著者
渡邊 保貴 小峯 秀雄 安原 一哉 村上 哲 ベ ジェヒョン 豊田 和弘
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.788-799, 2010

水道事業から排出される浄水汚泥を道路構成材料として有効利用する上で,浄水汚泥の排出量が少量であることから一般の土質材料と混合して利用することが検討されている.しかしながら,こうした混合利用の効果は力学的側面から検討されることが多く,環境負荷低減の側面からは十分に検討されていない.本研究では,最終処分量の削減や天然資材の保全の観点から浄水汚泥の環境価格を定義し,浄水汚泥を砂質土と混合利用したときの環境負荷低減効果を貨幣価値に換算した.その結果,浄水汚泥の混合利用は必ずしも環境負荷低減に結びつかず,浄水汚泥を単体で利用することが最も望ましいこと,そして,浄水汚泥を混合する場合には,混合する天然資材の量を減少させることが重要であることを示した.
著者
村上 哲 渡辺 安 藤原 仁志 Murakami Akira Watanabe Yasushi Fujiwara Hitoshi
出版者
航空宇宙技術研究所
雑誌
航空宇宙技術研究所資料 = Technical Memorandum of National Aerospace Laboratory (ISSN:1347460X)
巻号頁・発行日
vol.774, 2003-06

航空宇宙技術研究所が開発を進めているジェットエンジンを搭載した小型超音速実験機(ジェット実験機)には、マッハ2までの飛行速度で作動する2次元外部圧縮型可変形状超音速インテークを搭載する予定としている。ジェット実験機の推進システム性能予測およびインテーク可変制御開発に必要なインテーク空力特性を取得するために、ジェット実験機第2次形状超音速インテーク(C313形状)の19.2%縮尺模型を用いた単体空力特性取得試験を航空宇宙技術研究所の遷音速風洞および超音速風洞においてマッハ0.6〜2.1の範囲で実施した。ジェット実験機の推進システム性能予測およびインテーク可変制御開発に必要なインテーク空力特性データを取得するとともに、風洞試験で得られた空力特性がCFD解析により事前に予測した特性と概ね一致し、設計目標を満足した。また、マッハ1.3以上においては低流量側でバズが発生し、特にマッハ1.8以上の高マッハ域においてはFerri型不安定によるバズ発生のためインテークの安定作動余裕が小さいことが判明したが、適切な超音速ランプ可変制御および抽気制御によりインテークの安定作動域を改善できる。さらに抽気プレナム圧力比は本試験条件の範囲においては第2ランプ角や抽気条件による影響は小さく、インテークの作動状態を適切に示すパラメタとなることを確認した。インテーク入口部における横流れの影響については横流れ偏角4度までの範囲において、試験を行った何れのマッハ数においても大きな空力性能の劣化は見られず、良好な特性を示した。
著者
山崎 勝子 村上 哲生 岡田 直己 寺井 久慈 宮瀬 敏男 佐野 満昭
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.87-95, 2013-02-15 (Released:2013-03-31)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

本研究は,プーアル茶に特有な成分の探索を目的とし検討したもので,三次元蛍光スペクトルの解析をもとに,プーアル茶中に特異的な蛍光をもつ成分が存在することを見出した.この成分は,腐植物質と類似しており,微生物発酵による長期の熟成期間で産生するものと考えられ,カテキンなどのポリフェノールや微生物由来のたんぱく質が含まれる可能性が示唆され,高極性の高分子複合物であることを認めた.茶の熱湯抽出液を用い,この特異的な蛍光領域を測定することで,プーアル茶の品質評価や他の発酵茶との分別に利用できるものと考えられた.
著者
村上 哲明 林 蘇娟 大槻 涼 山本 薫
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

