著者
佐藤 暢人 岩井 和浩 狭間 一明 京極 典憲 細井 勇人 溝田 知子
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.346-351, 2013 (Released:2013-08-25)
参考文献数
10
被引用文献数
4 6

症例1は69歳の男性で交通外傷にて搬送され,腹腔内遊離ガスを認めたが,腹部症状を伴わず,経過観察を行った.入院後,発熱と炎症反応の亢進を認めた.症例2は40歳の女性で腹痛にて搬送され,腹腔内遊離ガスを認めた.症例3は90歳の男性で発熱と呼吸不全にて搬送され,精査目的の画像検査で腹腔内遊離ガスを認め,腹部に圧痛を伴った.症例4は86歳の男性で肺癌多発転移の疼痛管理目的に入院中,精査目的の画像検査で腹腔内遊離ガスを認め,腹部に圧痛を伴った.4症例とも,消化管穿孔を否定できず,手術を施行したが,術中所見で消化管穿孔を認めず,特発性気腹症と診断した.症例5は50歳の女性で肝血管腫の経過観察のCTで腹腔内遊離ガス像を認めた.腹部所見は軽度で炎症所見も認めず,特発性気腹症と診断して経過観察を行い,症状の増悪なく退院に至った.比較的まれな特発性気腹症の5例を経験したので検討を加えて報告する.
著者
大海 昌平 永井 弓子 岩井 紀子
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.2044, 2021-10-31 (Released:2021-12-31)
参考文献数
16

アマミイシカワガエルは奄美大島の固有種であり、鹿児島県の天然記念物に指定されている絶滅危惧種である。成体の生態調査は行われてきているものの、幼生の生態についての知見が不足している。本種の幼生期間における流下状況を明らかにするため、野外の沢において蛍光タグを用いた標識と追跡調査を行った。幼生 283個体を標識したのち渓流源頭部のプールに放流し、その後 2年間、 1-3か月に 1度の沢調査を計 13回行った。調査沢を 6mごとに区切って沢区間とし、沢の開始点から 303 m下流までを対象とした。のべ 9642個体の幼生をカウントした。標識個体は放流から 736日経過後まで発見された。放流したプールから標識個体が発見された最下流までの距離は、 29日後は 56-62 m、261日後は 62-68 m、320日後から 682日後までは 128-134 mであった。発見した標識個体の分布から推定した推定最長流下距離は、 29日後は 85.3 m、320日後は 89.9 mで 1年間に 85-95 mの間を示し、変化が小さかった。これらの結果から、調査沢における幼生は 2年間で最長 130 mほどの流下を行うが、 85-95 m付近までの流下が一般的であると考えられた。放流 29日後以降、流下した最下流までの距離に大きな変化はみられず、時間の経過と比例して距離が延びるわけではなかった。また、ある調査日に発見した標識個体の総数に占める、放流プールに残留していた標識個体の割合は、時間の経過とともに上昇した。このため、幼生の流下は主に個体サイズが小さい時期の豪雨といったイベントの際に起こり、それ以降は稀である可能性や、流下した幼生の生存率が低い可能性、下流のプールでは上流より流下が起こりやすい可能性が示唆された。本種幼生の生息環境を保全する際には、産卵場所付近のみではなく、流下先としての下流部の環境も対象とする必要性が示された。
著者
小池 龍信 岩井 輝男 中西 正和
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.40, no.7, pp.1-8, 1999-08-15
参考文献数
8
被引用文献数
1

