著者
太田 瑶子 進藤 裕之 松本 裕治
雑誌
研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:21888779)
巻号頁・発行日
vol.2018-NL-235, no.1, pp.1-8, 2018-05-06

文学の一つとして詩がある.詩は言葉の表面的な意味だけでなく,言葉が持つ美学的 ・ 喚起的な性質を用いて表現される.詩は短い文字列であっても,詩として表現する事で,言葉の持つ奥深さによってその場の雰囲気を封じ込めることが出来る.しかし,実際にいざ詩を作ろうとすると,どのように始めれば良いのか難しい.そのような場合であっても,手軽に詩を作れるようにしたいと考えた.本研究では,詩の中でも有季定型俳句を選び,言葉を入力することにより俳句の自動生成を行った.本研究ではより柔軟な表現が生成できるように,深層学習を使った.また,韻律や季語のような有季定型俳句の規定を素性や制限として用いた.俳句としての体をなすような生成結果が得られた.
著者
太田 敏子
出版者
公益財団法人 腸内細菌学会
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.137-143, 2019 (Released:2019-07-29)
参考文献数
24

人間は1 Gで進化した高等生物である.その人間が0 Gの宇宙環境に曝されると,とりわけヒトには大きな生理的変化が生じる.その変化はどのようなものか,その対応はどうしたらよいのか,これまでに蓄積されてきた知見を紹介する.宇宙環境で起きる人体の生理的変化は,加齢と同じような現象(起立性低血圧,骨量減少,筋萎縮,心肺機能低下,免疫低下など)が急速に進むという特徴をもつ.これらのメカニズムの解明は,地上の高齢者の医療に対する新たな治療法の開発に貢献する.さらに,宇宙生活の概略を説明し,各種の宇宙技術は地上の社会生活に大きく寄与していることを紹介する.

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著者
太田方 述
出版者
太田方 [ほか]
巻号頁・発行日
vol.[2], 1808
著者
成田 沙織 北嶋 清子 三熊 敬子 太田 幸一 赤塚 悦子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第54回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.175, 2005 (Released:2005-11-22)

【はじめに】当科では、発熱患者に対し解熱方法としてまず手技の比較的簡単な腋窩クーリングを実施する事が多いが、意識障害で体動が激しい患者には無効なことが多い。今回医療廃棄物をリサイクルし腋窩クーリング用具を考案し、結果を得られたので報告する。【研究目的】1.医療廃棄物をリサイクルし、腋窩クーリング用具(以下クーリン君)を作成する。2.作成したクーリン君で、有効な腋窩クーリング効果が得られる。【研究方法】1.研究期間平成17年1月10日から平成17年4月25日 2.研究方法使用済み経管栄養点滴セット(以下点滴セット)を洗浄乾燥後、EOGガス滅菌にて滅菌処理し、その中にCMC製剤(パルプ剤)を注入。シーラーで4cm間隔と2cm間隔に閉塞し切断し、市販されているクーリング製品との冷却効果を比較検討。4cmと2cmの各集団とで冷却時間が長いほうを箱にいれ冷凍し作成。洗濯ネットにいれ患者の腋窩へ使用。使用後は洗濯ネットより取り出し洗浄し再度冷凍。ネットは洗濯、乾燥の後、再度使用する。【結果】クーリン君内容物の長さと市販用品との比較では、市販のクーリング剤は急激な温度変化に対しクーリン君では緩徐な温度変化であった。更に2cmの方が4cmより緩徐であった。体温と冷却効果については、市販製品の場合開始時温度は低いが冷却時間の持続性は図れず、クーリン君では120分後の場合でも冷却効果が期待できる。【考察】今回考案したクーリン君は医療廃棄物を利用しているが経管栄養用で血液汚染が無くEOG滅菌処理を加え、パルプ材のCMC製剤を使用している為人体に安全である。CMC製剤は熱伝導に優れ、また点滴セットを細かくすることで密着性・変形性から冷却時間が長く多少の体動にもずれにくい利点がある。クーリン君は0℃以上を保つことからそのまま使用でき、市販のものと同等の作用時間があり、凍傷の徴候もみられなかったことに繋がったと考えられる。【結論】1.医療廃棄物をリサイクルし腋窩クーリングを考案した。2.点滴セットにCMC製剤を入れて2cmの方が冷却時間が長かった。3.内容物を2cmにすることで用意に形が変形し腋窩の深部に固定できた。4.クーリン君はそのまま使用でき市販のクーリング製品と同等の作用時間があった。5.クーリン君の程よい冷却効果は、リラクゼーション効果にもなる。
著者
相本 啓太 太田 進 上田 誠 鈴木 康雄 元田 英一 木村 宏樹
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.90-96, 2011-04-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
10
被引用文献数
2

