著者
神野 健二 河村 明 里村 大樹 坂田 悠
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.539-546, 2005
被引用文献数
1 2

2002年,福岡都市圏が水道水源の約1/3を依存している筑後川流域は観測史上3番目の少雨を記録し,最大55%の取水制限が実施されたが,福岡都市圏では給水制限には至らなかった.これは利水関係者および関連行政機関で頻繁な渇水調整が行なわれたことや,1999年に完成した山口調整池の運用などによる水資源管理が効果を上げたためであると考えられている.本研究では,2002年~2003年にかけての水文特性や貯水量の変動,この渇水に対する関連行政機関へのヒアリングを行った.さらに,福岡導水事業の一環として建設された山口調整池の効果について,調整池がなかった場合を想定したシミュレーションを行い,考察を加えた.その結果,山口調整池の運用の効果が大であったことが示され,山口調整池が建設されていなかったらかなり厳しい渇水になっていたことが推測された.
著者
細矢 淳 鈴木 勝博 坂田 淳一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.2, pp.1-6, 2013-11-14

市場創造を果たしたイノベーション機器として頻繁に取り上げられる手術支援ロボット 「ダ・ヴィンチ」 の日本市場における知財戦略について,関連する特許データの分析によって探った.その結果,ダ・ヴィンチを製造するインテューティブルサージカル社では,米国特許庁に出願した特許を 「ファミリー特許化」 して,日本に出願し,群特許として権利化する知財戦略を採っていることを明らかにすることができた.
著者
船越 公威 坂田 拓司 河合 久仁子 荒井 秋晴
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.351-357, 2013 (Released:2014-01-31)
参考文献数
16

クロホオヒゲコウモリMyotis pruinosusの九州における生息分布は,これまで宮崎県綾町照葉樹林における捕獲記録だけであった.今回,熊本県でも生息が確認されたので報告する.確認場所は熊本県東部の山都町内大臣渓谷にある隧道トンネルの天井の窪みで2007年9月30日,2008年7月27日および8月24日に成獣雄各1頭が確認された.また,2011年11月27日に同トンネルで成獣雌1頭が確認された.背面の体毛は灰黒褐色または黒褐色でクロホオヒゲコウモリの特徴である差し毛に銀色の光沢がない個体もみられた.しかし,側膜がモモジロコウモリM. macrodactylusと違って外足指の付け根に着いていること,九州ではヒメホオヒゲコウモリM. ikonnikoviが分布せず尾膜の血管走行が曲線型でなかったことを考慮して,クロホオヒゲコウモリと判定した.また,熊本県産2個体のミトコンドリアDNA(cytochrome b遺伝子1140 bp)を解析した結果,クロホオヒゲコウモリであることが支持されたが,種内の遺伝的変異が比較的大きく地理的変異があることが認められた.前腕長や下腿長は九州産の方が本州・四国産よりも大きかった.頭骨の形状についても,九州産では本州・四国産のものに比べて頭骨基底全長が短く,眼窩間幅や脳函幅が広かった.頭骨計測8項目を基に主成分分析を行った結果,九州産は本州・四国産との間で明瞭に分離された.
著者
榎本 善成 野呂 眞人 伊藤 尚志 久次米 真吾 森山 明義 熊谷 賢太 酒井 毅 坂田 隆夫 杉 薫
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.SUPPL.2, pp.S2_111-S2_116, 2012 (Released:2013-09-18)
参考文献数
12

症例は29歳,男性.17歳時に不整脈原性右室心筋症(ARVC)による心室頻拍(VT)から心肺停止となり,植込み型除細動器(ICD)を植え込み経過観察していた.2011年3月11日の東日本大震災以降,動悸の訴えあり3月14日ICD作働を認めたため,当院緊急入院となった.入院時心電図は,左脚ブロック型,右軸偏位のHR100台の心室頻拍(VT)であり,over-drive pacing,各種抗不整脈投与でも停止しないため鎮静下でVTコントロールを開始した.約1週間の鎮静でコントロール後,持続するVTは消失したため,第48病日に独歩退院となった.しかし,その後も心不全悪化のために短期間で再入院を繰り返し,6月4日に再入院となった.心臓超音波検査(UCG)では,右心系の著明な拡大のみならず左室駆出率10%程度の両心不全の状態であり,入院後再度VT storm状態となった.鎮静下でのコントロールも無効であったため,補助循環装置(PCPS)導入したが,VT stormが鎮静化することなく,死亡した.震災を契機にVT storm状態となり心機能悪化が助長されたARVCの1例を経験した.
著者
吉松 軍平 坂田 直昭 山内 聡 赤石 敏 藤田 基生 久志本 成樹 海野 倫明
出版者
Japanese Society for Abdominal Emergency Medicine
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 = Journal of abdominal emergency medicine (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.989-992, 2012-07-31

