開発環境の複雑化を防止する必要がある.本論文ではソフトウェアの更新を前提とした携帯電話ソフトウェアの構造に関してメモリ上に空き領域を設けることとベクターテーブルを利用することを提案する.携帯電話のバージョン間の差分データを小さくするとともに,バージョン間でのフラッシュメモリの書き換えを小さくするにあたり,最適な分割方法を理論上で検証したうえで,実際の携帯電話のソフトウェアを利用して評価した.Due to increasing services installed in cellular phones (e. g. i-mode), it is difficult to release bug-free cellular phones. We have proposed a technology for updating cellular phones' software in a shorter period. The time required for software update consists of time for data transmission and time for rewriting data in Flash ROM. Data size should be small. In order to reduce the data size, differences between old version and new one should be as few as possible. It is required to update only the needed area as well as to keep the development environment simple. In this paper, we investigated module fragment method to minimize the updating time and evaluated our updating software in optimized method.
著者
高田 良宏 林 正治 堀井 洋 堀井 美里 山地 一禎 山下 俊介 古畑 徹
出版者
大学ICT推進協議会
雑誌
大学ICT推進協議会2015年度年次大会(AXIES2015) 論文集 (ISSN:21867127)
巻号頁・発行日
pp.2-8, 2015-12

近年,研究資料に関するキーワードとして,オープン化,ビックデータおよびオープンサイエンスが挙げられ,資料を永続的に蓄積し再利用可能な情報基盤の整備が急がれている.我々は,整備が進んでいない非文献資料において,非文献資料版ビッグデータ・オープンデータ化に対応した情報基盤の開発を進めている.本稿では,全体構想と現在までの成果である学術資源群を基にしたサブジェクトリポジトリ構築の進捗状況等について述べる.
著者
藤田 秀二 上田 豊 東 久美子 榎本 浩之 亀田 貴雄 高橋 修平 古川 晶雄 松岡 健一
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.415-425, 2002-07-15 (Released:2009-08-07)

近年のデータ通信環境の進歩に伴い,南極雪氷観測データの取り扱いに関しても,その保存・公開方法の見直しが急務となっている.南極研究プロジェクトの努力の結晶であるデータが,将来にわたり価値を保ちつつ研究に活用され,散逸の危険なく安全な保存がなされ,且つ,アクセス権・版権・公開方針が一定のルールのもとで取り扱われる必要がある.こうしたマネジメントの善し悪しが,研究コミュニティーの将来の知的生産性に決定的に影響するため,問題提起と要点の整理を目的として本稿を提出する.各国の事例を参考に,マネジメントに求められる諸機能を分析した.重要な点は,長期に安全に維持運営される必要があること,国家事業として実施されてきた南極観測を対象としたマネジメントであること,それに,研究コミュニティーがこれを実質的に構築し且つ利用者となることである.このため,(1)南極研究機構のなかでデータマネジメント機構を作る体制が望ましい.(2)情報管理の専門性と手間を考慮した場合,専門情報技術者を配置した維持管理が不可欠である.さらに,(3)仕組みが機能するには,研究コミュニティーからのサポートが不可欠である.
著者
川村 恭也 松原 隆 古賀 義亮
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.81, no.10, pp.1141-1148, 1998-10-25

本論文では, 内部の誤り検出および誤りを訂正するフラッシュ型A-D変換器の構成法に関し, 従来提案されている方法についてまとめた結果を紹介し, 誤りの補正・訂正を行うと共に誤りの検出結果を単一誤りと多重誤りに区別して外部に表示するA-D変換器の構成法を提案する.従来の方法では, 回路内部の誤りの処理についての詳細情報が外部に表示されないため, A-D変換器がどの程度誤りの処理を行っているか判定できないという問題がある.提案する構成法では, A-D変換における単一誤り, 多重誤りの情報を外部に表示することができるので, A-D変換器の状態および出力データの信ぴょう性を判定することができる.
著者
古城 佳子
出版者
JAPAN ASSOCIATION OF INTERNATIONAL RELATIONS
雑誌
国際政治 (ISSN:04542215)
巻号頁・発行日
no.115, pp.94-109,L13, 1997

