著者
武田 昌一 桐生 昭吾 山本 誠一 吉田 友敬
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

人間の感性メカニズムを解明する研究の一環として、音楽や音声を聴くだけではなく音楽に合わせて手を叩く、百人一首かるた競技時に読手の発声を聞いてかるたを取るなど、能動的動作が伴うときの脳の情報処理に関するいくつかの新しい知見を脳血流や脳波計測、聴取実験などの方法により取得した。更に、感性に関する応用研究の一環として、感情の強さまで自由自在に表現できる日本語感情音声合成方式を初めて実現した。
著者
天野 篤 松下 訓 山本 平 稲葉 博隆 桑木 賢次
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

局所脂肪は隣接臓器の状態を反映するとともにその臓器にも影響を及ぼすことが示唆されている。本研究では動脈硬化性疾患の代表である虚血性心疾患に対する手術の際に皮下脂肪、冠動脈周囲および内胸動脈周囲の3か所の脂肪を採取し解析、脂肪の質にどのような差があるのか検討を行った。一部の炎症性サイトカインや炎症性マクロファージの発現は冠動脈周囲で最も高く、皮下で最も低かった。一方で血管新生関連因子は内胸動脈周囲で最も高かった。線維化マーカーは冠動脈周囲の発現が最も高く、コラーゲンは皮下脂肪で最多であった。このように皮下脂肪と血管周囲脂肪、さらにはその血管の状態により異なる脂肪のプロファイルを示していた。
著者
稲臣 成一 板野 一男 村主 節雄 頓宮 廉正 安治 敏樹 原田 正和 頼 俊雄 何 黎星 山本 友子
出版者
岡山医学会
雑誌
岡山医学会雑誌 (ISSN:00301558)
巻号頁・発行日
vol.93, no.1, pp.29-43, 1981-02-28

県下9ヶ所の定点において,light-trapによる蚊の終夜採集を,4月より9月迄行った。1. 本年の平均気温が平年より上回ったのは6月に入ってからで,4月の降雨量は,平年より少なく,県南では,平年の50%以下であった。6月6日梅雨入りし,7月25日に明けた。8月に台風11号,9月に台風12号,16号が岡山附近を通った。本年の平均気温が,本格的に25℃を越えたのは,7月19日~8月28日の40日間で,昨年より20日間も短くなっている。2. アカイエカの採集総数が,昨年より増えたのは,岡山(保)で1.5倍,瀬戸で1.3倍,成羽で1.6倍,津山で3.4倍であった。一方倉敷,新見では,1/2に減少している。3. コガタイエカの採集総数が,昨年より増えたのは,笠岡で3.5倍,瀬戸で2.9倍,成羽で1.3倍,新見で5倍であった。一方減ったのは,倉敷で1/1.1,岡山(保)で1/1.6に減少している。4. シナハマダラカの採集総数が昨年より減ったのは,倉敷で1/2,瀬戸で1/1.5に,減少した。また岡山(保)では,雌3羽,雄3羽と少なく,西大寺保健所では,雌1羽だけで,岡大・医学部構内では,全然採集されなかった。5. 本年は新たに,岡山市西大寺保健所が定点に加えられ,一方岡大・医学部構内でも採集を行ったが,高い塀で囲まれている関係で,採集数も少なかった。6. 本年の採集蚊数で,アカイエカ,コガタイエカ,シナハマダラカ共に,昨年より増えたのは,笠岡,成羽,津山で共に昨年より減ったのは,倉敷のみであった。瀬戸では,アカイエカ,コガタイエカの増加がみられた。7. 本年は,日本脳炎患者の発生は,疑似患者のみで真性患者の発生は見られなかった。Mosquito collections were done at nine spots in Okayama Prefecture twice a week from April till September in 1979. The day-light type light-trap was used for the mosquito collection and the trap was set all night long. 1. The mean temperature of the day became higher than the average one after June and was higher than 25℃ for 40 days from July 19 till August 28. The term was 20 days shorter than that of last year. The rainly season lasted from June 6 till July 25. Typhoon No. 11passed bv Okayama Prefecture in August and No.12 & No. 16 in September. 2. The numbers of collected Culex pipiens pallens were more than those of last year at Okayama (1.5 times). Seto (1.3 times). Nariwa (1.6 times) and Tsuyama (3.4 times) respectively. While the numbers decreased at Kurashiki and Niimi (1/2 time). 3. The numbers of collected Culex tritaeniorhynchus increased comparing to those of last year at Kasaoka (3.5 times). Seto (2.9 times), Nariwa (1.3 times) and Niimi (5 times). While they decreased at Kurashiki (1/1.1 time) and Okayama (1/1.6 time). 4. In Anopheles sinensis the collected numbers decreased comparing to those of last year at Kurashiki (1/2 time) and Seto (1/1.5 time). Only three femal and three male mosquitoes were caught at Okayama, one female at Saidaiji, and no Anopheles sinensis was caught at the compus of Okayama University Medical School. 5. The numbers of collected mosquitoes were very few at Saidaiji (where mosquito collection was started newly from 1979) and Okayama University Medical School. 6. The collected numbers in all Culex pipiens pallens. Culex tritaeniorhynchus and Anopheles sinensis increased at Kasaoka, Nariwa and Tsuyama. While the numbers in all these three species decreased at Kurashiki. At Seto the numbers of collected mosquitoes increased only in Culex pipiens pallens and Culex tritaeniorhynchus. 7. There was no human case of Japanese B encephalitis in 1979.
著者
山本 仁志
出版者
立正大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-07-10

