- 著者
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川名 敬
- 出版者
- 日本臨床免疫学会
- 雑誌
- 日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
- 巻号頁・発行日
- vol.38, no.4, pp.251-251, 2015 (Released:2015-10-25)
子宮頸癌は30歳代に罹患ピークがあり,年間約7000人が発症し,約3000人が死亡する癌である.ヒトパピローマウイルス(HPV)が原因であることは周知であり,HPVを標的とした癌免疫療法が期待されてきた.20年以上の開発の歴史の中で製剤化されたものはない.我々は,粘膜免疫を誘導する免疫療法を開発し,子宮頸癌前癌病変(CIN3)を対象とした臨床試験を実施した.HPV癌蛋白質E7を表出した乳酸菌をCIN3患者に経口投与し,HPV特異的細胞性免疫を腸管粘膜に誘導し,腸管粘膜由来のintegrin beta7陽性リンパ球を子宮頸部病変に見出した.そのうち,HPVE7特異的IFNgamma産生リンパ球の子宮頸部粘膜の集積と臨床的病変退縮は相関した.この臨床試験のデータをもとに,E7表出乳酸菌を改良し,現在第二世代乳酸菌ワクチンを製剤化している.一方,integrin beta7陽性リンパ球が子宮頸部粘膜上皮にホーミングし,かつ集積することがCIN3病変を排除することに寄与することを見出したので,細胞療法として,これらの細胞に山中因子を導入するT-iPS技術を応用することをめざしている.本講演では,これまでの粘膜免疫を介した新しい免疫療法の臨床成果と今後の新技術(特に再生医療)との複合について紹介したい.