著者
吉本 光希 花岡 秀樹 野田 健司 佐藤 修正 加藤 友彦 田畑 哲之 大隅 良典
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.712, 2003

オートファジー(自食作用)とは、栄養飢餓等に伴い細胞質成分が液胞に輸送される分解システムである。我々は酵母において、Apg8タンパク質のC末端がApg4プロテアーゼにより切断された後、ユビキチン化に類似した反応により脂質修飾されること、そして、このApg8脂質修飾反応がオートファジー進行を担う分子機構の鍵になることを見いだしている。<br> シロイヌナズナにはAPG8, APG4オーソログ(AtAPG8, AtAPG4)が存在し、その詳細が明らかになっていない植物のオートファジーにおいても同様の役割を担っていることが予想される。全9種のAtAPG8および全2種のAtAPG4はシロイヌナズナのほとんどの器官で発現しており、窒素飢餓条件下で発現がさらに誘導された。また、酵母ではオートファジーの進行に伴いApg8は液胞内に移行することが知られている。そこで、GFP-AtAPG8融合タンパク質を発現させた形質転換植物を作製し、様々な組織での蛍光顕微鏡観察を行なった。GFP融合タンパク質は細胞質中のドット状構造や液胞内への局在が観察された。現在、栄養条件下から窒素飢餓条件下に移したときのGFP融合タンパク質の挙動の変化を観察している。また、2種のAtAPG4のT-DNA挿入株をそれぞれ取得し、その二重変異株におけるAtAPG8の挙動について解析中であり、その結果についても合わせて報告する。
著者
末田 泰二郎 福永 信太郎 浜中 喜晴 松浦 雄一郎 後藤 誠 佐藤 雅文 右原 義久 吉本 文雄 土谷 太郎
出版者
一般社団法人 日本人工臓器学会
雑誌
人工臓器
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.381-384, 1991

シリコーン中空糸を用いた新しい膜型人工肺を開発した。熱交換器の周りに巻かれたシリコーン中空糸の外部を静脈血は落差で灌流し、ガス交換され動脈血が貯血される膜型肺である。実験は緬羊10頭を、高灌流量群(Qb=4.7±0.5L/min、6頭)、低灌流量群(Qb=11/min、4頭)に分け、8時間の常温体外循環を実施し、ガス交換能や血液適合性の検討を行った。全例順調に8時間の体外循環が実施できた。V/Q1の条件下、両群ともにガス交換能は良好であつた。また8時間の体外循環中、ガス交換能は安定しており経時的低下は認められなかつた。溶血、血小板数の変化、血中酵素の上昇は僅かであつた。フイブリノーゲンの消費も認められなかつた。本人工肺はガス交換能や血液適合性に優れ、動脈血貯血方式のため、拍動流や分離体外循環にも対処し得る膜型肺である。
著者
永野 伸郎 吉本 宏 西鳥羽 剛 佐藤 広三 宮田 そのえ 日下 多 景 世兵 山口 達明
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.106, no.2, pp.123-133, 1995 (Released:2007-02-06)
参考文献数
35
被引用文献数
3 4

慢性腎不全状態下で生体内に蓄積した尿毒症物質を消化管内で吸着し,糞便中に排泄させる機序により腎不全の進行を抑制させる目的で開発した新規経口吸着剤であるキトサン被覆酸化セルロース(キトサンDAC)の慢性腎不全動物に対する作用を検討した,ラットにアドリアマイシンを反復静脈内投与することで進行性の慢性腎不全ラットを作製後,キトサンDACを5%の割合で正常粉末食と混合し,paired-feeding条件下で約4カ月間飼育した.途中,2~4週間間隔で採尿,採糞および採血を行なった.また,対照薬として,保存期慢性腎不全患者に対しての有用性が報告されている活性炭経ロ吸着剤(クレメジン)を同様に混餌投与した.その結果,正常食群およびクレメジン群では摂食処置63~65日後より死亡例が観察されたのに対し,キトサンDAC群では100日後で初めての死亡例が認められた.摂食処置後の平均生存日数は,正常食群(93.9±7.8日)に対しクレメジン群(92.7±6.4日)では差は認められなかったが,キトサンDAC群(117.3±5.0日)では著明な生存日数の延長が観察された.また,アドリアマイシン投与ラットは高窒素血症,高クレアチニン血症,高リン血症,高脂血症,タンパク尿および貧血に特徴付けられた慢性腎不全症状を呈したが,キトサンDAC混餌投与により,血中尿素窒素値の上昇の抑制,血清クレアチニン値の上昇の抑制,血清リン値の上昇の抑制,赤血球数の減少の抑制が観察された.更に,キトサンDAC混餌投与により糞量の増加,糞水分含量の増加,糞中窒素排泄量の増加,タンパク質の見掛けの消化吸収率の低下,糞中リン排泄量の増加および糞中ナトリウム排泄量の増加が観察され,これらの作用が腎不全の進展に対して抑制的に作用したものと推察された.以上の結果は,慢性腎不全の薬物治療における経口吸清剤療法の新たな可能性を示唆するものと考えられた.
著者
行武 潔 吉本 敦
出版者
森林計画学会
雑誌
森林計画学会誌 (ISSN:09172017)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.81-98, 2002-09-30 (Released:2017-09-01)
参考文献数
23