昨年度に引き続きソーシャルメディアの利活用が世論形成に与える影響を分析するため、ニュースメディアアカウントをフォローするユーザのイデオロギー推定をおこなった。本年度の研究業績は世論形成モデルについて主に以下の2点である。ひとつが分析の結果が論文"News audience fragmentation in the Japanese Twittersphere"として採録が決定したことである。日本のマスメディアをフォローするツイッターユーザのイデオロギーを機械学習で推定した結果、大規模な分断化は見られないものの一部メディアでニュースオーディエンスが分断化しているという結果が得られた。更にパネルデータ分析として2017年時点のイデオロギー分布の推定を行うためのデータ収集をおこなった。また一方で多様な価値観の共存下で相互協力的な社会システムを実現するための互恵的協力のメカニズム分析をおこなった。2017年度は、規範生態系を社会シミュレーションに頼らずに、純粋に数理解析的に扱う方法を開発し、本来6万本以上の絡み合った方程式を解かなければならないところを、512本の方程式に縮減することに成功した。その結果、規範のモデル研究で安定的とされてきた「悪に協力することは悪である」という規範は、社会のメンバーが他者を部分に分解しない「個人主義」の発想に基づいて規範を構築している限りは安定的に存続できるが、他者を部分に分解する「分人主義」の発想に基づいて規範が構築されるような社会では、最終的に絶滅してしまうことが分かった。この成果は"A Theoretical Approach to Norm Ecosystems: Two Adaptive Architectures of Indirect Reciprocity Show Different Paths to the Evolution of Cooperation"として公刊された。
著者
加藤 修 飯塚 博幸 山本 雅人
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.2354-2364, 2016-11-15

二人零和有限確定完全情報ゲームにおいてすでにAIは人間に匹敵する強さとなっており,最近では麻雀や人狼など,多人数ゲーム,不完全情報ゲーム,不確定ゲームが新たな研究対象として注目を集めている.そのような中で不確定ゲームとしてデジタルカーリングがある.デジタルカーリングはカーリングの二人用コンピュータゲームであり,AIどうしを競わせカーリングの戦略を解析することを目的とした不確定ゲームのテストベッドとして開発された.本研究ではデジタルカーリングにボードゲームの探索手法を適用し,投球目標座標と回転方向を候補手,盤面状態を局面としてデジタルカーリングにExpectimaxによるゲーム木探索を適用する手法を提案する.Expectimaxではゲーム木内で確率的に推移するノードを用いており,ゲームの不確定性を考慮した探索が可能となっている.提案手法の有効性を検証するため,不確定性を考慮する場合としない場合それぞれにおいて探索の深さを変化させ既存AIとの対戦実験を行った.その結果,提案手法による不確定性の考慮を行った場合に勝率が上昇し,また不確定性を考慮した場合のみ探索の深さを増やすことで勝率が上昇したことから,デジタルカーリングにおける提案手法による不確定性を考慮した先読みの有効性が明らかとなった.
著者
山本 勝太 牧野 一成 石塚 弘道
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.83, no.856, pp.17-00337-17-00337, 2017 (Released:2017-12-25)
参考文献数
10

The integrity of railway axles is a critical aspect for ensuring the safety of a railway system. Therefore, non-destructive inspections such as ultrasonic testing and magnetic particle testing are conducted periodically. Some railway operators conduct ultrasonic tests directly on axles mounted on the train. However, the axles have to be disassembled for conducting magnetic particle testing. In the present study, the effects of variable amplitude stress acting on cracks and axle bending stress during ultrasonic test on ultrasonic response are discussed. An ultrasonic test was conducted using a full-scale axle specimen that had fatigue cracks and no artificial notches. The ultrasonic response was evaluated for the cracks whose lengths were 10 mm, 16 mm, and 19 mm. Under an unloaded condition, the ultrasonic response for the 16-mm-long and 19-mm-long cracks was approximately 4 or 7 times higher than that for the 10-mm-long crack, although the cross-sectional area of each of these cracks was approximately 2.5 or 3.5 times larger than that of the 10-mm-long crack. The obtained results indicate that the contribution of the reflection area to the ultrasonic response under a variable amplitude stress differs from that under a constant stress condition. Moreover, the influence of axle bending stress ranging between -50 MPa to +47 MPa on the ultrasonic response was investigated. A higher bending stress led to a higher ultrasonic response. However, the decreasing rate of ultrasonic response caused under compressive stress was lower than the increasing rate under tensile stress. For example, the ultrasonic response was approximately 2 dB lower than that under the unloaded condition at a compressive stress of -30 MPa; however, the ultrasonic response showed an increment of approximately 4 dB at a tensile stress of 30 MPa. A similar trend was observed in the crack of each length. The results denote that the crack position influences the precision of crack detection in ultrasonic inspection. However, considering that the maximum static bending stress of axles used in Japan is 30 MPa, its effect on inservice axle inspection is negligible.
著者
山本達郎
雑誌
東洋学報 / The Toyo Gakuho
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.104-131, 1933-10
著者
山本 尚樹
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.183-198, 2014 (Released:2016-06-20)
参考文献数
59
被引用文献数
1

