著者
井関 文一 バイガルマ ツァガーン 小畑 秀文 大松 広伸 柿沼 龍太郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.82, no.9, pp.1533-1535, 1999-09-25
被引用文献数
20

本研究では,胸部CT画像から肺野内の血管の3次元木構造を抽出する方法を示す.先に我々が提案した再帰的領域探索法を用いた方法では,必ず探索開始領域を探索に先立って決定する必要がある.今回我々は,肺野内の血管を抽出する際に,心臓から肺野内への血管の侵入部分である肺門部の位置を気管支形状との関係から推測し,肺門部における血管の断面領域を探索開始領域とするアルゴリズムを開発した.更に,このアルゴリズムにより,気管支と同様に血管の自動抽出が可能であることを示す.
著者
小畑 文也
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

知的障害児のヘルスリテラシーを、主に症状の表出と周囲の理解の点から検討した。症状としては、「頭痛」「腹痛」「疲労」「めまい」「出血」「吐き気」が選ばれ、健常幼児(3-5歳)と比較しながら面接調査と質問紙調査を実施した。その結果、対象となった知的障害児の症状表出は、健常幼児3歳とほぼ同様であり、痛みを除き、自発的な表出が見られないこと、特に言語的な表出が困難なこと、母親の理解(気づき)にはばらつきが大きいことが明らかとなった。また。母親の子どもの体調への注意は、健常児の場合、加齢とともに減少しているが、知的障害児の場合、加齢とともに増加していることも明らかとなった。
著者
小倉 協三 小畑 充生 古山 種俊
出版者
東北大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1993

中等度好熱性細菌B.stearothermophilusのファルネシルニリン酸(FPP)合成酵素については 1.部位特異的変異の導入 2.耐熱性変異型FPP合成酵素の大腸菌内での大量産生 3.熱処理と2段階のクロマトグラフィーによる精製の系を確立した。この系を用いてプレニルトランスフェラーゼに特徴的な7つの保存領域ミ内のアノ酸について変異型酵素を作成し、それらの触媒機能の変化を精査し、新規なC-C結合形成反応の触媒機能獲得の有無を調べた。領域VIIに保存されているArg-295をValに置換した変異型酵素R295Vの酵素活性はほとんど変化しなかったが、非アリル性基質イソペンテニルニリン酸(IPP)に対するKm値が野生型のFPP合成酵素のそれの約1.5倍に増大した。同様の変化がC末端のHisをLeuに換えたH297Lでも認められた。この変化はプライマー基質をジメチルアリルニリン酸(DMAPP)にした場合さらに顕著になり、変異体のKm値は約3倍となった。さらにCys-289をPheに換えたC289Fでは10倍になった。領域VIに保存さているモチーフDDXXDのAspの変異体、D224A、D224E、D-2251、D228Aはいずれも触媒活性が激減したが、反応速度論的解析では、基質に対するKm値はIPP、GPPのいずれに対しても大きな変化はなかった。D288Aのみが例外で、IPPに対するKm値が野生型の10倍にもなった。領域VIの下流に保存されているLys-238の変異体酵素K238AおよびK238Rはいずれも触媒活性には大きな変化はなかったが、IPPに対するKm値がそれぞれ4.2倍5.1倍になった。これらの変異体酵素はいずれもIPPに対するKm値が増大しているのでホモアリル性の基質に対する特異性が特に変化している可能性がある。これらの変異体酵素の人工基質ホモログに対する基質特異性の精査は今後の課題である。
著者
小畑 恒夫
出版者
昭和音楽大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:09138390)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.13-27, 2012-03-15
著者
足立 恭将 行本 誠史 出牛 真 小畑 淳 中野 英之 田中 泰宙 保坂 征宏 坂見 智法 吉村 裕正 平原 幹俊 新藤 永樹 辻野 博之 水田 亮 藪 将吉 神代 剛 尾瀬 智昭 鬼頭 昭雄
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.1-19, 2013 (Released:2013-12-27)
参考文献数
57
被引用文献数
6 67

