著者
前島 のりこ 丸山 剛 岸本 圭司 鶴巻 俊江 清水 朋枝 石川 公久 吉田 太郎 江口 清
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.E3P3178, 2009 (Released:2009-04-25)

【目的】脊髄は脳に比べ、血管の構造上梗塞は起こりにくいとされている.当院では、ここ2年で4例の脊髄梗塞症例を経験した.1例は、現在入院中である.当院で経験した症例と過去の文献を検討し、予後予測の妥当性と予後に向けたPTとしての対応を検討する.【対象】2007年4月~2008年10月の期間の脊髄梗塞症例4例.症例1(入院中症例):60歳、男性.胸部下行大動脈瘤人工血管置換術後に発症.病変はTh8-11、脊髄灰白質前方(左優位).左優位の対麻痺.MMT IP2/1、Quad3-/2-、TA3/2.車椅子移乗中等度介助レベル.現時点でリハ期間2か月.症例2:68歳、男性.腹部大動脈瘤人工血管置換術後に発症.病変はTh11/12以下脊髄円錐部、対麻痺.下肢筋力MMT2.車椅子移乗自立で自宅退院.リハ期間は8か月.症例3:63歳、女性.大動脈弁閉鎖不全術後4日目、約1時間に渡る心停止後に発症.病変はTh8-12、脊髄前方1/2.対麻痺.下肢筋力MMT1-2.車椅子移乗一部介助レベルで他院へ転院.当院リハ期間は5か月.症例4:72歳、女性.特発性、後脊髄動脈症候群、Brown-Sequard型.病変はTh11-L1、左後索.感覚性失調症状を主とした左下肢麻痺.発症時は下肢筋力MMT2-3、発症後5カ月でMMT4以上.深部感覚障害は改善傾向も、失調症残存.屋内両松葉杖歩行、屋外車椅子駆動自立にて、自宅退院.入院リハ期間は約2か月半、現在は週1回当院で外来フォロー中.独歩も数mであれば見守りで可.【考察】文献では、脊髄梗塞において予後不良となる因子として大動脈疾患由来、両側性の障害、発症時の麻痺が重度、女性、梗塞巣が灰白質と白質に拡がっていることなどが挙げられている.また、予後良好因子は、片側性で梗塞巣が前角に限局していること、発症時のまひが軽度に加え、Brown-Sequard型であることが挙げられている.症例2,3ともに予後不良因子のうち2つ以上該当しており、車椅子レベルであった.症例4は、Brown-Sequard型で文献通り予後は良好に推移している.症例1は、予後良好因子と予後不良因子を併せ持つ症例である.過去の報告より、大動脈疾患由来の前脊髄動脈症候群の症例では、4例中3例が車椅子レベルとなっている.以上から、機能的には何らかの形で歩行可能となるが、実用的には車椅子レベルであると予測する.プログラムとしては、歩行練習を実施しながら、車椅子移乗練習などの車椅子動作練習を中心に立案し、自宅改修等の環境調整についても検討の必要が考えられる.【まとめ】脊髄梗塞の病因や病変部位、発症時の状態から、ある程度の予後予測ができる可能性が示唆された.PTとして予後を適切に判断し、予後に応じたプログラムの立案・実施と、早期から他職種と連携し環境調整を進めていくことができればと考える.
著者
松村 宏 桝本 和義 吉田 剛 豊田 晃弘 中村 一 三浦 太一
出版者
日本加速器学会
雑誌
加速器 (ISSN:13493833)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.63-71, 2021-07-31 (Released:2021-08-04)
参考文献数
16

Measurement of activated materials and evaluation of activated areas of several types of accelerator facilities were studied for decommissioning planning from FY2017 to FY2020 under the contract of the Nuclear Regulation Authority. The research results were summarized in “Manual of Measurement and Evaluation of Activation for Decommissioning of Accelerator Facilities.” This manual consists of the classification of the activation area of accelerator facilities and the measurement and evaluation of the activation of concrete structures and metallic accelerator components in the decommissioning of accelerator facilities. This manual will be used for the decommissioning of accelerator facilities in Japan.
著者
吉田 皓太郎 若松 栄史 岩田 剛治 久保 貴裕
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
設計工学・システム部門講演会講演論文集 2020.30 (ISSN:24243078)
巻号頁・発行日
pp.3202, 2020 (Released:2021-06-29)

