著者
村上 興匡
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

明治30年代以降、告別式や神前結婚式に代表される宗教式結婚式など、近代的な人生儀礼の様式が次々考案された。これらは日本を文明するという機運、簡素化・合理化の主張としての風俗改良運動、社会教育における宗教の役割といった時代の問題と関係していた。その一方で日本の伝統的宗教習俗の多くは、文明に反する迷信として排除の対象となったが、「家」に関連する部分(たとえば「祖先教」など)は天皇制との関係で残された。近代的な人生儀礼は、都市的な生活様式に適合するものであるとともに、「家」的なイデオロギーと密接に結びついていたといえる。当初一部インテリ階級のみによって実行されてきた告別式や神前結婚式は、昭和になってから都市市民、特に戦後の高度経済成長期以後には、地方全国に広がった。1970年には、それまで大会社しかおこなっていなかった「社葬」を、創業者の葬儀のために中小企業においてもおこなうようになり、「村」-「家」に擬制したような企業間の贈答関係が成立し、葬儀は華美なものとなった。その一方で少子高齢化、核家族化によって「家」制度は徐々に壊れ、1990年代には継承者いらない墓地、散骨(自然葬)等々の運動が起こった。これらの運動の主題は「どう葬るか」ではなく「どう葬られるか」にあり、従来の葬儀慣習が強制力をなくし、葬儀のあり方が多様化していることを示している。それによって人々の葬儀や死に対する考え方は個人化し、葬儀の社会儀礼としての意味づけが弱められてきている。
著者
野家 啓一 座小田 豊 直江 清隆 戸島 貴代志 荻原 理 長谷川 公一 原 塑 北村 正晴 村上 祐子 小林 傳司 八木 絵香 日暮 雅夫 山本 啓
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

討議倫理学に基づく科学技術の対話モデルを作るために、科学技術的問題をテーマとする対話を実践し、そこから理論的帰結を引き出す研究を行った。その結果、以下の成果がえられた。1. 高レベル放射性廃棄物の地層処理に関する推進派と反対派の対話では、合意にいたることは困難だが、対話を通じて、理にかなった不一致に至ることは重要性を持つ。2. 推進派専門家と反対派専門家が論争を公開で行った場合、その対話を一般市民が聴いて、めいめい自分の見解を形成することがあり、このことが対話を有意義にする。3. 対話を成功させるためには、信頼や聴く力、共感のような習慣や徳を対話参加者がもつことが重要であり、このような要素を討議倫理学の中に取り込んでいくことが必要である。4. 対話では、価値に対するコミットメントを含む公正さが重要で、追求されるべきであり、それは、価値に対する実質的コミットメントを持たない中立性とは区別される。
著者
太田 照美 村上 武則 シェラー アンドレアス
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ドイツの社会法上の回復請求権の法的性質について損害賠償請求権との違いを明確にした。その学問的意義は大きい。また日本の景観権につき、ドイツの公法上の結果除去請求権の対象とされる絶対権と比較し、わが国の民法学で論争されている「権利論」との関わりで、わが国で初めて考察した。さらに日本の地方公共団体の租税過誤納金返還問題につき、日本で初めて、ドイツの公法上の原状回復請求権により救済を求めることができるとする理論を呈示した。
著者
村上 英樹 木股 三善 下田 右 伊藤 英司 佐々木 聡
出版者
日本岩石鉱物鉱床学会
雑誌
岩鉱 (ISSN:09149783)
巻号頁・発行日
vol.87, no.12, pp.491-509, 1992-12-05 (Released:2008-03-18)
参考文献数
37
被引用文献数
2 8

