著者
小野寺 翔 山本 智清 内坂 直樹 寺川 偉温
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.109, no.3, pp.590-597, 2020

<p>長野県在住の40歳代女性が,1カ月間の増悪寛解を繰り返す発熱で受診した.血液培養からブルセラ属菌が検出されたが,このブルセラ属菌は既知のブルセラ属菌のいずれでもなく,2017年に同じく長野県内で発症した患者より分離されたブルセラ属菌と近縁であった.また,同様に発熱等を呈した家族も抗体検査で陽性を示し,ブルセラ属菌に感染していたことが判明した.長野県内に当該新規ブルセラ属菌の宿主動物の生息が推測される.</p>
著者
山本 兼右 山崎 秀男 高倉 玲奈 小川 利政 桑野 忠雄 三浦 一利 山口 健人 久保 文裕 蓮尾 智之 房永 佳那 稲葉 有美江 田中 幸子
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.365-375, 2015 (Released:2015-06-15)
参考文献数
24

本研究の目的は, 対策型検診撮影法(基準撮影法I)と任意型検診撮影法(基準撮影法II)の実効線量を明らかにすることである。対象は, 大阪がん循環器病予防センターで胃がん検診を受診した40,456名から男女別, 撮影法別で無作為に抽出した240名である。方法は, 240名の1検査の面積線量(DAP)と入射表面線量(ESD)を分析し, モンテカルロシミュレーションソフトPCXMC dose calculations Ver.2.0.1.3を用いて実効線量を算出した。1検査の実効線量と入射表面線量は, 基準撮影法Iで4.41mSv, 33.97mGy, 基準撮影法IIで5.15mSv, 46.92mGyであった。受診者の男女別および撮影技師の経験年数による差の分析では, 両撮影法IとIIともに, 男性と5年未満の技師の実効線量が多い結果となった(P<0.05)。また, 受診者のBMIと実効線量の関係は, 両撮影法IとIIともに, 正の相関関係があることを確認した(I:r=0.500, P<0.05), II:r=0.584, P<0.05)。本研究は基準撮影法IとIIの実効線量を日本で初めて明らかにした研究である。
著者
大重 育美 衛藤 泰秀 小川 紀子 苑田 裕樹 山本 孝治 西村 和美 姫野 稔子 高橋 清美 田村 やよひ
出版者
日本赤十字九州国際看護大学
雑誌
日本赤十字九州国際看護大学紀要 = Bulletin of the Japanese Red Cross Kyushu International College of Nursing = 日本赤十字九州国際看護大学紀要 = Bulletin of the Japanese Red Cross Kyushu International College of Nursing (ISSN:21868042)
巻号頁・発行日
no.18, pp.23-30, 2020-03-31

われわれは平成28年度の学長指定研究開始後より、福祉避難所としての仕組みを整えるための活動を行ってきた。平成29 年度には、熊本地震の際に福祉避難所としての運営を行った施設責任者を対象に聞き取り調査を行い、公共施設での福祉避難所の課題を明らかにした。今年度は、日本赤十字九州国際看護大学(以下、本学とする)が福祉避難所として機能するためにどの場所が適切なのか、実際に収容できるのかの実証的な調査が必要であった。そこで、本研究は災害を想定した福祉避難所としての運営に向けた課題を環境の変化と人体への影響という視点から明らかにすることを目的とした。方法は、福祉避難所として想定している本学敷地内のオーヴァルホール、体育館、実習室の外気温、室内温、湿度の経時的な変化を計測し、20歳代から70歳代までの各年代の参加者の自覚的疲労度を主観的評価と体温、血圧、脈拍を経時的に測定した。その結果、室内温は、時間の推移に伴い徐々に下降傾向で、オーヴァルホールと実習室は温度の推移がほぼ同じで2時以降やや下降気味であった。外気温は、オーヴァルホールと体育館は同じ推移であったが、実習室の外気温は棟内であり、気温の低下の影響は少なかった。主観的な評価項目では、「ねむけ感」が時間の推移に伴い高まり、「ぼやけ感」は22時をピークに下降気味となった。したがって、室内温、外気温の変化がほぼ同じだったことから、収容場所は要配慮者の状況によっては、オーヴァルホール、体育館、実習室の利用が可能であることが示唆された。課題は、睡眠環境の整備として寝具の工夫が必要であることが明らかとなった。報告 = report
著者
伊藤 孝紀 岩崎 翔太 山本 雄一 西田 智裕
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1_90-1_93, 2021