ごみ集め処理(GC)を必要とする言語がいくつか存在し Lisp言語などのような関数型言語処理系にはGCが不可欠である.これらの処理系は 実時間性に向いてないとされてきた.理由としては GCを行っている時に処理が一時中断することがあげられる.この中断時間をできるだけ減らすための研究がなされている.このようなGCを実時間GCと呼び その中の一つにTreadmill GCがある.Treadmill GCは複写式GCを改良したものである.このGCでは全てのオブジェクトを双方向環状リストで連結し GCは複写によるオブジェクトの移動ではなく 双方向ポインタのつけかえ(relink)で実現する.これにより複写式GCの利点を保持し さらにオブジェクトの移動を行わないため複写式GCで問題となるreadバリアが解消されている.Treadmill GCの時間的コストは生きているオブジェクトの数に比例する.よって生きているオブジェクトが多い場合には実時間性が乏しい.この問題点の解決方法として世代別GCの考えを取り入れた.世代別GCの考え方は ある程度生き続けたオブジェクトは半永久に生き残り また生成して間もないオブジェクトの殆どは寿命が短いというものである.本稿では 世代別GCの考えを取り入れたTreadmill GC(Opportunistic Treadmill GC)の提案及びその実現方法 さらにいくつかのベンチマークアプリケーションを実行し その実験結果から1回のGC時間 総実行時間を削減したことについて報告を行う.Real-time Garbage Collection is a study that makes pause time of GC as short as possible. Treadmill GC, one of the real-time GC algorithms, is improved Copying GC. In this scheme all objects are linked by cyclic doubly-linked lists (treadmill). Objects are not removed by copying, and objects' pointer of treadmill are relinked. This means that advantages of Copying GC are preserved, solving read barrier problem at the same time. We propose the "Opportunistic Treadmill GC", which is a Garbage Collection technique that the collector traces only short-life objects, setting long-life objects out of collector's view. There is a strong evidence that the overwhelming majority of objects die very young, although a small proportion may live for a long time. In Treadmill GC, pause time of GC is mostly the time for relinking alive objects. Especially in the original Treadmill GC, collector has to relink all alive object. However in Opportunistic Treadmill GC, collector only has to relink short-life objects of all alive objects. Hence we can make a pause time of GC shorter and improve effective real-time GC. Then we implemented the original Treadmill GC and Opportunistic Treadmill GC on an incremental garbage collector of the Lisp1.5 based system, and showed how efficient it is by a few experiments, in comparison with the original Treadmill GC, we could decrease average time of one GC execution as well as total execution time. We refined incremental GC so that the real-time systems with our Opportunistic Treadmill GC will be more useful.
著者
山内 健生 小原 真弓 渡辺 護 安藤 秀二 石倉 康宏 品川 保弘 長谷川 澄代 中村 一哉 岩井 雅恵 倉田 毅 滝澤 剛則
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.23-31, 2009
被引用文献数
1

1991-2007年に富山県においてフランネルによるマダニ採集を行い,3,562個体のマダニ類を採集した.これらのマダニ類は次の2属9種に分類された:キチマダニHaemaphysalis flava,ヤマトチマダニH.japonica,ヒゲナガチマダニH.kitaokai,フタトゲチマダニH.longicornis,オオトゲチマダニH.megaspinosa,ヒトツトゲマダニIxodes monospinosus,タネガタマダニI.nipponensis,ヤマトマダニI.ovatus,シュルツェマダニI.persulcatus.ヤマトマダニは標高401m以上の地域における最優占種で,それより低い標高域においても少なからぬ密度で分布することが示された.キチマダニは標高400m以下の地域における最優占種であった.ヒゲナガチマダニ,オオトゲチマダニ,およびヒトツトゲマダニを富山県から初めて記録した.ヒトツトゲマダニからRickettsia helveticaの近縁リケッチアが検出され,富山県における紅斑熱患者発生の可能性が示された.
著者
奥野 淳也 岩井 将行 瀬崎 薫
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.60, 2013

SNSの普及に伴い,現代では日々膨大なデータが蓄積されている.これらのデータの中には,ユーザの行動や興味に関する情報が含まれている.ユーザに関する情報は,都市計画やマーケティング等の分野から注目され,様々なデザインにおいても重要視される.一方で,現代におけるリサーチ手法はパーソントリップ調査に代表されるようなアンケートやワークショップが主流である.これらの手法では参加者の偏り,コスト面,実施期間といった点における問題が指摘されている. このような背景を受けて,SNSやブログからの情報抽出に関する研究が活発に議論されている.これらの研究の多くが,特定のキーワードや人物,地域に関する情報に注目しており,ユーザが意識的に共有する情報だけでなく,潜在的に共有あるいは保持している情報に注目しているものは多くない.本研究ではユーザ自身のSNS上の情報に対する認識範囲に注目し,SNSにおけるユーザの情報の認識範囲を視覚的に把握する手法について提案し,評価を行った.その結果,ユーザが意識していなかったSNS上の情報を把握することができた.今後は考察により明らかとなった課題の改善と,より多くのユーザが利用できるようにアプリケーションを公開することで,行動情報に関するリサーチ手法の一助となるよう研究を継続したい.<br>
著者
勝田 雄治 岩井 一郎 針谷 毅
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.285-291, 2013-12-20 (Released:2015-12-21)
参考文献数
16
被引用文献数
1 3