The purpose of this article is to examine what kind of logic was behind the demand of defense burden-sharing toward Japan by the United States in the late 1950s and 1960s. This article presents the following viewpoints. First, US demand of defense burden-sharing was colsely related to the problem of US balance of payments deficit from the late 1950s. Second, in order to better understand the problem of US-Japan defense burden-sharing in the late 1950s and 1960s, it should be analyzed in the context of US policy towards the allied nations, rather than just in the context of bilateral relations.<br>In the late 1950s, in the face of gold outflow the Eisenhower administration began to realize that the balance of payment deficit would impose serious problem on the United States. This administration created the scheme of burden-sharing among the allied nations. This scheme was reinforced by Kennedy administration, which claimed that the US balance of payments deficit would restrain US policy of protecting "the Free World, " thus harm not only the United States but also the allied nations.<br>In this context, the US administrations tried to defend dollar position by focusing on two points expanding US export to increase trade surplus, and reducing external spending, in particular, foreign aid and military expenditure. The US administrations asked the allied nations to share the cost of US foreign aid and military spending. This is the origin of the burdensharing scheme. In other words, since the late 1950s the allied nations were asked to increase foreign aid and military spending. For evaluating which country should share the burden, the US applied two economic measurements; balance of payments surplus and sufficent foreign exchange reserves.<br>West Germany was the main target of the US demand of defense burdensharing because of the large US military presence in West Germany and its rapid recovery of economy in terms of balance of payment surplus and large foreign exchange reserves. The United States started to ask West Germany to share the defense cost as early as in the late 1950s. The negotiation of offset payment agreement between Germany and the US shows the US tough policy towards West Germany.<br>In contrast, the US did not put much pressure on Japan to share the defense cost until the mid-1960s. This US lenient attitude toward Japan compared to policy towands West Germany was partly because of Japan's domestic political instability relating to the revision of the US-Japan Security Treaty in 1960 and partly because of Japan's economic indices which were short of US criteria; balance of payment deficit and small foreign exchange reserves.<br>However, in the mid-1960s, the US demand of defense burden-sharing toward Japan increased because Japan's economic situation had improved. The demand was intensified by the US increased involvement in the Vietnam War. Japan, as well as West Germany, was asked to buy US arms and US Treasury bill to contribute to improve US balance of payment. Since this period, the US claim that the United States provided "public goods" for "the Free World" became problematic for the allied nations.
著者
伊藤 智広 伊藤 裕子 樋廻 博重 勝崎 裕隆 今井 邦雄 古市 幸生 小宮 孝志
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.319-323, 2005-07-15
被引用文献数
1 5

アズキ熱水抽出物からヒト胃ガン細胞KATO III細胞の増殖を抑制する物質を単離した. 本物質をFT-IR, <sup>1</sup>H-NMR, <sup>13</sup>C-NMR, DEPT, COSY, NOE, HSQC, HMBC, ESI-MS, APCI-MSにより構造解析したところ, 新規セスキテルペノイド配糖体であったことから, Vignosideと命名した. Vignosideは低濃度ではヒト胃ガン細胞KATO III細胞の増殖を抑制しないが, 750μMでは約60%の増殖抑制効果を示した. その増殖抑制機構はアポトーシスによるものではないことが判った.
著者
伊藤 智広 伊藤 裕子 樋廻 博重 勝崎 裕隆 今井 邦雄 古市 幸生 小宮 孝志
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiy◆U014D◆ shokury◆U014D◆ gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.281-287, 2005-10-10
被引用文献数
1 6

