著者
小川 尚 羽山 富雄 長谷川 佳代子
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

ラットの味覚野では機械受容ニューロンが機能円柱を形成していることはWang and Ogawa (2002)が先に報告したが、本研究では味覚ニューロンの円柱構造を研究することを目的とした。ラットの大脳皮質味覚野は眼窩と岩様骨の間で、嗅状溝の背側部の島皮質前部にあり、電極を皮質表面に垂直に刺入するために。既成のマニピュレータを組み合わせることにより首振り可能な3次元マニピュレータを作成した。ラットの大脳皮質味覚野にいろんな角度で記録電極を刺入したラットの大脳皮質味覚野に種々の角度で記録電極を刺入し、表面近くより50-100μmステップで四基本味+グルタミン酸ソーダの全口腔刺激に反応するマルチユニット神経活動を記録し、パソコン上で自家製ソフトによりユニットを分離して味覚ニューロン活動を同定し、四基本味+グルタミン酸ソーダに対する応答プロフィールおよび口腔内受容野を調べた。味覚ニューロンは多くの場合1-2個が連続的に記録されるに過ぎなかったが、数例で5-6個が連続的に記録できた。四基本味+グルタミン酸ソーダ中最も大きい応答を生じる刺激をベスト刺激とすると、ベスト刺激は殆ど1個毎変化したが、偶に最大で4〜5個連続して同じベスト刺激を共有するニューロンが見い出され受容野の位置が変化することがあった。それに反しベスト刺激が変化するにも関わらず同じ箇所に受容野は連続して見い出されることもあった。特に、複数の味刺激に同じように大きい応答を生じるニューロンが連続して記録される場合に口腔全体に受容野を持つ例があった。同じ円柱内ではベスト刺激や受容野を共有すると仮定すると、受容野を共有する円柱サイズは約20ミクロン、ベスト刺激のみを共通とする円柱は約30ミクロンと推定された。これは機械受容性受容野をもつ持たないに関わらず、この所見は当てはまった。円柱のサイズを確認するために、最初の電極刺入点近くで、やや角度を変えて第二の電極を刺入して、味覚ニューロンを調べた。円柱サイズが小さいためか、サイズを調べる有効な手段とはならなかった。本研究の1部は2004年7月の国際嗅覚味覚シンポジウム(京都)で発表した
著者
小川 一美
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.187-198, 2011-03-30 (Released:2011-11-25)
参考文献数
82

本稿では, 対人コミュニケーションに関する最近の日本の実験的研究を中心に概観し, 取り組むべき課題について言及した。言語的コミュニケーションおよび非言語的コミュニケーションに関する研究をいくつか挙げ, 言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーションの融合も含めたマルチ・チャネル・アプローチによる研究の必要性についても研究例を挙げながら論じた。続いて, 3者間コミュニケーションや観察者という立場から捉えた対人コミュニケーション研究など, 2者間コミュニケーション以外の対人コミュニケーションの捉え方についても紹介した。また, 対人コミュニケーション研究にも社会的スキルという概念が近年多く組み込まれるようになってきたが, 構成概念も含めこの両者の関係性については十分な吟味が必要ではないかという問題提起を行った。最後に, 対人コミュニケーション研究の今後の課題として, 会話者の内的プロセスの解明, 文化的背景の考慮, 他分野の研究への関心, well-beingとの関係を検討する必要性などについて指摘した。
著者
福森 崇貴 小川 俊樹
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.12-20, 2009-06-01 (Released:2009-07-24)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