【目的】膝歩きは臨床で骨盤に対するアプローチとして使われることがあるものの,その動作特性の解析に関する報告は少ない。そのため本研究は骨盤に着目し,膝歩きを歩行と比較することで,膝歩きの運動特性を解析することを目的とした。【方法】対象の健常者24名(22 ± 2歳)に三次元動作解析装置用マーカーを貼付し,歩行と膝歩きの1歩行周期における骨盤可動域の平均変化量,重心移動を解析し,比較を行った。また,体幹・骨盤近位の7筋での立脚期,遊脚期における% MVC(% Maximum Voluntary Contraction:最大随意収縮に対する割合)を求め,歩行と膝歩きの比較を行った。【結果】骨盤前後傾・水平回旋可動域の平均変化量において,膝歩きの方が有意に高値を示した。筋活動量は立脚期,遊脚期において計測した多くの筋で歩行と比較し,膝歩きの方が有意に高値を示した。【結論】膝歩きは,骨盤の可動性・近位筋の活動性を高める運動療法として有用である可能性があると考えられた。
著者
相本 啓太 上田 誠 太田 進
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第25回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.79, 2009 (Released:2010-04-21)

【背景・目的】膝立ちは立位と比べ身体重心が低く、膝・足関節の影響を除外し、選択的に股関節伸展を促通するための有益な肢位とされ、また膝立ちや膝歩きは骨盤や股関節周囲筋のリハビリテーションとして臨床で使用されている。膝立ち位についての研究では、脊柱起立筋、大殿筋など骨盤の周囲筋で筋活動量が立位より有意に高いことが報告はされているものの膝歩きについての筋活動や運動学的解析を用いた報告は少ない。適切な運動処方のため、膝歩きの運動特性を明確にすることが必要であり、そのために膝歩き動作の運動特性を解析することを本研究の目的とした。 【方法】対象の健常者24名(22±2歳)に3次元動作解析装置用マーカーを貼付し、歩行、膝歩きを3回ずつ測定した。各動作の立脚期、遊脚期における骨盤の最大可動域とその変化量、左右への重心移動量を解析し、歩行時と膝歩き時の比較を行った。また、表面電極を体幹・骨盤周囲の筋7つに貼付し、各筋での立脚期、遊脚期での平均に対して%MVC (%Maximum Voluntary Contraction:最大随意収縮に対する割合)を求め、歩行と膝歩きの比較を行った。統計処理には対応のあるt検定を使用した。 【結果】膝歩きの筋活動量は立脚期、遊脚期において脊柱起立筋、中殿筋などで歩行と比較し、有意に高値であった(p<0.01)。各関節の可動域の変化量においても骨盤で有意に高値を示した(p<0.01)。左右への重心移動は膝歩きの方が有意に高値であった(p<0.01)。 【考察】膝歩きは足関節機能が除外されるため、側方への重心移動増大によるバランスの保持や前方への推進力を生み出すための体幹や骨盤の周囲筋による代償が必要であり、骨盤周囲の関節・筋が歩行と比べ有意に可動・活動していると考えられた。 【まとめ】膝歩きは骨盤の可動域や骨盤周囲筋の活動性を高めることを目的としたリハビリテーションとして有用と考えられた。
著者
浅野 誠 太田 宏
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.292-297, 1996-12-15

