著者
丸山 智朗 岡本 研
出版者
日本甲殻類学会
雑誌
CANCER (ISSN:09181989)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.5-18, 2022-08-01 (Released:2022-08-24)
参考文献数
24

Monthly quantitative sampling of caridean shrimps and prawns, and logging of river water temperatures were undertaken over 13 months in the Kawazu-yatsu and Ogamo Rivers, Izu Peninsula, and the Morito and Shimoyama Rivers, Miura Peninsula, Japan in order to clarify the overwintering status. Low water temperature tolerances of 9 major species were also examined using culture experiments. Water temperatures in the Kawazu-yatsu River were highest throughout the year due to the inflow of hot spring water. Fifteen shrimp and prawn species were collected, the number of individuals tending to decrease in winter in most. In particular, two species, Macrobrachium australe and M.lar, which have low tolerance to low water temperature were found only in autumn in three rivers except Kawazu-Yatsu River, and it was confirmed that they died due to low water temperature in winter. The rate of decline from autumn to winter for the species established in the study area was the lowest in Paratya compressa, which has the highest tolerance to low water temperatures, and in the Kawazu-Yatsu River, which has the highest water temperatures. The decrease in the populations of M. formosense, M japonicum, Caridina leucosticta and C. typus occurred earlier than the decline in river water temperatures, suggesting that they moved to places where it is difficult to collect them, such as deep pools.
著者
加藤 航平 武山 佳洋 木下 園子 岡本 博之 前川 邦彦 森 和久 成松 英智
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.7, pp.399-405, 2013-07-15 (Released:2013-10-16)
参考文献数
16
被引用文献数
2 2

【背景】一般に骨折のスクリーニングにおいて血液検査はあまり有用ではなく,その意義は主に合併する疾患や既往のための検査である。我々は骨折と血清D-dimer値(DD)の関連について調査し,その診断的意義について検討した。【仮説】DDの上昇は,多発外傷を伴わない鈍的外傷患者において骨折と関連がある。【方法】2008年1月から2010年2月までの約2年間に市立函館病院ERに搬入された症例を後ろ向きに検討した。鈍的外傷患者で,DDを測定された症例を対象とした。このうち専門医による最終診断が得られない症例,受傷から24時間以上が経過している症例,多発外傷,頭蓋内損傷,大動脈疾患,最近の手術歴がある,膠原病・麻痺・血栓症の既往,悪性腫瘍のある症例を除外した。最終診断名から骨折群と非骨折群に分類し,年齢,性別,ER(emergency room)における初期診断,専門医による最終診断,搬入時のDDとの関連について後ろ向きに検討し,ROC解析からそのcut-off値を計算した。【結果】対象となった341例中210例(61.6%)が骨折群,131例(38.4%)が非骨折群に分類された。骨折群は非骨折群に比較して有意に高齢であった(61±23 vs. 49±23 歳, p<0.01)。DD(μg/ml)は骨折群で有意に高かった(DD, median(IQR): 8.4(3.0-24.9)vs. 1.4(0-3.1),p<0.01, ISS, mean±SD: 7.4±3.9 vs. 2.8±2.6, p<0.01)。ROC(receiver operating characteristic)解析からROC曲線下面積は0.81(95%CI 0.77-0.86)で最適なcut-off値はDD ≥4.5μg/mlで,感度69.0%,特異度84.7%,陽性的中率90.6%であった。【結論】骨折群では非骨折群と比較してDDは有意に上昇しており,診断の参考指標として有用と考えられた。今後さらなる検討が必要である。
著者
岡本,一
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産學會誌
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, 2001-05-15

魚の摂餌行動に及ぼす背景色の影響をみることを目的とした水槽行動実験を行った。供試魚にはスズキを用い, 白, 赤, 緑, 青を背景色として擬餌5種類(白, 赤, 緑, 青および透明)を同時に投入し, 擬餌に対する魚の行動記録を水中ビデオカメラで撮影記録し, 解析した。背景が白では, 緑の擬餌に対する食付き頻度が顕著に高かった。また, 背景が赤および青では, 透明および白の擬餌に高い食付き頻度を示した。高頻度で選択される擬餌の色は背景色によって異なり, 背景色とルアー色の普遍的な組み合わせは見出せなかった。
著者
中馬 猛久 牧野 孝二 岡本 嘉六 柚木 弘之
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.1011-1015, 1997-11-25
被引用文献数
11 40