敏感肌において感覚刺激を受けやすいことの原因の一つとして,角層バリア機能の低下により外来刺激物質が皮膚に浸透しやすくなっていることが考えられている。しかしながら,角層バリア機能がどのように低下しているのかについての詳細は明らかになっていない。そこで,ドライアイの診断法として汎用されているフルオレセイン染色法を皮膚に応用して,非侵襲的手法による角層バリア機能のビジュアル化を試みた。検討の結果,皮膚にフルオレセインを塗布して蛍光を観察することにより,角層深部への水溶性物質の浸透が確認できた。また蛍光強度を定量したところ,経皮水分蒸散量との間に相関が確認された。これによりフルオレセイン染色像が角層バリア機能を反映していることが明らかになり,角層バリア機能のビジュアル化が実現できた。また,角層バリア機能がどの領域で低下しているかを観察することが可能になった。実際にこの方法を用いて敏感肌の頬部皮膚の観察を行ったところ,毛穴周辺領域での角層バリア機能の低下が示唆された。さらにはスキンケア化粧品の連用による角層バリア機能向上のビジュアル化に活用しうることが示された。
著者
岩井 八郎
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.13-32, 2006-04-30 (Released:2007-08-01)
参考文献数
48

本稿は、1980年代半ばより、20年間にわたって展開されてきたライフコースの計量的研究を整理し、今後の研究課題を検討する。ライフコースの計量的研究は、ユニークなライフヒストリー・データを作成した研究と標準化された大規模データを用いた研究に分けることができる。前者の例として、「大恐慌の子どもたち」、「フリーダム・サマー」、「非行少年のライフコース」を取り上げる。後者としては、ドイツのライフヒストリー研究があり、最近では1964年と71年出生コーホートの研究がある。標準化されたデータを用いた研究の課題として、ポスト近代産業社会の段階において生じている、各国のライフコースの変化を比較研究によって明らかにすることが求められている。研究の視点としては「経路依存性」と「個人主義の再構築」が重要である。日本の「現在」を検討するためにも、クロスセクショナルなスナップショットではなく、ライフコース分析の視点が重要である。
著者
岩井 大慧
出版者
慶應義塾大学
雑誌
史学 (ISSN:03869334)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.1-48, 1938-08

口繪:フィラデルフィア インクヮイヤー號外一 はしがき二 太平洋と日米三 日本との交易四 ペリー提督の琉球人歡待五 三使節の署名六 矢立と毛筆七 千二百九十五年マルコポーロの日本に關する報告八 太閤様の御代九 將軍(關白?)の政治的疑懼一〇 千六百年の和蘭人渡來一一 競爭一二 英國人の日本來航一三 和時計一四 日本鍛冶屋と鞴一五 日本の臺所と茶の間一六 下駄・足駄・草履・草鞋一七 日本の樂器一八 トミーと貴婦人一九 海軍兵工廠見學記念撮影二〇 日本料理自炊場二一 日本人安座喫煙二二 日本のクッション二三 日本小部屋の器具二四 結びの言葉
著者
上野 紘一 岩井 修一 小島 吉雄
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.9-18, 1980-01-25 (Released:2008-02-29)
参考文献数
19
被引用文献数
7 11 6

Karyotypes of three spinous loaches, Cobitis biwae, C. taenia taenia and C. taenia striata from western Japan were investigated. As the result, chromosome polymorphisms and polyploid (tetraploid) were observed in these species. (1) C. biwae: Diploid specimens showed 48 chromosomes in 2n number. There were three types in chromosome constitutions such as 22M+20SM, ST+6A, 20M+20SM, ST+8A and 20m+18SM, ST+10A. On the other hand, teraploid specimens were characterized by 96 chromosomes which consisted of 38M+54SM, ST+20A. (2) C. taenia taenia: Diploid specimens with 50 chromosomes were characterized by 12M+4SM+34A. In the tetraploid forms, two types of individuals with 86 and 94 chromosome numbers were foud. These complements were made up of 32M+32SM, ST+22A in the former, and 26M+32SM, ST+36A in the latter. (3) C. taenia striata: Diploid form was the same as that of C. taenia taenia, whereas tetraploid form possessed 98 chromosomes consisting of 20M+22SM, ST+56A. (4) The geographical distribution on each group with different karyotypes showed that they have their own habitats forming respective isolated associations. Systematics and speciation in three species of Cobitidae were discussed on the bases of the karyotypic differentiation and habitat segregation.
著者
佐藤 理 岩井 裕 吉田 英生
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.85, no.871, pp.18-00365, 2019 (Released:2019-03-25)
参考文献数
18

