著者
天野 由莉
出版者
東京大学大学院総合文化研究科附属グローバル地域研究機構アメリカ太平洋地域研究センター
雑誌
アメリカ太平洋研究 = Pacific and American studies (ISSN:13462989)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.95-108, 2014-03

This article is about American attitude toward white refugees from Saint Domingue during the early years of the Haitian Revolution. It focuses on the charity project taken place in 1793. In the summer of that year, about 15000 refugees rushed into American cities because of the turmoil of the capital of Saint Domingue. This article pays special attention to the surge of interest in "sensiblity" during the 18th century. The term sensibility denoted an innate susceptibility to others' suffering. This article shows how the pitiful state of the refugees appealed to Americans' sensibility. American newspapers at that time depicted the situation of the distressed refugees sentimentally. In result, the slave rebellion which was going on in Saint Domingue was drained of political implications and perceived as a mere tragedy. This transition resulted in three outcomes. First, white Saint Dominguans, who had been blamed for the devastation of Saint Domingue, were suddenly victimized after the summer of 1793 and gained Americans' sympathy. Second, shared compassion and the relief project toward refugees appealed to patriotic sentiment in American society. Third, shared sensibility toward refugees' plight made the federal government assist voluntary associations under public funding, regardless of the French officials' objection. However, sensibility toward the whites' suffering obscured the cause of the slaves who stood up for their freedom in Saint Domingue. Thus, this article offeres a nuanced explanation of the Americans' disregard of the revolutionary meaning of the Haitian Revolution in its early stage.論文Articles
著者
小俣 謙二 天野 寛
出版者
名古屋文理大学短期大学部
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.19-27, 1997-04-01

現代青年の心理的特徴を理解するための一つの基礎的資料を得る目的で, 若者の日常生活で身近なものの一つであるテレビCMに対する女子短大生の評価とその理由について分析を行った.方法は, 好きなCMと嫌いなCMおよびその理由の自由記述を求めるアンケート調査と, 実際にCM(10本)を呈示し, そのイメージを調べる実験の二つを用いた.その結果, いずれの方法でもタレントに代表されるCMキャラクターのイメージ(親しみやすさ, かわいらしさ)と音楽の好み, CM全体の明るさ, 愉しさが重要な判断基準となっていることが示された.同時に, 明るさやユーモアも, それが知性に欠けると受けとめられる場合やくどいと思われる場合には否定的に評価されることも示された.また, 全体的には判断基準にこうした共通性がみられるものの, どのタレント・音楽が好まれるかなど, その内容には多様性がみられた.こうした特徴は現代青年の明るさ志向や自己感性の重視とその表現への拘りなどの心理的特徴と関連があると思われる.
著者
天野 忠幸
出版者
大阪市立大学日本史学会
雑誌
市大日本史 (ISSN:13484508)
巻号頁・発行日
no.13, pp.33-53, 2010-05

はじめに : 法華宗(日蓮宗)や浄土宗、浄土真宗など鎌倉時代に生まれた仏教、いわゆる鎌倉新仏教が、比叡山や高野山など顕密仏教から自立し、教団としての実態を持ち始めたのは戦国時代である。そうした実態に即して、法華宗や浄土真宗について「戦国仏教」とする概念が提唱されている。……
著者
天野 宏司
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

飯能市では,飯能アニメツーリズム実行委員会を組織し,アニメ「ヤマノススメ」を活用した誘客事業を展開しつつある。このような流れは,団体型・発地型観光の凋落傾向のなか,個人型・着地型観光に対する関心の高まりのなか,S.I.T.が浸透してきたと捉えることができよう。<br><br>アニメ・ツーリズムとは,作品のファンが,作品世界に我が身を浸潤させようとする,いわゆる「聖地巡礼」が自発的かつ同時多発的に発生する事を指す。あるいは,観光地域の側で,その様なファンの来訪行為を体系化し,コントロールしようとすることも概念的には含まれよう。<br><br>飯能市の場合,隣接する秩父市がアニメツーリズムで成功を収めたことをロールモデルとして,これに追隨しようとの意図も有している。<br><br>報告者は,飯能アニメツーリズム実行委員会の一員として誘客イベントの企画から効果分析までを関わってきた。同時に,秩父市での取組にも関与してきたことから,報告ではこのの両者の取組を比較しつつ誘客効果について分析を行う。<br>
著者
天野 和孝
出版者
日本古生物学会
雑誌
化石 (ISSN:00229202)
巻号頁・発行日
vol.80, pp.5-16, 2006-09-28 (Released:2017-10-03)
参考文献数
80