気象研究所(MRI)の新しい地球システムモデルMRI-ESM1を用いて、1850年から2100年までの大気化学、及び炭素循環を含む統合的な気候シミュレーションを行った。MRI-ESM1は、大気海洋結合モデルMRI-CGCM3の拡張版として開発されたモデルであり、拡張部分の化学的・生物地球化学的過程以外の力学的・熱力学的過程は、両モデルで同設定とした。計算負荷の大きい化学過程を扱う大気化学モデルを低解像度(280km)に設定して、MRI-ESM1の大気モデル部分はMRI-CGCM3と同じ120kmとした。基準実験において、地上気温、放射収支、及び微量気体(二酸化炭素(CO2)とオゾン)濃度の気候ドリフトは十分に小さいことを確認した。MRI-CGCM3による基準実験と比較して、全球平均地上気温が若干高いが、これは対流圏のオゾン濃度がやや高いためであった。次に、歴史実験を行いモデル性能を検証した。このモデルは地上気温と微量気体濃度の観測された歴史的変化を概ね再現出来ていた。ただし、地上気温の昇温とCO2濃度の増加はともに過少評価であり、これらの過少評価は土壌呼吸を通した正のフィードバックが関係していた。大気CO2濃度増加が過少に評価されたことにより昇温量が抑えられ、昇温過少が土壌呼吸を不活発にして陸域での正味のCO2吸収が過剰となり大気CO2濃度増加の過少を招いた。モデルで再現された地上気温、放射フラックス、降水量、及び微量気体濃度の現在気候場は、観測値とよく合っていた。ただし、特に南半球熱帯域では、放射、降水量、及びオゾン濃度に観測値との差異が存在していた。これらは過剰な対流活動によるものと判断され、太平洋低緯度域では所謂ダブルITCZ状態となっていた。MRI-ESM1とMRI-CGCM3を比べると、両者の現在気候場は非常によく似ており、現在気候再現性能は同程度であった。MRI-ESM1によるRCP8.5の将来予測実験では、全球平均地上気温は産業革命前から21世紀末までに3.4℃上昇した。一方、MRI-CGCM3による同昇温予測は4.0℃であった。排出シナリオRCP8.5を用いてMRI-ESM1により予測された21世紀末の大気CO2濃度は800ppmであり、MRI-CGCM3による実験で使用したCO2濃度より130ppmほど低い。これは上述の昇温差と整合的である。全球平均のオゾン全量は2000年から2100年までに約25DU程の増加が予測され、MRI-CGCM3による実験で与えたオゾン変化と同程度であった。最後に、ESMとCGCMとの比較から、オゾンモデルとエーロゾルモデルを結合したことによって20世紀後半のエーロゾル量の変化に差が生じ、この差が両モデルの昇温量の違いに影響していることを確認した。
著者
萩原 義裕 水澤 信忠 ファン・ティ・ホン・ザン 清水 昭伸 小畑 秀文 縄野 繁 武尾 英哉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MI, 医用画像 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.425, pp.1-6, 2002-11-01
被引用文献数
4

本研究の目的は,マンモグラム上のコントラストが極めて淡い乳がん微小石灰化像の高精度な抽出方法を提案することである.提案方法は,ウェーブレット空間から求められる特徴量を用いてマハラノビスの距離比に基づいた分類器を用いたものである.特徴量は40種類の中からROCカーブの下面積Azを最大にするように選択される.本システムは,モルフォロジカルフィルタを基にした方法により抽出した候補領域を利用するため,背景組織の誤抽出を防ぎつつ,淡い微小石灰化像の高精度な抽出が実現される.提案システムを用いた実験の結果では,従来システムと比べ,微小石灰化像の抽出率を落とすことなしに,誤検出率を大幅に削減できた.これにより,提案システムの有効性が確認された.
著者
磯部 義明 大久保 なつみ 山本 眞司 鳥脇 純一郎 小畑 秀文
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.279-287, 1993-02-25
被引用文献数
50

