著者
崔 恩瀞 藤原 賢二 吉田 則裕 林 晋平
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1_47-1_59, 2015-01-26 (Released:2015-03-26)

リファクタリングとは,ソフトウェアの外部的振る舞いを変化させることなく,内部の構造を改善するプロセスを指す.研究者・実務者ともに,開発プロジェクトにおいて過去に実施されたリファクタリングを知りたいという要求がある.そこで,リファクタリングの実施を自動的に検出する手法(リファクタリング検出手法)が数多く提案されている.これらの手法は,多様な国際会議や論文誌において発表されており,研究者や実務者にとって研究成果を概観することは容易ではない.本稿では,リファクタリング検出手法の中でも,盛んに研究が行われている成果物の変更履歴解析に基づく手法を中心に紹介を行う.まず,本稿におけるリファクタリング検出の定義および分類について述べる.その後,成果物の変更履歴解析に基づく手法を紹介し,今後行われる研究の方向性について考察を行う.
著者
吉田 祐子 矢野 理香
出版者
看護総合科学研究会
雑誌
看護総合科学研究会誌 (ISSN:1344381X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.11-19, 2020-03-31

皮下注射前の皮膚消毒は,複数の先行研究により必要ないことが検証されているが,日本では標準的な手順として浸透している。そこで,本研究では,日本でなぜ皮下注射前の皮膚消毒が実施されているのかその背景を検討するために,看護技術書における皮下注射前の皮膚消毒に関する記載の実態について明らかにすることを目的とした。インターネットで看護技術に関する書籍検索を実施し,内容を精査した結果,選定基準に合致した書籍は28冊であった。これらの書籍では,皮下注射前の皮膚消毒は必要であると記載されていたが,そのうち3冊は,皮下注射前の皮膚消毒の必要性がないことを検証した先行研究についても紹介していた。消毒が必要との根拠となる論文の引用はどの書籍にもなかった。日本での皮膚消毒の実施率が非常に高い背景の一つとして,多くの技術書において,消毒の必要性の有無に関する根拠の記載が十分ではないことがあると考えられた。
著者
今治 玲助 高野 周一 吉田 篤史 片山 修一 久保 裕之 亀井 尚美 岩村 喜信 佐々木 潔 村守 克己 野田 卓男
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.922-926, 2016-06-20 (Released:2016-06-20)
参考文献数
8

【目的】中国四国地域の小児外科施設におけるapple-peel 型小腸閉鎖症の頻度,治療方針,入院期間,生存率,予後についてアンケート調査の結果を報告する. 【方法】日本小児外科学会中国四国地方会所属施設に対しアンケート調査を行った.対象は1990 年1 月1 日~2013 年12 月31 日に出生し,手術所見でapple-peel 型小腸閉鎖症と診断された症例とした. 【結果】13 施設より回答が得られた.小腸閉鎖症例総数は203 例であり,apple-peel 型小腸閉鎖は17 例(8.4%),男児6 例女児11 例であった.在胎週数平均35 週2 日,出生体重平均2,315 g であった.胎児診断は13 例(76.5%)で行われた.PN 施行期間は平均68.8 日(8~313 日)であり,入院期間は平均98.8 日(19~218 日)であった.1 期的手術は13 例(76.5%)で行われ,13 例中4 例(30.8%)に再手術が行われた.全例生存し,1 歳時体重は平均8.4 kg,3 歳時体重は平均12.6 kg であり長期的合併症は認めていない. 【結論】本研究では全例長期的合併症なく生存しており,予後良好であった.全身状態良好ならば1 期的手術可能であるが,吻合に対する十分な注意が必要である.また敗血症,胆汁鬱滞,短腸症候群を念頭に置いた管理が重要であり,吻合部狭窄・縫合不全により術後肝障害・黄疸の危険性が高まると考えられた.
著者
中島 誠 吉田 俊和
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.111-121, 2009 (Released:2009-03-26)
参考文献数
43