A method to design the function of the brassiere cup shape as developable surfaces and its developed shape using Gaussian Process Regression is proposed. A developable surface, which is generated by sweeping a straight line along a three-dimensional curve, can be seen many products such as ships, buildings, clothes, and so on. The shape has not only its aim which can be formulated but also that which cannot be formulated such as creativity. In this paper, we focus on a brassiere cup. A brassiere cup is composed of several patterns and the cup shape is designed by repeatedly making paper cup model and then checking its three-dimensional shape. For improvement of design efficiency of brassieres, such trial and error must be reduced. The difficulty of the design process is caused by the function of a brassiere cup. Its function, such as to enhance woman’s breast size, et.al., is difficult to formulate and not correlate its three-dimensional cup shape. In this paper, we aim to predict the function of brassiere cup from its cup shape for efficiency of design process of a brassiere cup. First, we formulate the cup shape as developable surface using differential geometry. Then, we proposed a method to parameterize a set of function which characterize the surface using Gaussian Process Regression. Finally, we experimented our proposed method when the evaluated value using its volume and size of the cup is given.
著者
吉田 浩二 辻 麻由美 松尾 拓海 一ノ瀬 叶奈未 宗田 明穂 永田 明 井手 みのり
出版者
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科保健学専攻
雑誌
保健学研究 = Health Science Research (ISSN:18814441)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.21-29, 2021-07

【目的】地域交流サロンに参加する高齢者の生きがい意識の実態および生きがい意識に影響を及ぼす要因を明らかにすることを目的とする.【方法】A地区の地域交流サロンに参加する高齢者40名に対し,平成30年 8 ~ 9 月に,年齢,性別,同居者・配偶者の有無,相談できる友人の有無,地域交流サロンへの参加状況,家族・他者との交流頻度,主観的健康度を含み,そして生きがい意識を表するIkigai-9を用いた質問紙調査を行った.Ikigai-9は生きがいを感じている精神状態(生きがい意識)を測定する 9 項目による質問紙であり,合計得点が高いほど生きがい意識が高い,すなわち生きがいを実感しているとされている.収集したデータから,各項目における生きがい意識得点の平均の比較を行った.【結果】 対象者の平均年齢は83.6±6.9歳で,生きがい意識得点の平均は28.6±7.1点であった.各項目における比較では,「相談できる友人」という項目で,友人がいる群がいない群より平均得点が高かった(P=0.04).その他の項目では有意差はみられなかった.【結論】本研究において,A地区の地域交流サロンに参加する高齢者の生きがい意識の実態,および生きがい意識は相談できる友人の有無と関連があることが確認された.Objective: The purpose of this study is to clarify the actual state of feeling that life is worth living among older people who participate in community-based interactions and to detail the factors related to this feeling.Methods: We conducted a questionnaire survey among older people( n=40) participating in communitybased interactions in one area of Japan. The questionnaire contained questions about age, availability of a partner and friends for consultation, subjective health, and Ikigai-9 scale. Ikigai-9 is a 9-item questionnaire that measures the mental state of feeling that life is worth living, where a higher total score indicates a higher feeling of life worth. We compared the average points of life worth in each item.Results: The average age of the subjects was 83.6 ± 6.9 years, and the average score of life worth was 28.6 ± 7.1. Comparison of each item revealed that the average score was higher for the group who had "friends available for consultation" than for the group without friends( P=0.04). No significant differences were detected for the other items.Conclusion: In this study, we were able to c clarify the actual state of feeling that life is worth living among older people who participated in the community-based interactions and to explore the relationship between their feeling that life was worth living and friends for consultation.
著者
吉田 裕一 尾崎 英治 村上 賢治 後藤 丹十郎
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.343-349, 2012 (Released:2012-10-24)
参考文献数
27
被引用文献数
8 14