The purpose of this study is to develop an analytical model of cross-flow heat exchangers with offset strip fins which are usually equipped in the aircraft air conditioning system (so called the environmental control system, ECS). The ECS mainly consists of four cross-flow heat exchanges, i.e., a primary heat exchanger, a secondary heat exchanger, a reheater and a condenser. Because of the special requirements of the design for the aircraft, the primary and secondary heat exchangers are set adjoiningly; the reheater and the condenser are also set adjoingly. Therefore, in both the pairs, the effect of the temperature profile of the upstream component (the secondary heat exchanger or the reheater) on those of the downstream component (the primary heat exchanger or the condenser) should be taken into account for precise prediction of the system. To this end, a core element model was newly proposed in this study. In addition to the effect of temperature profile, phase changes (condensation and evaporation) of water included in the humid air simultaneously occur except for the primary heat exchanger. Regarding these phenomena, the method of sensible heat fraction (SHF) to convert the latent heat into the equivalent sensible heat was introduced, and the global and local SHF models were examined by comparison with the experiments. The prediction by these models were found to agree well with the actual performance of the ECS operations.
著者
手塚 純一 大塚 洋子 長田 正章 岩井 良成
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.BbPI2176, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】 長い間、小脳は純粋に姿勢の制御や随意運動の調節を行なうための神経基盤であると考えられてきた。1980年代半ばから、神経心理学・解剖学・電気生理学などの発展により、運動・前庭機能以外にも様々な認知過程に関与することが明らかになってきた。1998年にはSchmahmannとShermanが小脳病変によって生じる障害の4要素(遂行機能障害・空間認知障害・言語障害・人格障害)を小脳性認知・情動症候群(CCAS)として提唱した。しかしながらリハビリテーションの領域では小脳と高次脳機能についての報告は散見されるが症例報告に留まっており、特に理学療法における報告は少ない。本研究の目的は、小脳の損傷部位と臨床症状の関係について量的研究を行ない、理学療法における小脳損傷に伴う高次脳機能障害に対する対処の必要性を明らかにすることである。【方法】1.対象: 対象は2008年1月から2010年10月の間に脳卒中を急性発症し当院に入院した患者連続895例のうち、小脳に限局した病変を有する39例である。除外基準は1)脳室穿破、2)水頭症、3)発症前より明らかな認知機能低下を有する例とした。2.方法 調査項目は年齢、性別、梗塞・出血の種別、画像所見、臨床症状とした。画像所見は入院時に撮影した頭部CTもしくはMRI画像を利用し、小脳の損傷部位を虫部、中間部、半球部に分け列挙した。臨床症状は意識清明となった時点での運動失調、見当識障害、注意障害、記憶障害、言語障害、空間認知障害、人格障害について次の基準で有無を判定し列挙した。運動失調は鼻指鼻試験もしくは踵膝試験での陽性反応を、人格障害はFIM(Functional Independence Measure)社会的交流項目での減点を認めた場合に有とした。それ以外はMMSE(Mini-Mental State Examination )、HDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)の、見当識障害:見当識項目、注意障害:計算項目及び逆唱項目、記憶障害:遅延再生項目、言語障害:物品呼称項目もしくは語想起項目、空間認知障害:図形模写項目、において減点を認めた場合に有とした。3.解析 損傷部位と臨床症状に関連があるかを、フィッシャーの正確確率検定を用いて検討した。なお統計学的判定の有意水準は5%未満とした。【説明と同意】 本研究は個人情報を匿名化した上で、その取り扱いについて当院の規定に則り申請し許可を得た。【結果】1.最終対象者 39例中5例は脳室穿破、水頭症もしくは発症前からの認知機能低下を有し対象から除外した。従って最終対象者は34例(男性18例、女性16例、平均年齢70.2±11.0歳)であった。2.脳損傷様式 小脳梗塞11例、小脳出血23例、損傷部位は虫部~半球部に渡るものが15例、虫部~中間部が8例、中間部~半球部が9例、半球部のみが2例であった。3.臨床症状 項目毎に発生数を計上すると、運動失調31例(91.2%)、記憶障害23例(67.6%)、見当識障害17例(50.0%)、注意障害14例(41.2%)、言語障害9例(26.5%)、人格障害5例(14.7%)、空間認知障害5例(14.7%)であった。上記の症状の多くは合併し、総合すると24例(70.6%)に何らかの高次脳機能障害を認めた。半球部に損傷がある26例のうち22例(84.6%)に何らかの高次脳機能障害を認めた。半球部に損傷がない8例のうち6例(75.0%)には高次脳機能障害を認めなかった。4.解析 検定の結果、有意な独立性を認めた項目は1)虫部~中間部の損傷と運動失調の発生率(p<0.01)、2)半球部の損傷と何らかの高次脳機能障害の発生率(p<0.01)、3)半球部の損傷と記憶障害の発生率(p<0.001)であった。【考察】 半球部は歯状核から視床外側腹側核を経由して運動前野や前頭前野・側頭葉に投射し、小脳-大脳ループとして認知機能に関与している。本研究で半球部損傷の多くに高次脳機能障害を認めたことは、SchmahmannとShermanの報告と一致した結果となった。多くの例に記憶障害を認めたことにより、CCASの概念で取り上げられている作動記憶の障害や視空間記憶の障害だけでなく、エピソード記憶の障害にも小脳が関与している可能性が示唆された。 記憶障害・注意障害等による生活指導の定着率低下や、人格障害による練習の拒否等の問題は、理学療法の進行に大きな影響を与える。半球部に損傷を認めた場合には、高次脳機能障害の有無を精査し対処していく必要があると考える。今後は半球部損傷のみの症例数を増やすと同時に、各臨床症状の半球部における責任領域について検討を重ねていきたい。【理学療法学研究としての意義】 小脳損傷に伴う高次脳機能障害は患者の学習や社会復帰において多大な影響を与える要素であり、理学療法においてもその研究と対策は重要である。本研究はその一助となると考える。

