著者
木村 和雄
出版者
The Tohoku Geographical Association
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.1-18, 1994-03-25 (Released:2010-04-30)
参考文献数
34
被引用文献数
2 2

阿武隈高地北部は侵食小起伏面の発達が良好であるが, その層序的, 編年的位置づけは確定していない。本稿は先第三紀の基盤岩類とは区別される表層堆積物の分布, 堆積構造を調査し, それらの層序と侵食小起伏面との編年上の関係を検討した。侵食小起伏面は高位から, 高位面群 (750-1,000m), 中位面群 (550-730m), 低位面群 (300-550m) に区分され, いずれも陸上削剥によって成立したと考えられる。侵食小起伏面の形成と関係する堆積物は下部中新統と鮮新~更新統に大別される。下部中新統は調査地域北部に発達し, 下位より, 河成の砂岩および円礫岩互層を主とする比曽坂層, 陸成の亜円礫岩や海成砂岩からなる塩手層, 火砕岩類からなる霊山層で構成される。これら中新統は高位面群を開析する化石谷に分布し, 中位面群によって切られる。鮮新~更新統は山地西縁に分布し, 河成砂礫層である三春砂礫層と火砕流堆積物の白河層からなる。これら鮮新~更新統は低位面群を開析する旧河谷を充填するように堆積している。これらの調査結果から, 阿武隈高地北部の侵食小起伏面は層序的に次のように規定できる。高位面群は新第三紀より前に形成され, 中新世の初めには開析を受けていた地形面である。中位面群は中新世前期以降に形成され, 中新~鮮新世には開析されていた可能性が高い。低位面群は中新世後半以降から形成され, 鮮新~更新世境界頃から開析され始めた地形面である。侵食小起伏面は年代的にみて, 比較的平穏な構造運動と相対的な高海水準とが一致する時期に形成された可能性がある。
著者
松木 祐馬 向井 智哉 金 信遇 木村 真利子 近藤 文哉
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.71-74, 2020-08-19 (Released:2020-08-19)
参考文献数
11
被引用文献数
1

This study aimed to investigate differences in the common factor of community consciousness between Japan and Korea. The scale included four subscales: “solidarity,” “self-determination,” “attachment,” and “dependency on others.” Web surveys were conducted in 669 adults (330 Japanese, 339 Koreans). Results of the survey showed that configural invariance was confirmed only for “self-determination” and its latent mean was higher in Korean participants. In sum, the results suggest that Japan and Korea have similarities and differences regarding community consciousness, which may be attributed to various factors such as social mobility and attitudes toward civil rights.
著者
深海 雄介 木村 純一 入澤 啓太 横山 哲也 平田 岳史
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2010年度日本地球化学会第57回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.272, 2010 (Released:2010-08-30)

IIIAB鉄隕石と石鉄隕石のパラサイトメイングループ(PMG)は化学組成や酸素同位体組成により、その起源について強く関連があると考えられている。本研究ではこれら隕石の金属部分のタングステン安定同位体組成をレニウム添加による外部補正法を用いて多重検出器型誘導結合プラズマ質量分析計により測定した。また、W濃度の測定を同位体希釈法により行った。IIIAB鉄隕石のW安定同位体比には質量に依存する同位体分別による変動幅が存在し、また、W安定同位体比とW濃度の間には強い相関が見られた。これらは母天体上での金属核固化過程に伴う同位体分別である可能性が示された。PMGの金属相のW安定同位体組成からはPMGの起源がIIIAB鉄隕石の母天体と関連があることが示唆される。
著者
後藤 力 東 幸仁 佐々木 正太 中河 啓吾 木村 祐之 野間 玄督 原 佳子 茶山 一彰 河村 光俊 奈良 勲
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.87-91, 2002 (Released:2002-08-20)
参考文献数
12

本研究では有酸素運動を行うことで一酸化窒素(NO)産生増加を介する血管内皮機能にどのような影響を及ぼすかを検討した。対象は運動習慣を持たない健常男性8名(平均年齢:27±3歳)とした。血管内皮依存性拡張物質としてアセチルコリン(ACh)を使用し,血管内皮非依存性拡張物質として 硝酸イソソルビド(ISDN)を使用した。また,NO合成酵素阻害薬としてNG-モノメチル-L-アルギニン(L-NMMA)を使用した。運動方法は最大酸素摂取量の50%とし,1日30分,5回/週の頻度で3ヶ月間行った。前腕血流量の変化はプレチスモグラフにて測定した。ACh投与では運動後に有意な増加を認め,NO合成酵素阻害薬であるL-NMMA投与下では消失した。血管内皮非依存性拡張反応では有意な変化を認めなかった。これらより有酸素運動による血管内皮機能の増強は,NO産生増加を介することが示唆された。
著者
谷川 亘 山本 裕二 廣瀬 丈洋 山崎 新太郎 井尻 暁 佐々木 蘭貞 木村 淳
出版者
国立研究開発法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2022-04-01

1888年磐梯山噴火により磐梯山の北側に湖(桧原湖)が形成し、それに伴い桧原集落(桧原宿跡)が被災し水没した。桧原宿跡は旧宿場町のため近世・近代の文化を記録する『水中文化遺産』であり、また火山災害の痕跡を記録する『災害遺跡』としての価値を持つ。そこで、桧原宿跡の水中遺跡調査を通じて、江戸・明治の産業・文化・物流の理解、山体崩壊に伴い約500名もの住民が亡くなった災害のメカニズム、せき止め湖の形成過程、および水没により高台移転を余儀なくされた避難の過程という自然災害の総合的な理解につなげる。
著者
木村 大樹
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.28.2.2, (Released:2019-07-11)
参考文献数
40
被引用文献数
2 2