本研究は,a)不快情動との直面を促進する要因とはどのようなものか,b)それらの要因は不快情動の回避にどのような影響を及ぼすか,の2点について検討することを目的として行われた。自由記述式調査およびそこから得られた項目群の因子分析結果から,不快情動との直面を促進する要因は,“支えてくれる他者”,“気分調整の自信”,“環境的ゆとり”,“つらい過去経験”,“成長への意志”の5つから捉えられることが示唆された。また,構造方程式モデリングを用いたパス解析の結果,直接・間接的に不快情動回避に影響を及ぼしていたのは,“気分調整の自信”,“支えてくれる他者”,“環境的ゆとり”の3要因であった。よって,不快情動との直面を考える上では,特にこれらの要因が重要となることが示された。
著者
木浪 冨美子 小川 徳子
出版者
関西福祉大学社会福祉学部研究会
雑誌
関西福祉大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:1883566X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.65-70, 2012-03

近年,精神保健福祉士が果たすべき役割の中でも,地域生活の維持・継続,生活の質を高めることに,重点が置かれるようになってきている.精神保健福祉士を養成するカリキュラムにも,それが反映されなければならないだろう.本研究は,それを満たすカリキュラム構築に向けた,1つの試みである.木浪・小川(2009,2011)によって報告された参加型学習実践の効果を踏まえ,今回は,ボランティアスタッフとしての活動経験の効果を検討した.その結果,「精神障害者との社会的・心理的距離」の感じ方にも,「精神疾患・精神障害者へのイメージ」にも,精神障害者が抱える「生活のしづらさ」への理解にも,参加型学習実践ほどの変化は認められなかった.その理由として,活動を導入するタイミングの問題と,活動に参加する時の学生の意識の問題が考えられる.
著者
辛 英範 小川 紹文 片山 平
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.56-62, 1978-03-01

近年,耐病虫性など野生種のもつ有用な遺伝子を栽培植物に導入することを目的とした新しい育種技術の確立が試みられ,すでに実用品種の育成に成功した例もある。野生イネのもつ有用遺伝子を栽培イネに導入する試みは,これからのイネ育種を進める1方法として,充分考慮されるべき問題の1つである。本報告は異種染色体添加型植物を作出するための基礎として,まず栽培イネの人為同質4倍体を育成し,これに近縁野生2倍程を交雑して,えられた異質3倍体sativa(AA)-puncta(B),sativa(AA)-intermediate(C)およびsativa(AA)-officinalis(C)について行った細胞遺伝学的・形態学的研究の結果をまとめたものである。体細胞で2n=36の染色体が数えられ,いずれの個体も明らかに人質3倍体であることを確認した。減数分裂は,PF_126を除いて,各個体間で大体類似しており,MIでは大部分の細胞で12II+12Iを示す分裂像が,また,AIでは1価染色体による分裂異常が観察された。一方,PF_126はMIで1II+34Iまたは36Iを示し,明らかに相同染色体間の不対合現象が観察され,以後の分裂に種々の異常が認められた。この染色体不対合がasynapsisであるかdesynapsisであるかは不明であるが,供試した同質4倍体の細胞質とO.officinalis(W1281)の核との何れか一方,または両者に不対合を誘起する遺伝的要因がある可能性が考えられ,その解明は今後の検討に期待したい。
著者
小川 美由紀
出版者
首都大学東京都市環境科学研究科都市システム科学域「都市科学研究」編集委員会
雑誌
都市科学研究 (ISSN:18830218)
巻号頁・発行日
no.3, pp.5-14, 2010-03-30 (Released:2016-08-04)

