著者
木村 恵 山田 浩雄 生方 正俊
出版者
森林遺伝育種学会
雑誌
森林遺伝育種 (ISSN:21873453)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.105-114, 2015-07-25 (Released:2020-07-13)
参考文献数
49
被引用文献数
1

植物遺伝資源の長期的な維持・管理方法として、生殖質の生息域外保存は有効な方法のひとつである。遺伝資源を効率的に確保する上で、種子の保存は利点の多い手段であるが、乾燥耐性がほとんどない難貯蔵種子も数多く存在する。本総説ではコナラ亜属を例に、難貯蔵種子の取り扱いに関する問題点を生理的要因と生物的要因の面からまとめた。コナラ亜属においては種子が生理的な活性を保てる温度と湿度において、いかに生物学的な害(虫害、菌害)を取り除くかが重要であると考えられた。また、生理的な休眠機構を活用するには、種子の採取時期やコーティングなどの技術を検討する必要性が示唆された。今後は低温耐性や保存条件を調べることで、海外樹種で成功している−2℃程度の低温保存の検討が望まれるであろう。
著者
徳永 弘子 武川 直樹 木村 敦
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.167-174, 2016 (Released:2017-02-03)
参考文献数
16
被引用文献数
4 3

This research aims to clarify the characteristics of human behavior while eating meals in co-eating and solitary eating situations. To manipulate eating situations, we observed participants' behaviors (N = 6) under two different experimental settings: a solitary eating condition, in which participants had their meals alone while watching television or using their cellphone, and a co-eating condition, in which participants ate their meals in the course of dyadic conversation with friends. We assessed the participants’ gaze behaviors and eating actions during the meal and compared these between the two eating situations statistically. The results demonstrate that 1) participants in the co-eating condition glanced longer at their own meal compared to participants in the solitary eating condition, 2) participants in the solitary eating condition often stopped their other eating actions while chewing food, and 3) participants in the co-eating condition frequently gathered meal portions using a spoon while looking at their meal. These results suggest that participants in the solitary eating condition enjoyed their meal while watching television or using their cellphone in an informal atmosphere. Meanwhile, participants in the co-eating condition used their meals to coordinate their interactive behaviors with a co-eater. The social functions of co-eating are discussed from a human behavior analysis perspective.
著者
戸田 洋 木村 愛彦
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.627-632, 2022-09-15 (Released:2022-09-15)
参考文献数
13

症例は56歳,女性.喘鳴と右胸背部痛を主訴に前医を受診し,胸部単純X線検査で大量の右胸水を認めたため,持続胸腔ドレナージが開始された後,当院へ転院した.胸部CT検査では右胸腔内に不整に造影される長径9 cm大の腫瘍を認め原発性肺癌が疑われたが,胸水細胞診では悪性所見は得られなかった.腫瘍マーカーの上昇は認めなかったが,胸水中アミラーゼ値が異常高値であったため,アミラーゼ産生肺癌などを念頭に置き,診断目的に手術を施行した.胸腔内は強固に癒着していたものの,剥離を進めると前縦隔から右胸腔内に有茎性に発育する,充実成分と囊胞成分が混在した腫瘍を認め,肉眼的に完全切除を行った.術中迅速診と永久標本の病理組織学的所見は,いずれも成熟奇形腫の診断であった.胸腔内に穿破した成熟奇形腫の報告は多いが,胸腔内に有茎性に発育し穿破した症例は検索し得ず,非常に稀な症例と考えられた.
著者
三原 勇太郎 鈴木 稔 木村 寛子 赤須 玄 濵田 伸哉 篠崎 広嗣
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.7, pp.1801-1806, 2015 (Released:2016-01-30)
参考文献数
30

