- 著者
-
松浦 秀治
- 出版者
- 日本第四紀学会
- 雑誌
- 第四紀研究 (ISSN:04182642)
- 巻号頁・発行日
- vol.49, no.5, pp.293-298, 2010-10-01 (Released:2012-03-27)
- 参考文献数
- 14
- 被引用文献数
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第四紀の定義が改訂され,ジェラシアン期を含むように引き下げられることになった背景には,「ホモ属の出現」が暗黙の了解事項として存在していたが,本報告では,「初期ホモ属」という用語に関する今後の定義再検討,あるいは新しい標本の発見如何によって,必ずしも「ホモ属の出現時期はジェラシアンの基底に近い」とは言えなくなる可能性を指摘した.また,人類最初の出アフリカ(Out of Africa)による分布拡大の時期と様相に関しては,インドネシア・ジャワ島の初期人類,また,中国の元謀出土人切歯や泥河湾馬圏溝出土石器が,それぞれオルドヴァイ正亜磁極期近くに遡るという主張と相まって,「150万年前以前のカラブリアン初期における東方アジアへの人類拡散」は,近年の人類進化史観におけるひとつの「general model」になっていた.しかし,その基盤は脆弱であり,再考を要するものであることを示唆した.