著者
山本 利和 対馬 貞夫 中島 実
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. IV, 教育科学 (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.191-197, 1998-08

8名の視覚障害乳幼児とその家族に対して兵庫県南部地震の影響を調べた。研究は地震の6ヶ月後に実施されたインタビューと,地震の2年後に実施された調査からなっていた。視覚障害児とその保護者たちは,激しい地震下での怯えた様子,厳しい避難生活,子どもや親の心理的変化を報告した。しかしながら,長期的ストレス症状は視覚障害児にはあらわれなかった。この原因は両親による視覚障害児への援助の多さにあると考察された。最後に,広域災害のための人間ネットワークを作りの重要さが提案された。This survey was conducted to investigate the influences of the southem Hyogo earthquake for eight blind childreninfants and their families. The interview at 6 months after the earthquake, and questionnaires at 2 years after the earthquake were executed. Blind children and their parents reported the fearful situation under the strong earthquake, severe refuge life, and mental changes of children and parents. However, long-range stress disorders did not appear for the children. It was discussed that the reason was on much amount of support to blind children by their parents. Last, it were proposed an importance of making the human-network prepare for a wide-area disaster.
著者
竹谷 純一 宇野 真由美 山本 貴 中澤 康浩
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、溶液を塗布する簡便かつ低コストの製造プロセスによって、アモルファスシリコンの 5-10 倍もの性能を実現する画期的な次世代エレクトロニクス材料である有機単結晶界面において、その機能の源である界面の微視的電子状態を、精密な電子伝導特性や精密分光測定などの高度な計測手法によって徹底解明することと、その結果によってデバイスの更なる高性能・高機能化を実現することを計画した。その結果、新しい有機半導体材料をした上で、溶液からの結晶化により 16 cm2/Vs もの移動度を実現するとともに、移動度と密接にかかわる電荷のコヒーレンスが、分子揺らぎと相関する効果を見出し、分光法の結果ともコンシステントな統一的理解を得た。また、圧力効果の実験手法を確立し、分子構造の連続的な変化に対応した、二次元電子伝導の異常な圧力効果を検出した。
著者
南 裕子 新道 幸恵 中西 睦子 山本 あい子 片田 範子 井伊 久美子 高橋 章子 中島 紀恵子 中山 洋子
出版者
兵庫県立看護大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本研究の目的は、災害発生後の医療・看護ケア提供に必要な情報を蓄積し、かつ稼動可能な看護支援提供システムを構築することである。そのために研究活動は、1.資料・文献班2.災害拠点病院の現状調査、3.教育班、4.ネットワーク活動班、5.全体活動、で進め、以下の新たな知見を得た。1)災害関係資料・文献の収集・分析の結果、1995年発生した阪神・淡路大震災を境に質的・量的な変化が見られた。1995年以後は、被災者の体験や災害時の医療・看護の実態報告、マニュアル・テキスト、調査報告・研究論文等被災者支援を中心とした出版が増加していた。しかし、看護の視点で報告、考察したものは未だ少なかった。2)災害の種類や発災からの時期別等で検索できる災害看護文献検索システムを構築し、ホームページ上で公開した。3)看護職の需要が高い文献を調査し、「こころのケア」「発災時」各パッケージを作成した。4)災害拠点病院の看護部に対し災害への備えとしての準備状況を調査した。結果、看護部独自のマニュアルを作成している施設は半数に満たず、各施設の看護部間での情報共有が必要と考えられた。5)災害看護教育プログラムの開発に向け、看護教育者・臨床家と情報交換しつつカリキュラムモデルを作成した。6)災害時の看護ニーズを把握するために、災害発生地域の初期調査、初動調査、中・長期フォローアップ調査を実施し、災害時の看護ニーズアセスメントツール(精錬版)を作成した。7)ネットワーク活動メンバー対象の研修会の開催、研究成果の発表と国内外の看護職との情報交換を目的に、情報交換研修会、アジア諸国を中心とした災害看護国際会議を企画主催した。これらの研究成果から、災害看護関係情報の基地整備の必要性、国内外の看護職が災害看護ネットワークを構築することの有用性、災害看護教育の早期実施、普及の重要性が示唆された。
著者
松枝 睦美 岸田 佐智 益守 かづき 山本 あい子 新道 幸恵 嶋岡 暢希 増井 耐子
出版者
高知女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究は、妊婦が体験しているマイナートラブル(以下MTとする)に対する看護援助を開発することを目的として、平成11年度および12年度は文献検討を、また平成12年度から13年を中心に妊婦や助産師へのインタビューを、14年度はオーストリア・ウィーンでのマイナートラブルに関すると助産師へのインタビュー、さらにそれらの結果を基にして、作成した質問紙により、妊婦と助産師にアンケート調査をした。以上より、妊婦は当初考えていたより多くのMTの症状を抱えており、それに対する適切な対応方法も見つけられていなかった。そして、助産師に対して少しでもいいからMTに関する自分たちの訴えに耳を傾けてほしいという希望を持っていた。一方、助産師のMTに対する看護援助活動の問題として、MTを抱えている妊婦との関わりが短いためにその問題を充分に引き出せていないこと、たとえ援助が実施できても継続して関われず、自分のケアを振り返ることができないため、ケアの効果が充分に確認できていないこと、対処法が確立できていないMTが多いこと、症状のアセスメントが適切でない場合は異常を引き起こすことなど、が挙げられた。従って、妊婦に対するMTの看護援助として、傾聴し共感する姿勢をもつこと、妊娠によって生じる生理的現象の説明を行うこと、抱えている症状アセスメントを適切に行うこと、個別性(文化や時代背景も含めた)の違いを理解し尊重すること、妊娠週数による今後起こりうる問題の予測を行うこと、他職種との連携を密にすること、外来でのMTに対応できるためのシステム、例えばMTに関するパンフレットの作成や、仲間同士の交流の場の設定、助産師外来の常設等、を作ることが考えられた。今後は、各々の症状に対する原因の究明、およびそれへの具体的援助活動の開発が求められ、妊婦にとってより快適な妊娠期間となるような援助がさらに必要である。
著者
松田 りえ子 佐々木 久美子 酒井 洋 青柳 由美子 佐伯 政信 長谷川 康行 日高 利夫 石井 敬子 望月 恵美子 山本 敬男 宮部 正樹 田村 征男 堀 伸二郎 池辺 克彦 辻 元宏 小嶋 美穂子 佐伯 清子 松岡 幸恵 西岡 千鶴 藤田 久雄 城間 博正 大城 善昇 豊田 正武
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.18-23, 2001-02-25 (Released:2008-01-11)
参考文献数
7
被引用文献数
8 7

