著者
山田 恭史 浅野 育子 久保田 友成 杉山 美樹
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第44回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-159, 2017 (Released:2018-03-29)

【目的】前回当学会で、3系統のモルモットのターンオーバーの違いについて報告したが、今回は別の動物種であるミニブタ及びヘアレスマウスのターンオーバーの違いについて報告する。また、ニキビの治療薬のディフェリンゲル及びダラシンTゲルを塗布し、皮膚ターンオーバーの促進作用を比較検討したので、その結果を報告する。【方法】ミニブタ及びヘアレスマウスの背部皮膚に、蛍光発色剤のダンシルクロライドを塗布し、その蛍光発色の輝度を測定した。蛍光発色が消失した時点を皮膚ターンオーバーの完了とした。また、ダンシルクロライドを塗布した他の部位にディフェリンゲル及びダラシンTゲルをそれぞれ1日1回開放塗布し、蛍光発色が消失した時点を投与終了とした。【結果】蛍光発色の消失は、ミニブタが37日、ヘアレスマウスが16日であった。ディフェリンゲル及びダラシンTゲル塗布部位ではミニブタが23または33日、ヘアレスマウスが9または12日であった。以上の結果、皮膚ターンオーバーが完了するのに必要な期間はヘアレスが非常に早く、ミニブタでは白色モルモットより長い期間を要すると考えられる。また、薬剤塗布部位では両動物種とも皮膚ターンオーバーが正常皮膚よりも早く完了したことから、ディフェリンゲル及びダラシンTゲルに皮膚ターンオーバーを促進作用が確認された。
著者
山田 祐樹 河邉 隆寛
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第6回大会
巻号頁・発行日
pp.93, 2008 (Released:2008-11-10)

我々の時間の感覚は我々がそのとき抱いている情動によって変化する.本研究は,無意識的に呈示された情動刺激が,それとは非関連な刺激に対する時間知覚に影響するかどうかを調べた.被験者は実体鏡を通して画面を観察し,片方の目には情動刺激 (快,不快および中性画像) を,もう片方の目には同じ位置に一定間隔で連続して変化するモンドリアン刺激を呈示した.連続的なモンドリアン刺激の変化は感情刺激を意識から取り除いた.また,モンドリアン刺激の周辺には白色の枠線が2700 msec呈示された.被験者はこの枠線の呈示時間を,後に呈示される同一の刺激の呈示時間を調整することで再生することを求められた.その結果,再生された時間は,不快刺激が呈示された場合の方が快刺激の場合よりも有意に長くなった.この結果は,無意識的な情動刺激が時間知覚に影響することを示唆する.
著者
細山田 康恵 Yasue HOSOYAMADA 千葉県立衛生短期大学
出版者
千葉県立衛生短期大学
雑誌
千葉県立衛生短期大学紀要 = Bulletin of Chiba College of Health Science (ISSN:02885034)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.51-56, 2008

植物ステロール入りジアシルグリセロールとセルロースを含む高コレステロール食を5週齢SD系雄ラットに2週間投与したところ,以下の1~3の結果が得られた。1.血清総コレステロールおよび肝臓脂質濃度はHC食でN食より高値を示し,セルロースによる低下効果は認められなかった。2.後腹壁脂肪および睾丸周辺脂肪重量が,HC食役与でN食より低下傾向を示した。3.糞便量は,N食,HC食ともセルロース有で有意に高値を示した。これらから,ジアシルグリセロールの脂肪を抑える効果とセルロースの糞便増加など相乗効果が期待される。油脂とセルロース相乗効果が示唆され,内臓脂肪などの蓄積低下に役立つと考えられる。
著者
千葉 剛 小林 悦子 佐藤 陽子 井出 和希 池谷 怜 山田 浩 梅垣 敬三
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.234-240, 2017-10-25 (Released:2017-10-27)
参考文献数
8
被引用文献数
3