<p>本作品は、愛知県岡崎市康生通りにおいて、株式会社まちづくり岡崎が道路空間再編に向けて実施した社会実験である。まず、岡崎のシンボルである岡崎城をモチーフとして白と黒を基調としたストライプのロゴマークを設定するとともに、市民の要望を把握するためのワークショップをおこなった。そこで得られた要望を反映させた社会実験をおこなった。<br>公共空地に白と黒の什器を設置し、キッチンカーを誘致することで、康生通りと一体的な空間を創出した。また、沿道店舗の軒先を活用することで、歩道上に多様な行為を誘発した。加えて、パークレットを設置することで、車道上に憩いのための場を創出した(図1)。<br>通過するだけの人が多かった康生通りに、多様な行為を含む滞留が生じた。康生通りにロゴマークを展開することで、通りのデザインを統一し、市民が誇りを持った街づくりを演出することができた。<br></p>
著者
山本 和央 小島 博己 田中 康広 常喜 達裕 池内 聡
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.294-299, 2009 (Released:2010-10-15)
参考文献数
10
被引用文献数
1

中耳真珠腫術後に発生し経乳突法と経中頭蓋窩法を併用した術式により部分切除, 摘出, 骨欠損部を整復し得た側頭骨内髄膜脳瘤の1例を経験した。症例は40歳の男性。弛緩部型中耳真珠腫の診断で, canal wall up tympanoplastyにてstaged operation (段階手術) を施行した。初回手術所見にて中頭蓋窩硬膜の広範囲な露出を認め, 真珠腫上皮と硬膜との癒着が著明であった。段階手術2回目の手術の際に硬膜を一部損傷したため, 筋膜で補修した。骨欠損部に対しては皮質骨で乳突腔側より補強し乳突腔は骨パテで充填した。1年後に外耳道後壁に拍動を伴う腫脹とdebrisを認めるようになり, CT, MRI所見より髄膜脳瘤及び真珠腫再発と診断した。まず経中頭蓋窩法により頭蓋底骨欠損部から逸脱した脳髄膜瘤を一部正常硬膜を含め切断した。硬膜の欠損部は筋膜にて形成し, 骨欠損部を骨片にて再建した。次に経乳突法により髄膜脳瘤と癒着した真珠腫上皮を摘出した。耳介軟骨にて外耳道後壁を再建し, 乳突腔側からも中頭蓋窩の骨欠損部を骨片で再建し, 乳突腔は骨パテで充填した。現在術後12ヵ月経過しているが, 再発を認めていない。本疾患は髄膜炎や脳膿瘍などの重大な合併症を引き起こすことがあり, 的確な診断と治療が必要である。
著者
福留 功二 塚原 隆裕 守 裕也 山本 誠
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
熱工学コンファレンス講演論文集 2020 (ISSN:2424290X)
巻号頁・発行日
pp.0142, 2020-10-09 (Released:2021-03-17)

Direct numerical simulations (DNSs) were performed to study the dissimilarity between the heat and momentum transfer of turbulent spot structures developing in a laminar plane Couette flow. The turbulent spot was generated by pair vortices, and the Reynolds and Prandtl numbers were 450 and unity, respectively. Three types of computational domains were examined to reveal the effect of the spot development on the dissimilarity. As a result, we confirmed that the effective heat transfer state is obtained for developing a turbulent spot rather than a fully developed state. It attains the maximum when the turbulent spot grows the half size of the computational domain. Moreover, much effective heat transfer state was obtained for developing in streamwise direction rather than in spanwise direction.
著者
山本 一博
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