ジャストインタイム生産環境では, 納期は顧客からの要求に従って設定され, 納期遅れは許されず, また, 納期に合わせて製品が出荷されるため, 生産終了時刻から納期までは製品を在庫として保持しておかなければならない.在庫費用の最小化を図るため, 納期厳守下で重み付き納期余裕最小化の単一機械スケジューリングを考えるときに, 計画期間の基準時刻を0とし, すべてのジョブの着手可能時刻を0とすると, 納期厳守の制約と生産開始時刻の非負制約から, 与えられた問題の解が不能となる場合がある.その場合, 実生産では何らかの対処を行い, 実行可能スケジュールを作成しなければならない, 本報では, そのような納期厳守スケジュールが存在しないときの対処法として, 生産時間短縮の可能な場合を扱い, 生産時間の短縮コストと納期余裕にかかる在庫コストとの総和最小化の納期厳守スケジュールを作成するための近似アルゴリズムについて述べる.また, 提案アルゴリズムの諸特性を数値実験により示す.
著者
浅野 誠 日野 昌樹 太田 宏
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.226-234, 1999

本論文では, 着手可能時刻と納期の制約の下での総在庫コスト最小化の単一機械スケジューリングを扱い, 分枝限定法に基づく最適アルゴリズムを提案する.ここで, 着手可能時刻は, ジョブのすべての先行作業が終了する時刻や原材料の供給可能な時期を意味し, 着手可能時刻以前に生産の開始ができない.一方, 納期は顧客によって設定されるため, 納期遅れが許されず, また, 生産終了時刻から納期まではジョブを在庫として保持しておくための費用が必要となる.本問題は, 実行可能スケジュールの作成すら容易ではなく, また, 最適スケジュールには遊休時間が挿入されうるため, ジョブの順序付けにあたり, 各ジョブの終了時刻を考慮しなければならない.提案法では, Backward-WSPTルールによるスケジュールを利用した子ノード生成方法が用いられ, さらに, 割り付けられるジョブ数の異なる子ノードが生成される.また, 提案法において, 探索の途中打切りによって得られる解が良い近似解を与えることを数値検証により示す.
著者
山田 浩之 新田 清一 太田 久裕 鈴木 大介 南 隆二 松居 祐樹 中山 梨絵 上野 真史 菅野 雄紀 此枝 生恵 大石 直樹 小川 郁
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.123, no.12, pp.1380-1387, 2020-12-20 (Released:2021-01-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

宇都宮方式聴覚リハビリテーション (以下聴覚リハ) とは, 済生会宇都宮病院聴覚センターで新田らが行っている補聴器診療法で, 主な特徴に「初日から常用を促し, 診察と調整を装用開始から3カ月間頻回に行うこと」「聴覚専門の言語聴覚士が補聴器外来を担当していること」がある. 本法を取り入れた補聴器外来を開設し, 3年間が経過したためその成績について検討した. 対象は2016年4月~2019年3月までに補聴器外来で聴覚リハを行った174例 (男86例女88例, 平均年齢75歳) で, 検討項目は聴覚リハ脱落率, 購入率, 音場検査と語音明瞭度検査による適合率 (補聴器適合検査の指針2010に準ず), 補聴器の型式, 平均価格, 補聴器購入における助成の有無とした. 聴覚リハ脱落率は3%, 購入率は95%, 音場検査による適合率は98%, 語音明瞭度検査による適合率は95%であった. 補聴器の型式は耳掛け型が91%, 耳あな型が8%. 購入された補聴器の平均価格は11.6万円で, 補装具費支給制度を利用して購入した割合は7%であった. 結果は良好で本法の適応 (難聴による生活の不自由があり, 聴力改善の意志がある) となる難聴者にとっては優れた補聴器診療法であることを改めて示すことができた. 一方でわが国の補聴器購入に対する助成と補聴器診療制度に関しては諸外国と比較すると十分とは言えず, 今後は補聴器の調整を扱う国家資格として言語聴覚士の活躍が期待される.
著者
太田 裕一 中村 賀香
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.11, pp.743-749, 2015