人が複数の関係間で帳尻を合わせるように行動するという「世界に対する衡平(Equity with the World; EwW)」仮説を検討するため,大学生161名を対象とした実験を行った。研究では特に個人内要因の影響に着目し,向社会的規範を指示する程度としての「援助規範意識」と,出来事の肯定的評価と関連する「正当世界信念(Belief in a Just World; BJW)」を取り上げた。実験において参加者は2度の報酬分配状況に置かれ,一度目では実験操作として過大,過少,衡平のいずれかの報酬を受け取った。その後,参加者は分配者として第三者に報酬を分配するよう求められた。結果はEwW仮説から予測される行動と概ね一致していたが,援助規範意識の高い個人は過去に過少な分配が行われても,第三者を通して不衡平を回復しなかった。参加者の行動と情動を比較すれば,BJWの高い個人は過去の不衡平にネガティブな情動を感じにくいために,第三者に衡平な分配を行うことが可能だと解釈できる。一方,援助規範意識の高い個人は第三者に衡平に分配することでより満足を感じており,個人内要因ごとに異なるプロセスが示唆された。これらの結果から,人々がどんな条件においても単純にEwW回復行動を見せるわけではないことが示された。
著者
吉田 篤正
出版者
日本熱物性学会
雑誌
熱物性 (ISSN:0913946X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.266-272, 1993-10-30 (Released:2010-03-16)
参考文献数
19

本解説では、 まず、 大気中の二酸化炭素濃度の増大による地球規模の温暖化のメカニズムを概説する。 次に、 これまでの観測データに基づいて、 地球大気系の現在の状態を診断する。 さらに、 今後の地球大気系の熱環境変化の予測に関して、 主に、 数値実験から得られた結果を紹介する。 数値実験で用いられる気候モデルとその問題点についても言及する。
著者
吉田 康太 藤野 毅
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回 (2020)
巻号頁・発行日
pp.4J3GS204, 2020 (Released:2020-06-19)

深層学習(DNN)システムにおけるセキュリティ課題として,バックドア攻撃が知られている.画像認識におけるバックドア攻撃では,攻撃者はDNNモデルの学習データセットに,特定位置へのドット付与などの目立たない加工を施し,加工前とは異なるターゲットラベルを設定した少量の異常データ(ポイズンデータ)を混入させる.このデータセットを用いて学習したDNNモデル(バックドアモデル)は,正常な入力に対しては正常に推論を行うが,ポイズンデータと同様の加工が施された入力に対しては,推論結果がターゲットラベルに誘導されてしまう.本稿では,DNNモデルユーザ(防御者)がラベルのないクリーンなデータを収集できるタスクを想定し,蒸留を用いたバックドア攻撃への対策を提案する.バックドアモデルを教師とし,クリーンデータを用いて蒸留することで,ポイズンデータの影響を排除した生徒モデルが得られる.更に,バックドアモデルと生徒モデルそれぞれで学習データセットを分類した時の推論結果の差分から,学習データ5万件の中に100件のみ含まれるポイズンデータの候補を約550件まで絞り込むことができる.
著者
山形 亘 磯貝 俊明 小木曽 正隆 吉田 彩乃 西村 睦弘 田中 博之 手島 保
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.1243-1248, 2018-11-15 (Released:2019-12-25)
参考文献数
16