1996年から1998年に, トータルダイエット試料中のアルミニウム濃度を測定しアルミニウムの一日摂取量を推定した. 10か所の機関でトータルダイエット試料の調製及びアルミニウム濃度の測定を行った. アルミニウムの一日摂取量は平均3.5mgであり, 範囲は1.8mgから8.4mgであった. 分析結果の正当性は, 認証標準試料の分析により保証された.
著者
藤村 宜史 片山 信久 武田 麗華 永尾 進 中塩 仁士 藤井 和代 山本 陽介
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.1-8, 2009
参考文献数
25
被引用文献数
1

【目的】本調査の目的は,地域連携パス(以下連携パス)のバリアンスや転帰から目標在院日数の妥当性や運用上の対策を検討することである。【方法】呉市の連携パス参加機関のうち連携パスの運用実績のある8施設において連携パスを適応された大腿骨頚部骨折(以下頚部骨折)16例と大腿骨転子部骨折(以下転子部骨折)19例を対象とした。この8施設に所属する理学療法士の協力を得て,手術日から急性期病院を転院するまでの日数(以下在院日数I),手術日から連携病院を退院するまでの日数(以下在院日数II)の目標設定からの逸脱をバリアンスとして,その有無と原因を調査した。【結果】在院日数Iにおける負のバリアンス発生率は頚部骨折50.0%,転子部骨折36.8%であり,その理由は主に転院マネージメント,インフォームドコンセントなど情報に関する要因であった。在院日数IIにおける負のバリアンス発生率は頚部骨折12.5%,転子部骨折47.4%で,理由は主に歩行能力の獲得遷延,術後疼痛など患者の身体的な要因であった。【考察】急性期病院では,短い在院日数において職種・施設間で円滑な情報伝達を図り,適切なインフォームドコンセントにより患者や家族の理解を得ることが求められ,また連携病院ではバリアンス分析により目標在院日数を見直し,介護保険への連携を構築することが今後の課題と考えられる。
著者
山本 達之 高橋 哲也 山本 直之 神田 啓史 伊村 智 工藤 栄 田邊 優貴子
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

