著者
真田 樹義 宮地 元彦 山元 健太 村上 晴香 谷本 道哉 大森 由実 河野 寛 丸藤 祐子 塙 智史 家光 素行 田畑 泉 樋口 満 奥村 重年
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.291-302, 2010-06-01
参考文献数
23
被引用文献数
2 8

The purpose of this study was to develop prediction models of sarcopenia in 1,894 Japanese men and women aged 18-85 years. Reference values for sarcopenia (skeletal muscle index, SMI; appendicular muscle mass/height<sup>2</sup>, kg/m<sup>2</sup>) in each sex were defined as values two standard deviations (2SD) below the gender-specific means of this study reference data for young adults aged 18-40 years. Reference values for predisposition to sarcopenia (PSa) in each gender were also defined as values one standard deviations (1SD) below. The subjects aged 41 years or older were randomly separated into 2 groups, a model development group and a validation group. Appendicular muscle mass was measured by DXA. The reference values of sarcopenia were 6.87 kg/m<sup>2</sup> and 5.46 kg/m<sup>2</sup>, and those of PSa were 7.77 kg/m<sup>2</sup> and 6.12 kg/m<sup>2</sup>. The subjects with sarcopenia and PSa aged 41 years or older were 1.7% and 28.8% in men and 2.7% and 20.7% in women. The whole body bone mineral density of PSa was significantly lower than in normal subjects. The handgrip strength of PSa was significantly lower than in normal subjects. Stepwise regression analysis indicated that the body mass index (BMI), waist circumference and age were independently associated with SMI in men; and BMI, handgrip strength and waist circumference were independently associated with SMI in women. The SMI prediction equations were applied to the validation group, and strong correlations were also observed between the DXA-measured and predicted SMI in men and women. This study proposed the reference values of sarcopenia in Japanese men and women. The prediction models of SMI using anthropometric measurement are valid for alternative DXA-measured SMI in Japanese adults.
著者
古賀 裕 村上 光彦 高松 祐治 柏木 孝仁
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.2941-2944, 2009 (Released:2010-03-05)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

破傷風は,適切な治療を迅速に開始しないと死にいたる感染症である.症例1は82歳,男性で開口障害のため前医を受診し,けいれん発作を発症し当院に紹介受診となった.右下腿に汚染創を認め,破傷風として治療を開始した.人工呼吸管理を2週間行い,入院35日目に軽快退院となった.症例2は78歳,男性で咽頭痛,嚥下困難のため当院受診となった.外傷はなかったが,呼吸困難とけいれん発作を認めたため破傷風として治療を開始した.人工呼吸管理を5週間行い,入院60日目に軽快退院となった.嚥下困難や項部硬直のある患者は破傷風も鑑別診断として考慮すべきである.DPTワクチン接種による基礎免疫獲得は破傷風予防に有効であるが,追加接種をしないと20年で効果は減弱する.基礎免疫のない症例の急性期の予防には,トキソイドとともに免疫グロブリン投与が勧められ,さらに2回のトキソイド追加投与で基礎免疫を獲得することが重要である.
著者
村上 安則
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.30-37, 1981