健康食品の利用が原因と思われる健康被害の事例において,保健所を介して厚生労働省へ報告が上がってくるのは年間20件程度しかない.その原因を明らかにするために,消費者(調査1:44,649名,調査2:3,000名),医師・薬剤師(各500名)を対象にアンケート調査を実施した.2016年の一年間に健康食品の利用が原因と思われる体調不良を経験した消費者は17%いたが,保健所に連絡した人はそのうちの11%のみであった.保健所に連絡しなかった理由は「報告するほどの被害ではなかったから」が最も多かった.2016年の一年間に患者から健康食品の利用が原因と思われる健康被害の相談を受けたことがある医師は7%,薬剤師は4%であった.保健所に報告したのは医師,薬剤師ともに6%のみであった.保健所に報告しなかった理由は「健康食品が原因と断定できなかったから」が最も多かった.
著者
宮前 珠子 山田 美代子 鈴木 達也 佐野 哲也 鴨藤 祐輔
雑誌
リハビリテーション科学ジャーナル = Journal of Rehabilitation Sciences Seirei Christopher University
巻号頁・発行日
vol.9, pp.39-48, 2014-03-31

2011 年3 月の東日本大震災によって岩手県沿岸部の漁村,S 地区は壊滅的な被害を受けた.T仮設団地に暮らすS地区女性部メンバーを対象に「研究者と対象者が共同して望ましい作業を展開する」アクションリサーチを行った.2012 年7 月から2013 年8 月まで6 回訪問し,参加者は14 ~ 20 名であった.プログラムは,各種物作りと話合い・歌などで構成し,参加者のフィードバックをもとに新たな作業を展開した.これまでに行った作業は,物作りでは,生キャラメル,布草履,ケーキ,クッキー,アンデルセン,おでん,樹脂粘土のアクセサリーであり,そのほかに,KJ 法による話合い,ハープと歌,歌の集い,ワールドカフェなどを行った.2013 年度になって始めたアクセサリー作りは参加者の気持ちを捉え,また,販売と収益に結び付くものになりつつある.A village located in a seaside area of the Iwate Prefecture was tremendously damaged by thetsunami of the Great East Japan Earthquake in March, 2011. The purpose of this project was to provide meaningful occupations for the residents of temporary housing. Between forteen to twenty menbers of district S, living in temporary housing, participated in this project. The occupations provided were decided each time according to the results of interviews or questionnaires. Occupations provided were as follows: 1. September 16, 17, 2012 : Making of soft caramel (Nama-caramel). Discussion and conclusions using the KJ method. Making of fabric sandals.( 18 participants) 2. November 11, 2012 : Providing "Feel Easy" time: tea time, songs with a harp accompanimen(t 19 participants) 3. March 23, 24, 2013 : Baking of cakes and cookies, making Andersen bracelets, preparing the Shizuoka hot pot stew, and sing song.( 18 participants) 4. July 14, 15, & Aug. 20, 21, 2013 : Making necklaces & bracelets with Polymer clay.( 16 & 21 participants respectively) This program can be roughly categorized into craftwork, sweets making, music, food and drink, and discussion. Participants seemed refreshed after experiencing a number of differentoccupations, as many desired variety. The results of the questionnaire conducted in Marchalso showed that requests for new occupations were more than numerous for those alreadyperformed. We provided various kinds of occupations according to the requests from the participants, though not enough, in their time of need.
著者
山田 智之
出版者
上越教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