シダ植物には有性生殖を二次的にやめて、胞子を通して親と遺伝的に全く同一なクローンを生産する生殖様式(無配生殖)を獲得したものが少なからず存在する。しかし、シダの無配生殖種にも遺伝的な多様性が見られる。本研究では、無配生殖種であっても近縁な有性生殖種と交雑をする能力を高いレベルで(有性生殖種の約20%)維持していること、さらに遺伝的分離も数%程度起こして遺伝的に多様な子孫を生産していることを明らかにした。

1 0 0 0 李煜

著者
村上哲見注
出版者
岩波書店
巻号頁・発行日
1959
著者
杉本 健治 村上 哲一
出版者
山口県農業試験場
雑誌
山口県農業試験場研究報告 (ISSN:03889327)
巻号頁・発行日
no.52, pp.68-80, 2001-03

コンテナ単位の貯蔵に適する被覆資材と貯蔵方法を検討した。資材(1.5m平方)はコンテナの内側に敷き、果実を一杯になるまで入れて包み込んだ。なお、3月上旬までは常温貯蔵庫(温度は5~15℃、湿度は70%)で、3月中旬以降は低温貯蔵庫(温度は7℃、湿度は70~90%)において貯蔵した。 1試験した7資材のうち有孔ポリ(約2.0x1.5cm間隔に直径1.8mmの孔)が、ポリ個装に比べて減量歩合が高いものの、5月中旬までポリ個装に近い貯蔵ができた。 2アマナツでは、果実の予措を3~4%程度行い、孔数を既製有孔ポリの1/2に減少した改良有孔ポリ(厚さ0.05mm)を使用することで、産地の最終出荷時期の6月10日まで、長期間にわたりポリ個装に非常に近い状態で貯蔵できると考えられた。 3イヨカンでは、果実の予措を4~5%行い、既製有孔ポリ(厚さは0.05mm)を使用することで、産地の最終出荷時期の4月10日まで、ポリ個装に近い貯蔵が可能であると考えられた。 4ハッサクでは、無予措の果実を、孔数を既製有孔ポリの1/3に減少した改良有孔ポリ(厚さ0.05mm)を使用することで、産地での最終出荷時期の4月10日まで貯蔵が可能であると考えられた。ただし、ポリ個装に比べてへた落ち果及びへた枯果が顕著に増加した。 5有孔ポリによるコンテナ当たりの被覆時間は、ポリ個装の約1/3に短縮できた。
著者
安田 進 石川 敬祐 村上 哲 北田 奈緒子 大保 直人 原口 強 永瀬 英生 島田 政信 先名 重樹
出版者
東京電機大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

2016年熊本地震により阿蘇のカルデラ内では地盤が帯状に陥没するグラーベン(帯状の陥没)現象が発生し、家屋、ライフラインなどが甚大な被害を受けた。このメカニズムを知り復旧・対策方法を明らかにするため平成29年度から3年間の計画で研究を始めた。平成29年度は、まず、現地踏査や住民からのヒアリングなどを行って被災状況の把握を行った。その結果、広い範囲で大規模に陥没が発生していること、その範囲はカルデラ内に約9000年前の頃に形成されていた湖の範囲にかなり一致することが分かった。次に広域な地盤変状発生状況を調べるため、熊本地震前後の複数の陸域観測衛星画像(合成開口レーダー画像)を使って干渉SAR画像から地盤変動量(東西・南北・垂直方向の3成分)を求め、それを基に検討を行った結果、陥没被害が甚大だった狩尾、内牧、小里、的石などの地区では数100mから2㎞程度の区域内で最大2~3mもの変位が発生したことが明らかになった。この局所的な変位によって水平方向の引張り力が作用し、帯状の陥没が発生したのではないかと考えられた。次に、既往の地盤調査結果を収集整理し、また、表層地盤状況を連続的に調べるため表面波探査を行った。その結果、陥没区間のS波速度は遅く、水平方向の引張り力で表層が緩んだことが明らかになった。一方、深い地盤構造を調べるために微動アレイ観測を行ったところ、陥没区間では数十mの深さまでS波速度が遅い軟弱層が堆積していると推測された。そこで、より詳細に調べるために4カ所でボーリングを行った結果、陥没区間の直下では17m~50mの深さに湖成層と推定される軟弱粘性土層が堆積していることが判明した。また、湖成層下面はお椀状に傾いていた。したがって、この湖成層が地震動によって急速に軟化してお椀の内側に向かってせん断変形し、その縁の付近で引張り力が働いて陥没が発生した可能性が浮上してきた。
著者
丸山 厚吉 堀 清鷹 村上 哲明
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, 2017