1980年代以降の資本主義システムの再編成は先進国の産業構造を変動させた。その結果、工業をエンジンとして 20世紀前半まで成長発展を続けた先進国の都市は、ポスト工業時代における生き残りをかけ、産業構造転換の中で都市の活性化に取り組むこととなった。こうした転換は人的資本の意味を工場労働者から知的生産に携わる人々を意味することへと転換させた。そしてこの新しい人的資本の集積が都市の活力の鍵を握るようになった。以上を踏まえ、本稿では次の二つの仮説を設定した。(1)産業構造転換の中で情報主義( Informational mode of development)という新しい発展様式(Mode of development)を取り入れた都市(自治体)が、都市の活性化のために、その発展様式に即した人的資本の集積を目標とするようになる。(2)その目標を達成するため、新しい人的資本が好む利便性や快適性が問われるようになり、その結果として都市空間には人的資本を惹きつける都市アメニティが必要とされるようになる。これらの仮説について、横浜市をケースとして検証を行った。横浜市は京浜工業地帯を抱える工業都市であるが、近年、文化・芸術を梃子とする都市再生ビジョンによって都市の活性化を図っている。検証の結果は、仮説に適合する現象が認められることとなった。 Reorganization of the city space has been prosperous in the advanced country of recent years. The reason is that the necessity for the managment of urban renewal for their survival happened in those cities which make industry as an engine and continued the growth development until the 20th first half of the century. In this post-industrial age, the meaning of the human capital is converted from the industrial laborer to the knowledge worker, and. the accumulation of this new human capital becomes the key to the growth of the city. In this paper, I set up two hypotheses. It is as follows; 1 In the Industrial transformation of economic structure, the city comes to aim at the accumulation of the new human capital for the new development style. 2 It is necessary to give them convenience and comfort to achieve this target. The amenity is attached to importance for its achievement. Consequently, the urban amenity comes to have the huge influence in the accumulation the human capital on the city renewal. Yokohama City that has an eminent industrial zone in Japan is submitting urban regeneration vision “Creative City Yokohama” in 2004. Therefore, the case study in this paper is targeted to this city for testing these hypotheses. As a result of the verification, these are proven positively.
著者
中嶋 智 新谷 幹夫 白石 路雄 桂川 秀嗣 小川 ゆう子 川島 基展 近藤 邦雄
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.36, no.16, pp.27-30, 2012-03-09

二十四式太極拳は激しい動きを伴わない拳法であり、健康運動として世界中で練習されている。太極拳の演武は複雑な動作から構成されており、初心者の多くはビデオ教材を用いて学習する。しかし、市販のビデオ教材はカメラアングルの制限により、シーンによっては師範の動きが見にくい。本研究では、ユーザーが見たいと思った師範の部位を見ることができるように、カメラアングルの変更や鏡の設置が可能なCG教材を作成した。また、被験者にCG教材と市販の教材を使って学習してもらい、ユーザーによる評価を行ったところ、カメラの回転と鏡の設置が見やすさの向上につながるという有意な結果が得られた。
著者
本田 勝久 小川 一美 河本 圭司
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 第5部門 教科教育 (ISSN:03893480)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.13-30[含 英語文要旨], 2008-09

