著者
松浦 良充
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.417-426, 1999-12-30 (Released:2007-12-27)

本論文は、アメリカ高等教育史における「リベラル・エデュケイション」および「ジェネラル・エデュケイション」概念の意味と、その相互関係の明確化を試みるものである。この作業を通して、現在私たちが直面している課題である、日本の大学における<教養>について再考する際の示唆を得る。そしてそのための事例として、シカゴ大学カレッジにおける改革の現状と歴史を考察する。シカゴ大学カレッジは、1999年、1984年以来の学士課程カリキュラムを改訂したが、この改革に関しては多くの議論がまきおこっている。なぜならば新カリキュラムは,シカゴ大学の伝統である共通コア科目を縮小し、その分、選択科目枠を拡大するものであったからだ。さらにシカゴ大学カレッジは、創立以来現在に至るまで、アメリカ合衆国における有数の研究志向大学であるにもかかわらず、ロバート・メイナード・ハッチンズ学長・総長時代(1929&#8764;1951 年)に、学士課程カレッジのカリキュラムおよび組織に関してユニークな実験的改革の経験をもっている。しかしながら今回の改革は、多元文化社会におけるリベラル・エデュケイションの新たな概念構成が,共通コア科目からなる一般教育と、専攻(専門)教育、さらに、教室外や国外にさえおよぶ学生の自主学習・研究を含むものへと、再構築されるべきことを示唆している。筆者は、シカゴ大学の改革から、日本の高等教育における<教養>教育概念の再構築のための新たな参照枠を得ることができると考えている。 本稿の議論は、以下の手順によって進めてゆく。第一に、日本の高等教育が、戦後新制大学のモデルとしたつもりであったアメリカにおける「リベラル・エデュケーション」および「ジェネラル・エデュケーション」(教養教育)が、学士課程の専門(専攻)教育と本質的に対立するものである、との誤解がなされてきた。そうした理解は、アメリカにおけるリベラル・エデュケイション概念の意味には含まれていない。第二に、リベラル・エデュケイションの思想史を、とくに、ブルース・A・キンバルによる、「弁論家」の系譜と「哲学者」の系譜という枠組みを参考にしながら、整理・検討する。それによれば、リベラル・エデュケイションの歴史は、弁論家たちによる「アルテス・リベラルス理念」と哲学者たちによる「リベラル-フリー理念」との間の一連の論争の歴史である。そして、いまや両者の理念の統合が求められている。第三に、シカゴ大学カレッジの1999年度カリキュラム改革および実験的改革の歴史について検討する。シカゴ大学カレッジのリベラル・エデュケイションは、コモン・コアによる一般教育、専攻(専門)教育、および自由選択科目から構成されているが、今回の改革では、教室外やキャンパス外にも教育活動を拡張することをめざしている。そしてそれは、リベラル・エデュケイションにおける「アルテス-リベラルス理念」と「リベラル-フリー理念」の統合を試みるものである。そして以上の考察を経て最後に、筆者は、専攻(専門)教育や課外の教育活動を含みこんだ形での、新たな日本の学士課程における教養教育を構築することが必要であると結論する。
著者
坪内 伸司 山本 章雄 松浦 義昌 田中 良晴 高根 雅啓 清水 教永
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、健康な成人男女を対象としバイオフォトンの日内変動や人間の健康状態をどの程度反映するか検討した。対象者個々の日内でのエネルギーフィールド指標は、全平均値で日内変動が認められた。また、負荷作業前後のエネルギーフィールド指標は、全平均値で有意な差(p<0.05)が認められた。POMSは、作業後に疲労、抑鬱、怒りの増加が認められた。バイオフォトンは、作業によるストレスを度反映し、新視点から健康状態の評価が期待される。
著者
松浦 究
出版者
日本医科大学医学会
雑誌
日本医科大学雑誌 (ISSN:00480444)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.429-437, 1980-08-15 (Released:2010-10-14)
参考文献数
27

The inferelatia of the fecal E. coli in the mother and child attracts much attention of the investigators and the importance of this interaction has been documented in the literature.However, investigated cases are rather limited and the detailed patho-physiological significance should await further elucidation in future. In this viewpoint the author has isolated the E. coli from the fecal materials of mother and newborn infant chronologically and subtyped serologically. Moreover, concerning infection with reference to the mother-child relationship, circumstantial factors and infulence of the E. coli on mother and child have been investigated in this study.The study also has attempted to elucidate the mechanism how the E. coli settle in human intestine as normal flora.(1) The E. coli in newborn infant was isolated within 24 hours as the rate of 9.2%, 40.8% within 48 hours, and 61.8% within 72 hours.(2) Related to the relationship between delivery time and detection rate of E. coli in newborn intestine, it is very interesting to note that majority of the cases of prolonged delivery time beyond 18 hours disclosed detection of the E. coli within 48 hours.Contrary, in cases which showed delivery time within 18 hours, only detection rate of 35.8% was noted.(3) No significant correlation was observed in detection rate of E. coli and time interval of rupture of membrane and delivery of the babies.(4) Of 561 strains of E. coli separated from mothers and children, 194 strains (34.1%) could be identified serologically.(5) Serological typing disclosed 14 subtypes, namely, 0-1, 2, 18, 6, 13, 4, 8, 14, 15, 25, 12, 21, 23 and 36.(6) Out of 54 cases, 8 cases disclosed identical subtyped E. coli between the mother and child.(7) Among newborns admitted at about the same time, 24 cases (44.4%) of 54 showedidenticalserum types.Based on these observations, it is concluded that the highly probable presence of horizontal dissemination of the E. coli in newborn infants in virtue of circumstantial factors, although vertical dissemination in a mode of the mother to child relation should be present to a lesser extent.
著者
松浦 律子 田力 正好
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.71, pp.103-116, 2018-07-10 (Released:2018-08-09)
参考文献数
30