症例は43歳男性.覚醒剤使用で服役中,運動時に心室細動による心肺停止となり,自動体外式除細動器で除細動され当院に搬送された.心電図で陰性T波を認めたが,心エコー検査では壁運動異常を認めなかった.緊急冠動脈造影で右冠動脈に数珠状のびまん性冠動脈瘤を認めた.血管内超音波検査で複数の隔壁を有し複雑に拡張した血管径の大きい病変であったため,経皮的冠動脈形成術は困難と判断した.薬物治療と心室細動の二次予防として植込み型除細動器を留置した.覚醒剤やコカインなどの違法薬物は心血管系に作用し,動脈瘤を形成しうるとされる.本症例では覚醒剤の使用は病歴聴取により確認できたものの,コカインなどの他の違法薬剤の使用歴は明らかにできず,また本症例と同様の病変を示す違法薬物患者の先行報告がないため,違法薬物自体とこの特殊な冠動脈病変との因果関係について断定はできない.しかしながら,川崎病や自己免疫疾患による血管炎の既往はなく,通常の動脈硬化病変とは考えにくい特殊な病変であったことから,違法薬剤が数珠状冠動脈病変の形成に関与した可能性が示唆された.
著者
佐藤 成 中村 雅俊 清野 涼介 高橋 信重 吉田 委市 武内 孝祐
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.I-52_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】スタティックストレッチング(SS)は関節可動域(ROM)などの柔軟性改善効果が期待でき,臨床現場やスポーツ現場で多用されている.しかし近年では,特に45~90秒以上のSSにより筋力やパワーなどの運動パフォーマンスが低下することから,運動前のウォームアップにおいてSSを行うことは推奨されていない.しかし,実際のスポーツ現場では20秒以下のSSが用いられる場合が多いと報告されており,20秒以下のSSは運動パフォーマンス低下を生じさせない可能性がある.しかし20秒以下のSSの即時効果を検討した報告は非常に少なく,さらにその持続効果を検討した報告はない.そこで本研究では,柔軟性改善効果の指標としてROMと弾性率,運動パフォーマンスの指標として求心性収縮筋力(CON)と遠心性収縮筋力(ECC)を用いて20秒間のSSの即時効果と持続効果を明らかにすることを目的とした.【方法】対象は健常成人男性20名の利き足(ボールを蹴る)側の足関節底屈筋群とした.足関節底屈筋群に対する20秒間のSS介入前後に足関節背屈ROM(DF ROM),弾性率,CON,ECCの順に各々測定した.先行研究に従ってSS介入後の測定は,①介入直後に測定する条件,②介入5分後に測定する条件,③介入10分後に測定する条件の計3条件を設けた.対象者は,無作為に振り分けられた条件順にて3条件全ての実験を行った.DF ROM,CON,ECCの測定は多用途筋機能評価訓練装置(BIODEX system4.0)を用いて行った.なお,CONとECCの測定は足関節底屈20°から背屈10°の範囲で,角速度30°/secに設定して行った.弾性率の測定は超音波診断装置(Aplio500:東芝メディカルシステムズ株式会社)のせん断波エラストグラフィー機能を用い,腓腹筋内側頭(MG)に対して行った.統計学的検定は,SS介入前後および条件(直後条件,5分条件,10分条件)間の比較は繰り返しのある二元配置分散分析(時期×条件)を用いて検討した.さらに,事後検定として,SS介入前後における条件間の比較はBonfferoni法,各条件におけるSS介入前後の比較は対応のあるt検定を用いて検討した.【結果】DF ROMに有意な交互作用(p=0.004, F=6.517)と,時期に主効果を認めたが,MGの弾性率,CON,ECCには有意な交互作用及び主効果を認めなかった.事後検定の結果,DF ROMは全条件において介入前と比較して介入後に有意に増加した.またDF ROMは介入直後と比較して介入10分後に有意に低値を示した.【考察】本研究の結果より,20秒間のSSはDF ROMを即時的に増加させるために有効であり,その効果は10分後まで持続するが,5~10分の間で減弱することが明らかとなった.また,20秒間のSSは弾性率,CON及びECCに影響を及ぼさないことが明らかとなった.【結論】20秒間の短時間のSS介入は等速性筋力を低下させずにROMを増加させるが,弾性率を変化させることが出来ないことが明らかとなった.【倫理的配慮,説明と同意】本研究は本学の倫理審査委員会も承認を受けて実施された.また,本研究はヘルシンキ宣言に則っており,実験開始前に対象者に本研究内容を口頭と書面にて十分に説明し,同意を得た上で行われた.
著者
渡邊 裕也 山田 陽介 吉田 司 横山 慶一 三宅 基子 山縣 恵美 山田 実 吉中 康子 木村 みさか Kyoto-Kameokaスタディグループ
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
pp.2014, (Released:2020-12-08)