Recent whale-fall communities from lower sublittoral to bathyal sea environments have been studied in the Pacific and Atlantic Oceans. In contrast, a few fossil whale-fall communities were found from the middle Oligocene to middle Miocene deep-water deposits in Japan and Washington State, USA. It is certain that these communities have acted as dispersal stepping stones for the chemosynthetic species. On the other hand, the hypothesis that the communities acted as evolutionary stepping stones from shallow water to hot vent via cold seep site are controversial. The ecosystem around the whale-bones appeared in the Oligocene. The whale-fall communities are characterized by small mussels as Adipicola and Idas through time. However, other taxonomic composition have changed from the Oligocene to the Recent. The Oligocene communities include some articulate brachiopods and no vesicomyids, while the Miocene communities in Japan share many common genera including vesicomyids with the Recent communities, other than small limpets and other gastropods. For making clear the evolutionary change of whale-fall communities, it is necessary to find more Recent and fossil wood-fall communities as well as whale-fall communities.
著者
平野 悠一郎 鹿又 秀聡 石崎 涼子 天野 智将
出版者
一般財団法人 林業経済研究所
雑誌
林業経済 (ISSN:03888614)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.2-18, 2016 (Released:2016-09-15)
参考文献数
49
被引用文献数
3

近年の日本における林業用苗木の生産をめぐっては、①苗木の「量」と「質」の安定確保(人工林の主伐・再造林への対応、花粉症対策苗木の生産要請等)、②再造林の「低コスト化」への寄与(コンテナ苗活用による一貫作業システムの導入、苗木の効率的な生産・流通体制の確立)、③蓄積された多様な生業・知識・技術(在来知)としての苗木生産の維持という3 つの期待が存在した。北信越地方を主対象とした実地調査からは、これらの期待が個々に実際の苗木生産供給の方向性を規定している一方で、それぞれを効果的に結びつける枠組みは整っておらず、苗木の需給調整の機能不全、コンテナ苗・優良苗の生産コスト高、苗木生産者の減少による在来知の喪失加速といった問題が表面化し、結果として苗木供給のリスクが増大している現状が明らかとなった。
著者
天野 健作
出版者
THE JAPAN SOCIETY OF HYDROLOGY AND WATER RESOURCES
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.77-83, 2014-05-05 (Released:2014-12-27)
参考文献数
46
被引用文献数
2

国際河川であるメコン川の流域に超大国である米国が急速に接近し始めている.オバマ政権発足後,米国の外交政策が「アジア回帰」に転換したことの一環だが,その目的の一つは,東南アジアに多大な影響力を及ぼす中国を牽制する意図がある.非流域国である米国の関与は,ミャンマーの民政化の進展でさらに拍車がかかった.こうした中,中国は相次いでダムを建設するなどメコン川の一方的な水資源の利用により,下流国が批判の声を強めつつあることで,メコン川流域では緊張の度合いが増しつつある.国際社会は依然として「力の政治」が一面で支配しており,国際河川の利用をめぐっても,こうした超大国の動向は,国際機関を軸とする国際的協力枠組みを分析する以上に重要な要因である.
著者
村上 雅裕 三浦 友里 桂木 聡子 大野 雅子 天野 学 森山 雅弘
出版者
Japanese Society of Drug Informatics
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.140-144, 2015 (Released:2015-12-18)
参考文献数
5

Objective: For pharmacists to select a suitable auxiliary device for eye drop administration for patients who have difficulty in applying eye drops, the pharmacists need to know the characteristics and level of difficulty of using each device.Methods: Thus, we compared the characteristics of New Rakuraku Tengan, Rakuraku Tengan III, and an eye-drop self-help device and also conducted a survey involving 40 healthy volunteers on each device’s accessibility and suitability for people with motor disabilities.Results: New Rakuraku Tengan received the highest score for “usage was able to easily understand” (70.0% of the respondents answered positively) and “suitability for poor-sighted people” (65.0%).  Rakuraku Tengan III received the highest score for the “effectiveness of photos and illustrations in the manual” (77.5%), but was evaluated to be difficult to use.  The eye-drop self-help device received the highest score for “suitability for people with difficulty raising their shoulders and arms” (75.0%).Results: Thus, we observed the need for pharmacists to have thorough knowledge of the products in order to recommend suitable auxiliary devices for eye drop administration for each patient.
著者
北村 明彦 阿部 巧 藤原 佳典 新開 省二 清野 諭 谷口 優 横山 友里 天野 秀紀 西 真理子 野藤 悠 成田 美紀 池内 朋子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.134-145, 2020