After the Russo-Japanese War, too little information about earthquakes was published by the Central Meteorological Observatory, and it has made us left in difficulty to examine earthquakes of the Taisho era precisely. Among such earthquakes, the M5.7 destructive earthquake on August 6th, 1916, in Ehime Prefecture was re-examined by the excavated same age documents. Irazu weather station and other stations, which were operated by the company of Besshi copper mine, reported the detail of this earthquake. Identification of reported places about cracks and falling rocks was done, in addition to the examination of the seismic intensity distribution left in newspapers and the Official Gazette. It is proposed to move the epicenter of this earthquake to (33.95°N, 133.4°E), where is six-km south from that in Utsu-catalogue, and closer to the Ishizuchi fault, which belongs to the Median Tectonic Line active fault zone. It is also found that this event has a felt foreshock a half day before, and a felt aftershock an hour later. This event is the first candidate of destructive earthquakes of the MTL active fault zone in the written history.
著者
松浦 正憲
出版者
慶應義塾大学
巻号頁・発行日
2009

博士論文
著者
松浦 茂樹
出版者
水利科学研究所
巻号頁・発行日
no.342, pp.27-56, 2015 (Released:2015-07-06)
著者
荒川 博 伊奈 健宏 松浦 英之 大場 聖司 種石 始弘 中根 健
出版者
静岡県農業試験場
巻号頁・発行日
no.46, pp.35-43, 2001 (Released:2011-03-05)

ワサビのいくつかの品種・系統を供試し、主な辛味成分であるアリルイソチオシアネートとその生成因子との関係、部位別分布を調査し、簡便で精度の高い辛味成分の評価法について検討した。 1. ワサビ根茎部のアリルイソチオシアネート含量は、品種・系統間差がある傾向がみられた。また、肥大性の良い品種・系統でアリルイソチオシアネート含量が低い傾向であった。 2 ワサビ根茎部におけるアリルイソチオシアネートの生成には、前駆物質であるシニグリン含量が大きく影響し、根茎内のビタミンC含量、ミロシナーゼ活性の影響はみられなかった。同時期に収穫したワサビの辛味成分の評価法としてシニグリン含量を指標にできることが示唆された。 3 根茎部内のアリルイソチオシアネート、シニグリンは外層部に多く、中心部で低かった。また、ミロシナーゼ活性は、維管束部で最も高く、髄ではほとんど認められなかった。 4 根茎部の中位部・中心部におけるシニグリン含量から根茎全体のシニグリン含量を精度良く評価できることを明らかにした。
著者
樋口 善之 松浦 賢長
雑誌
福岡県立大学看護学部紀要 (ISSN:13488104)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.65-70, 2003-12-25
被引用文献数
1

大学生における自己肯定感と生活習慣との関連を明らかにすることを目的とした調査研究を行なった.4つの下位領域からなる自己肯定感尺度を用いて京都市の男子学生39名,女子学生66名,合計105名を対象に,質問紙調査を行なった.併せて,生活習慣についても調査した.その結果,1) 大学生の生活習慣において,自己肯定感と関連が見られた生活習慣は,起床形態,夕食摂取形態,食前に「いただきます」と言う,であった.2) 下位領域と関連が見られた生活習慣は,起床形態,朝食摂取頻度,夕食摂取頻度,夕食摂取形態,食前に「いただきます」と言う,食後に「ごちそうさま」と言う,であった.3) 生活習慣との間に最も関連性がみられた下位領域は,『自律』領域得点であった.4) 好ましい生活習慣を守っている者ほど,自己肯定感は高い傾向にあった.
著者
松浦政泰編
出版者
博文館
巻号頁・発行日
1907
著者
佐合 純造 松浦 茂樹
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.127-137, 1999-05-01 (Released:2010-06-15)
参考文献数
32