本報告は国産材製材品とそれと競合する国内挽き米材製材品及びその他外材も含む製材品を対象に,東北,関東,北陸,中部,近畿,中国,四国,九州の8地域における木材需給構造の特徴を価格弾性値によって把握しようというものである。推定に際しては,各品目毎に需給の部分均衡モデルを作成し,推定結果の一致性が得られるよう2段階最小二乗法,3段階最小二乗法を用いて係数の推定を行った。また,それらの結果と普通最小二乗法により得られる推定結果とを比較検討した。分析の結果,製材品需要の価格弾性値については,全需給関数に関わる外生変数を操作変数推定に用いた2段階,3段階最小二乗法による推定結果が普通最小二乗法によるものよりも各地域とも価格弾性値が大きくなる結果となった。特に東北,関東,北陸,近畿,四国が2.0以上となった。また各地域とも国産材よりも米材の供給価格弾力性の方がより弾力的,即ち,国産材は市況に対する供給反応が敏感ではないことを示していることが分かった。この傾向は普通最小二乗法,2段階,3段階最小二乗法によった場合いずれも同様であった。
著者
吉本 智信
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.94, pp.79-85, 1996-12-15

高齢化社会への移行は避けて通れない道であり,公的介護保険の導入は時間の問題となっている。従って,介護保険は一保険会社の問題ではなく,国家的な問題となっているが,どのような仕組みが良いかという事は未だ議論の余地があり,今後十分に時間をかけた国民の合意形成が必要とされている。その時,公平な最低補償,利用者のニーズの多様性,将来にわたる国民負担率等の問題を併せて考えた場合,基本的な部分としての公的介護保険と,それに個人が追加する民間介護保険という図式は有力な候補の一つとして浮かび上がって来る。この図式を具体的に考えていく際の基礎資料として1989年発売以来加入者が約13万人となり既に127例に支払い済みの安田火災の介護保険を問題点も含めて検討する。
著者
吉本 隆明
出版者
中央公論社
雑誌
思想の科学 第4次
巻号頁・発行日
no.12, pp.63-68, 1959-12
著者
吉本 卓司
出版者
早稲田大学
巻号頁・発行日
1999

本文PDFは平成22年度国立国会図書館の学位論文(博士)のデジタル化実施により作成された画像ファイルをPDFに変換したものである。
著者
吉本 弥生
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.191-236, 2011-03

明治後期、日本の美術界においてフランスやイギリスと同様、ドイツ美術は大きな影響を与えていた。しかし、従来はフランスとイギリスにその重きが置かれ、ドイツからの影響については、あまり大きく取り上げられてこなかった。これは、当時、日本において西洋芸術紹介者としての役割を担っていた雑誌『白樺』とのかかわりが考えられる。 『白樺』は、特にフランスとドイツの哲学思想から強い影響を受けているが、ドイツからの影響は従来、初期に限定され、その後はフランスの影響下にあったと認識されてきた。そして、同時に『白樺』には、人格主義の思想を持つ芸術家が次々に紹介される。 人格主義は、その人物の世界観や思想に重点をおいた解釈方法である。日本では、阿部次郎(『人格主義』岩波書店、一九二二年)や波多野精一(『宗教哲学』岩波書店、一九三五年)の著作がよく知られ、日本への受容において彼らの功績は大きい。 しかし、日本でのこの人格主義の流れの源泉は実は、当時の受容だけによらず、それより以前から日本に定着していた感情移入説にもとをたどることができる。 感情移入説は、ドイツで盛んになった美術概念で、主に「主観の挿入」をキーワードとして対象に感情を落とし込む表現をおこなうものである。その思想を体系化したのがテオドール・リップスである。リップスの思想は、一九一〇年以前から日本でも見られる。本稿では、その紹介者の嚆矢として、伊藤尚の「リップス論」(『早稲田文学』第七二号、一九一一年一一月)を取り上げ、それとの比較として阿部次郎の『美学』(岩波書店、一九一七年)を考察した。その結果、伊藤のリップス受容の特徴がオイケンとの比較にあり、それは早稲田大学哲学科の系譜に沿っていることが解された。伊藤の「リップス論」は、『早稲田文学』に広く影響を与えた。そして、阿部にも特徴的なことに、鑑賞者が制作者の経験を自己のものとして感じる「直接経験」という鑑賞方法が、『帝国文学』で盛んに紹介された『ファウスト』を例として具体的に提示され、それが人格主義の概念を中心に受容されていったことが明らかとなった。つまり、日本におけるリップス受容は、『帝国文学』と『早稲田文学』にも共通する鑑賞における新思潮として受容されていったのであった。
著者
寺田 暁彦 石崎 泰男 吉本 充宏 上木 賢太
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