<p><b>目的</b> 高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施が進められる中,生活習慣病やフレイル関連の各因子が地域在住高齢者の自立喪失に及ぼす影響の強さ(ハザード比)と大きさ(寄与危険度割合)を明らかにする。</p><p><b>方法</b> 群馬県草津町において,2002~11年の高齢者健診を受診した65歳以上の男女計1,214人(男性520人,女性694人)を対象とし,平均8.1年(最大13.4年)追跡した。自立喪失は,介護保険情報による要介護発生または要介護発生前の死亡と定義した。生活習慣病因子として,高血圧,糖尿病,肥満,腎機能低下,喫煙,脳卒中・心臓病・がんの既往等を,機能的健康の関連因子として,フレイル区分,低体重,貧血,低アルブミン血症,認知機能低下を採り上げた。フレイル区分は,phenotypeモデルの5つの構成要素(体重減少,疲弊,活動量低下,歩行速度低値,握力低値)のうち3項目以上該当をフレイル,1~2項目該当をプレフレイルと定義した。Cox比例ハザードモデルを用いた回帰分析により,各要因保有群における自立喪失発生の多変量調整ハザード比(HR),集団寄与危険度割合(PAF)を算出した。</p><p><b>結果</b> 自立喪失発生者数は475人(要介護発生372人,要介護発生前死亡103人)であった。対象者全体でみると,自立喪失の多変量調整HRはフレイル,プレフレイル,認知機能低下,脳卒中既往,喫煙において1.3~2.2倍と有意に高値を示した。自立喪失のPAFは,プレフレイルが19%,フレイルが12%と他の要因に比し高率であった。男性では自立喪失のPAFは,プレフレイルが19%と最も大きく,次いで喫煙が11%であり,女性では,フレイル,プレフレイルがともに18%,腎機能低下が11%であった。前期高齢者では,フレイル,プレフレイルの他に脳卒中既往,貧血,低アルブミン,認知機能低下,喫煙,糖尿病における自立喪失の多変量調整HRが有意に高く,自立喪失のPAFは,プレフレイルが18%,フレイルが13%,喫煙が11%であった。</p><p><b>結論</b> 高齢者健診の受診者を対象とした検討の結果,自立喪失に寄与する割合が最も大きい要因はフレイル,プレフレイルであった。前期高齢期からフレイル予防,ならびに生活習慣病の予防・改善を図ることが集団全体の自立喪失の低減に寄与すると考えられた。</p>
著者
高中 健一郎 安藤 元一 小川 博 土屋 公幸 吉行 瑞子 天野 卓
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.1-9, 2008-06-30
被引用文献数
1

小型哺乳類の側溝への落下状況を明らかにすることを目的とし,静岡県富士宮市にある水が常時流れている約1.5 kmの側溝(深さ45 cm × 幅45 cm,水深10~25 cm,流速約1.3~1.6 m/s)において,2001年6月から2004年9月の間に落下個体調査を131日行った.その結果,食虫目6種,齧歯目7種,合計2目3科13種152個体の落下・死亡個体が確認でき,側溝への落下は1日あたり平均1.16個体の頻度で起きていることが明らかになった.落下していた種は周辺に生息する小型哺乳類種の種数81%に及び,その中にはミズラモグラ(<i>Euroscaptor mizura</i>)などの準絶滅危惧種も含まれていた.また,ハタネズミ(<i>Microtus montebelli</i>)の落下が植林地より牧草地において顕著に多くみられ,落下する種は側溝周辺の小型哺乳類相を反映していると思われた.側溝への落下には季節性がみられ,それぞれの種の繁殖期と関連している可能性が示唆された.以上のことから,このような側溝を開放状態のまま放置しておくのは小動物にとって危険であり,側溝への落下防止策および脱出対策を講じる必要があると考える.<br>