低コストで簡便な促成栽培イチゴの新しい花芽分化促進法として間欠冷蔵処理を考案して‘女峰’のトレイ苗に試みたところ,体内非構造炭水化物濃度の低下が抑制され,顕著な開花促進効果が認められた.果実予冷用に用いられるプレハブ冷蔵庫を用いて 13℃暗黒の冷蔵庫内と戸外の 50%遮光条件下に 2,3,4 日間ずつ交互におく処理をそれぞれ 4,3,2 回繰り返し行った.冷蔵庫の利用効率を高めることを前提として,冷蔵庫と戸外で経過する期間は同一とし,交互に入れ替える 2 処理区をそれぞれに設定した.相互の移動は正午頃に行い,処理期間中の戸外の環境条件は,日平均気温 22.5~29℃,日長 12.4~13.1 時間(日の出から日没まで)であった.ピートバッグに定植し,12 日間連続で低温暗黒処理を行った処理区および無処理の対照区と比較したところ,いずれの処理においても,冷蔵処理区は無処理区より 6~10 日早く開花した.12 日間連続処理区と同じ日に処理を開始してその中間で 4 日間戸外においた間欠冷蔵処理区とを比較すると,9 月 13 日定植では 15 日,9 月 17 日定植でも 4 日早く間欠冷蔵処理区が開花した.冷蔵を中断し,2~4 日間戸外で光合成を行わせることによって炭水化物栄養条件が大きく改善される結果,イチゴの花芽分化が促進されると考えられた.効果的な処理条件については今後詳細に検討する余地があるが,2 から 4 日間の低温暗黒と自然条件を繰り返す間欠冷蔵処理は新規の花芽分化促進技術としてきわめて有望であることが示された.
著者
吉田 晴世
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.308-311, 2016 (Released:2018-02-06)
参考文献数
13

In this article, “We-mode theory” is discussed from the viewpoint of social cognition. Furthermore, the mental conditions that should be observed in the relationship between We-mode and non-humans, not humans, will also be examined. Ideas of how a deep understanding of others should be created will be introduced, based on the theory of interactionism seen in social cognition. The possibility of human and non-human coexistence should also be illustrated; i.e., the possibility of coexistence between the human-like robot “Astro Boy” and the disc-shaped vacuum cleaner robot “Roomba”.
著者
柿本 竜治 上野 靖晃 吉田 護
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.I_57-I_68, 2017 (Released:2017-12-27)
参考文献数
29
被引用文献数
2

「自然災害に対するリスク認知が高くても,そのリスクへの防護行動を取らない」という自然災害リスク認知のパラドックスの存在が指摘されている.このパラドックスの存在は,自然災害リスクの認知を向上させるだけでは,防護行動を促すことが難しいことを意味する.これまでに,防護意図や防護行動の促進および阻害要因を抽出する研究は数多く行われているが,抽出された要因が防護意図や防護行動に与える影響は結果が異なっている.そこで本研究では,リスク認知のパラドックスの解消に向けて,同じ質問項目内容のアンケート調査を6地区で行い,個人の減災行動の地域性や共通性を検証した.その結果,非常持ち出し品の備えを促す上で,リスク認知改善よりむしろ反応コストに関する対処評価認知の改善が地域に共通して有効であることが示唆された.
著者
柿本 竜治 上野 靖晃 吉田 護
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_51-I_63, 2016 (Released:2016-12-23)
参考文献数
70
被引用文献数
2 6

「自然災害に対するリスク認知が高くても,そのリスクへの防護行動を取らない.」といった自然災害リスク認知のパラドックスの存在が指摘されている.自然災害リスク認知のパラドックスの存在は,自然災害リスクの認知を向上させるだけでは,そのリスクへの防護行動を促すことが難しいことを意味する.そこで,本研究では,既往研究の中に見られる自然災害リスク認知や減災意識と防護行動との乖離の要因を抽出し,自然災害リスク認知パラドックスの存在を確認する.そして,防護動機理論の枠組みを援用して,研究の視点や枠組みを整理することを通じて,個人の自発的な減災行動の包括的な理解を促すことを目的とする.また,同時に阿蘇市および南阿蘇村で実施された予防的避難の実行状況と自然災害への意識の分析から意識と行動の乖離の要因を探る.
著者
筆保 弘徳 吉田 龍二 山口 宗彦 永戸 久喜 室井 ちあし 西村 修司 別所 康太郎 及川 義教 小出 直久
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.98, no.1, pp.61-72, 2020 (Released:2020-03-26)
参考文献数
36
被引用文献数
1 5

