著者
後藤 義明 金子 真司 池田 武文 深山 貴文 玉井 幸治 小南 裕志 古澤 仁美
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.327-336, 2004-11-16
参考文献数
36

人工的に調整した海水をクヌギ林に散布して,空中消火による海水の散布が森林に及ぼす影響を調査した。海水散布後の樹冠通過雨の導電率(EC)およびNa^+,Cl^-濃度は急激に上昇したが,降雨とともに低下し,2カ月後には平常の状態に回復した。土壌抽出水のECは海水散布の1週間後にピークに達し,その後は徐々に低下していった。土壌抽出水のECが最も高かった1週間後であっても土壌に残留する塩分は植物に障害を与えることはないであろうと判断された。海水散布の2日後には葉に褐変が現れ,11日後にはほとんどの葉に壊死が生じた。木部圧ポテンシャルの測定から,この褐変は葉が水ストレス状態になったことによる萎凋ではなく,海水による葉への直接的な影響によるものと考えられた。海水散布後の5カ月間は落葉量が増加したが,それ以降は海水散布の影響は現れなかった。胸高直径および樹高成長,堅果生産量にも海水散布の影響は現れなかった。今回の実験により,海水16mm(16Lm^<-2>,散布時間約10分)程度の散布量であれば,クヌギの生育に大きな影響を及ぼすことはないと判断された。
著者
森野 比佐夫 後藤 敏行 田村 直良
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.J85-D1, no.5, pp.402-410, 2002-05-01

点字楽譜は一般には五線譜として2次元的に表記される音楽情報を,点字を用いて表現するものである.本研究では,点字楽譜から五線譜を生成するための機能実現の第1段階として,点字楽譜の自動解析手法について検討を行った.点字楽譜を言語として見る場合,音符や曲想記号他の楽譜上の音楽情報を単語とする文と見ることができる.点字楽譜を計算機で解析するにあたって,単語(終端記号)が区切り記号のない不定長であり,単語に多義性があること,複数の修飾状態が交差することなど言語的な煩雑さを含むという問題がある.本論文では,点字楽譜のもつ問題や特殊性について議論するとともに,点字楽譜を文脈自由文法に基づく人工言語としてとらえ,言語処理の枠組みを用いた解析手法を提案する.更に,実際の点字楽譜を用いた評価実験の結果について報告する.
著者
渡辺 麻衣子 加藤 裕子 戸上 敬子 山中 実喜子 若林 佳子 小川 裕由 稙田 裕子 後藤 慶一 工藤 由起子 天野 典英 横田 明
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.82-87, 2008-04-30 (Released:2008-05-26)
参考文献数
18
被引用文献数
4 3

Byssochlamys spp. について,簡便,迅速かつ正確に種を同定するために有効な遺伝子指標を評価する目的で,26株のByssochlamys spp. および関連菌種の18S rDNA, 26/28S rRNA遺伝子D2領域およびlys2 の塩基配列を決定し,分子系統解析および相同性解析を行った.その結果,いずれの遺伝子を用いても,その塩基配列の相同性を指標として,それぞれの菌種あるいはグループを識別することができた.3種類の遺伝子のうち,最も優れた解像度を有するのはlys2 であったが,最も簡便に結果を得ることができたのは26/28S rDNA D2領域であった.また,分子系統解析の結果,Byssochlamys spp. とその関連菌種は再分類の必要性があることが示唆された.
著者
後藤 哲雄 穐澤 崇 渡邊 匡彦 土屋 明子 嶋崎 明香
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.93-103, 2005-11-25
被引用文献数
1 25

ミヤコカブリダニ(ミヤコ)の個体数は, 1990年以降に日本各地で急激に増加し, 関東以西の慣行防除果樹園ではそれまでの優占種であったケナガカブリダニ(ケナガ)と置き換わってきている.一方, 北日本への分布の拡大傾向は小さい.このような種の置換と分布拡大の要因を明らかにする一環として, 本報告ではミヤコの休眠性の有無と2種の耐寒性を報告する.ミヤコは, 短日条件と長日条件の産卵前期間が同じであり, 休眠性はなかった.2種間およびケナガの休眠と非休眠個体間の過冷却点(supercooling point)に有意差はなく, -21.9〜-23.3℃であった.ケナガ・休眠雌は, -5℃で7日以上生存した(>50%)が, ミヤコとケナガ・非休眠雌は5日以内に70〜85%が死亡した.このことからミヤコの北進が遅いのは耐寒性がわずかに弱いことも一因であると考えられた.一方, いずれの種においても生残した雌は20℃長日条件下で2個体を除いて産卵し, 産下卵の大半がふ化した.従って, 低温ストレスは産卵数やふ化率への影響が少なく, ミヤコも冬季の低温条件下で生き残ることができる地域では, 定着が可能であると考えられた.
著者
渡辺 基広 水越 大介 後藤 智範
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.41-44, 2004

