著者
松村 靖
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.39-43, 2014 (Released:2016-02-01)
参考文献数
21

フッ素は他の元素には見られない独特の物理化学的性質を有するため,生体内での吸収や代謝に与える効果に加えて,薬理作用の発現や増強に及ぼす影響が注目されている.医薬や農薬の分野において開発される含フッ素化合物の増加には,目を見張るものがある.今やフッ素による構造修飾は,ドラッグデザインの重要な手段の1つと言えるかもしれない.しかし一方で,構造修飾の手法は芳香環部位へのフッ素原子やCF3基の導入がほとんどであり,化合物の主鎖となる骨格や脂肪族置換基にフッ素を導入した例は限られている.また,薬物が受容体に結合するときのフッ素と受容体アミノ酸残基との直接的な相互作用やフッ素の立体電子的効果については,いまだによく分かっていない.さて,読者の皆様は,研究対象の化合物の構造を眺めていて,ふと「ここにフッ素を入れたら,面白い活性や物性が出るかもしれないなあ…」などと思われたことはないだろうか.我々は1980年頃より,プロスタグランジン(PG)などの生理活性物質にフッ素を導入した誘導体を合成し,フッ素が生理活性や物性に及ぼす効果について研究を行ってきた.何かフッ素の特徴を生かしたユニークなドラッグデザインができないだろうかと考えるとき,どのようにして目指す位置に選択的にフッ素を導入するかが常に問題となり,新たな合成法の開発が鍵となることを痛感してきた.本稿では,主鎖にジフルオロメチレン(-CF2-)骨格を持つPG誘導体について,フッ素の効果に焦点を絞って,ドラッグデザインとフッ素導入法を中心に概説し,緑内障治療薬タフルプロスト(tafluprost)の誕生に至る経緯を交えて紹介したい.
著者
宮下 修 松村 興一 笠原 俊彦 島津 浩 橋本 直人
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.887-898, 1982-03-25 (Released:2008-03-31)
参考文献数
6
被引用文献数
3 8

Various derivatives of 5-fluoro-5, 6-dihydrouracil with an alkoxycarbonyl, substituted carbamoyl, or cyano group at C-5, and one of a variety of substituents, i.e., alkoxy, substituted mercapto, substituted amino, acyl amino, and alkylidene- and arylideneaminooxy at C-6, have been synthesized as a class of potential pro-drugs of autitumor agents, 5-fluorouracil (5-FU) and 1-(2-tetrahydrofuryl)-5-fluorouracil (Ftorafur). Antitumor activity of these compounds against leukemia P388 or L1210 in mice and antifungal activity against Botrytis cinerea are described.
著者
松村 卓朗 吉村 浩一
出版者
日経BP社
雑誌
日経情報ストラテジ- (ISSN:09175342)
巻号頁・発行日
vol.17, no.6, pp.170-173, 2008-07

組織、人事の戦略担当者の間で、トヨタ自動車が2007年7月に実施したホワイトカラーの組織体制の見直しが話題になっている。従来は1人のグループ長が20〜30人の部下を率いるフラット型組織を運営していたが、組織変革後はグループ長の下で数人の先輩社員が率いる小チーム型に組み替えた。 一般的なフラット型組織ではグループ長の指導力低下が問題となる企業が多い。
著者
松村 みなこ 田中 信治 玉木 憲治 隅井 雅晴 三重野 寛 吉原 正治 春間 賢 隅井 浩治 梶山 悟朗 井上 正規
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.85, no.7, pp.1150-1153, 1996-07-10
被引用文献数
4 2

症例は34歳,女性.主訴は上腹部不快感.胸腹水貯留,低アルブミン血症を認め, α<sub>1</sub>-アンチトリプシンクリアランステスト, <sup>99m</sup>Tcアルブミンシンチにより蛋白漏出性胃腸症と診断した。また,抗核抗体陽性,浸出性胸腹水,関節炎,汎血球減少を伴い,活動性の全身性エリテマトーデス(SLE)の併存を認めた.ステロイドパルス療法により血清アルブミン値の上昇,蛋白漏出の改善を認め,本症例はSLEを基礎疾患とし蛋白漏出性胃腸症を呈したものと考えられた.
著者
松村 康平
出版者
日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.389-390, 1991
著者
松村 寛之
出版者
史学研究会 (京都大学文学部内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.272-302, 2000-03

