著者
小川 裕太 永田 仁史 藤岡 豊太 安倍 正人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.166, pp.19-24, 2009-07-27

MUSICに基づく音源方向推定において,頭部伝達関数の影響を受けた2chの受音信号から音声の到来方向を逐次的に推定する方法を提案する.この方法は,音声信号成分の時間-周波数軸上のスパース性を仮定し,既に方向推定した音源に起因する周波数成分の重みを低下させることによって次の音源の方向推定精度を高める.筆者らは,同じ考え方を既提案の重み付きウイナー利得(WWG)に基づいた方向推定[1]において導入しているが,本論文では,よく使われる高分解能法であるMUSIC法にもこの考え方を適用できるように,空間スペクトル上の最大ピークを構成する周波数成分の振幅に基づいて逐次的な処理を行う.さらに,逐次処理から得られる音源方向の候補について,各候補に属する成分パワーの和を計算して音源数を推定する.提案法の性能評価のため,頭部伝達関数を用いて両耳受聴音を模擬し,様々な音源方向からの到来音を想定して音源方向の検出精度を求める計算機シミュレーションを行った.性能評価の結果,音源が3個で各音源の信号対雑音比(S/N)が10dBのとき,コヒーレンスに基づく成分選択を用いた通常のMUSIC法の検出率が約3%であるのに対し,提案法は音源数を既知とした場合が83%,音源数推定も同時に行った場合が78%となり,通常のMUSIC法の性能を大幅に向上できることが確かめられた.
著者
小川 吉昭 Ogawa Yoshiaki オガワ ヨシアキ
出版者
県立広島大学
雑誌
県立広島大学人間文化学部紀要 (ISSN:21865590)
巻号頁・発行日
no.8, pp.103-114, 2013-03

In "Dilemmas" Gilbert Ryle formulates the fatalist argument as 'whatever is was to be, so it can not be helped'. He trys to search out the fallacy of the argument from antecendent truth to the ineviatability of what happens. Ryle contrasts the fatalist conclusion with a posterior truth, that is, for everything that happens it is true for ever afterwards that it happened, and finds the reason why the latter does not worry us, but the former does. According to Ryle, when we think a predecessor makes its successor necessary, we unwittingly assimilate the necessitation to 'causal necessitation'. Moreover the truth of 'a might-have- been prophecy' is not 'an antecedent truth', but 'a posterior truth', as the adjectives as 'deceased', 'lamented' and 'extinct' can be applied to people or mastodons only after they have ceased to exist. In point of fact, we have not the Book of Destiny which has been written up in full from the beginning of time, but a chronicle which is waiting to be filled with facts that happened.
著者
小川 滋 飯田 繁 井上 晋
出版者
九州大学
雑誌
九州大学農学部演習林報告 (ISSN:04530284)
巻号頁・発行日
vol.81, pp.93-130, 2000-03

九州大学演習林は,実際は,1912年(大正元年)当時の樺太演習林から始まり,続いて台湾,朝鮮の演習林が設置されている。すでに,「旧台湾演習林」,「旧南鮮演習林」については調査が行なわれており,ロシアの「旧樺太演習林」の調査が待望されていたところであるが,1年半の準備期間を経て1999年9月に現地調査が実現した。まず,現地調査の経緯や調査日程,旧樺太演習林の変遷,旧事務所跡地の変貌など,現在のサハリンの事情をまとめた。次いで,旧樺太演習林とその周辺について,50数年経過した植生の現状と樺太演習林当時の植生調査結果および北海道の植生との比較を行って,植生変遷の実態等についてまとめた。さらに,旧樺太演習林が如何なる管理状況に置かれているかを理解するために,最近のサハリンの国有林経営・管理の実態について資料を作成した。また,九州大学施設部に保管されていた旧樺太演習林の建造物の図面を複製し,解説を加えた。以上のように,1999年9月に行われた旧樺太演習林の調査について,経緯,訪問先,演習林の変遷,植物相,林業事情等をまとめて,将来のサハリンにおける森林・林業研究の資料とした。
著者
佐藤 久美 小川 友理江 長尾 慶子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.200-205, 2011-06-05
参考文献数
17
被引用文献数
1