1年目に予定していた職場体験やキャリア教育の教育課程上の位置づけや関連する取り組みに関する中学校の教員を対象とした調査については、北越地域、関東地域の26校の中学校の校長、副校長、教員等を対象に面接調査を行った。このうち、北越地域のデータの分析を行った結果については、多くの中学校が、仕事や職業、進路や将来を生徒が主体的に考えることを目的としており、ほとんどの学校が総合的な学習の時間を活用し,学習内容を系統的に構成していることが明らかとなった。この結果については、日本キャリア教育学会第39回研究大会(上越教育大学)において、「シンポジウム:上越市における5日間の中学校職場体験に関する研究」を企画し、教育現場における職場体験やキャリア教育の教育課程上の位置づけについて研究を深めた。また、1・2年目に予定していた、中学校時代の職場体験やキャリア教育が成人期の進路選択・職業生活やセルフマネジメント等に与えた影響に関する大学生や職業人を対象としたアンケート調査については、全国の大学生1000名、北越地域の職業人100名のデータを収集した。このうち北越地域の職業人データをもとに分析をすすめ、職場体験の体験日数(1~2日間, 3~4日間, 5日間以上)が長いほど職業選択や職業生活に影響を与えたと自認する傾向があることが確認された。また, 地元での生活や仕事への満足感が高いほど成人職業キャリア成熟にプラスの影響を与え, 理想の自分イメージにも影響を与えることが明らかになった。この結果については、上越教育大学研究紀要37巻に、調査協力者とともに共同執筆を行い「中学校における職場体験が職業選択や職業生活に与える影響-新潟県上越市における社会人への調査からー」として発表した。
著者
柏原 正樹 西山 亨 行者 明彦 三輪 哲二 岡田 聡一 黒木 玄 寺田 至 小池 和彦 山田 裕史 谷崎 俊之 中島 俊樹 中屋敷 厚 織田 孝幸
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

この科研費による計画においては、リー群・量子群・へッケ環などの表現論を数理物理学・組合わせ論との関係から研究した。以下、各年次における活動を記す。初年度(1997)においては、特にRIMS project1997(等質空間上の解析とLie群の表現)とタイアップして計画を遂行した。このプロジェクト研究では、等質空間という幾何的観点にたった実Lie群の表現の研究に焦点をあてた。海外からのべ約40名の参加者があり国際的な共同研究・研究交流の場が提供できた。この成果は、Advanced Studies in Pure Mathematics,vol.26に発表された。1998年は、RIMS project 1998(表現論における組合わせ論的方法)とタイアップして計画を遂行した。このプロジェクト研究では、海外からのべ約25名の参加者があり、量子群・アフィンへッケ環の表現論と組合わせ論を中心にして計画を行った。1999年は、国際高等研究所と数理解析研究所において"Physical Combinatorics"の国際シンポジュウムを開催し、数理物理と関連して研究を行った。量子群の表現論、Kniznik-Zamolodhikov方程式とそのq-変形の解の性質や共形場理論の研究を推進した。その成果は、"Physical Combinatorics,Progress in Math,vol.191,Birkhauserに発表された。2000年度は、計画の最終年として"数理物理における表現論および代数解析的方法の応用"を中心とする研究成果の発表を目的として、"Mathphys-Odyssey 2001"という国際シンポジュウムを開催した。この会議録は、Birkhauser出版から出版される予定である。
著者
宇澤 達 山田 裕二 青木 昇 藤井 昭雄 黒木 玄 長谷川 浩司
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究では、対称対についての研究を行った。対称対は、リー群および代数群の研究において基本的な対象である。群Gと位数2の自己同型σが対称対を与える。古典型単純リー群も、基礎体の標数が2ではないときには、一般線形群を元に、位数2の自己同型の不変元全体として定義される。したがって、標数が2ではないときには、単純リー群は有限個の例外を除いて、一般線形群の対称対として理解することができる。1)対称対の基礎理論。標数2の体の上でも、リーマン対称多様体に相当する理論が構成できることがわかった。佐武図式も定義される。標数2の体上では、位数2の自己同型の共役類の数が一般には増えることが知られている。その理由もルート系の言葉で理解することができることがわかった。2)整数環上のスキームとしての対称多様体の構成。整数環に1/2を付加した環の上での対称多様体のモデルの構成は比較的容易であるが、ここでは整数環上のスキームとしての構成ができることがわかった。3)対称多様体のコンパクト化の構成。対称多様体のコンパクト化のモデル(群Gが随伴型であるという仮定のもとに)整数環上のスキームとして構成できることがわかった。応用としては、標数2の体上では、5個の2次曲線と接する2次曲線の数が51と、標数が2ではないときの1/64となっていることの説明がある。4)ルスティックによって定義された指標層に対してラングランズ対応を定義することができることがわかった。群ではなく、より一般の対称対に対してもラングランズ対応を研究することは、ジャッケの相対跡公式ともあわせて大変興味がある問題である。5)対称対と整数論の関係。対称対に関連して、エプシュタインのゼータ関数が定義され、その特殊値についての結果が得られた。また、群と対極にある対称対に付随して、楕円曲線の族があらわれる。楕円曲線の族に関する結果も得られた。6)数理物理との関係。対称対としてあらわれるアフィンリー環についての知見が得られた。
著者
安田 正志 佐藤 栄児 山田 学 梶原 浩一 早津 昌樹
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.84, no.861, pp.17-00509-17-00509, 2018 (Released:2018-05-25)
参考文献数
10
被引用文献数
2