量子場の非局所相関の構造と曲がった時空に現れる熱的現象の関係をより深く理解するための研究と、それをより一般の系へ拡張する研究を進め成果を得た。初めに、量子場の非局所相関のより深い理解に関しては、量子情報理論の技術を応用した観点からの研究を進め、多検出器を導入した理論模型の研究を行なった。リンドラー時空において一定加速運動する多検出器模型を導入し、量子場と相互作用する多検出器系に4次元においても揺動散逸関係の一般化であるcorrelation-propagation-relation(相関伝播関係)が成立することを示した。この成果は、リンドラー時空から見た時の平衡状態で成立するエネルギーの流れに関する関係を示すものである。この関係が慣性系から見た時に非局所相関に起因する量子放射とどのように関係するかは今後の課題である。研究成果はPhysics Letter Bに掲載された。また、量子場の非局所相関の構造をより一般の系に拡張する研究に関しては、スカラー場の場合と同様にスピノル場のミンコフスキー真空を左右2つのリンドラー時空で構成される状態で記述するための研究を共同研究者と進めた。一般的な2次元リンドラー時空のディラック場を量子化しミンコフスキー真空をリンドラー状態のエンタングル状態として記述できることを4次元の場合に対して拡張する研究を行っている。カスナー時空とリンドラー時空の量子場を関係づけることによって、ミンコフスキー時空全体を部分的座標上に構成する場の状態を用いて、ミンコフスキー真空の非局所相関の構造を統一的に明らかにする研究成果として発表する予定である。また、カスナー時空とリンドラー時空ににおいて重力波であるテンソルモードの解析解をRegge Wheelerゲージのもとで発見した。
著者
山本 早紀
出版者
早稲田大学日本語学会
雑誌
早稲田日本語研究 (ISSN:13484796)
巻号頁・発行日
no.30, pp.79-90, 2021-03

図1、2は著作権により公開不可、紙媒体を参照
著者
児玉 基一朗 赤木 靖典 髙尾 和実 難波 栄二 山本 幹博 秋光 和也 柘植 尚志
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.207-216, 2014

地球上に存在する糸状菌の大多数は,分解者として腐生的生活を送っている。その一方で,特定の糸状菌が生物学的に大きなコストをかけて植物寄生能力を進化させてきた要因は,宿主植物というニッチを占有することの利点にある。病原糸状菌の感染様式は,栄養関係の樹立に生細胞との相互作用を必要とする活物寄生菌(biotroph)から,感染成立過程において植物細胞を激しく加害し死に至らしめる殺生菌(necrotroph)まで多岐にわたる。その他,共生菌,あるいは感染過程の少なくとも一部において生細胞との相互作用が重要であるとされる中間型の寄生菌(hemibiotroph)なども存在する。このように多種多様な寄生様式のいずれも,相互作用における進化のほぼ最終的な形態として具象化されているのか,それとも単に理想的な最終型に収斂する過程の途上に現れた一つにすぎないのか,議論の分かれるところである。
著者
今村 昌平 大西 晃生 山本 辰紀 辻 貞俊 村井 由之
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.179-183, 1994-06-01 (Released:2017-04-11)
被引用文献数
2 2