調味料の地域別消費傾向を見ると,味噌・食塩を好む東日本と,砂糖・醤油・食酢を好む西日本に分けることができる。食酢は九州・四国・関西を中心に消費が多く,寒い地方は消費が少ない。その様な中で本稿では,寒冷地オホーツクでの食酢開発として,低コスト且つ短期間で誰もが簡単に食酢を醸造できる発酵方法の確立と,原材料は道産の農産物を用いて付加価値を付けた食酢の開発で,地域活性化に大いに貢献したことについて纏めて頂いた。
著者
佐藤 恵美子 松田 トミ子 山田 チヨ 渡邊 智子 山口 智子 伊藤 知子 伊藤 直子 太田 優子 小谷 スミ子 立山 千草 玉木 有子 長谷川 千賀子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】『次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理』のガイドラインに準じた聴き取り調査結果から、昭和35~45年頃までに定着した新潟県のおやつについて報告する。<br />【方法】村上、新潟、長岡、柏崎、魚沼、上越、佐渡の7地域のおやつについて検討した。<br />【結果】新潟県は米を中心とした主食の豊かな食文化があり、うるち米、もち米、くず米、米粉を使ったものが多く、おやつにも主食と類似した文化がみられた。うるち米を使ったものには、おにぎりに生姜味噌をつけて焼いた「けんさん焼き」(魚沼)、米を二度炊きにしてから搗いた「にたて餅」(村上)があった。もち米を使った「餅」はきな粉や砂糖醤油をつけて頂き、「あんこ雑煮(おしるこ)」や「あられ」・「かたもち」(新潟)にして食された。米麹から作る「甘酒」(新潟)、灰汁に漬けたもち米を笹の葉で巻いた「灰汁笹巻」(村上)も特徴的である。もち米や米粉を使ったものには、新潟県の特産品として親しまれている「笹団子」(新潟・県全域)があり、中に餡を入れたものだけでなく、ひじきやあらめの煮物を入れたものも食された。新潟県のおやつには笹の葉を用いたものが特徴的であり、笹団子の他に「三角粽」(柏崎・県全域)や「笹餅」(魚沼)などがあり、地域により笹の用い方に違いがみられた。くず米の利用として、あんや大根菜を入れた「あんぼ」(魚沼)、「おやき」(柏崎)、「みょうが団子」(上越)などがある。佐渡では米粉を使ったものとして、雛祭りには「おこしがた」、釈迦祭りには「やせうま」、ケの日には「とびつき」が食べられていた。その他のおやつに含まれるものに「バタバタ茶」(上越)があり、糸魚川市で泡立てた番茶をいただく風習があった。
著者
太田 素子
出版者
大手前大学
雑誌
大手前大学論集 (ISSN:1882644X)
巻号頁・発行日
no.14, pp.31-40, 2013

パーティをキーワードにして、ヴァージニア・ウルフ(Virginia Wbolf)の作品を読み解こうと試みる。パーティはウルフの作品に於いて重要な役割を果たしていながら、これまで、必ずしも正当に評価されてきたとは言えない。しかし、例えばパーティの催される1日を描く『ダロウェイ夫人』(Mrs.Dalloway)では、「瞬間」("themoment")を捉える特有の儀式として、パーティが効果的に用いられている。そこでは、もろさと表裏をなしながら至福の「瞬間」が鮮やかに定着されている。ウルフが、個我や自我に収敏したいわば閉塞的な世界を描いた作家と思われている一面で、常に社会との関係を意識し続けていたことを再考するひとつの試みでもある。パーティ空間を媒介にして、人は社会と幸福に関係を保とうとするが、そうはできない時代や個人の意識のため、様々なアンビヴァレントな意識を感じていると言える。パーティの準備に始まりパーティのクライマックスで終わる『ダロウェイ夫人』をとりあげて、G.ジンメル(Georg Simmel)や山崎正和の「社交論」、C.エイムズ(Christopher Ames)のパーティ論を踏まえつつ、ヨーロッパ近代の社交とウルフのパーティ空間について考える。
著者
太田原 準
出版者
アジア経営学会
雑誌
アジア経営研究 (ISSN:24242284)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.127-140, 2019 (Released:2020-12-11)
参考文献数
17