小学校での外国語活動の必修化を目前に控えている現在,英語活動に関する多くの研究が行われているが,主たる授業者である学級担任の英語学習に対する考え方(ビリーフ)を調査したものは見られない。そこで,本研究は,まず(1)大阪府下における英語活動の実態を明らかにし,(2)小学校教員の英語学習に対するビリーフを明らかにし,(3)その結果から英語活動への提言を試みた。その結果,小学校教員の英語学習に対するビリーフが外国語活動の必修化に影響を与えていることが検証された。同時に,小学校外国語活動に関する「教員への啓蒙活動の必要性」が浮き彫りになった。English Activities has been implemented in many public elementary schools in Japan. According to the Ministry of Education, Culture, Sports and Technology (MEXT, 2007), 95.8% of the public elementary schools in Japan have implemented English Activities in some ways. There is much research on English Activities such as curriculum, materials, teachers' training programs. More than 90% of homeroom teachers (HRTs) are in charge of English Activities in higher grades as a main instructor (MEXT, 2007). In addition to this, MEXT (2007) stated that Foreign Language Activities is to be a compulsory instruction in the near future and said that the language in the Activities is English with some exception. Moreover, it is said that the best way to implement English Activities is team-teaching included HRTs. From these situations, it is clear that the role of HRTs in English Activities become more important. There are many piece of research on issues about implementing English Activities but little research on what elementary school teachers think toward English. Considering these situations, it is necessary to investigate what elementary school teachers think toward English. Therefore, this paper will find this out from the perspective of beliefs. This paper conducted the research that tried to investigate university students and elementary school teacher beliefs toward English by using questionnaires called BALLI (the Beliefs about Language Learning Inventory). The findings are various; 1) there are many differences between the beliefs of English majors or sub-majors students and those of elementary school majors students; 2) HRTs' role in English Activities will become more and more important; and 3) there are some differences among teachers' opinions about introducing English Activities as a compulsory instruction, and the results of this thesis imply that teacher beliefs have an influence on their opinions. The students who belong to English major or sub-major regard English as a really difficult language, but they think learning English is averagely easy. On the contrary, the students who belong to elementary school education major regard English as an average difficult language, but they think learning English is difficult. In other words, the students who belong to elementary school education major have higher affective filter toward English or learning English. English Activities will become a compulsory instruction sometimes soon, and elementary school teachers will insist on many issues concerning the current situation of English Activities such as the instructors, curriculum, and materials. Of course, these issues are important in order to implement English Activities effectively; however, as this paper found that teachers' beliefs, especially about speaking English, might influence their opinions toward English Activities. For that matter, increasing teachers' confidence in speaking English might liberate from their anxiety about implementing English Activities, which might reduce their resistances toward English Activities.
著者
高田 久美代 妹尾 正登 東久保 靖 高辻 英之 高山 晴義 小川 博美
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.598-606, 2004-07-15
被引用文献数
5 5

マガキ, ホタテガイおよびムラサキイガイにおける麻痺性貝毒の蓄積と減毒過程の差異を明らかにするため, 原因プランクトン<i>Alexandrium tamarense</i> の消長とこれら貝類の毒力と毒組成の推移を調べた。毒力の推移は貝種によって大きく異なり, マガキは<i>A. tamarense</i> が消滅すると1~2週間後に毒力が不検出となり, ホタテガイやムラサキイガイに比べて毒の低下が早く, 蓄積する毒力も最も低かった。毒組成の推移も貝種によって異なった。貝種による毒化と減毒の差異には毒組成の違いが関与していると考えられた。
著者
加藤正恭 小川秀人
雑誌
第73回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.1, pp.249-251, 2011-03-02

大規模組込みソフトウェア開発では,機能追加や変更による影響範囲特定が課題である。従来の影響分析では,まず変更点ごとに影響が波及しそうな機能に目安をつけて絞込み,そのあとで実際にどんな影響があるかを人手で分析していた。しかし,大規模なソフトウェアの場合は人手による影響分析では工数がかかる。本研究では,ソースコードから変数と関数の依存関係に関する情報を自動的に抽出し表形式(CRUDマトリクス)で可視化する手法を開発した。CRUDマトリクスを用いてレビューを行なうことにより,影響分析工数を削減することができるようになった。

2 0 0 0 OA 兎の問答

著者
小川為治 著
出版者
[ ]
巻号頁・発行日
1873
著者
林谷 秀樹 近江 佳郎 小川 益男 福富 和夫
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.905-908, 1989-10-15

1981年6月から1982年5月までの1年間に関東地方で死亡し, 動物霊園に埋葬された猫3936頭の死亡データを用いて, Chiangの生命表作成法に従って, 猫の生命表を作成した. これは家庭飼育猫について作成された最初の生命表と思われる. 生命表から算出された猫の平均余命は, 0歳で4.2歳, 1歳で5.0歳, 4歳で5.4歳, 5歳で5.3歳, 10歳で3.5歳, 15歳で2.2歳で, 最高死亡年齢は22歳であった. 猫の死亡確率は犬に比べ, 0歳から5歳にわたる幅広い年齢で著しく高かったが, 6歳以上においてはほぼ等しく, 犬と同様にGomperzの法則に従うように思われた. このように調査時点では猫の死亡確率の基本パターンは犬のものと著しく異なっていたが, 今後0〜5歳の低年齢における死亡確率が減少した場合には, 両者のパターンは近似すると思われた. 1歳の平均余命(e_1)は, 品種間(雑種, 純血種に大別)では差が見られなかったが, 地域間ではA地域(人口密度1万人以上)はB地域(1万人未満)に比べ有意に長かった. このことから, 犬の場合と同様, B地域ではA地域に比べ猫の平均余命を短くするような要因がより強く作用していることがうかがわれた.
著者
[ウネ]村 泰樹 野尻 卓也 小川 匡市 三澤 健之 池内 健二 山崎 洋次
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.142-145, 2001-02-01
被引用文献数
9