3 0 0 0 IR 小野篁の研究

著者
岩井 美奈 Mina Iwai
出版者
フェリス女学院大学国文学会
雑誌
玉藻 (ISSN:02887266)
巻号頁・発行日
no.52, pp.103-127, 2018-03
著者
岡坂 昌子 宮本 武晃 岩井 喜代仁 福島 ショーン 平山 晶一 オカサカ ヨシコ ミヤモト タケアキ イワイ キヨヒロ フクシマ ショーン ヒラヤマ ショウイチ Okasaka Yoshiko/ Miyamoto Takeaki Kiyohiro Iwai Shonne Fukushima Shoichi Hirayama
雑誌
浦和論叢
巻号頁・発行日
no.50, pp.31-42, 2014-02

背景:薬物依存症者の刑務所への再入所率は非常に高い。目的:民間の薬物依存症リハビリテーション施設に在籍している刑事処分歴のある薬物依存症者の実態を調査し、再犯を防止するための若干の提言を示すことを本研究の目的とした。方法:13の民間の薬物依存症リハビリテーション施設において、刑事処分歴のある薬物依存症者112名を調査した。結果:112名の刑務所入所回数は、平均2.0回であった。また、平均2.7回目の刑務所入所の後に薬物依存症リハビリテーション施設に入寮していた。保釈後、あるいは刑務所出所から再逮捕までの期間は、1年以内が55.3%であった。結論:刑事処分歴のある薬物依存症者は、少なくとも刑務所出所後の1年間は薬物依存症の治療プログラムが必要であると思われた。Background:The percentage of drug-addicts re-entering prison are very high.Objective:We examined drug addicts who were admitted to private drug-rehabilitation institutions with a history of criminal offences/incarcerations. The goal would be to minimize or prevent, even by little, the re-occurrence of criminal offences/incarceration.Methods:This survey was conducted on 112 drug-addicts with a history of criminal offences/incarceration, at 13 various private drug-rehabilitation institutions.Results:The average prison incarceration rate was two times. The drug-addicts were admitted to drug-rehabilitation institutions after an average of 2.7 prison terms. Fromthe time of release, be it released on bail or released from prison, 55.3% were re-arrested within one year.Conclusion:These results suggest that it is necessary for drug-addicts with a history of criminal offences/incarcerations to receive at least one year of drug-addiction treatment.