ブロイラー農場からのCampylobacter jejuniとCampylobacter coliの分離率は33.9% (56農場中19農場) であった. C. jejuni陽性の鶏群は20.0% (85鶏群中17群) C. coli陽性の鶏群は4.7% (85鶏群中4群) であった. PCR法と制限酵素Ddelを用いて解析したところ, 標準菌株のC. jejuni ATCC 33560を含め合計22株中のフラジェリン遺伝子のrestriction fragment length polymorphism (RFLP) は14パターン (flaタイプ) であった. 同一農場の異なる飼育サイクルのブロイラーから異なるflaタイプのCampylobacterが分離された. 4株のC. jejuniが4ヶ所の種鶏場から分離され, それらの種鶏由来のブロイラーから4つのflaタイプのC. jejuniが分離された. ブロイラーから分離されたC. jejuniのうち3つのflaタイプは, それぞれの種鶏から分離されたC. jejuniのflaタイプとは異なっていた. また, それぞれの飼育農場での次回の飼育サイクルにおいて異なる種鶏から導入されたブロイラーからは他の3つのバflaタイプが検出された. 以上の所見から, RFLPを用いた解析はブロイラーにおけるC. jejuniとC. coliによる汚染の疫学的研究に使用でき, さらに, もし同一の農場であっても飼育サイクルの異なるブロイラーにおいては異なるタイプのCampylobacterに汚染される可能性が高いことが示唆された. また, これらの所見は種鶏からブロイラーへのC. jejuniとC. coliの垂直汚染はありそうにないことを支持した.
著者
名取 良太 岡本 哲和 石橋 章市朗 坂本 治也 山田 凱
出版者
関西大学
雑誌
情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.31-42, 2016-08-10

地方議会は,民主主義において重要な役割を担う存在である.しかしながら,日本の地方議会は,多くの市民から信頼されず,その役割を十分に果たしていないと考えられている.ところが,「地方議会が十分に役割を果たしていない」と主張するための定量的な根拠は,ほとんど示されていない.その原因の一つは,地方議会に関する膨大な資料から,適切なデータを取得するのが困難なことにある.そこで我々は,会議の開催状況や議案の審議過程,各議員の属性・発言内容・議案への賛否態度などを,定量データとして格納した地方議会データベースを開発した.本論文では,会議録や広報紙などから,どのようにデータテーブルを作成したかを説明するとともに,データベースを活用してどのような分析が可能になるかを紹介していく.
著者
岡本 百合 三宅 典恵 永澤 一恵
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.44-50, 2017 (Released:2017-01-01)
参考文献数
20

精神科・心療内科の臨床場面では, 背景に自閉症スペクトラム (ASD) をもつ成人例が多いといわれている. 特に知的障害のない高機能ASD者は, 診断が遅れ, それまでにさまざまな傷つきを経て不適応に至っている例が多いと思われる. われわれは, ASD特性をもつ思春期青年期の若者の臨床像と支援について論じた. 受診した42例について, 過去の心身症症状について検討したところ, 幼少期に心身症症状を呈し, 思春期青年期に気分障害, 不安障害, 摂食障害などに変化していく例が多かった. また, 青年期の適応良好例に前思春期・思春期前期に治療を受けていた者が多かった. 心身症症状として表れる幼少期または前思春期・思春期前期に何らかの治療や支援があると, その後の適応が良好となる可能性が示唆された. また, 摂食障害とASDは共通点も多い. 症例の紹介とともに, 関連性について論じた.
著者
岡野 由利 岡本 存生 山村 達郎 正木 仁
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.411-416, 1996-03-15 (Released:2010-08-06)
参考文献数
5

毛髪の成長は多くの要因によって複雑に制御されている。男性型脱毛症の原因のひとつとして男性ホルモンの作用が挙げられる。男性ホルモンであるテストステロンは5α-ReductaseによってDHTに変換され, さらにDHTがレセプターに結合することによってホルモン作用を発揮する。そこで我々は80種類の植物抽出液を調整し, この中から5α-Reductase阻害作用を示す成分のスクリーニングを行った。その結果ホップ抽出液が高い阻害作用を示すことがわかった。さらに, ホップ抽出液には培養毛根由来細胞の増殖を促進する作用が認められた。この抽出液を用いてマウスを用いた育毛養毛試験を行ったところ, ミノキシジルと同等の発毛促進作用を示した。また, ヒト頭髪に用いた場合には毛髪成長速度を促進する作用があることも認められた。長期使用試験においても良好な結果が得られたことから, ホップ抽出液は有効な育毛養毛用化粧品原料であることが示された。
著者
岡本 隆寛
出版者
日本リハビリテーション連携科学学会
雑誌
リハビリテーション連携科学 (ISSN:18807348)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.11-22, 2020-06-30 (Released:2020-12-01)
参考文献数
36