<p> ハラタケ科のいわゆる<i>Lepiota</i>類に属する日本では未報告の<i>Macrolepiota mastoidea</i>を東京都・山梨県・神奈川県で,<i>Echinoderma</i> <i>echinaceum</i>を山梨県富士山麓で採集し,核rDNAのITS領域を用いた分子系統解析,形態的特徴の記載と図を添えて報告した.和名としてそれぞれトガリカラカサタケ,コオニタケを提案した.</p>
著者
渡辺 安 村上 哲 藤原 仁志
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-33, 2004-03

2次元超音速インテークでは,超音速ディフューザ部の側壁形状はインテークの空力性能に大きく影響をおよぼす部分であり,側壁形状が空力性能に及ぼす影響を明らかにすることを目的として,風洞試験およびCFD解析を実施した。側壁形状の影響が顕著に現れるマッハ1.5以上の条件に対して風洞試験を行ない,横流れ偏角やランプ可変形状が異なる条件における空力特性を取得し,側壁形状の影響を詳細に調べた。その結果,バズが発生するまでの亜臨界作動域における安定な作動域は側壁が大きいほど広く,性能が良いことが明らかとなった。一方,超臨界作動域では,マッハ数が高く側壁が大きいほど,また横流れ偏角が大きいほど亜音速ディフューザ内の流れは剥離しやすくなり,性能が低下することがわかった。さらにCFD解析により,インテークの流れ構造を詳細に調べた結果,側壁形状はサイドスピレージに影響を及ぼすため,インテークに流入する流管形状が変化し,その結果として,小さい側壁形状ではバズが発生しやすいことが明らかとなった。また,大きい側壁形状では衝撃波システムの逆圧力勾配の影響で,剥離しやすい境界層が亜音速ディフューザに流入することがわかった。そして,境界層の形状係数が有る程度以上になると,亜音速ディフューザ内で境界層剥離が生じ,空力性能が低下することが明らかとなった。
著者
川上 聖 安原 一哉 秋間 健 村上 哲 小峯 秀雄 池永 貞二
出版者
国際ジオシンセティックス学会 日本支部
雑誌
ジオシンセティックス論文集 (ISSN:13446193)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.109-116, 2005

本研究は,タイヤシュレッズを(1)ジオネットで補強した水平地盤として適用した場合,(2)壁体のない盛土地盤((1)片側補強と(2)両側補強)として使用した場合を想定して行った小型支持力模型試験(変位制御)を行った結果とその考察結果を報告したものである.本研究の結果,以下のことがわかった.1) タイヤシュレッズのみで構成された水平地盤でも締固めとジオシンセティックス補強を施すことによって支持力の向上につながる.しかし,支持力改善に及ぼす締固め効果に比べると,補強効果は大きくない.ただし,締固めと補強を併用することによって,支持力改善効果が顕著になる.2) 盛土の壁面に土のうを用いた補強を施すことによって締固めたタイヤシュレッズ地盤はより安定する.3) 片側土のう補強盛土地盤に比べると,両側土のう補強盛土地盤では,載荷に伴う土のう部分の水平変位は,締固めの程度に関係なく極めて小さい.よって,この方法によれば,壁体がなくても堅固な盛土の構築が可能であることが示唆される.
著者
内田 毅彦 小林 宏彰 石倉 大樹 虞都 韻 村上 哲朗 中野 壮陛
出版者
Society for Regulatory Science of Medical Products
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.211-217, 2015