本研究は、2009年から2017年にかけて北西太平洋で発生した熱帯低気圧(TC)において、トロピカルストームの強度に発達する前に減衰した熱帯低気圧(TD)の特性と環境場の条件を調査した。特に、大規模な流れパターンと関連させて、トロピカルストームの強度まで発達した熱帯低気圧(TS)と比較した。流れパターンは以下の5つに分類した。シアライン(SL)、東西風合流域(CR)、モンスーンジャイア(GY)、偏東風波動(EW)、および既存のTCからのロスビー波応答で発生したパターン(PTC)である。ベストトラックデータと早期ドボラックデータを用いて、476例のTC事例のうち、263例のTDが検出された。CRまたはPTC(EW)のパターンで発生したTCは、他のパターンと比較してトロピカルストームの強度に達する(達しない)割合が多い。夏と秋のCR、GY、およびEW(PTC)のTDの平均位置は、同じパターンのTSよりも西(東および北)に偏っていた。TDの周囲の環境場パラメータはTSよりも発達に不向きな傾向があり、CR、EW、PTC(SL、GY、PTC)で大気(海洋)の環境場パラメータに有意な差がある。流れパターンで分類したトロピカルストームの強度に達するための環境場条件は以下のようにまとめられる。SLとGYはより高いtropical cyclone heat potential、CRはより弱い鉛直シア、EWはより湿潤な場、そしてPTCはより高い海面温度と先行のTCが強いことである。
著者
加納 寛起 山根 岳志 吉田 正道 柴柳 敏哉
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.27-34, 2022-03-20 (Released:2022-03-20)
参考文献数
15

2種の輸送物性,拡散係数およびSoret係数が未知である水溶液に対して,レーザホログラフィ実時間干渉法を適用し,それぞれを同一の光学系上で計測するシステムを提案する.まず,本計測法の妥当性と信頼性を検討した.拡散係数はNaCl水溶液,KCl水溶液を対象に,拡散方程式の厳密解が正規分布にしたがうことから干渉縞群厚さの時間変化を利用して算出し,文献値と良好に一致した.Soret係数はNaCl水溶液を対象に,ある時刻の干渉縞位置,熱拡散項を含んだ拡散方程式の厳密解,上記で求めた拡散係数から算出し,既往研究の計測値と良好に一致した.妥当性確認後,文献値に乏しいNa2CO3水溶液10 wt%においても両者の計測を行った.また,本計測に対する誤差要因を明らかにし,拡散係数およびSoret係数の不確かさ幅を推定した.本法は等屈折率線と一致する干渉縞の解析に溶液の屈折率と温度・濃度の関係を利用することで,既存手法に比べて拡散係数およびSoret係数算出の単純化が図られた.
著者
進士 五十八 吉田 恵子
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.155-165, 1988-02-15 (Released:2011-07-19)
参考文献数
15
被引用文献数
4 8

本論は、小学校隣接配置による地域密着型小公園として、或いはリバーサイドパーク・勤労者対応型公園として評価される震災復興公園について、既往記録などを整理し、その全体像を明らかした上で、東京日日新聞1大正12年9月1日-昭和10年8月31日の12年間) の公園関連記事 (191) を抽出し、公園かどのようにして市民社会に定着してゆくか、行政の動きを市民や専門家はどのように受けとり、反応してゆくか、現石からふりかえ一、たとき震災復興公園はどのように評価されるか等について考察した。その結果、計画に対する地元の反対や「不良とルンペンの巣云々」等の生活史を明らかにした、また公園意匠などの特徴を2類7型に整理した。
著者
河原 弘和 吉田 英一 山本 鋼志 勝田 長貴 西本 昌司 梅村 綾子 隈 隆成
雑誌
日本地質学会第128年学術大会
巻号頁・発行日
2021-08-14