個人情報保護のため削除部分あり本稿は、重要な近代思想の一つとして昨今注目されつつある優生学が、一九三〇年代から十五年戦争期にかけての日本でいかなる位相にあったかについて論ずるものである。この時代には、「日本民族衛生学会」の創設など、二〇世紀初頭以来日本に浸透してきた優生思想が政治的・思想的運動として本格化してゆくと同時に、他方で満州事変を契機とする陸軍の「国防国家」建設がはじまる。本稿ではこの「国防国家」と優生学の関係について、当時の優生学の中心的担い手であった医学者の古屋芳雄の思想と行動をてがかりに考察する。その際の筆者の論点は以下の二つに大約されるだろう。すなわち一つには、かつて白樺派の同人であった古屋が、「正常な科学」である優生学に傾倒する論理のなかに、「近代」のもつアクチュアルな問題性を観相することであり、いま一つは彼の思想の強い影響をうけつつ生成した「国防国家」の優生学を、ファシズムを「近代の病理」として認識する契機として位置づけることである。
著者
田悟 和巳 荒井 秋晴 松村 弘 中村 匡聡 足立 高行 桑原 佳子
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.311-320, 2013 (Released:2014-01-31)
参考文献数
24
被引用文献数
1

森林性の中型食肉類であるテンMartes melampusを対象に,糞から抽出したDNAを用いて,個体数の推定を試みた.調査は熊本県阿蘇郡(以下,阿蘇)および佐賀県佐賀市(以下,佐賀)で行った.調査地域内で採集した糞のDNA分析の結果,阿蘇で95個体,佐賀で50個体を個体識別できた.各個体の確認期間から,定着個体と非定着個体に分けたところ,定着個体は阿蘇が13個体,佐賀が10個体であった.阿蘇では非定着個体が秋季に増加する特徴が見られたが,これは調査地の地形的な特徴から,移動路として利用する個体が多く確認されたためと考えられた.個体群密度は,阿蘇で0.14~0.19個体/ha,佐賀で0.09~0.13個体/haであった.これはこれまで知られているテン属の中では特出して高い数値であった.また,親子ではない同性間の成獣において,利用地域が重複する場合があることが確認され,必ずしもテンが排他的ではないことが示唆された.
著者
松村 幸輝 衣笠 智 白木 三秀
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌) (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.134, no.5, pp.718-728, 2014 (Released:2014-05-01)
参考文献数
18

This paper proposes the expat assessment system for global management personnel training utilizing the data mining employing evolutionary computation. This study follows the three steps. First step is to research those overseas temporary staff by direct hearing and having them answer the questionnaires. The second step is to make the data base with the results acquired from the step one. The third step is to construct the system to assess the prospective staff's aptitude or adaptability. The system would enable to promote the efficiency of assessment and to be useful in their training. This expat assessment system is built with the decision tree of evaluation standard based on the assorting problem solving method. For designing the non-terminal nodes of the decision tree, a new method is proposed utilizing the idea of the association rules, which is a powerful method in data mining. This is done to find out direct factors related to aptitude or suitability for overseas staff. The terminal nodes of the decision tree are to be optimized by Genetic Algorithm (GA) regarding a series of terminal nodes as the individuals forming the linear structure. As a result, the significant factors are found, which are strongly related to aptitude, adaptability and likeliness to be successful overseas. This research has revealed, by applying the system in practice, actual aptitude, skills and personalities required for expats.
著者
船田 桂子 永井 利幸 吉原 良浩 岸野 喜一 片山 隆晴 松村 圭祐 宮川 貴史 穂坂 春彦 鈴木 雅裕
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.11, pp.1413-1419, 2013 (Released:2014-11-21)
参考文献数
13