【目的】地域生活する統合失調症者の利用する施設・就労状況の違いやセルフスティグマ, 対人関係因子と, リカバリーレベルとの関連を明らかにすることを目的とした. 【方法】デイケア, 就労継続支援A/B型事業所, 特例子会社を利用する342名を対象に, 日本語版 Recovery Assessment Scale によるリカバリーレベルと Link スティグマ尺度, 情緒的支援ネットワーク尺度, ピアサポート経験, 趣味, 病名開示などの個人属性を評価した. 【結果】統合失調症者のリカバリーレベルは, 利用するサービスや就労状況により差異がみられなかった. 重回帰分析では, 職場や友人/医療者からの高い情緒的支援の認知, 低いセルフスティグマ, 趣味, 高年代, 初診年代の低さが有意な変数として選択された. 【結論】就労の有無や利用施設の違いよりも, 他者からの情緒的支援やセルフスティグマの軽減がリカバリーを促進する可能性が示唆された.
著者
地主 敏樹 岡本 光技 高橋 豊治
出版者
神戸大学
雑誌
國民經濟雜誌 (ISSN:03873129)
巻号頁・発行日
vol.189, no.5, pp.47-64, 2004-05
著者
岡本 隆一 畑中 博文
出版者
Japan Society of Engineering Geology
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.208-216, 1981-06-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
7

The Abo Tunnel is planning as a vehicular tunnel with a length of 4.3km from Takayama city to Matsumoto city. The area is occupied by Paleozoic clastic rocks and Quapernary pyroclastic rocks and lava. These rocks distributed in Nakanoyu hot spring, east. portal of this tunnel, were subjected to hydrothermal alteration. So following geological investigations have been conducted for the past 10 years.1) Survey on distribution characteristics of hydrothermal altered zones.2) Estimation of underground structure of hydrothermal altered zone by geothermal prospecting.3) Geophysical logging of vertical and horizontal drilling hole and laboratory tests of obtained core.The results are summarized as follows.1) The methods of 1) and 2) are effective at early geological survey stage.2) Geothermal zones are associated with hydrothermal solution and overheated vapour rich in poisonous gas. Geothermal gradient falls off in proportion to the distance from Azusa river bed.3) At the same point, the temperature measured in horizontal drilling hole is mostly higher than that of vertical drilling hole because of pressure depression. Long horizontal boring is necessary to estimate a discharge of hydrothermal solution.4) Along this tunnel, high-temperature zone is traceable for a distance of 1.5km, and there, the temperature reaches from 60°C to 90°C for a distance of 1.0km.
著者
岡本 義信 平川 義宏 松野 知宏
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.25, no.20, pp.47-52, 2001-02-23
参考文献数
4

中国放送では、雷の発生を早期に知り無線設備の運用で出来る限り雷の被害を防ぐための研究をおこなっている。我々は雷から発生する電磁波と誘起される高電圧を検出する検知機を作り、観測システムを構成して試験をおこなった。その結果、雷の発生を早い段階で知り、親局の商用停電による放送事故を防止することに成功した。
著者
岡本 泰昌
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.126, no.3, pp.194-198, 2005 (Released:2005-11-01)
参考文献数
9
被引用文献数
6 12

われわれはストレスの適応破綻の脳内メカニズムを明らかにするために,脳機能画像解析法を用いた検討を行っている.本稿ではその研究成果を中心に報告したい.まずストレス事象がどこで認知されるかを明らかにするために対人関係ストレスに関連する単語の認知の機能局在に関する検討を行った.次にストレスが脳内機構に与える影響について明らかにするために急性ストレスの感覚入力系に及ぼす影響について検討した.最後に予測がストレスへの適応破綻の防止に有効であると考え,ストレス事象の予測に関する脳科学的検討を行った.その結果,ストレス事象は脳内において認知されること,急性ストレスにより脳内機構の一部に変化が生じること,予測がストレス事象の入力を抑制する可能性が考えられた.さらに,これらの機能において前頭葉が重要な役割を果たしていることが推定された.
著者
小山 善之 熊取 敏之 澁谷 敏三 新谷 和夫 福田 龍三 今村 幸雄 佐野 一郎 鴫谷 亮一 古屋 曉一 河野 實 日野 佳弘 渡邊 孝 武正 勇造 中村 なをゑ 小澤 義光 林 康之 平島 信子 早船 喬一 濱口 榮祐 木村 信良 神田 清 岡本 十二郎 濱田 政彦 大橋 成一 橋本 敬祐 小酒 井望 石井 暢 天木 一太 深澤 義明 貴船 トミ子 松村 義寛 中野 巖 種田 強一郎 林 義次 村田 貢
出版者
Japanese Society of National Medical Services
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.5-45, 1955