自閉スペクトラム症(ASD)を抱える人やその傾向のある人の多くが,高い対人不安を体験している。本研究は,ASD傾向の高い青年の対人不安の特徴を自尊感情および公的自意識との関連から調べることを目的として,大学生395人に質問紙調査(自閉症スペクトラム指数AQ,対人恐怖心性尺度,自尊感情尺度,公的自意識尺度)を行った。その結果,ASD傾向群(AQ≧33, 32人)は対人不安が全般に高かった。また,ASD傾向群は〈集団に溶け込めない〉悩みの高さが特徴的であり,さらに〈集団に溶け込めない〉悩みに対して公的自意識は関連していなかった。一方で,ASD傾向の高低にかかわらず,〈自分や他人が気になる〉悩み,〈社会的場面で当惑する〉悩み,〈目が気になる〉悩みではやはり公的自意識がかかわっており,自尊感情の低さも対人不安全般にかかわっていた。また,ASD傾向は自尊感情を媒介して対人不安に関連していたが,ASD傾向自体も直接対人不安に関連していた。
著者
木村 洋太
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

私たちは,円滑なコミュニケーションを行うために,他者の感情を適切に理解し,それに適した表出を相手に返すという行為をすることができる.これは,私たちの感情システムが知覚・認知という側面と,身体を利用した表出という運動的な側面を共に扱っているからである.しかしながら,従来の表情研究は知覚・認知の側面,表出の側面をそれぞれ単独に検討することが多く,両者の相互機能については見過ごされることが多かった.そこで本研究では,自己の感情表出という行為の側面と,他者の感情認知という側面がどのように結びつき,相互作用しているのかについて検討した.本年度は具体的に,自己の表情と他者の表情が一致するかしないかという要因,またその表出間の「間」(タイミング)という要因が,他者の表情を知覚する際の注意の配分にどのように影響をするかを検討した。このことについて調べるため,擬似的なコミュニケーション要素によってタイミングや表情の一致性を変化させた場合に,同じ表情でも注意の停留の仕方が異なるかどうか検討した。先行研究によれば,ある種の表情(e.g.脅威表情;怒り・恐怖)にさらされると私たちの注意はその表情に長く焦点があてられる.しかしながら,表情に対する注意の解放は,注意の解放が物理的な表情の性質だけでなく,表情のやり取りといった要素によっても変容することがわかった。たとえば,同じ怒り表情であっても,自分が笑顔をした応答として怒り表情を見る場合は,遅いタイミングの時に注意の解放が遅れ,自分の怒りに対する応答の場合には,早いタイミングでの応答で注意の解放が遅れた。この研究により,我々の視覚的注意は,刺激の物理的特性によって変わるだけでなく,コミュニケーションといった動的な情報をもとに変化することがわかった。
著者
木村 誠
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会誌 (ISSN:09187324)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.59-76, 2022-09-15 (Released:2022-09-22)
参考文献数
33

本稿は,AI対応プラットフォームにおけるデータネットワーク効果に焦点を当てた循環モデルを開発する.そのために,プラットフォーム理論の新潮流である統合的アプローチの先行研究とデータネットワーク効果概念間の接続を試みる.先行研究の整理から,ネットワーク効果の4分類を行い,特性の違いを確認する.これらの検討に基づき,データネットワーク効果の循環モデルを,データの規模およびデータの範囲に関わるネットワーク効果を組み合わせた多重ループ構造モデルとして提示する.データネットワーク効果の好循環として,AI対応プラットフォームにおけるデータ対応学習の深化とプラットフォーム境界の拡大が共に進行するメカニズムを指摘する.データネットワーク効果の悪循環として,AI対応プラットフォームが機械学習を通じて提供する顧客経験が既存顧客に過適合し,新規顧客に向けた機械ベース・イノベーションが阻害される危険性を指摘する.
著者
木村 栄宏
出版者
総合危機管理学会
雑誌
総合危機管理 (ISSN:24328731)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.13-24, 2022 (Released:2022-09-14)

危機(Crisis)の射程が広く、危機・リスクに関連する学問も多岐にわたる中、総合危機管理学の意義が問わ れている。弁証法での「肯定⇒否定⇒否定の否定」のプロセスにより、高次の思考段階に到達し、対立や矛盾 を包括しながら、高い段階の状態にとどまるというのが、「総合」・「統合」のイメージである。一つに特化す るスペシャリストとしてだけではなく、浅いが広い範囲に造形を持つジェネラリストの側面を持ちながら行う 危機管理研究が総合危機管理学ともいえる。危機管理学は学術分野としては未だ独立していないが、様々な角 度から学術的な視点を考察し、様々な利害関係がある関係者へ提案や提言を行い、強いナショナル・レジリ工 ンスを目指すのが総合危機管理学といえる。リスクマネジメントの手法に逆転発想のアプローチを加えること により、総合危機管理学をより発展させることができ、ひいては、対策の斬新さ等から、必ずや新型コロナウ イルス感染症の蔓延防止に役立つものと思われる。