症例は手術歴や外傷歴のない49歳, 男性. 以前から時折下腿浮腫を自覚していたが, 自然軽快していたため放置していた. 2011年 7月に右下腿浮腫, 歩行時痛で受診. 右下腿深部静脈の拡張と血栓像を認め, 深部静脈血栓症と診断. 臨床症状, 心電図および経胸壁心臓超音波検査断層法からは肺塞栓症を疑わせなかったが, スクリーニングで施行した胸部造影CTで両肺動脈に血栓像を認めた. 抗核抗体, 凝固因子, プロテインS, プロテインCなどの血栓素因は正常範囲内であったが, 血中ホモシステイン値が67.7μmol/Lと著増しており高ホモシステイン血症を伴った深部静脈血栓症および肺血栓塞栓症と診断した. 抗凝固療法およびビタミン補充療法を開始し, 自覚症状と画像所見の改善を認め, 血中ホモシステイン値は 1カ月後には正常化し, 現在静脈血栓症の再発を認めていない. 高ホモシステイン血症を伴った静脈血栓塞栓症の報告は比較的稀であり, 文献的考察を含め報告する.
著者
坂本 千城 渡辺 武夫 坂本 洋子 宮本 治子 山岡 寿美子 三浦 治子 松村 一主功 松井 利充 中尾 実信 藤田 拓男
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.485-490, 1983-11-30 (Released:2009-11-24)
参考文献数
11

閉経期後又は老年性骨粗鬆症の原因は複雑であり, 現代までに, 内分泌的, 栄養的, 物理的, 遺伝的等の諸因子が考えられたが, 免疫学的因子は未だ検討されていない. しかしながら, 骨粗鬆症が, 多くの膠原病や自己免疫疾患と同様に, 女性に多いこと, 又免疫異常の起り易い老年に多いこと, 自己免疫疾患として有名な慢性関節リウマチで, 関節周囲に骨粗鬆症様の変化が見られること, 更に骨粗鬆症では, 骨の吸収と形成してアンバランスが見られるが, 骨の吸収の主体である破骨細胞は, マクロファージ起源であるともいわれ, リンフォカインの一種であるOAFによって, その活性が刺激される等の現象は, 骨粗鬆症の原因の一つに, 免疫異常があることを, 疑わせるのに充分である.加齢とともに細胞免疫の一つの指標であるツベルクリン反応は陰性のものが多くなり, ことに骨粗鬆症を示すものでは, 示さないものよりも同年齢でも陰性者の率が高く, 又ツベルクリン陰性者は陽性者に比べて, 橈骨の鉱質合量が低下している. 末梢総リンパ球数及びTリンパ球数には, 骨粗鬆症患者と骨粗鬆症を有しないものの間に差はないが, OKT4/OKT8 (ヘルパー/サプレッサー) 比は, 骨粗鬆症患者では骨粗鬆症を有しないものに比べて, 高値を示す. 0.5μg/日の1α(OH)ビタミンD3を投与すると, 骨粗鬆症患者におけるツベルクリン反応は陽転するものが多く, 又, OKT4/OKT8比は低下する. これらの所見から, 骨粗鬆症にはある種の免疫異常, ことに細胞性免疫の低下が存在すると思われるが, その病態生理学的意義は, 今後の検討を要する.
著者
松村 真宏 大澤 幸生 石塚 満
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.259-267, 2002 (Released:2002-04-25)
参考文献数
14
被引用文献数
13 36

Business people, especially marketing researchers, are keen to understand peoples' potential sense of value to create fascinating topics stimulating peoples' interest. In this paper, we aim at finding influential people, comments, and terms contributing the discovery of such topics. For this purpose, we propose an Influence Diffusion Model in text-based communication, where the influence of people, comments, and terms are defined as the degree of text-based relevance of messages. We apply this model to Bulletin Board Service(BBS) on the Internet, and present our discoveries on experimental evaluations.
著者
松村 劭
出版者
日経BP社
雑誌
日経トップリーダー
巻号頁・発行日
no.298, pp.101-103, 2009-07

「歴史上で最も偉大な戦術家の一人」と後世まで語り継がれるカルタゴの将軍、ハンニバル・バルカ。「劣勢であるにもかかわらず予備戦力を残す」という独自の戦略で、最強ローマを崖っぷちまで追い詰めた。 カルタゴは紀元前、現在の北アフリカに栄えた古代都市である。ハンニバル・バルカは紀元前221年、26才のときにカルタゴ軍の司令官に就任した。
著者
松村 隆 吉野 友章 小松 隆史
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集 2011年度精密工学会秋季大会
巻号頁・発行日
pp.309-310, 2011 (Released:2012-03-05)