合成された純粋な灰長石,それぞれMgO, SiO2に富んだ灰長石を, EPMAと四軸自動X線回折装置を用いて化学組成と格子定数の測定を行い,三宅島産灰長石との比較を行った。複合イオン置換に基づく検討から,天然及び合成の灰長石は, MgをCaMgSi3O8, 過剰のSiは ?? Si4O8端成分として,固溶する可能性が指摘された。さらにMgに対するこの端成分を確認するため, EPMAによるMgの化学シフトを解析した。その結果,合成灰長石に固溶されるMgは,オケルマナイト(Ca2MgSi2O7) 中のMgと同じ四配位席を占有することが示唆された。また, X線単結晶回折法からは, Mgの固溶量が増加するに従って,単位格子の体積が増加する傾向が明らかになった。以上のことから灰長石におけるMgの固溶は,雲母,角閃石,輝石に認められる通常のTschermak置換, Mg+Si ?? ;2Al, とは異なり,四配位席だけでのTschermak置換が,メリライトと同様に灰長石においても成立することを明示している。
著者
伊藤 潔 梅田 康弘 黒磯 章夫 村上 寛史 飯尾 能久
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.301-311, 1986-06-25 (Released:2010-03-11)
参考文献数
16

The source characteristics of the Japan Sea earthquake, May 26, 1983 (M=7.7) is inferred from the seismic observation system with wide-frequency and large-dynamic range at the Abuyama Seismological Observatory. The duration of oscillation of the long-period low-gain seismogram (T0=25s) is much longer than those of other earthquake with nearly the same magnitude and nearly the same epicentral distance, which implies that the earthquake is a multiple shock. The relationship between a multiple shock and duration of oscillation is more clearly indicated in the figure of double amplitude envelope to eliminate the difference in amplitude by magnitude and focal mechanism. This simple method is applicable to detect multiple shocks in seismograms at one station, especially in historical seismograms with a few instrumental records.Seismograms of the main shock of the Japan Sea earthquake recorded by Wiechert seismographs and those of middle-period (T0=10s) low-gain velocity seismographs show a clear onset of the second event at about 22 seconds after the first arrival. Since no such second arrival is seen on the seismograms of the aftershocks at the same station, the phase is not a crustal phase but a P-wave arrival of the second event of the main shock.The main shock recorded by the middle-period low-gain velocity seismograph contains more complicated high frequency waves than the largest aftershock. This indicates that the rupture process of the main shock is much complicated compared with that of the aftershock. Further, comparing the spectrum of the first event of the main shock with that of the second event, the average amplitude at a low frequency (5-10 s) of the first event is smaller than the second event, while that at high frequency (1-2s) is larger than the second event. This suggests that the main shock is composed of double events of different rupture type; the rupture of the first event is smaller and radiated much high frequency waves than the second event.
著者
平野 恒夫 村上 和彰 小原 繁 長嶋 雲兵
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

分子軌道計算は、材料化学や医薬品開発のために欠くことのできない手法であり、現在本方法は化学工業においても広く利用され始めている。分子軌道計算は、基底関数の数Nの4乗に比例する演算量および、補助記憶量を必要とするため、タンパク質等の巨大分子の計算は、事実上不可能であった。そこで、本研究では演算時間の大幅な短縮と補助記憶量の削減を目的として、分子軌道計算のための専用計算機MOE(MO Engine)とそれを用いた分子軌道計算プログラムの開発を試みた。このシステムの実現には、既存分子軌道計算プログラムの改良、MOE-LSI(MOE用高度集積チップ)の作成ならびにその専用ボードへの実装が必要である。本研究で開発しようとしたMOEは、パソコンにIEEE1394と呼ばれる標準プロトコルを用いて接続される専用並列計算システムであり、その最小単位であるMOEL-SIを、今回新たに開発した。性能は200MFlopsである。このMOEL-SI5個をボード上に実装した。5個のMOEL-SIはPPRAM-Linkを用いて相互結合されているので、1ボードあたり1Gflopsの性能を示す。一方、分子軌道法計算プログラムの改良としては、現在広く世界で使われているGAMESSをベースに行った。
著者
石井 貴子 江上 いすず 三浦 英雄 村上 洋子 後藤 千穂 野路 公子 小倉 れい
出版者
名古屋文理大学短期大学部
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.63-71, 2003-05-29

