著者
山崎 信 村上 斉 中島 一喜 阿部 啓之 杉浦 俊彦 横沢 正幸 栗原 光規
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.231-235, 2006-05-25
参考文献数
11
被引用文献数
5 6

わが国で飼養されているブロイラーの産肉量に対する地球温暖化の影響を各地域の月平均気温の変動から推定した.環境制御室を用いて気温が産肉量に及ぼす影響を検討したところ,23℃における産肉量と比べて5および15%低下する気温はそれぞれ27.2および30.0℃であることが示された.夏季(7,8および9月)について,その気温域に該当する区域を日本地図上に図示するプログラムにより,地球温暖化の影響を解析した.将来の気候予測データとして「気候変化メッシュデータ(日本)」を用い,約10×10km単位のメッシュで解析を行った.その結果,2060年の7~9月における気温の上昇は,九州の宮崎市および鹿児島市において1.8~2.5℃,東北の青森市および盛岡市において3.0~4.5℃と推定された.また,7,8および9月の各月とも,2020年,2040年,2060年と年代の経過とともに産肉量への地球温暖化の影響が大きくなることが予測され,とくに九州,四国,中国,近畿などの西日本において産肉量が比較的大幅に低下する地域の拡大が懸念された.さらに,現在は産肉量が低下する気温ではない東北地方も,年代の経過とともに産肉量の低下する地域になる可能性が示された.九州および東北地方はわが国の鶏肉生産の半分以上を生産する主要地域であるが,今後とも高い生産を維持するためには地球温暖化を考慮した飼養法の改善が必要であると考えられた.以上の結果から,地球温暖化は今後半世紀でわが国の鶏肉生産に大きな影響をもたらす可能性が示された.
著者
宮下 武則 森 芳史 村上 優浩
出版者
香川県農業試験場
雑誌
香川県農業試験場研究報告 (ISSN:03748804)
巻号頁・発行日
no.57, pp.1-10, 2005-03

移植期と施肥法を変えた3年間の栽培試験結果を用いて、登熟期の気温が「ヒノヒカリ」の玄米品質とタンパク質含有率に及ぼす影響を検討した。1.「ヒノヒカリ」は、登熟期間中に高温に遭遇することによって玄米品質が低下しやすい品種である。登熟期の平均気温が24℃を超える場合、あるいは出穂後10日間の平均気温が27℃を超える場合は、主に高温の影響で玄米品質が低下する。2.登熟期の平均気温が23-24℃の場合は、単位面積当たり籾数の過剰によって玄米品質が低下する。この温度域で玄米品質を確保するためにはm2当たり籾数を2万8千粒以下にする必要がある。3.タンパク質含有率は、施肥窒素量だけでなく登熟期の気温によっても変化し、平均日最低気温が17℃以下もしくは平均気温が22℃以下の時は、それ以上の気温の時よりも低くなる。4.気象生産力指数から推定した香川県の平坦部における玄米品質と食味の向上のための最適出穂期は、8月30日から9月3日までであった。
著者
村上 大輔 下村 孝
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.152-157, 2007-08-31
参考文献数
18
被引用文献数
3 4

ビルの緑化された屋上で,緑化形態の異なる3地点(芝生地点,アスファルト地点,パーゴラ地点)を対象に,温熱環境要素の計測及び主観申告実験を行ない,物理量と心理量の双方がそれぞれの地点で異なることを明らかにした。特に,夏季に,パーゴラ地点では,他の2地点に比べ,気温とグローブ温度が低く,涼しい側と快適側の申告頻度も高かった。温度と快適性評価の2次回帰線と中立評価軸の交点より求めた快適範囲はパーゴラで最も広く,次いで,芝生,アスファルトの順になった。夏季にパーゴラのもたらす緑陰が屋上空間での快適性導入に有効であることが明らかにされた。
著者
天野 由記 南條 功 村上 裕晃 藪内 聡 横田 秀晴 佐々木 祥人 岩月 輝希
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.207-228, 2012 (Released:2012-12-14)
参考文献数
43
被引用文献数
1 3