超微粒子のステンレス鋼に対して,エンドミル切削を試み,切削力と仕上げ面粗さ特性を調べた.超微粒子鋼のエンドミル切削では,切削力波形の動的成分が減少し,通常の粒径のステンレス鋼よりも安定した切削状態となることが明らかとなった.また,バリや仕上げ面粗さが改善され,結晶の微粒化が仕上げ面特性に及ぼす影響を確認した.
著者
西島 真美 吉原 崇恵 松村 千有紀
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第50回大会・2007例会
巻号頁・発行日
pp.64, 2007 (Released:2008-01-08)

【目的】 高度な情報・消費社会を背景に、現代の子ども達は幼い頃から、たくさんの物から欲しいものを選べば手に入る便利で快適な生活を送っている。これからの家庭科教育には、単なる物の購入に関する知識や決定だけでなく、主体的に生きる決定をも含む意思決定能力の育成が期待されている。昨年は、より適切な意思決定をするための方法、「意思決定プロセス」を生徒に分かりやすく行わせるワークシートを提案した。そして今年は、日常の授業の中で意思決定プロセスを導入した実践を行った。意思決定の際、一人ひとりの価値観や資源などが影響するため、決定までのプロセスが最も重要である。今年の研究では、より適切な意思決定をするための意思決定プロセスを1.解決すべき問題をはっきりさせる。2.問題解決に必要な全ての事実を集める。3.解決方法を思いつくだけあげる。4.起こりうる結果や成り行きを考える。5.意思決定する。6.決定を実行する。7.結果を評価・判定する。の7つの段階に整理した。この意思決定プロセスを、TPOに応じた実践的な意思決定能力として生徒に身につけさせるためには、生徒のもつ価値項目や資源を育成することが求められる。今年の研究では、実践的意思決定能力育成のために6、7、の段階を充実させること、そのことによる_丸1_生徒同士の関わり合い_丸2_繰り返し行わせることの有効性を明らかにする。さらに、意思決定プロセスを身につけることによる生徒の学びの可能性についての一考察とする。 【方法】(1)昨年度の実践についてまとめ、新たに生徒の感想を分析することで、本研究の課題を明らかにした。(2)本年度の授業実践内容を記録し、生徒の価値項目の変化における全体の概況を分析した。研究対象は、三島市立Y中学校の2年1組(2006年11月10日~12月13日)の、食生活に関する授業である。特に、お弁当作りの実践における意思決定プロセスを追跡した。毎回のワークシートへの記述を分析の資料とした。(3)生徒の学びの過程を個人カルテとして作成した。そして価値項目の変化の過程が似ている生徒をグループ化し、それぞれの学びの特徴や課題について考察した。(4)全単元の終了後にアンケートを実施した。そして生徒の学びの可能性と今後の課題について考察した。 【結果と考察】 お弁当作りの意思決定プロセスは、授業での実践1回と、家での実践2回の計3回である。全体の概要としては、生徒達は3回の実践を追うごとに新しい価値に気づき、価値意識を広げることができた反面、価値項目がお弁当の質に関する価値である健康や安全へと集中した傾向があった。さらに本研究の課題に対しては以下のような考察をすることができた。1)実践の中で、ほとんどの生徒が友達のアドバイスを参考にしており、栄養バランスをよくするために品数を増やしたり、添加物の摂取を控えるためにおかずを変更したりする姿が多く見られた。価値項目の変化とも照らし合わせ、生徒同士の関わりは、ア.自分の決定に対する批判的思考を育て、意思決定の再検討を助ける。イ.新しい価値項目への気づきを助け、価値項目を増やす事ができる。という二点から有効な学習過程であるということが言える。2)繰り返しの実践の中で、生徒達はバランスの整ったお弁当を作るようになったり、時間のないときには工夫して作ることができるようになっている。同時に、多くの生徒は、価値項目を量的・質的に変化させていることがわかった。このことから、ア.毎回の反省・イ.友達のアドバイス・ウ.授業などで身につけた知識や技能を次回の意思決定に生かす・エ.価値意識の定着・オ.自覚しその必要性に気づく必要性に気づく・カ.知識や技能の向上という6点から、有効であったと言える。3)多くの生徒は、意思決定プロセスの考え方の日常生活での生かし方を具体的に考えることができていた。同時に、時間やお金といった身近な資源に気づき、その必要性を自覚して主体的に学び生活する態度に広がる可能性を見ることができた。