70歳代,男性。35%過酸化水素水100mLを誤飲し,頻回の嘔吐と腹部膨満が出現。30分後,当院に搬送。右下腹部の圧痛を認めたが腹膜刺激症状は認めなかった。腹部CT検査で胃結腸間膜内と肝内門脈に気腫像を認め,上部消化管内視鏡検査で下部食道から胃大弯側全体に著明な発赤腫脹とびらんを認めた。過酸化水素水誤飲による上部消化管粘膜障害と門脈ガス血症が考えられたが,腹膜炎の所見はなく,意識障害や神経症状などの脳塞栓の症状を疑わせる所見も認めなかったため,絶飲食下で,プロトンポンプインヒビターとアルギン酸ナトリウムの投与を行った。腹部症状は速やかに改善し,誤飲24時間後のCTで門脈ガスは消失していた。水分/食事摂取を開始したが症状悪化はなく,入院後5日目に退院となった。過酸化水素水誤飲による門脈ガス血症は消化管穿孔を認めなければ保存的治療が可能であるが,脳塞栓などの塞栓症の前段階であり十分に注意して観察する必要がある。
著者
佐藤 公則 坂田 真美 鹿嶋 雅之 渡邊 睦
出版者
一般社団法人 画像電子学会
雑誌
画像電子学会誌 (ISSN:02859831)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.79-84, 2014-01-30 (Released:2015-11-06)
参考文献数
18

近年,盗難や紛失の恐れの少ない生体認証が普及している.しかし,偽造や,外的要因に影響されやすいといった欠点が挙げられる.本研究ではこれらを解決するため,歯を用いることとした.この利点として,指紋や静脈認証とは違い歯の情報取得は非接触型のため,衛生的であるということが挙げられる.一方,歯を用いた個人識別では,死体の身元確認が主な用途である.これは,歯のレントゲン写真や治療痕を照合に用いており,特殊な機械,技術を要する.本研究ではCCDカメラで歯並びを撮影し,歯並びの大局的特徴と局所的特徴の両方を利用して個人認証を行うシステムを提案する.実験結果から,歯並び画像解析に基づいた個人識別の有効性を示し,識別性能のFRR=0%とFAR=0%を確認した.
著者
岸野 泰恵 柳沢 豊 松永 賢一 須山 敬之 納谷 太 坂田 伊織 北川 忠生
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI)
巻号頁・発行日
vol.2014-UBI-43, no.11, pp.1-7, 2014-07-21

希少魚の保護は生物多様性維持の観点から重要な課題であるが,生息環境が十分に明らかにはされておらず,経験的な知識をもとに保護されている場合も多い.無線センサネットワークを用いて希少魚の生育環境をモニタリングすることで,生息環境や繁殖の条件を明らかにできれば,生物多様性の保護に貢献できる.そこで本研究では,ニッポンバラタナゴ (絶滅危惧 IA 類) の保護池に無線センサネットワークを構築し,溶存酸素量,水温,温度,湿度,照度のモニタリングを行っている.本稿では,2013 年 3 月から開始したニッポンバラタナゴ生息環境モニタリングの実験について報告する.
著者
二宮 寿朗 山口 幸男 坂田 正輝 漆原 広 塩沢 正三 吉川
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.47, pp.133-134, 1993-09-27

X Toolkit、OSF/Motifに代表されるGUIツールキツト及びIDT(Interactive Development Tools)の普及により、APの対話画面は容易に開発可能になってきた。しかし、X Tooolkitのイベント駆動型は、AP本体との結合に向いていないことが指摘されるようになってきた。この問題を解決する試みとして、汎用的なコマンド実行環境を開発した。JunkTalkは、Xサーバー上のイベントにより駆動し、ユーザの入力データを変換/解析して、最適なコマンドを選択して実行するコマンド実行環境を搭載した、汎用的コマンドプロセッサである。入力データの型定義、型変換定義、イベント解析記述、入力解析記述を持つプログラムを、CまたはC++に変換してAPとリンクすることにより、ヒストリ、マクロ合成、スクリプト生成/実行機能を搭載したAPを容易に開発することができる。
著者
小糸 陽介 坂田 聡 上田 裕市
出版者
電気・情報関係学会九州支部連合大会委員会
雑誌
電気関係学会九州支部連合大会講演論文集 平成21年度電気関係学会九州支部連合大会(第62回連合大会)講演論文集
巻号頁・発行日
pp.128, 2009 (Released:2011-01-20)
被引用文献数
1