土壌気体水銀(GEM)放出率測定方法を構築して,箱根火山大涌谷噴気地において観測試験を行い,有効性を確認した.この結果に基づき,草津白根火山においてGEM観測を2017年に行った.その結果,将来噴火口になり得る破砕帯に相当すると思われる,高GEM放出域を白根火砕丘の南および南西斜面に見出した.また,地質調査に基づき,白根火砕丘南側から本白根山にかけて,過去に爆発的噴火が繰り返し発生してきたことが判明した.既存の物理観測網は湯釜火口湖を取り囲むように配置されている.現状よりも南側領域における観測点の整備が,今後の草津白根火山の監視上の課題である.
著者
藤井 敏嗣 吉本 充宏 石峯 康浩 山田 浩之
出版者
山梨県富士山科学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

山小屋の屋根構造の落石や噴石などの岩石の衝突に対する強度を明らかにするために、富士山の山小屋で使用されている杉の野地板を用いた屋根構造に噴石を模した飛翔体を衝突させる実験をH28年度に引き続き実施した。屋根構造の簡易的な強化策を検討することを目的に、杉板2層を重ね合わせた構造を検討することとした。衝突実験は、H28年度と同様に防衛大学校所有の圧縮空気によって飛翔体を噴射させる高速投射型衝撃破壊試験装置を使用した。飛翔体は昨年度と同様にビトリファイド砥石(2421 ㎏/m2)、直径90mm、質量2.66kgを使用した。本実験では、飛翔体の質量を固定したため、速度を変化させることで運動エネルギーを変化させた。飛翔体速度は20m/s~50m/s(衝突エネルギーは約1000J~3600J)の範囲で行った。基本構造は、杉板2層を重ね合わせた表面に、防水シート(厚さ約1mm)とガルバリウム鋼板(厚さ約0.4mm)を取り付けたものに垂木を組み合わせた。杉板の重ね合わせ方は、1枚目と2枚目を直交させるように重ね合わせるクロス型と平行に重ね合わせるスタッカード型の2種類を作成した。実験結果より杉板の貫通限界エネルギーは、板厚15mmのクロス構造において2100~2700J、板厚15mmのスタッガード構造において1200~1900J、板厚18mmのクロス構造において2500~3000J、板厚18mmのスタッガード構造に1300~2400J付近と求めることができた。すなわち、板厚に関わらず、クロス構造はスタッガード構造に比べて高い衝突エネルギーにおいて貫通の境界が現れた。そのため、杉板を2枚重ねて木造建築物屋根を作製する場合、クロス構造の方が噴石衝突に対する木造建築物の安全性が高いといえる。
著者
石田 聡 土原 健雄 吉本 周平 皆川 裕樹 増本 隆夫 今泉 眞之
出版者
農業・食品産業技術総合研究機構農村工学研究所
雑誌
農村工学研究所技報 (ISSN:18823289)
巻号頁・発行日
no.210, pp.1-9, 2010-03
被引用文献数
1

淡水レンズは、島や半島において海水を含む帯水層の上部に、密度差によってレンズ状に浮いている淡水域を指し、カリブ海、太平洋、インド洋などの低平な島嶼や、我が国における沖縄県大東島や多良間島などの南西諸島などでは重要な水資源となっている。淡水レンズは降雨浸透水と海水の微妙な圧力バランスによって形成されていることから、降水量の変化、揚水量の変化、海水準の変化に対して、その賦存量が大きく影響を受け、水資源として脆弱である。一方で、我が国では沖縄県を対象として淡水レンズを水源として保全・開発する予定であること、アジア・太平洋諸国の経済成長によって島嶼地域においても水需要量の増加が予想されることなどから、淡水レンズ水資源への関心は国内外で高まりつつある。淡水レンズは井戸からの取水によって利用されるが、揚水に伴って井戸周辺の圧力が低下するため、揚水量が大きいと帯水層下部から塩水がくさび状に浸入し(アップコーニング)、やがて井戸水が塩水化する。帯水層が一度塩水化してしまうと、粒子間の微小間隙に塩水が残留すること、塩水浸入の水みちが形成されることなどから地下水環境は復元せず、当該帯水層からの淡水利用が不可能になる。この様な帯水層の塩水化は近年の生活様式の近代化・人口増などで揚水量が増加した島嶼で起こっており、地下水環境の保全と水資源の持続的利用を両立させることが重要な課題となっている。筆者らは沖縄県多良間島を対象として淡水レンズの賦存状況を調査するとともに、電磁探査法の琉球石灰岩帯水層への適用性について評価を行った。形状。