南極上空に南半球の春先に発生するオゾンホールの影響で,地上への紫外線照射量が増加したための生態系への影響を,動物の眼の組織に注目して, FT-IRやラマン散乱スペクトルなどの分光学的手法によって調べた。その結果,牛眼の角膜のコラーゲン分子が,紫外線によって断片化していることが明らかになった。また,牛眼の水晶体のクリスタリンが,紫外線照射によって黄変し,トリプトファン残基だけが特異的に破壊されていることが明らかになった。
著者
足立 明 山本 太郎 大木 昌 加藤 剛 内山田 康
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究の目的は、アジア諸社会において行われてきた公衆衛生に関わる社会開発の客観的・実態的把握に加え、政治的、社会文化的に構成され演出されてきた「清潔さ」「衛生」「健康」の関する語りやイメージを把握し、人々の社会開発をめぐる生活世界を解明することであった。そして、複数の社会での比較研究を通して、「開発現象」の共通性と個別性を明らかにすることを目指した。具体的には、(1)スリランカ、インド、インドネシアにおける公衆衛生プロジェクトの事例研究と、それに付随する様々な「開発現象」の学際的資料の収集、(2)開発言説を軸にした公衆衛生をめぐる新しい開発研究における枠組みの構築の2点であった。その結果、この3年間収集してきた資料は保健衛生に関わる開発プロジェクト、特に村落給水計画事業に関わるものであった。また、それと相前後して、調査のとりまとめに向けた理論的枠組みの再検討(アクター・ネットワーク論、サバルタン研究論)と、このような医療衛生研究の背景となる社会史的な資料の検討も行った。また、オランダに所蔵してあるインドネシアの医療史関係の資料も収集し分析した。ただし、とりまとめの研究成果報告書には、時間の関係で、村落給水事業の分析を十分に行うことは出来なかった。今後、村落給水計画に関する資料の整理を行い、開発言説と公衆衛生との関わりを論じていきたい。
著者
山本 太郎 市川 辰樹 片峰 茂 矢野 公士
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、G型肝炎ウイルスの二重感染が成人T細胞白血病ウイルス(HTLV-1)の母子感染に与える影響と同時に、HTLV-1感染症の自然史を明らかにすることも同時に目指している。G型肝炎ウイルスに対し、RT-PCRでの検出系を確立した。また、日本に存在するHTLV-1には、二つのサブグループ(日本型と大陸横断型)があり、南北に行くにしたがい、日本型が優勢になること、分岐は、おそらく日本以外の場所で起こったこと、HTLV-1が日本に持ち込まれた年代が約2万年から4万年前であることなどが示唆される結果を得た。
著者
佐久間 春夫 松本 清 品冶 恵子 酒井 茉帆 山本 美由紀
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

時々刻々と変化するスポーツ場面で、無意識的に最適方略を選択し、遂行する選手の受動的注意能力の変動状況を明らかにすることにより、瞬間情報処理能力を実現する最適配分のメカニズムを知る為に、注意のタイプ、眼球運動、脳波から検討を行った。クローズドスキル系の注意の「柔軟性欠如」「過度の狭さ」が、オープンスキル系では眼球運動における周辺視野の活用の高さが見出された。さらに注意と意欲について脳波の特徴を見出した。
著者
山本 成生
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