癌領域を同心円形孤立性陰影と仮定し,これを選択的に抽出するQuoit(輪投げ)フィルタを新たに開発した.このフィルタはいわゆるMorphologyフィルタの一変形であるが,(1)入力画像として同心円形でかつ中心から周辺に向かって単調減少するモデルを仮定した場合,フィルタ出力が解析的に表現できる特徴をもっている(結果が予測できる),(2)このフィルタを2回連続して適用すると,上記モデル画像を選択的に復元する能力を有する,などの興味ある事実を明らかにした.次いでこのフィルタを乳癌X線陰影抽出に応用し,12症例全例の乳癌部分を正しく抽出することを実証した.
著者
小畑 香樹
巻号頁・発行日
2013

Thesis (Ph. D.)--University of Tsukuba, (A), no. 6490, 2013.3.25
著者
小畑 登紀夫 藤井 勝利 舩城 衛介 堤内 清志 大岡 朗 水津 真 金築 祐
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.33-37, 1999-02-20

ピラゾール環を骨格とする新しい系統の化合物を合成し, その殺ダニ活性と魚毒性を調べた.N-フェノキシエチルピラゾール-5-カルボキサミド誘導体(III)に, ナミハダニに対する高い活性が認められた.しかしながら, メダカに対する毒性も高いレベルにあった.そこでN-フェノキシエチルピラゾール-5-カルボキサミド誘導体(III)を基にして, ハダニと魚間の活性選択性を得るために, N-アシル-N-フェノキシエチルピラゾール-5-カルボキサミド誘導体(IV)へと導いた.生物試験の結果, N-アシル化誘導体(IV)のいくつかの化合物に, 高い殺ダニ活性を維持しながら, 魚毒性の低い化合物を見出した.この選択活性は, N-アシル化誘導体(IV)のなかでピラゾール環の4位が無置換で, 3位にtert-ブチル基が導入された時, 最も大きかった.
著者
柳田 友尚 清水 昭伸 小畑 秀文 縄野 繁
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MI, 医用画像 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.579, pp.101-106, 2005-01-14
被引用文献数
6

本論文では, 人体の3次元アトラスを用いて, 腹部CT像から複数臓器を同時に抽出するアルゴリズムを提案する.この手法では, あらかじめ用意されたアトラスを浮動画像とし, 入力の3次元画像を参照画像として位置あわせを行ない, 位置合わせ後の参照画像の各画素にアトラスの臓器ラベルを割当てることで臓器を抽出する.ただし, アトラスと未知画像の臓器の間では, 個人差によって位置や形が大きく異なるため, それらにも対応出来るように工夫した.本論文では, 提案手法を実際の画像に適用した結果を評価し, 有効性について考察する.
著者
小畑 寿 東 政則 岩見 豪士
出版者
宮崎県畜産試験場
雑誌
宮崎県畜産試験場試験研究報告 (ISSN:09187278)
巻号頁・発行日
no.19, pp.31-35, 2006-12

国及び県で育成されたイタリアンライグラス及びエンバクについて、冠さび病の耐病性を検定した。イタリアンライグラスでは、「山系32号」を中、「友系28号」を強、「友系29号」を中と判定した。エンバクでは、「九州13号」「同14号」「同15号」「同16号」を極強と判定した。
著者
小畑 修二 富田 英雄
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌. A, 基礎・材料・共通部門誌 = The transactions of the Institute of Electrical Engineers of Japan. A, A publication of Fundamentals and Materials Society (ISSN:03854205)
巻号頁・発行日
vol.123, no.10, pp.1002-1009, 2003-10-01
参考文献数
21
被引用文献数
4 9