1990年代以降、複雑なデータ構造をもつ様々な対象に対する情報視覚化の研究が盛んに行われるようになった。 EDR電子辞書やNTT日本語語彙体系のような階層構造を有する大規模用語知識ベースを対象として、単一円錐モデルに基づく仮想3次元表示プログラムをJAVA3Dを用いて実装した。さらに表示用語総数に対する実行時間の計測を行った。描画対象オブジェクトの総数をnとすると、描画処理そのものは計測結果からO(n^3)となることが判明した。プログラム言語の制約、仮想3次元描画対象としての用語知識ベースの特性から、高速化の可能性について議論した。
著者
岡田 和樹 山口 泰彦 小松 孝雪 松樹 隆光 後藤田 章人 三好 貴之
出版者
日本顎口腔機能学会
雑誌
日本顎口腔機能学会雑誌 (ISSN:13409085)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.107-115, 2005-02-28

本研究では, マイオモニター^[○!R]に温罨法同様の咀嚼筋血流改善効果があるか否かを明らかにすることを目的に, 温罨法およびマイオモニター施行前後の咬筋組織内ヘモグロビン量, 酸素飽和度(StO_2)の変動を測定し, 比較検討した.被験者は顎口腔系に異常が認められない健常者で, 温罨法群10名, マイオモニター群10名とした.ヘモグロビン量とStO_2の測定には近赤外分光血流計を用いた.測定項目は総ヘモグロビン量(THb), オキシヘモグロビン量(OXHb), デオキシヘモグロビン量(deOXHb), 酸素飽和度(StO_2)とし, 同時に脈拍(HR)も測定した.温罨法群では, 温め後THb, OXHb, StO_2に有意な増加が認められたのに対し, マイオモニター群ではTHb, OXHb, deOXHb, StO_2, HRすべてにおいてマイオモニター後に有意な増加は認められなかった.また, 温罨法群とマイオモニター群の群間比較でも, 温罨法群のTHb, OXHb, StO_2が, マイオモニター群よりも有意に大きな増加率を示した.一方, deOXHbとHRに有意差は認められなかった.以上から, 咬筋の血流改善の効果に関しては, マイオモニターより温罨法の方が有効であると考えられた.
著者
別府 真琴 左近 賢人 後藤 満一 疋田 邦彦 平井 健清 村井 紳浩 谷口 積三 吉本 信次郎 青木 栄三郎 上原 教良
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.269-274, 1979-04-01

1897年Dieulafoyは,胃上部の微小な孤立性粘膜欠損の底部において動脈が破裂する大量出血を経験し,Exulceratio simplex(以後Esとよぶ)と命名し報告した.以来欧州圏では,このような胃上部にみられる動脈性出血をEsと呼ぶようになったが,英語圏においてはEsについての報告はほとんどみられず,本邦においてもこのような症例がみられても出血性胃炎あるいは胃潰瘍出血としてとりあつかわれていると思われる.しかしこの病態は手術による止血以外に救命しえなく,保存的療法で止血しうる可能性のある上記2疾患とは臨床上はっきり区別してとりあつかい,適切な処置がなされる必要があると考えられる.著者らはEsと考えられる3例を経験したので報告し,その臨床的意義ならびに問題点について考察を加えた.
著者
長沢 嘉子 小松原 紀子 後藤 純子
出版者
島根県立大学短期大学部
雑誌
島根女子短期大学紀要 (ISSN:02889226)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.43-48, 1980-03-31

電子レンジを用いて加熱したじゃがいもの調理性や食味について調べ従来の加熱法と比較検討し,二次的調理操作とのつながりをもとに電子レンジの効果的使用法についても考察を加えた。(1)じゃがいもを電子レンジで加熱する場合の形状は加熱時間および食味に関係し,丸のままの加熱が食味良く,形状が細分化されるにつれ加熱時間は短縮されるが食味の低下をまねく。(2)電子レンジ加熱では水煮形式(B)において従来法(A)と同程度の粉ふき状態のものが得られた。しかし塩化ビニリデンフィルム被覆(C)は水分蒸発現象が表面を硬化させ粉ふき状態は著しく劣った。官能検査ではA-C, B-C間に有意差を認めA-B間には差は認められず,(C)は粉ふきいもの前処理としては不適であった。(3)マッシュ操作の難易度をその仕事量(W)で比較すると従来法(A)1に対し,電子レンジ加熱の(B)は1.72,(C)は2.97を要した。(C")の過剰加熱となるとマッシュ操作は更に困難となり残査量も多い。マッシュ時に大きな力が加わると細胞膜の破壊も進み粘性も増大する。(4)マッシュポテトの粘性を懸濁液の沈降体積から推測するとA<B<Cの順に高く,塩化ビニリデンフィルム被覆の電子レンジ加熱が最も高い粘性を示した。(5)マッシュポテトの官能検査では,水っぽさ,色の項目についてA-C, B-C間に有意差が認められ,いずれも水煮形式のものが低い評価となった。総合評価では塩化ビニリデンフィルムで被覆した電子レンジ加熱(C)が最も高く評価された。前記の粘性が食味の上に影響を与えていない結果となったが今回は漉されたままのマッシュポテトを試料としたためと考えられる。マッシュポテトの場合は更につぎの段階で混ぜる,練る,液状にのばす等の調理操作が加わることが多いが,加熱法別のマッシュポテトの調理性を知りこれらの調理条件にあった前処理加熱法を行うことが望まれる。