This paper is an intermediate report of the clinical observations and various investigations made upon the 16 patients of the radiation sickness caused by BIKINI ashes on. 1st March 1934. The patients were admitted to the First Tokyo National Hospital on March 28th, and this report shall be for the period of the 5 months from March 28th to the end of August, 1964. Later, a thorough and complete report will be given, in which some amendments may be added to the present paper.<br>INTRODUCTION: At 3.50 a. m. on 1st March 1954, the 5th Lucky Dragon, a fishing boat, with a crew of twenty three on board, was located at about 100 miles east of BIKINI. The boat was under grey-white ash-fall for more than 5 hours. The crew was exposed to the ash-fall for 1.5 to 5 hours. The evening of that day they suffered from headache, anorexia, conjunctivitis and later nausea, vomiting, exhaustion and diarrehea, Several days later they suffered from itching, pain, rash, and erosion on the exposed skin areas. One week later two of the crew had hemorrhage of gingiva and some of the crew suffered from depilation. On March 19th, the boat returned to its base at Yaizu. On March 16th, the crew was admitted to the Kyoritsu Yaizu Hospital and on March 28th, 16 patients out of 23 were transfered to our hospital (the First Tokyo National Hospital).<br>On March 26th, Prof. Kimura's laboratory of Tokyo University made the analysis of the ashes taken from the 5th Lucky Dragon and found the following radioactive substances: Sr-89, Sr-90, Y-90, Y-91, Zr-96, Nb-95m, Nb-95, Ru-103, Ru-106, Te-129m, Te-129, Te-132, I-131, I-132, Ba-140, La-140, Ce-141, Ce-144, Pr-143, Pr-194, Nd-147, Pm-147, S-35, Ca-45, U-237, and Pu-239. The remaining radiation of the boat was investigated by Dr. Kakei et al. of March 17th and found it to be around 100mr/hr. Upon this data the total radiation was estimated at a count of 270 to 440γ. on the crew. In addition to the external exposure of such radiation, internal exposure, such as respiration of contaminated air, drinking of contaminated water and taking of contaminated food, shall be taken into consideration in the present cases. Radioactivity was found in the bile and urine taken from the patients.<br>GENERAL REMARKS: The 16 cases were strong young men but their body weight began to decrease from the middle of May and high or slight fever, anorexia, feeling of exhaustion, diarrhea and headache continued.<br>Skin and Hair: Irregular depilation, depigmentation, pigmentation with rain and itching, and erosion was observed. Some cases had folliculitis with pustules in April, while others recovered from erosions and at the end of May, regeneration of hair began. In July, hair condition was almost normal.<br>Blood and Bone-marrow: At the middle of April, the lowest peripheral leucocyte count was less than 2, 000. Two cases who had lower leucocyte count recovered earlier, i. e., their leucocytes increased to around 5, 000 at the middle of May. Meanu hile, the other cases had from 3, 033 to 4.000 count during the entire period. The former cases had also moderate anemia while the latter had only slight anemia. Blood platelet count of the former cases was less than 20, 000 and the recovery was slower than that of the leucocyte count. Reticulocyte count kept pace with that of leucocyte. In the former cases, myelocyte and other immature blood cells appeared temporarily in the circulated blood and eosinophile cells increased. The count of bone-marrow cells decreased remarkably (8, 000), i. e. panmyelophthisis, which later recovered slowly. In the latter cases, peripheral leucocyte findings and myelogram had almost no changes from the beginning of our observation and count of bone marrow cells was remarkably different by the sites of bone-marrow puncture. Vacuole and toxic granula appeared in the neutrophile cells in the circulated blood and vacuoles also appeared in lymphocyte and monocyte.
著者
桝屋 隆太 岡本 好司 木戸川 秀生 山吉 隆友 野口 純也 伊藤 重彦 南川 将吾 神薗 淳司 家入 里志
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.864-869, 2019-06-20 (Released:2019-06-20)
参考文献数
38

14歳男児.日常的にサーモンの刺身を食べていた.突然生じた右上下腹部痛のため当院を受診したところ同部に筋性防御,反跳痛を認めた.血液生化学検査で白血球および肝胆道系酵素の上昇を,腹部造影CTでは胆囊周囲および右下腹部に腹水貯留を認めたが胆石や胆管拡張の所見はなかった.審査腹腔鏡では黄色透明な胆汁性腹水貯留および胆囊漿膜の黄色変性を認めたが,明らかな穿孔部位はなく,胆囊摘出は施行せず腹腔内を洗浄しドレーンを留置して終了した.全身状態は速やかに改善し,術後1日目に腹痛はほぼ消失しドレーン排液も淡血性となった.原因検索のため便を鏡検したところ多数の虫卵を認め,形状から日本海裂頭条虫と診断した.プラジカンテル内服により翌日虫体が排泄され,腹部症状の再燃なく経過し,術後14日目に軽快退院した.条虫の感染を伴う漏出性胆汁性腹膜炎は極めて稀であり,文献的考察を踏まえ報告する.