Metal foil eddy currents induced with flat (stacked spiral) induction coils are calculated numerically using an almost exact approach. Edge bake phenomena of metal foils are investigated to develop a new all-over heat adhesion method. As our aim, this approach is constructed with basic formulas for theoretically analyzing the induction heating phenomena. Fundamental equations in electromagnetic theory are used and a calculation method of self-inductance is developed using the Neumann's formula. These results can be applied to certification of various computer simulations by software on the market concerned with the eddy current.
著者
丸山 豊 小畑 文也
出版者
筑波大学心身障害学系
雑誌
心身障害学研究 (ISSN:02851318)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.173-181, 2003-03
被引用文献数
2

飲酒運転常習者としてのアルコール依存症患者の運転意識を検討するために、アルコール依存症患者110名を対象に、過去の飲酒運転に関する調査を実施した。調査内容は、年齢、断酒歴、運転頻度、飲酒運転の経験、事故・検挙の回数、主観的運転態度、罪悪感、危険意識等であった。この結果、対象者の殆どが飲酒運転の経験者であり、うち6割が何らかの事故を起こしていることが明らかとなった。また、半数近くの者は飲酒運転に危険意識や罪悪感を感じていなかった。飲酒運転の抑止につながると思われる、この罪悪感や危険意識と個人的要因との関係を調べるために、数量化2類による分析を行った結果、罪悪感は事故の頻度が影響を及ぼしていることが分かったが、高頻度に事故を起こしている者は罪悪感を感じてはいなかった。危険意識に関しては運転歴が強く関係しており、運転歴が長いものほど、飲酒運転に危険意識を持っていた。また事故頻度は、危険意識にも比較的強く影響を与えており、飲酒運転常習者が事故を起こしたときの対応が重要であることが明らかとなった。現在、わが国では飲酒運転常習者に対しては法的な措置がとられているのみであるが、本人の治療と、飲酒運転事故の抑止のためにも医療的監察の必要性が示唆された。
著者
大貫 真樹子 谷口 伸二 小畑 秀弘
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.586-588, 2005-02-28
被引用文献数
8 9

景勝天橋立近くの森林内で採取した表土シードバンクを植生基材の中に体積比10%混入して吹付けた切土のり面の施工後2年3カ月には, ヌルデ, カラスザンショウを主とする多様な種による低木類が成立した。その林床にはアカマツ, ウリカエデ, リョウブなど風散布型の木本種と鳥散布によって侵入したと思われるヒサカキ, ソヨゴが生育していることが確認された。これらの種類は, のり面上部の森林の植生相を形成する種の一部であり, こののり面は早期に周囲と近似した植生へ遷移することが示唆された。
著者
小畑 秀文 増谷 佳孝 佐藤 嘉伸 藤田 廣志 仁木 登 森 健策 清水 昭伸 木戸 尚治 橋爪 誠 目加田 慶人 井宮 淳 鈴木 直樹 縄野 繁 上野 淳二
出版者
東京農工大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009-07-23

本申請課題においては、5年間にわたる研究成果のとりまとめと、研究成果を社会・国民に発信することの2つが目的であった。第一の目的である研究成果のとりまとめにおいては、計算解剖学の目的、研究組織、計画班および公募班それぞれの研究成果(著書・論文のリスト、特許を含む)と共に、計算解剖学という新たな領域としての状況、計算解剖学主催による学術研究集会およびアウトリーチ活動、諮問委員による研究評価、などを含め、研究成果報告書として取りまとめて印刷・製本した。また、同報告書の内容に研究成果をより理解しやすいように一部の動画をも含めてCDも作成した。これらは関係研究機関に配布した。第二の目的である研究成果の社会・国民への発信に関しては、2つの取り組みを行った。一つは、「3Dプリンタで臓器モデルを作ろう!」と題した中学・高校生向け講座である。これは日本学術振興会主催の「ひらめき☆ときめきサイエンスプログラム」の一つとして2014年8月21、22日の2日間にわたって名古屋大学にて開催したもので、CT画像から臓器を抽出し、それを3Dプリンタで打ち出すまでを体験させた。次代を担う世代に計算解剖学の成果の一端を分かりやすく紹介したものである。二つ目は東京農工大学にて開催した「計算解剖学」最終成果報告シンポジウムである。計算解剖学プロジェクトで新たに開発された基礎から応用(診断・手術支援)までの研究成果を関連分野で活躍する研究者・技術者に対して広く紹介した。また、専門的・学術的な立場から計算解剖学の現状評価と今後の方向性や課題を議論し、次のステップへの礎とした。
著者
小畑 孝四郎
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.890-902, 2003-08-01
被引用文献数
11