世界の医療機器マーケットは拡大し続けているが,日本の医療機器産業はあまり活発ではなく,毎年7000億円もの貿易赤字を作り出している.しかしながら,技術力があり,モノづくりが匠で,医療水準が高い日本は本来であれば世界の医療機器産業を牽引していても不思議ではない.日本の医療機器産業が世界をリードするようになるために,幾つかのポイントが考えられる.米国のオバマケア,費用対効果,リバースイノベーション,国際共同治験,デジタルヘルスといったキーワードを踏まえた上で,日本のベンチャー企業が医療イノベーションを作り出そうとする際に,これからはよりグローバルな視点で事業化を行っていく必要があると考える.

1 0 0 0 三体詩

著者
村上哲見 著
出版者
朝日新聞社
巻号頁・発行日
vol.下, 1967
著者
三村 信男 江守 正多 安原 一哉 小峯 秀雄 横木 裕宗 桑原 祐史 林 陽生 中川 光弘 太田 寛行 ANCHA Srinivasan 原沢 英夫 高橋 高橋 大野 栄治 伊藤 哲司 信岡 尚道 村上 哲
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

気候変動への影響が大きいアジア・太平洋の途上国における適応力の形成について多面的に研究した.ベトナム、タイ、南太平洋の島嶼国では海岸侵食が共通の問題であり、その対策には土地利用対策と合わせた技術的対策が必要である.また、インドネシア、中国(内蒙古、雲南省など)の食料生産では、地域固有の自然資源を生かした持続可能な農業経営・農村改革が必要である.また、本研究を通して各国の研究者との国際的ネットワークが形成されたのも成果である.
著者
三浦 秀一 中嶋 隆藏 熊本 崇 山田 勝芳 安田 二郎 花登 正宏 中嶋 隆蔵 寺田 隆信 村上 哲見 三浦 秀一
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

中世から近世にいたる旧中国の知識人が営んでいた知的活動の諸相を、文献実証額的手法に基づきつつ分析することにより、中国知識人の精神構造が歴史的にどう展開したかについて、総括的な理解と具体的な知見とを獲得することができた。成果の概略は、以下のとおりである。中国中世の仏教界を俯瞰すれば、有に執らわれず、無に陥らず、空有相即を旨とする理行二入の立場が、それに相対立する旧学の側からの、教学を軽んじ戒律を無みするものだとの激しい攻撃と、無なる心をつかみさえすれば形ある修道などどうでもよいとの甘い誘惑とを受けつつも、それらいずれにも屹然とした態度を堅持しつつ困難な歩みを踏み出した、といった構図にまとめることができる。そして、この対立の構図は、その後、一般知識人の精神生活に決定的な影響を与えたと考えられ、中国近世における知識人の精神構造の基本的な枠組みは、この構図を重層的に内面化することで形成されたと判断できる。例えば、北宋の士大夫は、みずからが如何に史に記録されるかについて並々ならぬ関心を抱き、その子孫をも巻き込んで、自身の「事迹」選述をめぐる自己保全運動を執拗につづけている。また、明末清初期の或る一族は、確証が竺少なるにもかかわらず北宋以来の名族との同宗を主張し、族譜の接合・系譜の行為を敢えておこなう。このほか、「封建」と「郡県」との是非をめぐる議論や、六経と史書とを表裏一体の関係で捉える主張が、時代をこえ飽くことなく蒸し返されるように、かれら知識人は、慥かに「有」としての命名・史書・祖法に固執する精神を把持してはいる。しかしながら、同時に、如上の議論が個々の時代社会に対する疑義ないし対案の提示としてなされている事実は、かかる「有」を越えつつそれを包み込む理論的装置をも、かれらがその精神構造の内部に確保していた証左であるとなせるのではないだろうか。
著者
西田 治文 朝川 毅守 瀬戸口 浩彰 村上 哲明 青木 誠志郎 ARMAND Rakot 湯浅 浩史
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