背景:長寿社会において,最も深刻な社会問題の1つにサルコペニアおよびフレイルがある。高齢者の自立と生活の質を維持するためには,これらを予防することが重要である。本研究では,地域在住高齢者を対象に,自己管理式の包括的介護予防プログラム(Comprehensive geriatric intervention program:CGIP)が身体機能および骨格筋量に及ぼす効果を調査した。我々は,CGIPを自宅で実施する群(自宅型)と自宅での実施に加えて週に一度の集団指導を行う群(教室型)の介入効果を比較した 。 方法:526名の参加者を,居住地区に基づいて2群(教室型 251名,自宅型275名)のいずれかに無作為に割り付けた。低負荷レジスタンストレーニング,身体活動量の増加,口腔機能の改善,栄養ガイドで構成されるCGIPを12週間実施した。参加者全員に,プログラムの説明を含む90分の講義を2回受講するよう促した。参加者にはトレーニングツール(3軸加速度内蔵活動量計,アンクルウエイト,ゴムバンド)と日誌が提供された。教室型介入群は毎週90分のセッションに参加し,その他の日には自身でプログラムを実施した。一方,自宅型介入群はプログラム実施方法の説明のみを受けた。12週間の介入前後に,膝伸展筋力,通常および最大歩行速度,Timed up and go(TUG)テスト,大腿前部筋組織厚などの身体機能を測定し,Intention-to-treat法を用いて分析した。 結果:526名の高齢者のうち,517名(教室型243名 74.0±5.4歳 女性57.2%,自宅型274名 74.0±5.6 女性58.8%)が研究対象として組み入れられた。9名(教室型 8名,自宅型 1名)は介入前の測定に参加していなかったため,解析から除外された。いずれの介入も膝伸展筋力(教室型18.5%,自宅型10.6%),正常歩行速度(教室型3.7%,自宅型2.8%),大腿前部筋組織厚(教室型3.2%,自宅型3.5%)を有意に改善した。なお,膝伸展筋力は教室型でより大きな改善が認められた(P=0.003)。最大歩行速度(教室型 4.7%,自宅型1.8%,P=0.001)およびTUGテスト(教室型 -4.7%,自宅型 -0.2%,P<0.001)は教室型介入群のみで有意に改善した。 結論:本介入プログラムはサルコペニア,フレイルの予防に有効であった。両介入後,ほとんどの身体機能と大腿前部筋組織厚は改善した。自宅型介入は費用対効果が高く,大規模高齢者集団におけるサルコペニア,フレイルの予防に貢献できるかもしれない。
著者
吉田 宗儀 穂積 俊樹 土井 邦紘
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.9, pp.647-652, 2002-09-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
22

糖尿病発症に妊娠時の低タンパク質摂取が妊娠と新生仔に及ぼす影響が報告されている. オヤと新生仔の3世代の膵内分泌機能をラットを用いて観察し, その知見を報告する. Wistar系ラットを正常群C-1 (n=13, 餌タンパク25.1%) と低タンパク群P-1 (n=15, 餌タンパク14.5%) にわけ, 妊娠後に新生仔C-1-1, P-1-1 (2世代) を得た, 血糖, IRI, 膵組織中IRI, IRGを測定した. 新生仔の一部を同じ餌条件で飼育し, 再度オヤ (C-2, P-2) とその新生仔C-2-1, P-2-1 (3世代) を得, 同様の実験を行った. 低タンパク餌投与群ではオヤ, 新生仔とも体重と膵組織のIRI含有量が正常群より低い傾向が認められ, 膵タンパク量についても同様の低下が認められた. 膵組織タンパク量はオヤでは有意に低タンパク餌群が低値であった. また, 低タンパク餌群の新生仔の膵組織中のIRI含有量については対照との有意の差は認められなかったが, 3世代は2世代に対して有意に低値であった, このことは, 低タンパク質摂取は世代を経るほど妊娠時の膵内分泌に与える影響が大きいことが示唆された.
著者
勝本 憲治 吉田 悠一 才脇 直樹 西田 正吾
出版者
一般社団法人 システム制御情報学会
雑誌
システム制御情報学会論文誌 (ISSN:13425668)
巻号頁・発行日
vol.16, no.6, pp.295-302, 2003-06-15 (Released:2011-10-13)
参考文献数
10

In this paper, we propose a spacial music score. Although many number of studies have been made on multimedia technology in the musical field over the past few decades, there is little attention to notation. The purpose of this paper is to construct more flexible and easily understandable visual music score for the music which is needed to be complicatedly controlled. The prototype system is developed for evalution, and it is confirmed that the user can make music easily by using the system.
著者
村田 和彦 吉田 忠義 鈴木 忠 河合 恭広 金沢 紀雄 高瀬 真一 佐々木 豊志 塩原 雄二郎 乾 迪雄 土屋 純
出版者
The Kitakanto Medical Society
雑誌
北関東医学 (ISSN:00231908)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.317-322, 1980-12-20 (Released:2009-11-11)
参考文献数
17

電気的交互脈は比較的まれな心電図異常であり, その正確な頻度は不明であるが, 心電図検査10,000回におよそ5回程度みられるものであるといわれている.本所見は通例心異常のあるものに認められ, その出現はしばしば心膜液貯留の診断の手がかりとなるが, きわめてまれながら, 他に心異常のない症例に電気的交互脈の出現をみたとの記載もある.以下, われわれが最近約15年間に経験した6症例を報告する.