症例は71歳の女性.22年間の血液透析歴がある.以前より左側腹部を中心とした腹痛が時にあり, 大腸憩室および虚血性腸炎と診断されていた.1997年に大腸鏡下生検を施行し消化管アミロイドーシスと診断された.本年1月, 下腹部痛のため緊急入院翌日に下腹消化管穿孔と診断し緊急手術を施行した.直腸Ra後壁に径約1cmの穿孔があり, 同部には径約3cmの硬便が存在していた.穿孔部を含む大腸部切除および人工肛門造説術を施行した.粘膜下の小血管壁などにびまん性に β_2-microglobulin 染色陽性のアミロイドの沈着を認めた.穿孔機序としては憩室炎, 硬便による機械的圧迫の他に, アミロイドによる腸壁虚血の関与が示唆された.長期透析患者では, 透析アミロイドーシスを消化管穿孔の危険因子として認識する必要がある.
著者
長瀬 文昭 田中 靖郎 堂谷 忠靖 石田 学 紀伊 恒男 伊藤 真之 松岡 勝 柴崎 徳明 大橋 隆哉 国枝 秀世 田原 譲 北本 俊二 三原 建弘 田中 靖郎 CANIZARES C. RICKER G. 鶴 剛 粟木 久光 河合 誠之 吉田 篤正 SERLEMITSOS アール 林田 清 BREON S. 海老沢 研 VOLZ S.V. KELLEY R. HELFAND D. MCCAMMON D. 常深 博 牧島 一夫 満田 和久 村上 敏明 小山 勝二 山下 広順 小川原 嘉明 宮本 重徳 MUSHOTZKY R. 槇野 文命 HOLT S. 井上 一 SERLEMITSOS R. 川口 淳一郎 中川 道夫 藤本 光昭 長瀬 文昭 松尾 弘毅 上杉 邦憲 WANG B. FEIGELSON E. GRAFFAGNINO V. REYNOLDS C. 羽部 朝男 GEHRELS N. FABBIANO G. SERLEMITSOS RICKER G 山内 茂雄 池辺 靖
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