北海道幌延町において,堆積岩を対象とした深地層の研究施設を利用して,地上からの地球化学調査技術の妥当性を検証した。また,地下施設建設が周辺の地球化学状態に及ぼす影響について考察した。地上からのボーリング調査について,調査数量と水質深度分布の予測向上の関係を整理した結果,3本程度の基本ボーリング調査と断層・割れ目帯など高透水性の水理地質構造を対象とした追加ボーリング調査により,数キロメータースケールの調査解析断面の水質分布について不確実性も含めて評価できることが明らかになった。地下施設建設に伴う地下水の塩分濃度,pH,酸化還元状態の擾乱を観察した結果,一部の高透水性地質構造の周辺において,地下坑道への湧水による水圧や塩分濃度の変化が確認された。この変化量は事前の予測解析結果と整合的であった。これらの成果は,他の堆積岩地域における地上からのボーリング調査や地下施設建設時の地球化学調査の計画監理にも参照可能と考えられる。
著者
神 直人 杉江 徹 村上 一三 神山 保 大山 政光 高澤 茂樹
出版者
滋賀大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

大学生にこれまで習ってきた数学について聞くと,次のような学習像が浮かび上がる:教員から与えられた問題を教員から教えられた解き方で,生徒が解答し,その答えを教員が評価する。ところが,実際の科学研究の流れは,問題の発見→モデル化→数学的処理→一応の解決→新たな問題の発見→…と続いていく。つまり,生徒は上の図式の一部である,数学的処理だけを練習していることになる。しかし,創造性,論理性の涵養,そして,理数科目への学習意欲を持たせるためには,上記の科学研究の流れを経験することが重要であるとの観点から,中等教育における教材の開発を目指した。そのためには身近にある問題の発見から出発するのが,適当であると考え,理科・数学を融合した教材の開発に着手した。[実践の記録](1)滋賀県立彦根東高校SSクラス,2006/9/6,13,20(2)滋賀県立虎姫高校 招聘講座,2006/12/20(3)滋賀大学教育学部附属中学大学訪問学習,1年生,2006/8/31(4)守山市立守山中学校3年数学集中選択,2006/9/14,2007/1/17実践の内容,評価を,研究成果報告書として作成した。
著者
村上 貴美子
出版者
関西福祉大学社会福祉学部研究会
雑誌
関西福祉大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:1883566X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.39-47, 2013-03

1907(明治40)年3月19 日法律第11 号として公布された癩予防ニ関スル法律は,1996(平成8)年3月31 日法律第28 号をもって廃止されるまでの約1世紀にわたるハンセン病対策の基本政策を形成した.本論は,癩予防ニ関スル法律の制定要因を検証することにより,その後の差別意識醸成の根源の一つが法制定時に内在することを明らかにした.癩予防ニ関スル法律の制定に至る過程は,三段階に分けて考えることができる.第1段階は,ハンセン病を伝染病としての取り扱いを議論する段階であり公衆衛生上の論法である.第2段階は,伝染病対策を急性伝染病対策と慢性伝染病対策に分離する段階である.第3段階は,単独法として癩予防ニ関スル法律の制定を議論する段階である.この間一貫している論調が「国家の体面」であり,伝染病の怖さの強調である.この伝染病癩の怖さの強調がその後の差別意識醸成の根源の一因となった.
著者
加藤 行男 村上 賢 カトウ ユキオ ムラカミ マサル Yukio Kato Masaru Murakami Tomomitsu Alexandre Okatani
雑誌
麻布大学雑誌 = Journal of Azabu University
巻号頁・発行日
vol.11/12, pp.180-183, 2005 (Released:2012-09-12)