豆腐の凝固剤である'にがり'を用いてプディングを調製し,その製品の色差測定により外観の評価,テクスチャー測定および動的粘弾性の測定により物性の評価,抗酸化性の評価,官能評価による嗜好性を評価し,総合的にプディングの品質を検討した。その結果,無添加に比べて,'にがり'添加により黄度か弱く,明度が高い製品となった。テクスチャー測定では付着性が低く,軟らかいプディングとなった。抗酸化性においても'にがり'添加で増強されることがわかった。動的粘弾性測定では'にがり'添加濃度0.5wt%の製品が高周波領域では他の試料に比べ貯蔵弾性率ならびに損失弾性率が周波数に大きく依存し,ゲル構造が柔らかくしなやかなプディングであると考えられた。嗜好意欲尺度法による官能検査では0.5wt%添加が最も嗜好意欲が大であり,プディングへの'にがり'添加の有用性が認められた。
著者
小川 景子
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究はレム睡眠中の急速眼球運動に伴う脳活動と夢内容との対応関係を検討した。その結果、急速眼球運動の数が多いほど夢が印象的になり、運動野の賦活を反映する脳活動は、夢の活動性・奇異性と関連することが示された。さらに、急速眼球運動数は日中の新規運動学習課題の成績と正の相関関係を示した。この結果より、レム睡眠中の急速眼球運動はレム睡眠中の脳活動をより活性化することで、夢の内容をよりありありと鮮明にし、日中の新規学習課題の成績向上にも関与する可能性が示唆された。
著者
池脇 香織 中村 雅彦 石附 亨 樋口 元剛 小川 敬之 山田 弘幸 永井 みどり 小緑 英行
出版者
九州保健福祉大学
雑誌
九州保健福祉大学研究紀要 (ISSN:13455451)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.149-155, 2013-03

In this study, in order to promote intake of γ-aminobutyric acid (GABA) routinely and continuously, we prepared several functional breads containing different percentages (0%, 1%, 2% or 3%) of GABA, designated as Taimatsu GABA (T-GABA), produced by fermented rice germ, which has been shown to have various physiological actions. The dough containing T-GABA (1%) showed greater expansion as compared with that containing T-GABA (0%, 2% or 3%). The quantity of wet-type gluten decreased in a T-GABA percentage-dependent manner. The stickiness of wet-type gluten containing T-GABA (1%, 2% or 3%) was decreased as compared with that of the control bread (T-GABA; 0%). Although the weight of the bread containing GABA (1%, 2% or 3%) was not altered as compared with that of the control bread (T-GABA; 0%) after baking, the height of the bread containing T-GABA (3%) was the lowest. In the sensory evaluation, referees judged the bread containing T-GABA (1%) as showing a slightly better level of taste, feeling of softness, crust, crumb and fragrance as compared with that of the control bread (T-GABA; 0%). Together, these findings indicate that breads containing T-GABA are of functionally high quality and value, and we propose to introduce these breads into some long-term care health facilities.
著者
萩原 雄一 小川 博久
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WBS, ワイドバンドシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.715, pp.127-131, 2004-03-09
参考文献数
25

日本に暗号モジュールを評価する制度が無い現在,アメリカとカナダが運用しているFIPS 140.2に基づくCMVP(Cryptographic Module Validation Program)は一定の成功を収めている.本稿ではCMVPの成立要件及びその問題点を考察し,日本版CMVP(JCMVP)への改善案を提唱する.
著者
西保 岳 林 恵嗣 本田 靖 近藤 徳彦 小川 剛司 前田 清司
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

体温上昇性の換気亢進による動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)低下が脳血流などの循環反応に及ぼす影響、さらに、意識的な呼吸調節によってPaCO2を増加させることで、脳血流量や血圧反応が改善されるかどうかについて検討した。暑熱下一定負荷運動時及び安静時体温上昇時において、深部体温上昇性の換気亢進反応を意識的な呼吸調節によって抑制できること、さらに,このように意識的に換気亢進を抑えることで、深部体温上昇に伴う脳血流量の低下が抑制されることが初めて示唆された。
著者
小川 伊作
出版者
大分県立芸術文化短期大学
雑誌
大分県立芸術文化短期大学研究紀要 (ISSN:13466437)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.13-24, 1997-12-31

Two lute books by Charles Mouton were printed in the second half of the seventeenth century in Paris. His books were, together with the books of Denis Gaultier and Jacques Gallot, some of the last French lute school books published. These are important not because of their repertoires, but because of the infomation on lute music itself, its ornamentaion, and the social conditions surrounding the lute. In this paper, I translated and annotated the advertisement and instructions, mainly relying on the latest researches on Mouton and his lute books.
著者
鈴鴨 よしみ 寛 善行 賀本 敏行 荒井 陽一 小川 修 福原 俊一
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.93, no.6, pp.659-668, 2002-09-20
参考文献数
11
被引用文献数
7 6