「あすか」(Astro-D)は、1993年2月に打ち上げれられ、わが国4番目のX線天文衛星となった。この衛星は0.5-10keVの広いエネルギー帯をカバーし、史上最高の感度でX線天体の撮影を行うと共に、世界で初めてX線CCDによる精密X線分光を行う高性能X線天文台である。「あすか」の性能はX線天文学を飛躍的に進めるものと国際的に注目されている、X線天体は極めて多岐に亘り、殆どあらゆる種類の天体がX線天文学の対象となっている。特に銀河系では中性子星やブラックホールのX線連星、超新星残骸等、銀河外では、銀河団、クェーサー等の活動銀河中心核、更に遠方からのX線背景放射が重要課題である。この衛星に搭載されている観測装置は日米共同で製作された。打ち上げ前には、装置の設計・製作・試験・較正・調整を、打ち上げ直後には装置の較正・調整を共同で行ってきた。さらに、定常観測に入ってからは、装置の性能の正確な把握や正しいデータ解析のツールの提供等でも共同で作業を行うとともに、その成果を最大限に挙げるために、観測計画の打ち合わせ、ソフトウエア開発、観測結果の処理、解析等の各過程で両国の研究者が協力して作業を行ってきた。これらの作業のための日米研究者の移動は、主に、本科学研究費によって行われた。これら日米協力に基づく「あすか」がもたらしたいくつかの成果を以下にまとめる。・「あすか」が打ち上がって40日もたたないうちに近傍銀河M81に発生したSN1993Jからは、ドイツのX線天文衛星ROSATとほぼ同時にX線を検出した。発生して1週間ほどの超新星からX線を検出したのは今回がはじめてである。・超新星の爆発で飛び散った物質が星間物質と衝突して光っている超新星残骸について、「あすか」のすぐれた分光特性による新しい学問的展開がひらかれている。・ガンマ線バーストと呼ばれる特異な現象の発生源をはじめて既知の天体との同定に成功し、この現象の原因の解明に大きな貢献をした。・われわれの銀河系の中心部や円盤部を満たす高温ガスからのX線の分光的研究が進み、従来の予想では理解し難い事実があきらかになりつつある。・楕円銀河、銀河群、銀河団といった宇宙の大きな構造物をとりまく高温ガスの分光学的研究が進み、これらのガス中の重元素量が一貫して少ないという、新しい考え方の導入を迫る事実があきらかになってきた。また、これらの構造物を構成する暗黒物質の分布や量についても新しい知見が得られつつある。・遠方の銀河団をつかった宇宙の大きさを決める研究も、「あすか」の広い波長範囲の分光を行える能力をつかって、着々と成果をあげつつある。・活動銀河の中心にある大質量ブラックホールのごく近傍からのものとおもわれる鉄の輝線構造をはじめて発見し、ブラックホール近傍での物質流につき貴重な情報をもたらしている。この中心核を取り巻く比較的遠方の物質や分布の物理状態についても「あすか」のすぐれた分光性能により新しい事実が次々と明らかになってきている。・宇宙X線背景放射の研究も、「あすか」の波長範囲の広さを利用して、宇宙のはて近い遠方の宇宙初期の原始天体を探る研究がはじまりつつある。以上のように、本科学研究費補助金の援助のもと、「あすか」を用いた日米の研究者による共同研究は大きな成果をあげている。
著者
小川 夏樹 大山 恵弘
雑誌
研究報告 システムソフトウェアと オペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.5, pp.1-7, 2011-07-20

情報機器の画面は広告表示先として極めて魅力的である.これまで,広告表示のための様々な方法が既に提案されてきたが,これらは表示場所が制限されていたり,特定の OS やアプリケーションに強く依存しているなどの問題がある.そこで,本研究では,OS やアプリケーションにほとんど依存せず,画面上の任意の場所に任意の広告画像を表示するハイパバイザ ADvisor を提案する.ADvisor は,ゲスト OS および仮想マシンの状態がある条件を満たしたタイミングで,画面上に画像や文字を表示する.例えば,ゲスト OS と I/O デバイスの間で転送されるデータブロックに特定のキーワードが含まれているときに,そのキーワードに連動した広告を表示する.我々は,ADvisor を実装し,それが実行時間に与えるオーバヘッドを,ベンチマークを用いた実験により測定した.Screens of information devices are an extremely attractive platform for displaying advertisements. Although numerous methods for displaying advertisement have been proposed so far, they have problems such as a limited space for displaying and strong dependency on a particular OS or application. In this paper, we propose ADvisor, a hypervisor for displaying arbitrary advertising pictures at arbitrary places on the desktop screen of a guest OS. ADvisor displays pictures and character strings on a screen when a certain condition on a guest OS or a virtual machine is satisfied. For example, when a data block transferred between the guest OS and I/O devices contains a certain keyword, ADvisor displays an advertisement related to the keyword. We implemented ADvisor and measured its runtime overheads through experiments using a benchmark.