The government, which had established a river improvement plan in 1925, started improvement projects in 1930 on the Asahi River. Main purpose of the project was to improve the inland navigation system as well as flood control City planning law was applied to Okayama city in 1923.Since the navigation system of the downstream of the Asahi River was very important for the urban development, it was asserted that the downstream of the Asahi River should be turned into a canal.The Hyakken. River had been diverged from the main stream of the Asahi River in the 1600s.The people of Okayama raised objections to the original plan, and besides, there was the intense struggle with the improvement plan between those who lived in the area near the main stream and those who lived in the area near the diverged channel.Finally, the Hyakken River was officially designated as a diversion channel in the plan, and the main stream of the Asahi River was improved to serve the needs of navigation system as well as a flood flow channel.
著者
松浦 きらら 藤井 さやか 有田 智一
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.285-290, 2013-10-25 (Released:2013-10-25)
参考文献数
7
被引用文献数
1

本研究では都区部におけるUR賃貸住宅団地が有する団地屋外空間を取り上げ、URによる団地屋外空間設計手法が持ちうる課題を抽出することと、団地屋外空間が地域内で活用される実態の把握を通じて今後の団地屋外空間への設計指針への示唆を得ることを目的としている。団地屋外空間の設計内容と活用実態について、地区内の複数の遊び場と対象地を比較すること、対象団地における設計内容と活用実態の比較検討をする際に団地敷地内における配置計画に着目することによって、団地屋外空間が団地居住の児童のみならず周辺地域児童にとっても活用できる遊び場である可能性を検討する。調査結果からは、都区部におけるUR賃貸住宅団地には公的機能・配置を有する屋外空間が豊富に存在し、地域資源として貢献できる可能性があることを把握した。活用実態としては、UR所有の屋外空間であったとしても団地全体の配置計画上団地外居住児童による利用が活発となる場合があり、そのために設計時の利用構想内容と活用実態に齟齬が生じうることが明らかになった。
著者
田中 理子 猪又 直子 松浦 みどり 石田 修一 鈴木 亜希 蘇原 瑞恵 相原 道子
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.1258-1264, 2014-11-01 (Released:2017-02-10)

20歳女性.感冒のためジェルカプセルの市販感冒薬を内服開始後5日目に,ヨーグルト摂取後に同薬を内服し,その5分後より頸部に熱感や〓痒を自覚した.次第に全身の潮紅,腹痛,呼吸苦が出現し意識を消失したため,前医に救急搬送された.アナフィラキシーショックの疑いで当科に紹介受診となった.血液検査でImmunoCAP^[○!R]ではゼラチンがclass 4,牛乳は陰性であった.プリックテストでは牛乳は陰性で感冒薬が陽性となった.感冒薬の全成分のプリックテストではゼラチンのみ陽性であり,感冒薬のカプセル成分であるゼラチンによるアナフィラキシーと診断した.ゼラチンアレルギーは,日本では1994年〜2000年頃,乳児期のゼラチン含有DPTワクチン接種によりゼラチンに感作された症例が多く報告されたが,自験例はゼラチン含有DPTワクチン接種後もゼラチン食品摂取での誘発はなく,感冒薬内服による感作が疑われた.ワクチンのゼラチンフリー化が進みアレルギーの報告は著減しているが,薬剤への添加により発症の可能性があるため注意が必要である.
著者
松浦 元樹 田川 彰男 小川 幸春
出版者
千葉大学園芸学部
巻号頁・発行日
no.65, pp.55-59, 2011 (Released:2012-12-06)

クリープメータによる計測結果および市販のデジタルカメラで取得した画像を利用することで農産物・食品素材のヤング率およびポアソン比を計測した.画像計測は非接触のまま変形量の評価が可能であるため,煮熟された食品素材のように軟弱な試料であってもその変化を精密に解析することが可能であった.本手法を適用して,煮熟時間の経過に伴うダイコンおよびニンジンのポアソン比とヤング率の変化を計測したところ,ヤング率は沸騰水に投入直後から著しく低下するのに対し,ポアソン比の変化は緩慢であることが明らかとなった.またヤング率はダイコン,ニンジンともほぼ同様の値を示したが,ポアソン比はダイコンの方がニンジンよりも大きな値を示した.画像を利用した弾性的特性値の計測,評価法は,例えば食品素材の嚥下特性評価にも有効であると考えられる.
著者
森本 稔 松浦 祥悟 甲斐 政親 丹松 美由紀 坂本 広太 林 史夫 江端 新吾
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究 技術 計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.47-53, 2020-05-01 (Released:2020-05-13)
参考文献数
12

After the national universities becoming into the national university corporations, the status of the technical staffs of the universities has been reviewed actively from the viewpoint of their career paths and skill improvement to increase their motivation and activity. Some unique proposals and initiatives have been practiced. In Tottori University, the university technology administrator (UTA), a management person in the technical staff's organization, was created as a career path model and in Gunma University, the Meister Education Program, as a novel skill improvement method. In this paper, we introduce some examples of career path models and skill improvement methods of technical staffs in Japanese national universities and American national laboratory as a comparison.