平成11年度は、下記地域に分担して最終調査を行い、10年度調査の資料と合わせて順次成果を刊行する予定である。調査に付随した話題の一部は、普及書にゴンドワナ大陸をめぐる植物分布の記事として西田、浅川が紹介したマダガスカル村上が、特にチャセンシダ科、ゼンマイ科の標本を採集した。すでに10年度に西田らとともに収集した資料の遺伝子的解析に着手しており、広分布種とされているレガリスゼンマイに多くの種内変異があることなどがわかり始めている。ボリビア・アルゼンチンボリビアで西田は、シダ類のフサシダ科、チャセンシダ科、シシガシラ科の、青木はタバコ属のそれぞれ遺伝子解析用資料および乾燥標本、、液浸標本を採集した。アルゼンチンではタバコ属を南部パタゴニア地域で広範に採集した。タバコ属内の遺伝子移動に関する論文を投稿準備中である。シシガシラ科の資料は、これまで形態のみで推定されてきた系統関係を検証するために解析が進んでいる。ニューカレドニア浅川が、第三期珪化木化石収集を行い、多数の資料を得た。10年度にマダガスカルで採集したペルム紀および白亜紀材化石とあわせて、比較解剖を進めている。ヤシ科、ヤマモガシ科などの材がみつかっている。ボルネオ瀬戸口が、キナバル山周辺で採集を行い、ビカクシダ属、ヤシ科、ゴマ科など系統解析用の資料を収集した。すでにビカクシダ属については10年度採集のマダガスカルの標本を含め、多の熱帯地域の資料解析が進んでおり、発表の準備をしている。全体として、シダ植物から被子植物まで、いくつかの分類群について、南半球での異なる分布形態とその成立過程が説明できる新たな結果が得られつつある。
著者
村上 哲見 渡辺 武秀 浅見 洋二 熊本 崇 川合 康三
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1986

中国における文学芸術の最も洗練された部分は, 「文人」と呼ばれる人々によって支えられて来た. 人間類型としての「文人」は, 魏晋の頃に出現し宋代に至って完成したものと考えられる. そこで本研究は, 宋代を中心として, この「文人」なる人間類型の特色を解明し, 更にその現実の姿ならびに文学芸術との関係などを考究すべく計画された.「文人」と並ぶ中国特有の人間類型に「読書人」と「士大夫」がある. 本研究ではこれらを対比しつつ分析することによって, それぞれの特色を明らかにした. まず「読書人」の不可欠の必要条件を考えてみると, (1)儒教の古典に通ずること, (2)文言の韻文および散文が書けること, の二点に帰着する. この点は「文人」も「士大夫」も共通で, つまり「文人」も「士大夫」も「読書人」であることを前提として, 他の要素が加わったものである. 「士大夫」にとって必須のもうひとつの要素は, 国家社会の経営に対する使命感であり, 実践としては官僚となって政治に参与することになる.つぎに「雅俗観」すなわち「雅」と「俗」とを上下に対置して一切の評価の基準とする認識は, 中国の伝統的知識人に普遍的な価値観であるが, それを純粹につか徹底的に追求する精神が, 「文人」なる人間類型の核心である. そこで実践としては, 「読書人」としての必要条件を備えるのは当然のこととして, 書画音楽など, 更に高度な芸術に秀でることになる.「士大夫」と「文人」とは矛盾するものではなく, 双方の要件を兼ね備えた人を「官僚文人」という. 歴史的にみると, 北宋では欧陽修・蘇軾など, すぐれた官僚文人が輩出したが, 南宋になると姜〓・呉文英など, 純粋型の文人が輩出し, これが南宋の文化を特色づけている. またこれらの文人が江南地方と深く結びついていることも見逃せない. 本研究ではそうした具体的な情況についても考察を進めた.