音響・音声特徴量から音素レベルまで複数階層の音声特徴ベクトルを抽出し、それらを融合した統合化音声画像表示システムが開発された。本システム機能を継承するものとして、音声障害者のプロソディ訓練における韻律特徴表示の実現が期待される。特に、話速パラメータは発話機能評価における要因の一つであることから、連続音声の特徴ベクトルを用いたモーラ分割手法とモーラ速度・平均話速の推定アルゴリズムを先に報告した。本稿では、速度推定に更なる改良を加えると共に、推定された話速パラメータをピッチ、有声・無声、インテンシティなどの他の韻律要素と共にリアルタイム表示するシステムを試作したので報告する。
著者
高口 央 坂田 桐子 藤本 光平
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.245-257, 2007
被引用文献数
1

The purpose of this study was to determine whether a situation moderates the effects on group members of leadership and prototypicality. Prototypicality is a concept defined as recognition of the standpoint between individuals who reflect the meta contrast ratio of an ingroup and outgroup, and this prototypicality relates to an evaluation of the leader's effectiveness by the group members (e.g., Hains et al, 1997). In this article, we examined whether a leaders' prototypicality strongly influences group activity. In study 1, we conducted an investigation on 205 members of 18 groups of university students. The results showed that prototypicality increased group morale when the activity was a competition with an outgroup. In study 2, group members' judgment relative to the instructions of the leader was examined using the scenario assumption method. Results revealed that only in a situation of conflict with an outgroup did the leaders' prototypicality become the group members' judgment standard. The two studies suggest that a leader's prototypicality influences group members only when there is clear conflict with an outgroup.
著者
坂田 善政
出版者
日本言語聴覚士協会
雑誌
言語聴覚研究 (ISSN:13495828)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.3-10, 2015-03-15

本論文では,まず成人吃音の臨床において有用と思われる評価の枠組みを提案した.この枠組みは,吃音の問題を「吃音症状」「環境」「本人の受け取り方(認知・感情面)」という3側面から捉え,これらに「合併する問題」を加えた4側面から評価を行うものである.続いて,これら4側面に対して行い得る訓練・支援について概説し,訓練効果に関する研究についても紹介した.具体的には,流暢性形成法や吃音緩和法,統合的アプローチ,認知行動療法,年表方式によるメンタルリハーサル法,セルフヘルプ・グループといったアプローチについて言及した. 言語聴覚士は,吃音に関する授業が教育課程の中に明確に位置づけられた唯一の専門職である.それゆえに言語聴覚士は,吃音について悩んでいる方がいればその方々を支援する責任があり,また可能な支援の形は数多くある.
著者
坂田 成輝 音山 若穂 古屋 健
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.335-345, 1999-09-30
被引用文献数
1

本研究では,教育実習期間中に実習生が経験するストレッサーを継時的に測定する尺度(教育実習ストレッサー尺度)の開発を目的とした。157名の実習生を対象に,34の刺激事態項目に対してその経験の有無と不快に感じた程度を実習期間中に計3回評定させた。同時に心理的ストレス反応尺度(PSRS-50R),高揚感尺度,身体的反応尺度に対しても継時的に評定させた。項目分析の結果,5つのストレッサー・カテゴリー(基本的作業,実習業務,対教員,対児童・生徒,対実習生)から構成される教育実習ストレッサー尺度(計33項目)が作成された。教育実習ストレッサー尺度で測定された各ストレッサー得点と心理的ストレス反応得点との継時的な関係を検討した。実習開始直後では多くの心理的ストレス反応に作用するストレッサーに共通性が認められた。しかし実習中頃になると反応毎に作用するストレッサーが異なり,実習が終了近くなると再び多くのストレス反応に作用するストレッサーが共通してくることが示された。以上の結果から,実習生に生起する心理的ストレス反応へのストレッサーの作用を捉える上で教育実習ストレッサー尺度は有効な尺度であることが示された。