平成12年度より本学では,給食管理実習を1年次後期から2年次前期まで通年で行っている.この試みは,県内の2年過程の栄養士養成校でも希少と思われる.また授業は3時限連続(昼休みも授業に含む)で行われ,特に1年次では1クラスに3人の教員が担当し,特色ある授業を展開している.我々実習担当者は,栄養指導だけでなく大量調理も意欲的にこなす,即戦力となる栄養士をいかに養成するか.を目的の一つに掲げている.今回この特色ある授業を受講した学生の意識調査を行うことにより,どれだけ教育効果が得られるかを見極めるため,本学食物栄養学科及び栄養士科の1・2年次生各々654名を対象に,調査を行った.その結果1年次では,実習を楽しく行うことができ,さらに大量調理と小量調理の違いに興味を持った学生が多いことが分かった.2年次では実習を継続して行うことにより,調理技術が上手になり,体もよく動き,さらに,現代学生気質として低めの傾向にあると思われる,積極性,協調性,忍耐力についても意識の向上が見られ,教育効果が上がっていることが確認された.しかし,食事作りに対する意欲や食糧事情に関する興味については,学生の意識が低いこともあわせて確認された.また,1・2年次ともに肉体的に「疲れた」という意識が非常に高く,今後は疲労度改善の方策をたてる必要性があることが示唆された.
著者
村上 重良
出版者
東京神学大学
雑誌
紀要
巻号頁・発行日
vol.1, pp.80-100, 1990-03-31
著者
高木 洋子 生井 兵治 村上 寛一
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.152-160, 1981-06-01
被引用文献数
1

コムギのアルミニウム耐性の早期検定法として,POLLEら(1978)がヘマトキシリン染色法を開発した。この方法の精度を耐性既知の品種を用いて追試し,さらにこれまでアルミニウム耐性や耐酸性が調べられていた日本の品種について,ヘマトキシリン染色法を適用し,メキシコ・ブラジル産品種とその耐性程度を比較した。その結果,ヘマトキシリン染色法は,従来から早期検定法として使われてきた水耕法に匹敵する精度を示し,そのうえ操作が簡便で発芽4日後に検定ができる,多数個体が同時に扱える,検定後の植物が利用できるたど長所があり,コムギ育種の早期簡易検定法として極めて有効であることを確めた。また,供試した日本の品種にはアルミニウム耐性が極強の品種(ヘマトキシリン染色法の評価,1)はなかったが,ヒラキ小麦,農林54号などの4品種はブラジルの耐性品種(評価,3)に匹敵するものであることを明らかにした。
著者
村上 仁- 嵯峨山 茂樹
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.45, pp.161-162, 1992-09-28
被引用文献数
1

形態素解析は、従来から対話、翻訳、校正などの目的のために、自然言語処理研究の一つの分野として研究が続けられている。これらの方式の多くは、予め単語を構文的意味的なカテゴリに分類してカテゴリー間の接続ルールや係受けルールを記述しておく必要がある。しかし、実際の日本語では単語の境界が明確でないことや単語の多品詞性や曖昧な係受けなどの問題があるため、精密なルールの作成は容易でない。そこで、本論文では隠れマルコフモデル(HMM)を用いた日本語の形態素解析方法を提案する。HMMにはBaum-Welchの学習アルゴリズムが知られているためテキストデータからモデルのパラメータが学習できる。そのため、文法としてのルールも品詞ラベルが振られたテキストデータが与えられなくても形態素解析ができる可能性がある。最後にこのモデルに基づいて実験を行なった。ここで用いたモデルは、かなり単純なモデルであるが、実験の結果は、単純なモデルとしては良好な解析結果を得た。
著者
村上 隆 Murakami Takashi
出版者
名古屋大学教育学部
雑誌
名古屋大學教育學部紀要 (ISSN:03874796)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.87-105, 1997-12-26 (Released:2006-01-05)

国立情報学研究所で電子化したコンテンツを使用している。

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著者
村上春樹著
出版者
新潮社
巻号頁・発行日
2012
著者
村上 一真
出版者
The Japanese Psychological Association
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.461-469, 2012

This paper examines the determinants, and interrelationships, of trust of the Forest Administration by using structural equation modeling with questionnaire data from 1 500 residents in six prefectures. The proposed model demonstrates that value similarity, ability and intention are determinants of the trust of the Forest Administration. There is a causal relationship of intention to value similarity. Furthermore, multiple group analysis in the structural equation modeling showed that the group with high interest in local forest problems showed a relatively large influence of intention and value similarity, compared to the low interest group, where intention and ability had a relatively large influence.