この実験の目的は, 生徒の話す力, 書く力, 要約する力を高めるための条件を調査することであった。そこで次のような実験が行われた。50分間平常の授業で英語を教えられた統制群(C群)を, 40分の平常の授業の後, 最後の10分間で英問英答によって教えられた第1実験群(EI群), および最後の10分間に暗唱して正しく書けるように指導された第2実験群(EII群)と比較した。これらの3群の学習効果を知るために, 次の測度が用いられた。<BR>英文和訳問題と和文英訳問題においては, 通常の主観的採点法が用いられた。要約においては, 小町谷 (1974) にならって次の測度が用いられた。すなわち, 10人の英語教師によるテスト材料の評定に基づいて決められたところの,i) 有効伝達単位点, ii) 非有効伝達単位点, さらに有効及び非有効伝達単位点の相互関係に基づいたiii) 要約評定点, および iv) 伝達単位数である。各群33名の高校1年生からなるマッチングされた3群の被験者は, 次のように訓練をうけ, テストされた。<BR>pre-testではすべての被験者は, O. Henryの短編小説の前半を, post-testでは後半を与えられ, 50分以内に読んで, かつ, 次の3っの質問に答えるように求められた。3つの質問とは,(1)英文和訳問題,(2)和文英訳問題,(3) 英語での要約問題であった。<BR>訓練期間中は, すべての被験者に, 教材を理解するため次のような授業が行われた。すなわち,(1) 外人吹込みのテープを聞く。(2) 教材を読む。(3) 新出単語と新しい重要な文について学び, テキストの英文和訳を行う。C群はこの手順で授業を最後まで行う。EI群では最後の10分間, 教材全体にわたる重要な文について, 教授者が被験者に英問英答を行う。EII群では最後の10分間EI群の被験者が英問英答を行ったのと同じ文を暗唱し, 誤りなく書けるように指導する。この訓練が4回にわたってくり返された。<BR>英文和訳と和文英訳のpost-testの成績とpre-testの成績との差は, 3群の間ではほとんど見られなかった。しかし, 要約問題においてはEI群が全般的にもっともすぐれ, 次にEII群, C群の順であった。英間英答は, 被験者が教材をよりよく理解し, 要約するのに, より効果的であるといえよう。しかしながら, 学習時間を本実験の場合よりも長くすれば, これとは異なる結果の生じることも予想される。<BR>なお, 本研究を行った結果, 今後の問題点と思われるものには次のようなものがある。<BR>(1) 要約問題は, 教材全体の理解度を測るのに最適の問題形式と思われるが, 問題文の伝達単位の有効・非有効等の判定について, 少なくとも数名の英語の専門教師の協力が得られなければならず, 教材毎にこの規準を作成することは困難である。<BR>(2) 実験に関しては,(イ) training教材そのものだけに関する問題と, post-testだけに関する問題を作成すること。<BR>(ロ)英文和訳問題と和文英訳問題は, 客観テストとすること。(ハ) pre-testの問題とpost-testの問題の難易度を同じようにすることなどが望まれ, さらに,(ニ)学習内容に見合った学習時間が与えられることが望ましいと推測される。<BR>(3) これまでの実験的研究は, 平常の授業の多くの側面の中の1つをとり出して, 平常の授業とは異なる状況で扱ってきたために, その結果の平常の授業への一般化や適用が困難であった。それゆえ, 本研究では, 折衷法により, 全く平常の授業に実験をとり入れたのである。本研究には, まだ, 条件統制の上で, いくつかの問題点もあるが, 今後は, 授業の目標にあわせて, 他の実験が追加されたり, 不要な実験が省かれたりして, より一層の考慮が払われるならば, 本研究のような実験授業による英語教育法の研究は成果をあげることができるものと思われる。
著者
村上 順也 山之上 卓
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2018-IOT-42, no.4, pp.1-8, 2018-06-21

現在開発中の悪性 Botnet 包囲網で Domain Generate Algorithm (DGA) を利用する Bot の DGA 利用を検知する試みについてのべる.悪性 Botnet 包囲網は NAT ルータやルータとその配下の LAN の間に設置する Agent Bot と,Agent Bot によって獲得されたデータを解析する Analyzing Bot によって構成されている.Agent Bot も Analyzing Bot も Wiki ページに書かれた script によって制御されている.Analyzing Bot は統計計算パッケージ R を備えており,それを操作するスクリプトに R 言語で解析処理を書くことができる.Agent Bot で,担当する LAN 内のホストの DNS へのアクセス状況を獲得し,それを Analyzing Bot の R で解析することで,DGA 利用の特定ができるのではないかと仮定し,その可能性の検証を行う.
著者
村上 貴聡 岩崎 健一 徳永 幹雄
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.183-190, 2000-02-10

高校テニス部員6名を対象にして, 自律訓練とイメージトレーニングを用いたメンタルトレーニングを週2回, 約3カ月間実施しその効用性を検討した。結果は次のとおりである。1. 心理的競技能力はトレーニング後にすべて向上し, 忍耐力, 勝利意欲, 自己コントロール, リラックス, 集中力, 自信の尺度で1%水準の有意な変化がみられた。決断力および予測力においては10%水準の有意傾向がみられた。また, 総合得点においても顕著な向上が見られた。2. 特性不安はトレーニング後に減少した。トレーニング後にすべての因子で得点が減少し, 勝敗の認知的不安の因子で有意な変化がみられた。また, 有意差はみられなかったが, 動作緊張傾向, 競技意欲の低下, 自信喪失の各因子で不安の減少傾向がみられた。3. 競技状態不安は, トレーニング実施前の大会では試合が近づくにつれて認知的不安, 身体的緊張が高く, 自信が低い状態で出場しているが, トレーニング実施後の大会では大会当日には認知的不安, 身体的緊張が多少高まるが, 自信とともに比較的安定した状態で試合に出場していることがわかった。4. 試合中の実力発輝度では, トレーニング前の試合では自分の実力を発揮できたものが2名であったのに対し, トレーニング後の試合では実力を発揮できたものが5名に増加した。5. 内省報告から, メンタルトレーニングは試合前の睡眠や緊張感の減少, 試合中のリラクセーション, 冷静さ, 落ち着き, 集中力, そして, 試合に自信をもって出場できる心理的に良好な状態を作り出すのに有効に働いたことが推測された。
著者
村上 昌弘 岡田 茂
出版者
共立女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