本研究は、北フランスのカンブレー大聖堂の聖歌隊を素材として、中世・ルネサンス時代における音楽家の社会的身分とその組織構造の解明を目指すものである。今年度は、これまでの研究のまとめとして、上記の教会における音楽制度の総合的な考察を行った。まず予備的な考察として、近年の「音楽拠点」研究の動向を整理し、それらを評価しつつも前近代における音楽家身分のあり方という観点については、やや議論が不足している点を批判した。次に、カンブレー大聖堂の歴史や教会制度全般を概観し、参事会に由来する資料群を「史料論」的な視点を踏まえて整理した。本論においては、まず教会参事会の音楽保護政策を検討した。そこには芸術の庇護者としてパトロンのあり方は存在しなかった。本来、礼拝(=成果の演奏)を司るべき参事会員が、その職務を下級聖職者に代行させていた事実が、教会の音楽保護政策を規定していたのである。次に、音楽家とみなされる各種の職務、すなわち「代理」「少年聖歌隊」そしてこれらを監督する「代理担当参事会員」が、職掌と在職者の伝記的情報から検討された。先行研究において、これらの諸身分は専ら「歌手」ないしは「音楽家」としてのみ扱われてきたが、本研究においては彼らが「聖職者」としての志向と「音楽家」としてのそれの間で揺れ動いていた点が指摘された。結論においては、これらの成果を踏まえ、中世・ルネサンスにおける「聖歌隊」とは、近代的な意味での「職業的芸術家」の集団ではなく、雑多ながらも「共同体」というアイデンティティによってまとまっていた人間の集合であった点が強調された。なお、これらの成果は博士論文のかたちでなされた。
著者
重茂 克彦 山本 欣郎
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

ゲノムバイオロジーによる解析では、食中毒原性黄色ブドウ球菌の遺伝学的特性を検索するためにmulti locus sequence typing(MLST)によって由来の異なる黄色ブドウ球菌の系統解析とその系統のSEs/可動性遺伝因子/プラスミドプロファイルを行った。食中毒由来株と鼻腔由来株を用いて両集団の系統解析の比較を行ったところ、両集団を構成する系統の比率は有意に異なっていた。食中毒由来株で最も存在頻度が多かった系統では共通のSEH関連可動性遺伝因子を保有しており、さらに株によってSEA/SEB関連可動性遺伝因子と約25Kbpのプラスミドを保有していた。また、鼻腔由来株にも食中毒由来株と類似した遺伝学的特徴を示す株を含んでいたが、その出現頻度は2%と非常に低いものであった。また、ブドウ球菌エンテロトキシンA(SEA)の体内動態を検討するために、嘔吐モデル動物であるスンクスにSEAを複腔内投与、あるいは経口投与し、抗SEA抗体を用いて免疫組織学的にSEAの分布を検索した。複腔内、経口投与ともに、SEAは消化管粘膜下組織肥満細胞に結合していた。また、脱穎粒阻害剤の複腔内投与によって、経口投与および腹腔内投与されたSEAによる嘔吐が抑制されることが明らかになった。すなわち、SEAによる嘔吐発現において粘膜下組織肥満細胞による脱穎粒が重要な役割を果たしている可能性が高い。以上のように、ブドウ球食中毒由来菌の遺伝学的特性の一端を解明するとともに、SEAの感染機構に肥満細胞が関与することが明らかになった。
著者
山本 博一 吉益 光一 宮下 和久 福元 仁 竹村 重輝 宮井 信行 宮井 信行
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

地域住民では、うつ病に関連する身体要因は明らかでない。地域住民および警察職員の健診受診者から得られた健診データと、精神疾患簡易構造化面接法の結果を統合し、うつ病・自殺リスクに関連する身体要因を調査した。その結果、自覚症状をはじめ多彩な要因がうつ病・自殺リスクと関連していた。易疲労感、頭痛・頭重感、めまい・立ちくらみ、吐き気・胸焼け・胃もたれ・腹痛などの胃腸症状、腰痛・関節痛などの自覚症状は、うつ病の存在を示唆するかもしれない。