【背景】 岩石と地下水の反応で生じるリーゼガング現象は、岩石中に特徴的なバンド模様を展開する。近年、そのバンドが岩石-流体反応の化学的特性や反応のタイムスケールを推測する手がかりになると指摘されている[1]。 豪州北部キンバレー地域東部に産するゼブラロックは、リーゼガングバンドの一例として知られる。ゼブラロックはエディアカラ紀のシルト岩層中にレンズ状に産し、酸化鉄鉱物(赤鉄鉱)からなる数mm〜2 cm幅の赤褐色のバンド模様を示す。ゼブラロックが産する露頭は不連続ながら50 km以上に渡って分布し、広域の地質イベントに伴って生じた可能性がある。これまで、ゼブラロックに関する研究は数例あるが[2][3]、その形成プロセスは未解明である。 本研究では、ゼブラロックの成因を基に鉄バンド形成時の岩石-流体反応の化学的条件を述べる。さらに、ゼブラロック形成に関連した地質イベントや鉄バンドの金属鉱床探査への応用の可能性を提案する。【結果】 薄片観察、XRD分析及びラマン分光分析の結果、ゼブラロックの主要構成鉱物は、極細粒の石英粒子及び粘土鉱物(カオリナイト、明礬石)である。特に粘土鉱物について、ほぼ明礬石からなるゼブラロックが本研究初めて記載され、(1)カオリナイト (Kao) に富むタイプと、(2)明礬石 (Alu) に富むタイプの2種類に分類された。XRF分析による両タイプの全岩組成は明瞭に異なり、特に鉄バンドのFe濃度は、Kaoタイプが~9%、Aluが~30%と大きな差が認められた。 XGT分析による元素マッピングでは、鉄バンド中のFe濃度は一様ではなく、バンドの片側に偏在した非対称の濃度ピークとして分布している。この傾向は両タイプのゼブラロックで共通して認められ、一つのサンプル中におけるピークの偏りは全て同じ方向であった。【考察】 ゼブラロックの粘土鉱物組み合わせの違いは、高硫化系浅熱水鉱床の周囲で、熱水の温度やpHの違いに応じて発達する変質分帯(珪化-明礬石帯及びカオリナイト帯)とよく一致している。これはゼブラロックが酸性熱水変質を被ったことを示している。さらに、Kaoタイプに比べてAluタイプに高濃度に含まれる鉄バンドのFeの存在は、Feの溶解度の温度依存性を反映し、Aluタイプの形成に関与した流体の方がより高温であったことを示唆する。実際に、変質分帯において、明礬石帯はカオリナイト帯より熱水系源に近く、より高温(かつ低pH)の流体が関与している。これらの結果から、ゼブラロックの粘土鉱物組み合わせとFe濃度の違いは熱水系のモデルと調和的であり、酸性熱水変質とバンド形成は同じイベントで生じたと考えられる。 ゼブラロックの元素マップで認められた鉄バンド中のFe濃度ピークは、浸透した流体と原岩との反応による鉄沈殿のリアクションフロントと見なすことができる。これは、Feを含む酸性熱水流体が原岩の堆積岩中に初生的に含まれていた炭酸塩鉱物との中和反応し、それに伴うpH上昇で、流体中のFeが酸化沈澱したことで説明することできる[4]。なお、ゼブラロック中に炭酸塩鉱物はほぼ含まれていないが、同層準の他地域の露頭では炭酸塩鉱物の存在が確認されている。 ゼブラロック形成に関与した熱水活動の候補として、豪州北部に分布するカンブリア紀のカルカリンジ洪水玄武岩の活動が挙げられる。その活動時期は初期−中期カンブリア紀の大量絶滅とほぼ同時期で、地球規模で表層環境に影響を与えたイベントとして注目されている。本研究地域では、ゼブラロックを胚胎する堆積岩層において、それより上位の年代で生じた火成活動はこの一度だけであることも本知見を支持する。【結論】 本研究によって、ゼブラロックの成因について以下の点が明らかとなった:・ゼブラロックは酸性熱水活動に関連して形成した・鉄バンドは、鉄を含む酸性熱水と原岩中の炭酸塩鉱物の中和反応によるpH緩衝によって生じたと考えられる・ゼブラロックの形成に関与した熱水活動は、カンブリア紀のカルカリンジ洪水玄武岩と関連する可能性が高い また、鉄バンド中の一方向のFe濃度ピークの偏りは浸透した流体の流向を示している[1]。従って、流向を逆に辿ることで、熱水金属鉱床が賦存することのある熱水系の中心の方向を推測できる可能性がある。熱水変質分帯と熱水の流向の両方を記録するゼブラロックは、熱水鉱床探査の有効な手がかりになると期待される。【文献】 [1] Yoshida et al., 2020: Chem. Geol. [2] Loughnan & Roberts, 1990: Aust. Jour. of Earth Sci. [3] Retallack, 2020: Aust. Jour. of Earth Sci. [4] Yoshida et al., 2018: Science Advances
著者
樋口 俊郎 鈴森 康一 横田 眞一 黒澤 実 服部 正 則次 俊郎 黒澤 実 服部 正 則次 俊郎 横田 眞一 吉田 和弘 山本 晃生 神田 岳文
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