症例は51歳,男性.全身に広範な刺青を有する患者.直腸癌に対し低位前方切除を施行中,突然の血圧低下,頻脈,顔面紅潮をきたした.アナフィラキシーショックを疑い,手術を中止した.Epinephrine投与などによりバイタル安定し改善を得た.術後検査でラテックスに対する特異的IgE抗体陽性であり,ラテックスアレルギーを考え,ラテックスフリー環境下で再手術を行い,問題なく手術を終了しえた.ラテックスは術中アナフィラキシーの原因の一つであり,文献報告が散見される.一般に,頻回に手術や医療処置を受ける患者に加え,医療従事者や製造業などゴム手袋着用頻度の多い群でリスクが高いとされるが,本症例はラテックスアレルギーのハイリスク群には該当せず,刺青の長期に渡る作成過程でラテックスに感作した可能性を考えた.
著者
木村 妙子 関口 秀夫
出版者
The Malacological Society of Japan
雑誌
貝類学雑誌 (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.307-318, 1994-12-31 (Released:2018-01-31)

ホトトギスガイMusculista senhousiaとコウロエンカワヒバリガイLimnoperna fortunei kikuchiiは, 静岡県西部に位置する浜名湖の奥部の潮間帯に優占するイガイ類である。筆者らはこれらの幼生を室内飼育し, 得られた試料をもとに2種のD型幼生から初期稚貝までの外部形態および交装を比較した。試料はSEMと光学顕微鏡を用いて観察した。その結果, D型幼生, 殻頂期幼生および初期稚貝のすべての成長段階で2種の間には, 形態に相違が認められた。D型幼生ではコウロエンカワヒバリガイの方がホトトギスガイよりも殻長が大きい傾向があったが, 計測値は重複しているので, D型幼生の種を殻長のみから同定することは困難である。しかし, D型幼生の交歯は, ホトトギスガイが14-15個であるのに対し, コウロエンカワヒバリガイでは9-11個と差異がみられた。殻頂期幼生では, ホトトギスガイの中央の交歯は小さくなり, 第1靱帯が交歯中央やや後方に形成される。殻の輪郭は卵型で, 殻頂は中央に位置する。これに対し, コウロエンカワヒバリガイでは, 殻頂期幼生の交歯は同大であり, 第1靱帯は交歯後端に形成される。殻の輪郭はほぼ三角形で, 殻頂は前方に偏る。初期稚貝では, ホトトギスガイは3種類の側歯を持つのに対し, コウロエンカワヒバリガイは側歯類を欠く。殻頂の位置は, コウロエンカワヒバリガイの方がホトトギスガイよりも前方に偏る。
著者
木村 学 楠 香織
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.295-305, 1997-04-24
参考文献数
39
被引用文献数
7

北海道は千島弧と東北日本弧の会合部にあり, 白亜紀以降の日高造山運動によって形成されてきた。白亜紀はじめから始新世にかけてアジア人陸の北東縁に平行な古海溝に沿って, 沈み込みに伴う付加が起こった。オホーツクプレートの南縁に位置した古千島弧が暁新世にアジア人陸縁と衝突し, サハリンや北海道北部における沈み込みが終了した。その後, サハリンと北海道地域は右横ずれ断層帯(日高剪断帯)へと変化した。北海道の東半分はその右横ずれ断層帯に沿って南へ動き, 断層帯に沿っては中期中新世のプルアパートベーズンが形成された。その右ずれ断層は日本海盆と十島海盆の拡大と, そして日高変成帯の変成・火成作用と同時に起こった。これらの事件はお互い密接に関連していたようである。日本海盆と十島海盆におけるアセノスフェアの上昇は, 右ずれ収束している日高剪断帯の下におよび, それによって同時に火成・変成作用が右ずれ変形とともに起こった。こうした出来事を通して, 北海道では厚い大陸地殻が成長した。中新世後期から太平洋プレートが千島海溝に沿って斜めに沈み込み, 千島前弧スリバーを南西へ移動させた。北海道の島弧会合部で前弧スリバーが衝突し, その結果日高変成岩が上昇・露出したが, これは上述した造構過程を通して形成された下部地殻である。北海道におけるこの大陸形成過程が新しく定義される「日高造山運動」である。日本列島同様, 島弧会合部における衝突は環太平洋造山帯のほとんどの島弧会合部で進行しており, それは沈み込み帯において新しい大陸地殻を急速に造るための重要なプロセスである。