これまでに我々は, アズキ熱水抽出物がヒト胃がん細胞にアポトーシス誘導を誘発させることやベンゾピレンにより化学発がんさせたマウスに本抽出物を摂取させることで, がんの増殖を抑制することを報告した。本研究では, さらにこの抽出物を水-メタノール系ODSカラムクロマトグラフィーに供し, その後, アポトーシス誘導物質を分取HPLCにより分離・精製した。アポトーシス誘導物質は質量分析, <sup>1</sup>H-, <sup>13</sup>C-NMRなどから, カテキン-<i>O</i>-7-β-グルコピラノシド (C7G) と同定された。C7Gは培養ヒト胃がんKATO III細胞だけでなく, ヒト白血病細胞HL-60にもアポトーシス誘導を誘発したが, 正常細胞には影響がなかった。このC7GによるDNAの断片化は, <i>N</i>-Acetyl-L-cysteine により抑えられた。以上の結果から, C7Gによるアポトーシス誘導には活性酸素が関与しているのではないかと推測される。
著者
長嵜 悦子 佐久田 斉 仲栄真 盛保 比嘉 昇 國吉 幸男 古謝 景春
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.2913-2917, 2003-11-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
9
被引用文献数
1

肺塞栓症の塞栓源として下肢深部静脈血栓症が知られている.肺塞栓症を合併した孤立性ヒラメ筋静脈血栓症の3症例を経験したので報告する.症例1: 59歳,女性. Cushing syndromeに対する腹腔鏡下副腎摘出術後3日目に胸部圧迫感,低酸素血症が出現.症例2: 54歳,女性.卵巣癌の既往があり1カ月前より左下腿鈍痛が出現.症例3: 44歳,女性.両下腿に腫脹,鈍痛があり,階段昇降時に息切れを自覚.いずれも下肢超音波検査でヒラメ筋静脈のみに限局した血栓,肺血流シンチで肺血流欠損像,胸部造影CT検査で多発性肺動脈血栓を認めた. 3例中1例にウロキナーゼによる血栓溶解療法,全例に抗凝固療法を行い症状の改善が得られた.ヒラメ筋静脈血栓症は臨床症状が乏しいため見落とされやすい.しかし肺塞栓症の合併,血栓の中枢側進展,再発を繰り返すことがあり,積極的に診断,治療,予防する必要がある.
著者
古川 和明 塚越 秀行 北川 能
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.2000, 2000

本研究では, まったく新しい機構の空圧直動アクチュエータを提案している。従来までのシルンダなどの直動アクチュエータには, その機構上, 伸縮できるストローク長が最長でも収納長さと同等に抑えられてしまう。本アクチュエータは, カメレオンの舌のように伸びる機構により, 収納長さに対してストローク長の比率を極めて大きくとることのできるものになっている。講演においてはその具体的な機構や駆動制御手法等について説明する。
著者
吉本 充宏 古川 竜太 七山 太 西村 裕一 仁科 健二 内田 康人 宝田 晋治 高橋 良 木下 博久
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.109, no.10, pp.595-606, 2003-10-15
被引用文献数
5 18

鹿部冲の海底に分布する北海道駒ヶ岳火山1640年の岩屑なだれ堆積物を調査した音波探査の結果,海底岩屑なだれ堆積物の分布の末端部を確認することに成功したこれらは溶岩流などに認められる急勾配の末端崖は示さないものの,傾斜の変化を示す海域に分布する流れ山は岩屑なだれ堆積物分布末端部では存任せず,流走距離に反比例して規模・分布頻度が小さくなる傾向を示す海域における岩屑なだれ堆積物の分布は,主方向が北東方向と東方向の双頭状の分布を示し,給源からの最大水平流走距離は約20km,最大幅は約15km,分布面積は約126km^2であるH/L比は0.06であり,海底を流走した岩屑なだれは同規模の陸上岩屑なだれより流動性が高い傾向がある実際に海中に流入した体積は,探査から求めた海底地形データによって見積もった体積に,薄く広がった部分と流れ山の体積を加えた0.92〜120km^3と見積もられた