Although Japanese brand motorcycle have dominated the Southeast Asian markets since the 1960s, European products dominated these markets until the 1950s. The turning points resulted from differences in firm’s responses to the import substitution industrialization policies of Asian countries. This paper explores the market situation of Southeast Asia in the 1950s based on the materials of the Japanese Small Vehicle Manufacturers ’Association, and then clarifies how Japanese companies responded to their policies focusing Taiwan market. It was revealed that export-oriented company policy and the development of trade divisions of Honda Motor in the early periods made it possible to respond to local import substitution industrial policy earlier than other companies. Furthermore, the local government proceeded with the selection of companies by raising the local procurement rate of parts in a short period, underpinning Honda’s investment in production facilities for the Knock Down Assembly plant after 1962.
著者
江戸 由佳子 髙木 睦子 太田 千春 川嶋 昌美 浅野 和仁
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.325-330, 2017 (Released:2017-12-19)
参考文献数
24

妊婦では,妊娠の継続や胎児の発育のために非妊婦と比較し,著明な物質代謝の変動やホルモンバランスの変化が観察される.また,分娩に際しては断続的な強い痛みが認められる.これら妊娠・出産に伴う一連の反応によって母体は酸化ストレス反応に曝されていることが推察されるものの,妊娠と母体の酸化ストレス反応に関しては十分に検討されていない.そこで,本研究では非妊婦と正常な経過を辿っている妊婦から尿を採取し,尿中に含まれる酸化ストレスマーカーの検出を試み,その結果から妊娠と酸化ストレスの変動について検討した.対象とした酸化ストレスマーカーは脂質過酸化物であるイソプラスタン,ヘキサノイルリジン,ビリルビンの過酸化物であるバイオピリンならびにDNAの酸化障害産物である8-OHdGであった.対象妊婦を妊娠初期,妊娠中期,妊娠後期そして産後1か月に区分し,上記酸化ストレスマーカーを測定したところ,すべてのマーカーの尿中含有量が非妊婦,妊娠初期ならびに中期と比較し妊娠後期においてのみ統計学的に有意に増加した.また,これら酸化ストレスマーカーは産後1か月で非妊婦のそれらと同濃度にまで減少した.胚胞が子宮に着床すると胎盤が形成され,徐々に発育,妊娠後期ではその機能や胎盤構成細胞の活性化が最大となる.胎盤そのものの機能や構成細胞の活性化は大量の活性酸素を産生するとされていると考えられていることから,妊娠後期の母体では非常に強い酸化ストレス反応が惹起された可能性が推察された.
著者
越智 敦彦 直井 牧人 江夏 徳寿 藤崎 明 船田 哲 鈴木 康一郎 志賀 直樹 太田 智則 久慈 弘士 細川 直登 岩田 健太郎
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.102, no.4, pp.644-648, 2011 (Released:2012-08-09)
参考文献数
7

連鎖球菌感染の内,特にA群溶血性連鎖球菌による壊死性筋膜炎は短時間に敗血症性ショック,多臓器不全から死に至る可能性がある重症感染疾患であり,救命には早期かつ適切な治療(壊死組織のデブリードマンと抗菌薬加療)が要求される.デブリードマンされた組織の鏡検にて連鎖球菌を認めた場合,それがA群溶血性連鎖球菌であるかどうかは,培養結果を待つことなく咽頭用の迅速A群溶血性連鎖球菌抗原検出キット(ストレップA)を用いることで予想することができる. 今回我々は,この検査キットを使用することで早期にA群溶血性連鎖球菌感染症と判断し得た,61歳男性の陰部に発症した壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)の1例を経験した.その起炎菌の早期同定が,適切な外科的処置と抗菌薬の選択を可能とし,救命に繋がったと考えられたため報告する.