野生の爬虫類252検体および愛玩用として一般家庭で飼育されている爬虫類(愛玩用爬虫類)39検体からSalmonellaを分離し,種および亜種の同定,血清型別を行った。野生の爬虫類252検体中29検体(11.5%),愛玩用爬虫類39検体中22検体(55.6%)からSalmonellaが検出された。分離されたSalmonellaの亜種は,亜種Iが最も多かった。分離されたSalmonellaの亜種Iの血清型は,S. Litchfield,S. Thompson,S. Newportなど9血清型に分類された。以上のことより,爬虫類はSalmonellaを高率に保有し,分離された株の中には日本においても胃腸炎患者から分離される血清型もあり,爬虫類がヒトのSalmonella感染症の感染源となりうることが示唆された。 A total of 291 fecal samples from 252 wild reptiles and 39 pet reptiles were examined for the prevalence of Salmonella spp. in Japan. Salmonella spp. were isolated from 29 (11.5%) of 252 wild reptiles and 22 (55.6%) of 39 pet reptiles. The isolates were identified into subspecies I to IV. The majority of isolates (43.6%) belonged to subspecies I and these isolates could be identified into 9 serovars. The serovars isolated were found to be S. Newport, S. Litchifield and S. Thompson which cause human salmonellosis. These results indicated that reptiles may be a potential infectious source of human salmonellosis in Japan.
著者
村上 泰浩 矢野 隆
出版者
崇城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

熊本市の市街地住宅地における、九州新幹線新設工事とJR鹿児島本線の高架化工事ならびにその鉄道騒音に長期間曝される沿線住民に対する社会調査を行い、同一地域で、工事経過ごとに異なる列車走行状態による鉄道騒音・振動等の物理量と社会反応との関係を探り、それらを総合的に分析した。2008年~2012年の調査の結果、新幹線開通後の在来線と新幹線による騒音のアノイアンスの関係では、全体的には在来線騒音の方が新幹線騒音よりも住民に及ぼす不快感が高いことがわかった。新幹線開通後の在来線と新幹線による振動によるアノイアンスの関係では、戸建住宅において在来線振動に対する反応が高いことがわかった。
著者
伊藤 亮 村瀬 聡美 吉住 隆弘 村上 隆
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.396-405, 2008-03-31
被引用文献数
1

本研究の目的は現代青年のふれ合い恐怖的心性の精神的健康度について,抑うつと自我同一性の側面から検討することであった。大学生292名(男性125名,女性167名)を対象に質問紙調査を実施し,対人退却傾向,対人恐怖的心性,抑うつ,自我同一性の感覚を測定した。対人退却傾向と対人恐怖的心性の高低の組み合わせによって対象者をふれ合い恐怖的心性群,対人恐怖的心性群,退却・恐怖低群の3群に分類した。一元配置分散分析の結果,ふれ合い恐怖的心性群は対人恐怖的心性群より抑うつは低く,自我同一性の感覚は高いことが示された。一方,退却・恐怖低群と比較した場合,自己斉一性・連続性,対他的同一性の感覚は低いことが示された。これらの結果から,ふれ合い恐怖的心性群は対人恐怖的心性群よりも精神的には健康的な群ではあるが,個として他者と向き合う対人関係においては自我同一性の危機が生じやすい一群であることが示唆された。
著者
堀 美代 村上 和雄 坂本 成子 大西 英理子 大西 淳之 一谷 幸男 山田 一夫
出版者
公益財団法人国際科学振興財団
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

幼若期の社会的隔離によって引き起こされるストレス脆弱性に対する快情動の効果を検証した。仔ラットどうしの遊び(rough and tumble play)をモデルにしたtickling刺激は、50kHz音声の表出と側坐核のドパミン分泌を促し、恐怖条件づけの恐怖反応や自律神経系のストレス応答を軽減させた。これらのことは、幼若期において他個体との相互作用を伴う遊び行動が、快情動形成およびストレス応答性の獲得に影響を及ぼす可能性を示唆する。
著者
平島 洋 奥平 清昭 中本 淳 村上 浩之 鈴木 裕武 山上 隆正 西村 純 太田 茂雄 並木 道義 宮岡 宏 佐藤 夏雄 藤井 良一 小玉 正弘
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.115-134, 1986-10