Research on seismic isolation technology was also a question of how much restoring force can be reduced. The seismic isolation rubber with thin film like rubber and metal plates stacked in multiple stages to reduce the restoring force has achieved great success. However, there still exists restoring power, measures against long-period earthquakes are not perfect and vertically unprotected. This research is an effort to make three-dimensional seismic isolation more realistic with higher performance by further minimizing resilience in all directions. The developed three-dimensional seismic isolation mechanism consists of an air levitation mechanism that isolates horizontal vibration and a spring link mechanism that isolates vertical vibration. Excitation experiments of the prototype were carried out using real-scale three-dimensional seismic waves by the E-defense shaking table. As a result, excellent characteristics of horizontal periodicity and vertical natural period of 5 s were confirmed. The vibration isolation performance at 1 Hz was about 20 dB in all three directions, and the high isolation performance not found in conventional equipment was verified. They were also supported by analytical models.
著者
山田 雅俊
出版者
愛知大学経済学会
雑誌
愛知大学経済論集 (ISSN:09165681)
巻号頁・発行日
no.206, pp.61-81, 2018-03-15
著者
有安 則夫 中原 仁 山田 徹夫
出版者
岡山県農林水産総合センター畜産研究所
雑誌
岡山県農林水産総合センター畜産研究所研究報告 = Bulletin of the Institute of Animal Production Okayama Prefectural Technology Center for Agriculture, Forestry and Fisheries (ISSN:2186831X)
巻号頁・発行日
no.2, pp.39-44, 2012-09

超高能力牛群造成高度利用システム化事業は2012年で開始から20年が経過し、県下酪農家では509頭の泌乳成績が得られるまでに至っている。そこで、各酪農家で生産された超高能力牛産子(以下、エリート)および同居牛を対象に牛群検定成績から305日補正乳量等をとりまとめた。1 県下酪農家において630頭のエリートが、さらにその娘牛等704頭を含めると1,334頭((社)ホルスタイン登録協会登録数H24. 2. 29現在)が生産されている。2 エリートの泌乳成績が得られている1998年の補正乳量は県下平均は9,447kgであるのに対し、エリートの平均は9,849kgと402kgの乳量差を認めており、改良に大きく貢献している。また、2010年の県下平均は10,687kg、エリートの平均は11,081kgと乳量差は394kgであり、1998年とほぼ同量の乳量差を維持していた。3 遺伝能力を示すEBV(推定育種価)は、エリートは常に高い値で推移しており、酪農家での同居牛群とのEBVの比較においても高い成績となっており、遺伝能力についても優良な形質を兼ね備えていることがわかった。また、総合指数や産乳成分についても同様であり、それぞれの県下TOP100に占める割合も2割~3割程度で推移していたが、2010-1評価からの構成要素の変更等に伴い、現在では1割を切っている。4 今後はエリートに適した飼養管理技術の指導にも重点を置いていく必要がある。
著者
新原 功一 山田 道洋 菊池 浩明
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.1875-1889, 2017-12-15