症例は35歳男. 明らかな先行症状はなく, 四肢遠位部優位の運動・感覚性末梢神経障害で発症し, 寛解と増悪を示す慢性の臨床経過を呈した. 増悪時期に, 急激な視力低下を伴う両側視神経炎が発症し, 同時に髄液の蛋白細胞解離, 末梢神経伝導検査異常および腓腹神経有髄線維の軸索変性および節性脱髄所見が認められた. 図形反転視覚誘発電位検査でP100潜時の延長は認められなかった. ステロイド投与により, 中心暗点の消失と視力の改善ならびに感覚障害, 深部反射異常, 末梢神経伝導検査異常および髄液蛋白高値の明らかな改善を認めた. それ故, 本例の視神経障害を慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の一症状であると判断した. 本例は中枢神経系と末梢神経系の両方が障害された文献上比較的稀な1例である.
著者
渡部 峻 近藤 雄一郎 竹田 唯史 山本 敬三
出版者
北翔大学北方圏生涯スポーツ研究センター
雑誌
北翔大学北方圏生涯スポーツ研究センター年報 (ISSN:21852049)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-6, 2018

本研究の目的は,2018年平昌パラリンピックでのバイアロン・シットスキー競技の順位成績の決定要因について検討することと,スキー滑走速度とポーリング動作との関係を明らかにすることとした。被験者は,平昌パラリンピックで女子6kmのバイアロン・シットスキー競技に参加した15名とし,公式記録とスキー滑走動作のビデオを用いて分析を行った。公式記録から順位成績と射撃のミスショット数を求め,ビデオ分析から各選手の相対的な滑走速度とポーリング頻度を求めた。統計処理では,スピアマンの順位相関分析を用いて,順位成績と滑走速度,射撃のミスショット数およびポーリング頻度との相関関係をそれぞれ分析した。滑走速度とポーリング頻度の相関関係ではピアソンの積率相関分析を用いた。また,滑走速度やポーリング頻度のラップ間の差を調べるために,一元配置分散分析と多重比較検定を用いた。すべての統計処理の有意水準は5%未満とした。結果,順位成績と平均滑走速度(rs = -0.5951, p<0.05)および射撃のミスショット数(rs = 0.5874,p<0.05)の間にそれぞれ有意な相関関係が認められた。成績上位選手は射撃のミスショット数が少なかったことから,射撃技術が高いことが,上位選手の特徴であると考えられた。次に,平坦地での滑走速度とポーリング頻度との間には有意な相関関係は認められなかった。最終ラップでは,ポーリング頻度は有意に増加したが,相対滑走速度に有意差は認められなかった。この結果から,最終ラップではポーリング頻度を増加させて,疲労によるポーリングの推進力低下を補ったことが示唆された。
著者
山本 幸洋 藤原 伸介 田中 福代 高木 和広 松丸 恒夫
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.15-22, 2007-02-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
28
被引用文献数
2

10種の殺菌剤による土壌中のアンモニア酸化阻害活性を確認するとともに,そのなかで顕著な活性を示したクロロタロニル(テトラクロロイソフタロニトリル)の阻害活性について詳細に検討した.1)供試薬剤のなかでクロロタロニルとチウラムは土壌中のアソモニア酸化阻害活性が最も高かった.これらに比べ,トリフルミゾール,トルクロホスメチル,イプロジオン,フルトラニル,ヘキサコナゾール,イソプロチオラン,ベノミルおよびメタラキシルは,阻害活性が低いか,または認められなかった.2)クロロタロニルによる土壌中のアンモニア酸化阻害は,ジシアンジアミドと比べて長く持続した.また,クロロタロニルによる土壌中のアンモニア酸化阻害活性は,添加量に依存し,添加量が5mg kg^<-1>以上のときに土壌のNH_4-N含量と(NO_2+NO_3)-N含量の両方に影響を及ぼした.3)クロロタロニルの畑土壌における主要分解産物4-ヒドロキシ-2,5,6-トリクロロイソフタロニトリル(TPN-OH)は,土壌中のアンモニア酸化を阻害するが,その活性はクロロタロニルおよびジシアンジアミドと比べて低かった.4)クロロタロニルの類縁化合物テトラクロロテレフタロニトリル(TTPN)による土壌中のアンモニア酸化阻害活性は,クロロタロニルと比べて低かった.他の類縁化合物1,2,3,5-テトラクロロベンゼン(TCB),イソフタロニトリル(IPN),テレフタロニトリル(TePN),フタロニトリル(PN)およびベンゾニトリル(BN)は,いずれも土壌中のアンモニア酸化を阻害しなかった.5)アンモニア酸化細菌集積土壌において,クロロタロニル区(添加量100mg kg^<-1>)のアンモニア酸化細菌数は,クロラムフェニコール区(添加量500mg kg^<-1>)と比べて急激に低下した.以上のことから,クロロタロニルは,土壌中のアンモニア酸化阻害活性が高いこと,構造中のニトリル基と塩素の存在がアンモニア酸化阻害に必須であり,それらの分子内での配置が阻害活性の強度に大きく関与すること,クロラムフェニコールと比べてアンモニア酸化細菌に対して致死的に作用することが明らかとなった.
著者
渡辺 賢治 辨野 義己 山本 雅浩
出版者
慶應義塾大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