原核生物である藍藻類は、酸素発生型の光合成以外に鉄酵素nitrogenaseを用いて窒素固定も行うため、過剰の鉄が必要とされる。藍藻類はシデロフォアによる鉄獲得機構を備えるとの報告が過去に数例あるが、藍藻種間のシデロフォア産生能に関しても統一的な報告はない。これらの観点から藍藻類のシデロフォア産生能の評価およびその化学的性状に関する研究を行い、以下の知見を得た。1.藍藻類のシデロフォア産生能のスクリーニングを行い以下の結果を得た。ブルーム形成の代表種であるMicrocystis aeruginosa、Oscillatoria agardhiiは活性を全く示さなかった。一方、窒素固定能力をもつヘテロシスト形成糸状性藍藻は強力なシデロフォア産生活性を示した。また嫌気的条件下のみで窒素固定を行うとされるPlectonema boryanum等のヘテロシスト不形成糸状性藍藻の一部も活性を示した。2.窒素固定種の代表種であるAnabaena cylindrica NIES-19からシデロフォアanachelin-2およびanachelinを単離・構造決定した。3.A.variabilis M-204およびヘテロシスト不形成変異株であるNIES-23の両株のシデロフォアは、クエン酸を中心に左右対称な構造を持つヒドロキサム酸系の既知シデロフォアschizokinenであることが判明した。3.ヘテロシスト不形成糸状性藍藻の1種であるO.tnuise UTEX1566からhydroxypyridinone構造を有する新規シデロフォアoscillabactinを単離・構造決定した。以上、本研究において、ほとんど未開拓であった藍藻シデロフォアの構造解析の結果、藍藻類は極めて新規かつ複雑な構造を有するシデロフォアを産生していることが明らかにされた。

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著者
村上浪六 著
出版者
明文館
巻号頁・発行日
1920
著者
村上 晃 白井 雄一郎
出版者
日経BP社
雑誌
日経バイト (ISSN:02896508)
巻号頁・発行日
no.211, pp.154-159, 2000-12

筆者がこれまでに経験したシステム検査・監査業務から,社内システムにおいてユーザが見落としがちなセキュリティ上の弱点を説明する。社内システムの場合,外部からの攻撃よりもむしろ内部犯行の方が多い。セキュアに保つには,罰則規定などのセキュリティ・ポリシを適切に規定し,きちんと運用しなくてはならない。
著者
村上 健
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.951, pp.85-88, 1998-07-27

ちくわ、かまぼこなど水産練り製品メーカーのカネテツデリカフーズ(神戸市)は1998年1月、神戸地裁に和議開始を申請しました。大口の取引先が不渡りを出したため、本体と子会社合わせて66億円もの焦げ付きが発生し、資金繰りが悪化したのが原因です。負債総額は子会社を含めて約170億円に上りました。この責任をとって、私は7月7日付で、代表取締役社長から専務に降格しました。
著者
瓜生 耕一郎 村上 隆則 中村 守正 射場 大輔 船本 雅巳 森脇 一郎
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.84, no.861, pp.17-00536-17-00536, 2018 (Released:2018-05-25)
参考文献数
6

The high productivity of gear skiving has caused the process to attract a lot of attention in recent years and taper shaped skiving cutters are generally used in current gear skiving. A cutter axis in gear skiving is inclined to a gear axis and a taper shaped skiving cutter could cause tooth profile deviations of skived gears after re-sharpening of tool faces. Adjusting cutter position and/or re-profiling of cutter flanks are applied to enable tooth profile deviations of skived gears to remain within acceptable ranges when the adjustment is necessary. Adjusting cutter position is preferred to re-profiling of cutter flanks due to desire for low production cost. However, the universality of the current methods of calculating cutter positions is still not confirmed. The present study explains that the current methods for obtaining cutter positions could require individual calculating formulas according to cutter specifications for each particular gear. A universal method which avoids such complexity of making various formulas could contribute to permit gear skiving to become more useful in the gear machining field. Then such a desirable method is proposed and the reasonability of the method is confirmed by experiments. In addition, this study discusses the existence of scope in which the method can be applied and a method for checking collisions between cutter flanks and gear tooth flanks being cut after adjustment of cutter position.
著者
村上 多喜雄 松本 淳
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.719-745, 1994-10-25 (Released:2008-01-31)
参考文献数
38
被引用文献数
151 267