昨今,組織に深刻な影響を与える内部不正への対策は非常に大きな課題である.人的な要因は情報セキュリティにおける一番弱い鎖といわれている.内部不正は様々な要因によって引き起こされるが,最近の研究によると,特にシステムにログインするためのアカウントの共有が最も大きな負の振舞いといわれている.しかし,アカウントを共有することで内部不正のリスクがどれくらい増加するかは,今まで明らかになっていなかった.そこで本研究は,内部不正を誘発する際の最大の要因であるアカウントを共有することに注目する.被験者が不正事象を実行しようとする振舞いを観測するため,我々はランサーズ社のクラウドソーシングサービスにより集めた198名の被験者による実験を行った.アカウントを共有するグループと非共有グループについて,不正事象を計測した.不正事象を分析した結果,30代の被験者はアカウントを共有すると個別アカウントを使う場合と比べて,不正行為が発生するリスクが高まることが分かった.One of the biggest challenges faced by organizations is system misuse by insiders, whose actions could give a serious impact to the organization. It has been told that the weakest link in information security is the human element. Various hypothesized causes of insider threat exist. According to recent study, the most negative behavior is sharing credentials. However, it is not clear how much risk of the insider threat is increased by sharing credentials. In this paper, we focus on the most significant factor: sharing credential. We conduct an experiment involving 198 subjects on crowd-sourcing service, Lancers, Inc., in order to examine the behaviors that real human subjects follow when attempting to perform malicious activities. The numbers of malicious activities for some groups with/without sharing credentials are observed. To clarify the effects, we performed logistic regression analyses. Our statistical analysis shows that the risk of malicious activities for subjects who share credentials is 3 times greater than that for subjects with individual credentials.
著者
山田 祥子
出版者
北海道大学大学院文学研究科 = Graduate School of Letters, Hokkaido University
雑誌
サハリンの言語世界 : 北大文学研究科公開シンポジウム報告書
巻号頁・発行日
pp.11-26, 2009-03-08

サハリンの先住民族ウイルタの話す言語であるウイルタ語には、ワール(Val)などを含む北の地方とポロナイスク(Poronajsk)などを含む南の地方との間で方言差があるといわれてきた(Novikova & Sem 1997: 214、池上2001[1994]: 249)。しかし、両方言を体系的に比較・対照する研究はこれまでのところ池上(2001[1994];以下、初出年は省略)に限られ、その差異の問題には依然として未解明の部分が多く残っている。現在、ウイルタ語の話者数は全員数えても20 名に満たないとまでいわれている。このような危機的状況のなか、言語の保持・伝承に対する話者や研究者たちの積年の思いが結実し、2008 年4 月この言語初の文字教本(Ikegami et al. 2008)が出版された。その内容は、南北の地方で異なる語形を併記するなど、この言語の方言差の存在をはっきりと意識させるものとなっている。これは、研究者の意図だけでなく、編集に携わった話者たちによる方言区分の認識と志向が如実に反映された結果であるといえよう。しかし、その表記のなかには一貫しない部分も少なからずあり、ここにも今後のより体系的かつ詳細な方言の記述研究の必要性がうかがわれる。そこで本稿は、今後のウイルタ語方言研究において注目すべき課題を提示することにより、本研究の意義と展望を打ち立てることを目標とする。ここでは一貫して、池上(2001)による方言分類にもとづき、南方言を基準とした北方言の相違点を述べるという流れで論を展開する。ただし、本稿で述べるいずれの相違点も今後の調査に向けての問題提起であり、あくまでも今後の検討を要するものであるということをあらかじめことわっておく。全体の構成は以下のとおりである。まず1.では、ウイルタ語の方言分類に関する先行記述を概観する。次いで2.では、池上(2001)の記述にもとづく課題を4 点取り上げ、今ある資料から再検討する。3.では、筆者自身がこれまで南方言を中心に検討してきた課題2点について、方言の観点から再解釈する必要性を提示する。最後に4.で、結論としてこれまでの論点をまとめ、今後ウイルタ語北方言の調査を行なう展望を述べる。
著者
小川 和男 山田 省三 寺田 忠史 山崎 富生 本邦 隆次
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.2256-2265, 1985-06-25 (Released:2008-03-31)
参考文献数
21
被引用文献数
1 6