(目的)前立腺癌疾患特異的QOLを測定する尺度「UCLA Prostate Cancer Index(UCLA PCI)」を翻訳し,オリジナルと等価概念を現す日本語版を作成すること(対象と方法)多段階のプロセスを経てオリジナル版の翻訳を行った.さらに,前立腺癌患者6名を対象にパイロットテストを実施し,翻訳上の問題点や実施上の問題点を抽出して改訂し,原作者の了承を得た.(結果)項目分析の結果,無回答者がいた4項目,一つのカテゴリーに片寄る1項目が抽出された.無回答であった項目はその後の質的解析により回答選択肢に問題が見つかり,改訂され解決された.回答に偏りのある項目は,対象が症状の安定した群であったためと考えられた.他の項目は性機能を含め,十分な回答率が得られた.所用回答時間は5.5分と負担のないものであった.(結論)理解しやすく負担のない,且つオリジナル版の持つ概念と等価であると認められたUCLAPCI日本語版version1.2が完成した.また,尺度開発におけるパイロットテストの有用性が示された.
著者
小川 政亮
出版者
日本評論社
雑誌
法律時報 (ISSN:03873420)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.32-58, 1967-02
著者
興野悠太郎 小川正幹 米澤拓郎 中澤仁 徳田英幸
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI)
巻号頁・発行日
vol.2013-UBI-38, no.48, pp.1-2, 2013-05-09

近年,スクリーン以外を対象として映像を投影するプロジェクションマッピングが盛んとなっている.しかし,現在のプロジェクションマッピングでは,静的な物体に対して投影されているものがほとんどで,移動している物体や形が変わる対象に投影する場合,あらかじめ複雑なキャリブレーションが必要な事から,あまり取り組まれていない.しかし,これらの物体に投影する事で,よりダイナミックで演出効果の高い表現を実現できると考えられる.本研究では,動的かつ不定形の物体に対し,事前のキャリブレーションを必要とすることなく,対象の状況を動的に判別し,投影を可能とする手法を実現する.
著者
小川 義博
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.85-93, 1974-03-29

肢体不自由児の教育を考える時、普通学校で教育されるべきか、養護学校で教育されるべきかの決定は非常に難しく、そして児童の将来にとって重要な問題であると考えられる。特に脳性まひ児は合併障害のため、その決定は一層複雑で、困難な問題である。そこで、普通学校で教育を受けている脳性まひ児の実態とその問題点を調査し、今後の脳性まひ児の教育を考える一助としたい。調査方法は普通学校に通学している脳性まひ児61名の父兄に入学期の問題、家庭生活、日常生活動作能力、学校生活についての調査用紙を現在の担任教師に学校生活全般についての調査用紙を配布して行なった。調査は昭和48年7月から9月の期間であった。主な調査結果は以下のとおりであった。1.回答率は父兄77%、担任教師62%であった。2.児童の病型はSpastic型75%で、Athetotic型25%であった。入学時の能力は平均IQ99.6、下肢運動能力年令35.2ヵ月であり、障害は非常に軽度であった。3.多くの父兄は障害が軽度であることを理由に、普通学校入学を希望したが、学校側は障害程度に関係なく53%に拒否的で、58%に入学を認めるための条件を求めた。4.日常生活動作能力は歩行・書字が劣っているが、他の面はほとんど自立していた。しかし70%の児童が通学、校外行事等に父兄の附添いを必要としていた。5.健康状態に問題なく、89%の父兄が児童の精神面での成長を評価し、普通学校の生活に満足していたが、機能訓練、障害の診察を受けていない児童がほとんどであった。6.教師の95%が危険の防止を理由にかなり負担を感じており、そして機能障害だけでなく精神発達遅滞を教師の34%が問題であると判断していた。7.学習成績は知的能力と関係があったが、下肢障害の程度とは関係なかった。学習場面では下肢の障害より、上肢障害と随伴障害が問題となっていた。8.教師は脳性まひ児の存在を学級経営上で悪い影響より、他人への態度、障害者への関心での良い影響の方が多いと判断していた。9.ほとんどの児童は今後も普通学校で教育を受けた方が良いと判断されていたが、IQ90以下の児童は養護学校、特殊学級の方が望ましいと判断されていた。このように障害が軽度の脳性まひ児であったにもかかわらず、その学校生活には多くの問題をもっていた。今後より多くの脳性まひ児が普通学校で教育されるために、身体の機能障害の面には当然のこと精神発達の面に充分な配慮がなされなければならないと考えられる。
著者
富岡 淳樹 小川 宏 中村 高雄 高嶋 洋一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CQ, コミュニケーションクオリティ
巻号頁・発行日
vol.98, no.618, pp.25-30, 1999-02-25
被引用文献数
1

本稿では音声データに対する電子透かし、中でも周波数成分値の量子化による電子透かし埋め込みアルゴリズムについて、種々のパラメータを変化させ、最適な値を求めることを目的とする。ここでいうパラメータとは周波数変換時のブロックサイズや量子化の際の量子化ステップ、埋め込み周波数帯域などを指し、透かし埋め込み後のSNR、非可逆圧縮後における透かし情報の存続率がこれらパラメータの変動によってどのように変化するかを調べ、最適なパラメータを検討した。実験の結果、音声の電子透かしにおける最適なパラメータは画像への電子透かしとは異なるという結論を得た。