西部北太平洋における夏のモンスーン(WNPM)は、8月中ごろの最盛期には、東南アジアモンスーン(SEAM)と同程度かそれ以上に活発になる。これら2つの夏のモンスーン地域の境界は、OLRが190Wm-2以下になる両モンスーンの上昇域の間にあって、OLRが230Wm-2以上と比較的高く、相対的な好天域である南シナ海にある。主要な下降域は中部北太平洋にあり、そこでは太平洋高気圧の発散域の上層に、熱帯上部対流圏トラフの収束域が位置している。すなわち、29℃を超える世界でもっとも高い海水温域にあるWNPMの中心地域(北緯10-20度、東経130-150度)では、活発な対流活動が生じ、東経110度付近の南シナ海と、西経140度付近の中部北太平洋との間に、顕著な東西循環が起こっている。この東西循環の鉛直構造は、北緯10-20度付近ではバロクリニックで、東経150度以東では下層が偏東風、上層が偏西風となっており、以西ではこの逆となる。WNPMは、北緯10度から20度付近における海水温の東西コントラストと、北緯20-30度付近における、大陸-海洋間の東西の熱的コントラストの複合作用の結果として生じていると考えられる。WNPM域の極側には大きな大陸がないため、南北の熱的コントラストの影響は、二義的なものとなる。一方SEAMは、主に南北の海陸熱的コントラストによって駆動される、南北循環によって生じている。SEAMは10月初め以前に後退するのに対し、WNPMは29℃を超える高海水温が維持されているため、11月初めまで持続する。
著者
村上 ひとみ 榊原 弘之 瀧本 浩一
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では地震後非常参集における交通手段アンケート調査から自転車活用条件を明らかにした。東日本大震災では名取市における津波避難アンケート調査をもとに、渋滞は厳しいが、身の危険は徒歩・自転車より自動車の方が低いこと、自転車は避難開始が早く機動性に優れることを示した。山口市の住民アンケート調査から自家用車依存が地理知識獲得に負の影響を及ぼし、地域活動参加が公共施設や商店等の正規化得点を高める傾向を示した。また災害早期の被害情報共有に役立つモバイル情報システムを開発した。以上を併せて、日常の自転車利用を促進し、自家用車依存を軽減することで、非常参集や津波避難に役立つ等、地震防災への効用が示された。
著者
村上 亮
出版者
同志社大学
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.103, pp.31-52, 2014-08

本稿は,ハプスブルク統治下ボスニア・ヘルツェゴヴィナにおいて展開された農業政策を事例として,ハプスブルク独特の二重帝国(アウスグライヒ)体制の一端を明らかにすることを目的とする。ボスニアは,帝国内唯一の「共通行政地域」として共通財務省の管轄下におかれ,その統治はオーストリアとハンガリーが共同対処する「共通案件」とされた。またこの地では,就業人口の9割近くが農業に従事しており,その中心をなす畜産は重要な意義をもっていた。今回はとくに,第一次世界大戦前夜に構想されたボスニア地方行政府官吏フランゲシュの農業振興法案が成立するまでの過程に着目し,次の点を明らかにした。第一は,フランゲシュの振興法案が,家畜の品種改良の促進,農業機関の設立,農業信用制度の創設を中心とするもので,ボスニアの事情と帝国本国とボスニアとの経済関係を勘案して作成されたことである。第二は,ボスニア統治が「共通案件」であったため,法案はその施行までに帝国中枢,とりわけハンガリー政府からの妨害に直面したことである。しかし,帝国中枢もボスニア議会(1910-14年)を始めとする現地の意向を勘案せざるを得ず,振興法案は縮減されたものの成立した。本稿の検証を通じて,「共通案件」をめぐる複雑な政策決定過程を跡づけた。
著者
佐々木 健太郎 野口 和人 村上 由則
出版者
宮城教育大学特別支援教育総合研究センター
雑誌
宮城教育大学特別支援教育総合研究センター研究紀要
巻号頁・発行日
no.11, pp.47-57, 2016-06-01

本研究では,学校卒業後を見据え,知的障害児の仲間関係の構築を目的とし,知的障害特別支援学校高等部在籍生徒及び卒業生を対象とした校外余暇支援活動の実践(ささけんクラブ)を行った。在学中から継続的に参加する一事例を取り上げ,ささけんクラブへの参加の様子,学校での仲間関係の変遷について継続的に調査を行った。その結果,ささけんクラブへ参加開始当初,対象者の関心の対象は活動内容であったが,高等部2年生になり一緒に参加する友達へと拡大された。同期的に学校でも休み時間等の自由時間に友達とかかわる場面が散見されるようになった。高等部3年生になると,本人の希望により放課後や休日にも友達とのかかわりが拡大していった。ささけんクラブの場等を通して,卒業後も友達とのかかわりを継続することにより,職場でのストレスを発散するニとができ,就労の継続に対しでも肯定的な影響をもたらした。以上の結果より,在学中から卒業後に渡って仲間関係の構築,維持を組織的に支援することにより,間接的に就労の安定が図られることが示され,移行支援の一つの視点として重視していく必要があることが示された。