漢方薬の腸内細菌に及ぼす影響について明らかにするとともに、アレルギー発症抑制が腸内細菌の変化を介して可能であるかどうかを検討した。まず漢方薬が腸内細菌叢に対してどのような影響を与えるかを検討した。従来の培養法では細かい腸内細菌の変化を捉えることが不可能であったが、腸内細菌のDNAを制限酵素で切断して塩基長を解析するT-RFLP法を用いて解析した。その結果、漢方薬では処方ごとに腸内細菌をある一定の方向に変化させることが分かった。腸管遺伝子発現と腸内細菌との関連を調べたところ、抗生剤(シプロフロキサシン)投与にて腸内細菌が変化し、ヒートショックプロテインの発現が低下した。このヒートショックプロテインの発現は漢方薬十全大補湯にても変化し、腸内細菌の変化を伴っていた。腸内細菌のない無菌マウスではこの遺伝子発現の変化は観察されず、ヒートショックプロテインの変化には腸内細菌の存在が不可欠であることが示唆された。次に抗生剤投与モデルでアレルギーを発症しやすくなるかどうかについて検討した。まずは免疫寛容の系を確立するために予備実験を行い、卵白アルブミン10mgの単回投与にて免疫寛容の誘導できることが分かった。このモデルを用いて抗生剤(セフジトレンピポキシル、アモキシシリン、カナマイシン)を投与し、免疫寛容が誘導できないかどうかを検討した。カナマイシン投与にて少し卵白アルブミン特異的IgEの上昇が見られたものの、基本的に免疫寛容は抗生剤投与により破綻しなかった。しかしながら経口的免疫寛容を誘導しなかった群において、逆に卵白アルブミン特異的IgEの上昇が抑制されており、抗生剤投与にて何らかの免疫系の破綻を来たしていることが分かった。
著者
池本 毅 岡部 文市 山本 直史 中津川 弘子
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.229-237, 1999

香料による体臭のマスキング効果の持続性を高める方法として, 花香気成分の前駆体として知られる香気成分配糖体の応用について検討を行った。まず<i>in vitro</i>試験として香気成分配糖体を含む培地にてさまざまな種類の皮膚細菌を培養し, 生成した香気成分量と残存する配糖体量をGCおよびHPLC分析にて検討を行った。そして, 多くの皮膚細菌類が香気成分配糖体を代謝し香気成分を生成することを確認した。また, その生成量は菌種や配糖体の構造により代謝速度が大きく異なることも確認した。次に, 香気成分配糖体を身体に塗布したときの効果を確認する目的で, ヘッドスペースガス法を用いた<i>in situ</i>試験を行った。その結果, 香気成分配糖体を身体に塗布した場合にも香気成分が持続的に生成すること, その生成量は配糖体の構造や塗布部位において大きく異なることを確認した。さらに, eugenolを香気成分部とするeugenyl β-D-glucosideには持続性に優れたデオドラント作用のあることも官能試験により確認された。