1985年7月に, 南極昭和基地の共役点であるノルウェーにおいてオーロラ観測の国際共同観測を実施した。日本側の大気球観測は, 地上から直接観測することが難しい降下電子, 自然電波および電離層電場等の時間および空間変動の観測が目的であった。気球搭載観測器としては, オーロラX線撮像装置とVLF受信機であった。日本側の気球は1985年7月2日と7月5日の2回放球した。本論文では, 7月5日に放球され, 観測されたオーロラX線現象について述べる。オーロラX線撮像装置として, 従来から用いていた無機シンチレータを1次元に配置したものと, 厚型のリチウム・ドリフト型Si(Li)半導体検出器の2次元撮像装置を用いた。解析の結果, このオーロラX線現像は, 7月6日23時25分(U. T.)頃に始まり, 数分間継続し, 約50km/minの速度で北西から南東の方向に移動していたことが明らかになった。
著者
船隠 恵子 堀田 修次 濱岡 照隆 田阪 武志 立花 広志 村上 敬子 豊川 達也 佐藤 英治 友田 純
出版者
岡山医学会
雑誌
岡山医学会雑誌 (ISSN:00301558)
巻号頁・発行日
vol.125, no.1, pp.29-33, 2013-04-01 (Released:2013-05-01)
参考文献数
10

Ulcerative proctitis (UP) is a prevalent condition associated with increased morbidity, and topical mesalazine (5-aminosalicylic acid [5-ASA]) is known to inhibit the inflammatory processes in UP. We successfully devised mesalazine suppositories, in which 250mg mesalazine was equally distributed and remained stable for at least 2 weeks. We evaluated the effect of using mesalazine suppositories twice a day (BID) on two UP patients. The results demonstrated that mesalazine suppositories were efficacious, well tolerated and safe for the long-term maintenance of UP remission.
著者
田中 健 村上 大輔 下村 孝
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.133-138, 2008 (Released:2009-04-10)
参考文献数
15
被引用文献数
4 4

京都市内を事例として,好ましい屋上緑化のデザインを明らかにするため,市内の屋上から撮影した4種類の景観写真と4パターンの屋上緑化写真を組み合わせた合成画像を用いて景観評価実験を行なった。その結果,同一の背景で緑化形態(緑量)を変化させた場合に,緑量が増える程評価が向上することが示され,さらに,和風庭園風緑化が高い評価を得ることが示された。また,アイマークレコーダ(EMR)による眼球運動の測定を行い,画像内の緑量が増える程,被験者が人工物を探索する傾向があることが示された。以上の結果から古都の景観を残す京都では和風の屋上緑化が望ましいと推測された。
著者
村上 智子
出版者
日本語教育方法研究会
雑誌
日本語教育方法研究会誌
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.66-67, 2012-03-10

Students need the ability to form agreements with others when they go out into society so it's important to practice. We adopted the format of group discussion used in many employment examinations of drawing group conclusions. Integrating and organizing techniques to bring together each participant's opinions are necessary. As a result of practice, students were able to reach a conclusion within a limited time. Group discussion cultivated logical thinking, required to make a personal opinion and achieve consensus. I would like to propose the adoption of such practice.
著者
九州公法判例研究会 村上 英明
出版者
九州大学法政学会
雑誌
法政研究 (ISSN:03872882)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.197-204, 1987-09-19
著者
田口 紀子 増田 真 永盛 克也 吉川 一義 杉本 淑彦 多賀 茂 王寺 賢太 アヴォカ エリック 辻川 慶子 村上 祐二
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

フランスにおける、「文学」と「歴史」という二つの隣接ジャンルの美学的、認識論的境界の推移と、具体的文学作品での歴史認識の表出を、17 世紀から 20 世紀までのいくつかの特徴的局面に注目して検証した。2011 年 11 月には国内外から文学と歴史の専門化を招いて日仏国際シンポジウム「フィクションはどのように歴史を作るかー借用・交換・交差」を京都日仏学館で開催した。その内容を来年度を目途にフランスで出版するべく準備を進めている。