本研究課題は,特定領域「ブレイクスルーを生み出す次世代アクチュエータ研究」の総括班としての活動に関するものである.この特定領域は,新しい高性能アクチュエータの実現が,社会の様々な局面において今後ますます重要となることを鑑みて活動を開始したものであり,これまで異なる分野で個別に研究されてきたアクチュエータ研究者に共通の活動の場を与えることなどをめざし,平成16年度より平成20年度まで5年間にわたり研究活動を実施してきた.特定領域しての主な研究活動は平成20年度をもって終了しているが,本年度は,これまでの5年間にわたる研究成果をとりまとめ広く公表することを目的として総括班活動を実施した.本年度の中心となった活動は,一連の成果を英文の書籍として出版することであった,特定領域で活動した研究者らにより執筆された原稿をとりまとめ,世界的に著名な出版社であるSpringer社より,Next-generation actuators leading breakthroughsと題する総ページ数438ページに及ぶ英文書籍として2010年1月に出版した.また,2010年1月には,この英文書籍の一般への配布をかねて,この特定領域最後のシンポジウムとなる,3rd International Symposium on Next Generation Actuators Leadin Breakthroughsを東京工業大学大岡山キャンパスにて開催した.シンポジウムでは,出版した書籍の内容に即して,各研究者が研究成果の発表を行った.
著者
三宅 剛史 松本 和幸 吉田 稔 北 研二
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料
巻号頁・発行日
vol.2017, no.15, 2017

<p>近年,ソーシャルメディア上での炎上と呼ばれる現象が問題となっている.発生を未然に防ぐことが望ましいため,投稿内容に炎上の原因になる表現が含まれているかを確認し,訂正を促すシステムは有用と考えられる.本研究では悪口表現や差別表現といった侮蔑表現と,口論になりがちな表現の2つの有害表現を対象とする.提案手法は,メディアを基に作成した有害表現辞書を用いてSVMにより分類器を構築し,炎上の可能性がある文の判定を行う.</p>
著者
北川 宏 草田 康平 古山 通久 吉田 幸大
出版者
京都大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2020-07-30

本研究では、多元素ハイエントロピー効果により、多くの元素種を固溶化させることで、新しいナノ固溶合金を開発すると共に、革新的な触媒機能の創成を行う。超臨界ソルボサーマル連続フロー合成法により、多種金属元素を原子レベルで融合させ、新元素、新物質、新材料の探索を徹底的に行う。1)貴金属8元素からなるハイエントロピー固溶ナノ合金の作製、2)貴金属-卑金属12元素からなるハイエントロピー固溶ナノ合金の作製、3)貴金属-卑金属-軽元素16元素からなるハイエントロピー固溶ナノ合金の作製に挑戦する。さらに、プロセス・インフォマティクスの適用により、一気通貫型の革新的プロセス開発を行う。
著者
吉田 晶
出版者
大阪大学
巻号頁・発行日
1986

07351