2-Aklylidene-4-arylidene-1, 3-oxathiolan-5-one (III-1a-m) and 2, 4-diarylidene-1, 3-oxathiolan-5-one (III-2a-i) derivatives were synthesized by treating β-aryl-α-mercaptoacrylic acids (I) with alkanoic acid anhydrides (II) or by treating α-acylthio-β-arylacrylic acids (V) with thionyl chloride in dimethylformamide. Basic hydrolysis and methanolysis of III-1 and III-2 in the presence of lithium hydroxide easily occurred to give the corresponding ring-cleaved products, the carboxylic acid (I and II) and the ester (VII and VIII), respectively. The catalytic hydrogenation of the two olefinic bonds of III-2 in the presence of 10% palladium charcoal proceeded easily without ring cleavage to give 1, 3-oxathiolan-5-one (IXa-e) derivatives. The oxidation of III-1 and III-2 with m-chloroperbenzoic acid afforded the corresponding 1, 3-oxathiolan-5-one S-oxide (Xa, b) derivatives.
著者
角山 浩三 今中 誠 古川 九州男 岸田 朗 山田 恭裕
出版者
The Iron and Steel Institute of Japan
雑誌
鉄と鋼 (ISSN:00211575)
巻号頁・発行日
vol.75, no.11, pp.2090-2097, 1989-11-01 (Released:2009-06-19)
参考文献数
5
被引用文献数
4 4

The influence of base metal surface roughness parameters on the clarity of painted automotive cold rolled sheet steels was investigated. The sheet steels were dull finished by shot blasting, electro-discharge texturing or laser dull texturing. It was found that the painted clarity improved with decreasing of Ra, while it scarcely depended on PPI. Characteristic of the surface profiles of base metal was the waviness with wavelength of hundreds micron. Whose trace remained after coating and deteriorated the clarity. In shot blasting, the dendritic microstructure and the statistical fluctuation of grit collision generated the waviness and made it difficult to control its wavelength. And, in electro-discharge texturing, it is suggested, controlling the waviness is difficult similarly. In laser dull texturing, it was possible to reduce the wavelength of waviness to less than hundreds micron and then to improve the clarity without deteriorating the press formability. A larger fraction of flat portion in laser dull texture was also responsible for the improvement of clarity.
著者
寺田 忠史 藤本 勝彦 野村 誠 山下 純一 小武内 尚 武田 節夫 / 山田 雄次 山口 秀夫 Hideo YAMAGUCHI
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.40, no.10, pp.2720-2727, 1992-10-25 (Released:2008-03-31)
参考文献数
34
被引用文献数
21 27

Various podophyllotoxin derivatives from desoxypodophyllotoxin (DPT) were synthesized to examine the structural relationships between the biological significance (cytotoxic effect, effects on DNA topoisomerase II and tubulin polymerization) in vitro and antitumor activity in vivo (L 1210).An intact 6, 7-methylenedioxy group of DPT is necessary to inhibit tubulin polymerization and topoisomerase II. 4'-Phenolic hydroxyl group of DPT is essential to inhibit DNA topoisomerase II and the inhibitory effect on DNA topoisomerase II contributes to a high cytotoxicity.The introduction of an aminoalkoxy group at 1-position of DPT enhances the inhibitory activity against DNA topoisomerase II and cytotoxic effect, causing the inhibitory activity against tubulin polymerization to disappear. The results of antitumor test in mice bearing L 1210 on podophyllotoxin derivatives suggest the following : 1) the strong cytotoxic effect itself is not a good indication of antitumor activity in vivo as long as it is associated with inhibition of tubulin polymerization. DNA topoisomerase II inhibitory effect contributes to an antitumor activity in vivo; 2) detailed measurements of cytotoxicity and inhibition on DNA topoisomerase II and tubulin polymerization in vitro are necessary to evaluate podophyllotoxin derivatives.