本論文では,自己組織化現象に関する近年のシステム論の研究動向の観点から語られることの多かったEsther Thelenの発達理論を,George E. Coghillの発生研究を嚆矢とし,Arnold L. Gesell,Myrtle B. McGrawによって展開された古典的運動発達研究の延長戦上に位置づけ,再検討した。特に,Gesell,McGraw,Thelen,三者の発達研究・理論を比較検討し,類似点と相違点を明確にすることで,運動発達研究の基礎と今後の課題を明確にすることを目的とした。この検討により運動発達研究は,i.下位システムの相互作用から系全体の振る舞いの発達的変化を捉える,ii.発達的変化を引き起こす要因を時間軸上で変化する系の状態との関係から考察し特定する,という基本的視座をもつこと,さらにiii.系の固有の状態が発達に関与するという固有のダイナミクスの概念,iv.様々なスケールが入れ子化された時間の流れから発達を捉えるという多重時間スケールの概念,がThelenによって新たに加えられたことが確認された。最後に,このiii.,iv.の点について近年の研究動向を概観し,今後の課題を整理した。
著者
岡 芳樹 山本 正信
出版者
The Institute of Image Information and Television Engineers
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.J72-J77, 2014

At a theme park or entertainment show, actors wearing a cartoon-character costumes entertain guests. Unfortunately, existing cartoon-character costumes have heads with a fixed facial expression. We propose a novel cartoon-character costume where the head is equiped with a web camera inside and display panel outside. When an actor wears the head, the web camera captures the face of the actor. Based on the pattern classification technique, the facial expression is classified into one of five categories of emotion: anger, joy, sadness, surprise and neutrality. For each category, a corresponding facial image is chosen from a bank of facial images of cartoon characters. The chosen image is depicted on the display panel as the face in real time. The new costume head enables the actor to communicate with audiences interactively and play the other characters immediately by changing the facial image bank.
著者
宮脇 昇 山本 隆司 横田 匡紀 清水 直樹 西出 崇 後藤 玲子 藤井 禎介 玉井 雅隆 山本 武彦
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

「やらせ」の政治的演出は情報の不完備性に依拠している。「やらせ」を命じる政治的演出者と「やらせ」を見る観客の双方に共通知識があたかも(as if)存在するかのごとく演出されるが、現実には観客の有する情報は限定的・選択的でしかない。被操作者は必ずしも完全な知識を有さない。情報の不完備性・非対称性が政治的演出としての「やらせ」を可能にし、公共政策の政策過程の循環を演出者の意図にそって進行させる。また非民主主義国では「やらせ」を内在化した情報操作が権力維持のために恒常化している。しかし世界的な民主化の波、インターネットの普及、情報公開制度の拡大により、成功的演出の条件が困難になった。
著者
沢井 康孝 山本 和英
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.101-136, 2008-04-10 (Released:2011-03-01)
参考文献数
9
被引用文献数
1 6

ある入力文書が多くの人にとってどの程度興味や関心を持つかを算出する指標を提案する. 各個人の興味や関心は多種多様であり, これを把握することで情報のフイルタリング等を行う研究は知られているが, 本研究では不特定多数すなわち大衆が全体でどの程度の興味を持つかについて検討を行った. このような技術は, 不特定多数に対して閲覧されることを想定しているWebサイトにおける提示文書の選択や表示頂の変更など, 非常に重要な応用分野を持っている. 我々は大衆の興味が反映されている情報源として順位付き文書を使用した. 本手法ではこれを学習データとして利用して, 文書に含まれる語句及び文書自体に興味の強弱を値として付与する手法を構築した. 興味を値として扱うことで, 興味の強弱を興味がある・ないの2値ではなく興味の程度を知ることや興味発生の因分析を行うことが可能である. 提案手法は, 文書に含まれる語句を興味判別する素性として扱い, 内容語, 複合名詞, 内容語及び複合名詞の組み合わせの3種類について比較, 議論した. 評価は, ニュース記事のランキングを対象にして, 実際の順位とシステムの順位を比較した. その結果, 順位相関に基づいた評価値はOh867であり, 手法の有効性を確認した. さらに, ほぼ興味を持たれない記事に対して抽出精度0.90を超える精度で弁別できることを実験で確認した.