卵巣がんにおける病理組織学的な検討で,卵巣子宮内服症の合併頻度が卵巣明細胞腺癌や卵巣類内膜腺癌で高率であることから,卵巣子宮内膜症がこれらの癌の発生母地となっている可能性が注目されている.そこで,卵巣子宮内膜症と卵巣癌との関連性を明らかにし,さらに,卵巣子宮内膜症に対する腹腔鏡下手術の適応を含めた卵巣子宮内膜症の治療戦略について検討した.まず,卵巣子宮内膜症の診断基準を新たに設定し,病理組織学的に検討した結果,卵巣癌における卵巣子宮内膜症の合併ならびに卵巣子宮内膜症から癌への移行像が類内股腺癌や明細胞腺癌に多く,卵巣子宮内膜症はこれらの癌の発生母地となりうることが示唆された.次に,卵巣癌および卵巣子宮内膜症におけるPTEN遺伝子の遺伝子解析ならびにPTEN proteinの免疫組織学的検討から,卵巣子宮内膜症が発生母地であると考えられる卵巣類内膜腺癌や卵巣明細胞腺癌のうち,類内股腺癌の発生にPTEN遺伝子の異常が深く関わっていることが示唆された.また,類内膜腺癌および明細胞腺癌に合併する卵巣子宮内膜症の性格の違いとその発生の由来を調べる目的で,エストロゲンレセプター,プロゲステロンレセプタ-,Ber-EP4,Calretininを免疫染色し,その発現状態を検討した.その結果,卵巣類内膜腺癌や卵巣明細胞腺癌に合併する子宮内膜症は共に卵巣表層上皮由来で,中皮の性格を強く持つ卵巣子宮内股症から明細胞腺癌が,また,ミューラー管型上皮に分化した卵巣子宮内股症から類内股腺癌が発生している可能性が示唆された.さらに,臨床データーの解析から,これら卵巣癌の発生母地となりうる卵巣チョコレート嚢胞の摘出を考慮する基準は,40歳以上または嚢胞の長径が4cm以上の症例であり,卵巣チョコレート嚢胞に対する腹腔鏡下手術はCT,MRIで充実部分が認められず,かつ,多量の腹水がない長径10cm以下の症例に行われるのが望ましく,超音波カラートップラー法にて嚢胞内に血流が認められる症例は卵巣癌に準じた対応が必要であることがわかった.
著者
海道 昌宣 小出 紀 小畑 秀登 加治木 章 宮崎 信義
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.361-367, 1990-09-01

77才の男性, 8日間の極めて急性の経過(呼吸器症状出現後4出で死亡した急性間質性肺炎Acute Interstitial IPneumonia(AIP)を経験し, 肺胞隔壁の肥厚および気腔内変化を中心にその組織発生および線維化の分布, 程度について検討した. 肺胞隔壁の肥厚は, septal cellの増殖, 浮腫の他, 特に硝子膜の取り込みが強く関与していた. また, 肺胞から肺胞道内を中心に線維性肉芽組織の形成が見られ, 一部, 呼吸細気管支内にも及んでいた. 線維化は, その程度および状態がどの肺野でも比較的そろっており, さらに肺胞内にMasson体の形成も見られたことから, 短期間の彌慢性高度肺傷害への反応であることがうかがわれる. 本例は, 既往として1年半前にBronchiolitis Obliterans Organizing Pneumonia(BOOP)を発症したが, X線上完全に回復したという経過を持っている. AIPとBOOPの関連性およびその病態を考える上で興味深い症例と思われる.(1990年5月14日 受付,1990年6月18日 受理)